魔銃使いは迷宮を駆ける   作:魔法少女()

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第一話

 うむ。なんか知らんが救援に駆けつけてくれた人が居るぞ。

 

 薄暗いもなんとか見渡せなくもない洞窟の中。

 

 よく分らないゴブリン(仮)に襲われてるチュートリアル(?)のさ中。

 

 白髪の可愛らしい顔つきをした男の子に助けられました。

 

 ほう、ほうほう? これはアレか? フラグか?

 

 立てる側じゃなくて立てられる側の……まあ、今女の子だしね。しょうがないよね……なくネェよ。

 

 ちょっと待ってほしいなぁ……なんて。

 

「キミ、大丈夫?」

 

 ほう、なかなか見どころの有る顔立ち。のはず。

 

 ぶっちゃけ肩越しに振り返る様はそこそこ様になってる。が、アホなのかこいつ……

 

 少年の装備的には肩当てやら膝当てやら結構ガチ目の装備から防具はランク8か9相当。

 

 武装はランク3相当のナイフ。なぁにこれ? 装備チグハグ過ぎでない?

 

 並々ならぬ程にナイフ好きな訳ですかね? と言うかそれ以前に……

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()調()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 完全初心者(ニュービー)かな? いや待て、だとしたらプレイヤーランク的にありえない。

 

 成程、こいつはアレか、地雷プレイヤー(Noob)か!

 

 間に割り込み様に目の前の一体のゴブリンを倒したのはグッド。だがそれ以外はバッド。

 

 と言うか。まず危険度の高い剣持ちから倒せよって話なんだよなぁ……

 

 ほら、こっちにキメ顔をキメてる間に突進(チャージ)されて押し倒されて……しかも馬乗りにされてる。

 

 ……美少年×ゴブリン2体、ソッチの気は一切ないが、薄い本が厚くなる……じゃねぇ、馬乗りしてるゴブリンが剣持ちじゃネェか。しかも容赦なく頭に振り下そうとしてるし、あの少年混乱してんのか防御姿勢とりやがったっ!? しかも諦めた顔してるしっ!?

 

 やめっ、一応助けに来てくれた少年なんだから殺すのはヤメたげてよぅ……

 

 

 

 

 

 ベル・クラネルは涙目で脅えながらも気丈に長杖を構えた女の子の目の前に居たゴブリンを横から奇襲する事に成功し、一匹の首を深々とナイフで抉る事に成功した。

 

 やった、上手くいったぞ。

 

 そんな思いと共に女の子を安心させるために顔だけで女の子を振り返る。

 地味に鏡に向かってどんな風に振り返ったらカッコ良く見えるのか研究していたソレ、俗に言うキメ顔をキメて、ベルは口を開いた。

 

「キミ、大丈夫?」

 

 ――――ボクが来たから、もう安心だよ。

 

 そう言葉を続けようとした英雄志望の少年は、次の瞬間には衝撃と共にバランスを崩して情けなくも倒れてしまう。

 

 少年が何度も想像の中で危機的状況に陥った少女を助け、惚れられて、そのままとんとん拍子にハーレムを増やして英雄となっていくと言うありきたりな妄想を繰り広げているさ中であれば、少年がキメ顔をキメている時にモンスターは決して攻撃してこなかった。

 

 何故なら、急に飛び出してきた人物を見定める為にモンスターも警戒するだろうと思っていたからだ。

 

 だが、ここで少年は思い違いをしていた事に気付いた。

 

 飛び出してきた人物が筋骨隆々の大男なら? 美麗な鎧に身を包んだ美丈夫なら?

 

 そう、モンスターも警戒するだろう。

 

 だが現実はそうじゃない。

 

 ベル・クラネルはそこそこの顔立ちをしている。美醜観念的に言えば良い方の顔立ちだ。

 だが、どちらかと言えば力強さを感じさせるよりはひ弱さを感じさせ、線の細さの目立つ……要するに()()()()()()()をしていた。

 

 どういう意味か? モンスター視点で見ればわかりやすいだろう。

 

 長杖を装備し、実用性の無さそうな豪奢なローブに身を包んだ100cm程の幼い少女を追い詰めているさ中に現れたのは、線の細い、弱々しい見た目をした少年。

 

 モンスターから見ればどうなるか? 獲物が増えただけである。

 

