魔銃使いは迷宮を駆ける 作:魔法少女()
唐突だがミリアの算数教室はじまります。ちょっと難易度高いけど頑張ってね。
あるところにミリアちゃんという見た目は金髪碧眼の幼女、中身はおっさんという子がいました。
毎日モンスターを倒してお金を稼ぐ底辺冒険者です。
日々のおこづかいは一回の稼ぎから100ヴァリスをもらっています。
冒険者になってから今日まで15日間皆勤で冒険者をしていました。
しかし、昨日だけはミノタウロスさんに襲われて稼ぎが少なかったのでおこづかいをもらっていません。
そんなミリアちゃんはおこづかいで長杖(600ヴァリス)とボロいローブ(200ヴァリス)、白い無地のパンツ四枚セット(200ヴァリス)を買いました。
残っているお金はいくらでしょう。
………………。
支払いに必要な金額は……パスタ(300ヴァリス)、飲み物(200ヴァリス)が二組、それに本日のおすすめ(850ヴァリス)でー……。
えっと、その、控えめに言って……足りぬな?
どうすんだよこの状況、控えめもくそもなく金が足りん。
この店って足りなかったら店の奥でボコボコにされてるあいつみたいになるんだろ? ミリア知ってる。
ヤバい、どうする……いっそベルみたいに逃げるか?
…………捕まってボコボコになる未来が見える。俺って予知能力者だったのか。
ははっ、笑えるかボケェッ!! 何してんだ俺ぇっ!?
ベル君にお金全部渡してたじゃねぇか……。もうどうにもなんねぇな。
素直に言いますかねぇ……まぁ、多分だが皿洗いをー……んむ? なんか酔った冒険者があーにゃ?とか言う子と話してるな。どしたんやろ?
「にゃ? これじゃ足りないにゃ」
「いや、飲み過ぎちまってよ……」
「考えて飲まなきゃダメにゃ。それで、どうするにゃ?」
「今度来たときに払うからツケといてくんない?」
あんな感じでいけば大丈夫そう?
ん? ミアが出て行ったぞ。威圧感スゲェな……。
「ウチじゃツケはやってないよ」
「いや、ちゃんと持ってくるかr――ゴブッ!?」
「どっちか選びな、今すぐ有り金全部払って足りない分は体で払うか……ボコボコにされてから有り金全部払って足りない分体で払うか」
…………いきなり顔面に拳ぃっ!? 何それ怖い……。
唐突だが。ミリアちゃんのパンツの色は何色でしょう? ははっ……たった今、黄色い染みパンになっちまったぜ……。
いや、だってさ。冒険者っぽい男の顔面に拳がメキィッってめり込んでヤバイ感じに吹っ飛びそうになった冒険者の男がだよ? なんかアーニャがぶっ飛びかけた男の首根っこをガシィッて掴んで空中で止めたんだぞ?
何あの二人……いや、なんか店裏のヒューマンの女の子もヤベェんだけど。ははっ……はは……助けてベル君、ヘスティア様……。
もうこの際キューイでもいいや。なんで連れてこなかったし。助けてキューイ……。
――キュイ?――
……うむ?
――キュイキュイ、キュイ? キュイキュイ――
なんか、頭の中にキューイの声が……?
――キュイ? キュイ――
…………。
ほう。念話とか言う特殊能力か。なるほ……ど? これはあれか? 普段の行いのお陰で運が向いてきた?
助けてキューイ! お金足りないから泣きながら帰ったベル君に『豊穣の女主人』に戻るように伝えてくれ!
――キュイ? キュイキュイ――
ベル? 居ないよ。って、え? マジで?
ベル君、ホームに帰ったんじゃないのか……どっかでたそがれてるのか?
くそっ、キューイと念話できることが発覚したが意味がねえ。
――キュイキュイ――
そうだよ、ヘスティア様かベル君を探してもらおう。
というわけで探してきてくれ。ミリアちゃんのぴんちだぞ。
――キュイ!――
任せて! か。いやぁ、焦ったけどなんとかなりそうだな。キューイ様々である。これからはもう少し優しくしてやってもいいかもしれんな。
そういえばお土産買って帰る約束してたんだったか? 林檎……はこの時間売ってないだろうし、明日買ってやるか。
――キュイ! キュイキュイ! キュイ!――
…………えっと? ミリア! 扉を開けれない! 助けて! って……助けてほしいのはこっちなんだが……。
キューイ、もういい。大人しくホームで待っててくれ。
――キュイキュイ?――
助けなくていいの? か。今お前が助けを求めてたじゃねえか。別に構わん。大人しくぶん殴られてくるよ……はぁ。
キューイを頼った俺がバカだった。子猫サイズのキューイに扉を開ける方法なんてないしな。動物用の戸口なんてあの地下室にあるわけないし。
「あの、ミリアさん。ベルさんを追いかけなくていいんですか?」
戻ってきたシルさんの言葉に溜め息をこぼす。
「追いかけていいなら追いますが……」
「……? えっと?」
別に追いかけるのを引き留めるつもりはないらしいんだが、支払い関係の話題が出せば通じるよね。
「お金が足りないんですよね」
「え?」
「支払いはベル持ちだったので」
ほら、
納得した表情のシルさん。
「今、完全に無い感じですか?」
「500ヴァリスなら……」
なけなしの俺の全財産である。やだ……俺の所持金、少なすぎ?
「ミア母さんに相談しましょう」
顔面パンチは勘弁してくれよ。マジで。……いや、でも死なない程度に加減はしてくれる……よな? 多分。
さっきの男とその仲間っぽい二人は三人仲良く顔面に一撃もらって酔いざまししてから店の奥に引きずられていった。アーニャさん、成人男性三人を平然と引きずっていったけど、どんな筋力してんだよ……。
「あんた、金が足りないそうだけど、どうするんだい?」
「ひぇいっ!?」
やべ、変な声出た。気がついたらミアさんがカウンター越しにこっちを睨んでやがる。……あれ? 問答無用の顔面パンチじゃないのか?
「えっと……」
「ミア母さん、本当はベルさんが支払うはずだったみたいで……」
「ほぅ? それで? そのベルって子に逃げられたわけかい」
ふむ。間違ってないが。このままだとベルがひどい目に遭いそうな予感がする。それ以前に俺を置いていったせいで俺がひどい目に遭う場合もベルが知ったら傷つくだろうしなぁ。
「あの」
「なんだい?」
「皿洗いでもなんでもしますので、ベルの事は責めないで欲しいのです」
「…………」
ひぃっ、この人目付きが怖いよ……。
ただでさえ第一級冒険者にボロクソに貶された挙げ句、追加で食い逃げ犯としてボコボコにされるのは可哀想過ぎるでしょ。どうにか交渉したいよ。
「あんた、そのベルって子に惚れてるのかい?」
「はい?」
「献身的なのは男にとっちゃ魅力的だろうけど、あんたは損するばっかだよ」
うぇ? なんか勘違いから高説が始まった?
「いいかい、男ってのはぶっ叩かれて強くなるもんさ。笑われて、貶されて、それでも立ち上がってくるのか本当の男ってやつだよ」
まぁ、その通りだと思うんだが……。
「それに、見た目はひょろくても冒険者だろう? あれぐらい貶されるぐらいは耐えられなくちゃ冒険者なんて務まらないよ」
仰る通りですね。
「あんたがやろうとしてるのはただのお節介だよ。だから惚れてるなら見守ってやんな」
「はい」
確かになぁ。可愛らしい顔立ちしててもベル君は男であり、英雄なんて言う絵空事と笑われてしまう壮大な夢を持っている。この程度で躓いていては本当に絵空事になってしまうだろう。
「まぁ、その子が来たら一発きついの見舞ってから、一日皿洗いでもさせるかね」
わぁお、相手の心情もある程度理解を示しつつも自分の意見を曲げない姿勢は凄いな。惚れそう。
ベル君は不幸だがきついの一発もらってくださいな……。
「それで? あんたはどうするんだい?」
……ボコボコにされてから働くか、大人しく働くかだよね? 大人しく働きますとも。えぇ……痛いのは嫌だからね。
働くミリアちゃん始まるぞー……ねぇ、待ってよ。何で俺この店の制服着てんの?
「お似合いですよ」
「ありがとうございます……」
皿洗いだよな? 殴られる事は無かったけど、皿洗いだよな? 何で制服着なきゃなわけ?
更衣室に案内されて着替えろって渡されたこの店の制服……エプロンドレスって言うのかこれ。そんなんを着てー……。と言うか良くサイズあったな……なんか各種サイズが取り揃えられてんじゃねぇか……。
お尻に穴の開いた奴……獣人用かな。尻尾出す穴的な……なんか全てのサイズを網羅する勢いで制服が用意されてるし。この店なんなの?
店主は化け物だし。店員も化け物……もしかしてシルさんも中身は化け物的な? ……俺、朝に思いっきり喧嘩吹っ掛けた気がするんだけど……殴られなくて良かったよ。マジで……。
「それで、私は何を?」
「はい、今は皿洗いは間に合っていますので接客をお願いします」
リューさんの言葉に顔が引きつる。何言ってんのこの子……フロアに出ろって? 馬鹿なんじゃねぇの?
皿洗いに四人の顔面ボコボコ冒険者が動員されてるから、皿洗いは必要ないってね。あの四人ふざけんなよ……俺と代われよ。皿洗いやりたいです。めっちゃやりたいです。
……ダメか。畜生。
「私なんかが接客して大丈夫なんですかね?」
「大丈夫ですよ。笑顔で接客すれば文句は言われません。何か言われてもミア母さんがなんとかしてくれますので」
なんとか=ボコボコって構図なんですねわかります。なんてゴリラ理論。
つか接客ってフロアに出ろって事だよな? まだロキファミリア居るんだけど。
「野菜の皮むきとか……」
「いえ、もう追加で客が来ることは無いので皮むき等は終わっていますから」
畜生、どうしてもフロアに出ないとなのか。なんか他に……倉庫整理? ばっかだなぁ、こんなちっこいミリアちゃんに倉庫整理なんて出来るわきゃないんだよなぁ……。
じゃあ掃除? 結局フロアに出なきゃじゃないか。
どうしよ、ロキファミリアと顔合せるとか冗談じゃないんだけど……はぁ。