 迷う必要等ありはしない。モンスターは人を憎み、殺そうと襲い掛かる。

 

 上層、一階層のゴブリンは下の階層のモンスターに比べて能力も知能も劣っている。それでも最低限の警戒心ぐらいは持ち合わせているが、残念な事にそのゴブリンの警戒心にベル少年は引っかからなかった。

 

 結果は、剣を持たない一匹のゴブリンの全身を使った捨身の突進で少年はバランスを崩し、そこに剣持ちのゴブリンが馬乗りになって(マウントをとって)しまうと言う事態を引き起こしたのは。

 

 ――あぁ、ボクはなんて馬鹿なんだ――

 

 祖父への謝罪。

 

 軽率な行動への後悔。

 

 それから一人残していってしまう神様への思い。

 

 様々な感情が入り混じりながらも、ベルは馬乗りになったゴブリンが振り上げる剣を見ていた。

 

 ――流石に、あの剣をナイフで防ぐのは難しいかな?――

 

 そう思いながらも、恐怖で強張る体は勝手に身を守る為に剣が振り下される軌道上にナイフをかざしてしまう。

 

 きっと、攻撃すれば道が開けたかもしれない。けれども克服したと思い込んでいたゴブリンへの恐怖が、馬乗りされて至近距離から殺意を剥き出しにしているゴブリンの姿を見て再度湧き上がってきてしまった。

 

 抵抗する気力は失せ、ベルはぎゅっと目を瞑り、衝撃に備えた。

 

「てぇやぁっ! とぉぅっ!」

 

 目を瞑り真っ暗な視界の中。女の子の声が聞こえ、鈍い打撃音と共にベルの上に乗っていた重さが消えた。

 

「ちょっとちょっと、何で諦めてんのっ! 助けに来たなら最後まで戦ってよっ! 目の前で死人が出るのは嫌だってのっ! こっちが死ぬ分には自業自得で済むけど、助けにきた少年に死なれちゃ寝覚めが悪過ぎるっ!」

 

 女の子の叱咤の声に、萎えていた気持ちが再度湧き上がる。

 

 ――そうだ、ボクは女の子を助ける為に――

 

 危機的状況の女の子を救う。

 

 ソレは英雄志望な少年にありがちな想像だ。

 

 だがソレを想像のまま終わらせたくないから、祖父の遺した言葉の後押しもあった。

 

 故に救おうと足を向けたのではなかったのか?

 

 ならば、立たなくてはいけない。

 

 ここで自分(ベル)が死んだら次は女の子がゴブリンに狙われる。

 

 見るからに魔法使いである装備に身を包んだ女の子。背丈からしてもベルよりも幼いその子。

 

 ベルが死ねば、女の子を守る者は居ない。そう、今この瞬間だけは、この女の子にとってベルだけが、唯一の()()なのだから。

 

 一気に身を起こして目を見開いて周りを見る。

 

 女の子は長杖を使ってゴブリンを殴り飛ばして距離をとっている。

 

 片方を殴り飛ばしては突撃してくるもう片方をいなす。

 

 ベルのナイフと違い打撃系のその攻撃はゴブリンを倒すのに威力が不足している。

 

 そもそも女の子の持つ長杖は装飾が美しい魔法使い用の長杖であるのは簡単に見てとれる。

 

 打撃用武装ではなく魔法の補助用の装備で上手くゴブリンをいなしているのだ。

 

 凄まじい技量だが、圧倒的威力不足。

 

 実際何度も殴られているゴブリンのはずだが全然効いていないのかゴブリンも気色悪い笑みを浮かべながら女の子の命を奪おうとしている。

 

 ベルはナイフをしっかり握りしめて、剣を持つゴブリンの背後から背中を一突きして魔石を砕く。

 

 ――モンスターは魔石を砕かれると即死して消滅する――

 

 魔石を主な収入源としている冒険者ならできればやりたくない事の一つ。

 

 魔石を砕けば収入がゼロになるからだ。だが、危機的状況の女の子を救うのに何を躊躇する必要があろうか?

 

 先程は、みっともない姿を見せたが、今度はそうはいかない。

 

 この女の子を救うのだ。

 

「少年っ! ナイスっ! もう一体も頼むわっ!」

 

 最後の一体のゴブリンの脚を救い上げる様に長杖を振るい、バランスを崩させた女の子の言葉通り、ベルは最後の一体、仰向けにすっ転んで隙を晒しまくったゴブリンに向かってナイフを振り下した。

 

 

 

 

 

 ふぃー、さっきは危なかったですな。馬乗りになったゴブリンを全力の振り抜き(フルスイング)でなんとかどけて、少年に発破かければ、何とか少年が立ち上がってくれた。

 いやー、この少年。なんか見た目のひ弱さ以上に力あるわ。

 このゴブリン、打撃無効化でもついてんのかってぐらい俺のダメージ入って無かったのに少年の一撃で即死したし。俺が弱いのか? 少年が強いのか?

 

 一応、『ピストル・マジック(初期)』の威力が50で、近接攻撃の威力が180なんだが……もしかしなくても『ピストル・マジック』使えたとしてもヤバかったのか?

 

 ……しかし、地雷プレイヤー(Noob)よりも弱いとか、泣けるぜ……

 

「キミ、大丈夫?」

「はぁ、むしろ少年の方こそ大丈夫? さっきこっぴどくマウントとられてたけど」

 

 一応、魔法少女ロールプレイとして女の子っぽい言葉使いを習得……はしてないな。素からこんな感じだし。あ? 心の中のゲスさと外面が違い過ぎる? 何を言ってる。俺は男だぞ? あ、いや今は女の子だけど……中身は男だし? 女の子の体には興味深々だよ? おっぱいとか。ぱんつとか。

 

 ってンな事はどうでも良いんだよ。なんか心配してくれた少年に声をかけたら顔を赤くして俯いてしまった。

 

 ……気持ちはわかるぞ少年。カッコいい顔して出て行ったらあっけなくやられたもんなぁ。

 

 ソレは酷くかっこ悪く映るし、少年のプライドもずたずた……あっ、この少年、一応助けてくれたんだっけ?

 

「あー……ごめんなさい。言い過ぎたわ。私は大丈夫。怪我は特に無いし一応一撃も貰ってないから……それよりも助けてくれてありがと、流石に一対三は厳しかったわ」

「え……あっ、その、うん、どういたしまして。キミに怪我が無くて良かったよ」

 

 ……何この少年。お礼言ったら顔をより赤くしてわたわたしてんのに、ごく自然に口説き文句っぽい台詞が口から零れてるんだけど? しかも、歯の浮く台詞の癖に全然違和感感じさせネェし……あれ? 天然のタラシっぽい?

 やばい、孕まされるっ!! ……あれ? 魔法少女って孕まないんだっけ? たしかホムン……ホルンなんちゃら? とか言う人造生命みたいな感じで、見た目は少女だけど中身は別物って設定があった気がする。

 

 薄い本で見た。あれ? でも一部の薄い本ではちゃんと孕んでた様な……? ……後で確かめておくか? でもパンツの中身は神聖だしなぁ……ぶっちゃけると息子じゃないと言う事実から目を逸らす為に中身まで確認してないしなぁ……ヤだなぁ……

 

「あの……それで……その……」

「うん?」

 

 そんなゲスな事を考えていれば、もじもじした少年が何か言いたげにもじもじしている。何この少年。兎っぽくて可愛いじゃん……兎っぽい? 兎って確か性欲がヤバいって……孕まされ? 冗談じゃない。

 

「何かしら」

 

 魔法少女が帝国兵につかまって性欲処理に利用される系薄い本は沢山見てきた。

 大体が筋骨隆々な帝国兵の皆様に色々な事をされる感じだったが、線の細い系の男は出てこなかったな。汗臭いと言うか筋骨隆々とした大男たちが剣と弓を手に銃器に立ち向かう感じの国だったんだが……と言うかこの少年、帝国兵……

 

 うぇっ!? 敵対国家じゃネェかっ!!

 

「うんとね……キミ、この後――「待ちなさい」――え?」

 

 左手でロッドを持ち。オーブを相手に向け、睨みつけながら右手を『銃』の形にして少年を睨む。

 

「ごめんなさい。助けて貰った事に感謝はしてる……けど、()()()である貴方に気を許す訳にはいかないの」

「えぇっ!?」

 

 だって孕まされちゃうし?

 

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