魔銃使いは迷宮を駆ける 作:魔法少女()
さぁ、やってきました
ベル君は『豊穣の女主人』の店に頭下げに行ってる。ヘスティア様は最低限、パーティに出席するのに見苦しくない様な衣類を買いにいった。ヘスティア様にはものすごく申し訳なく思う。金が全くないせいで選べる衣類の幅が凄く少ないのだ。俺の豪奢なローブ解体して布地として使えばドレスとして使えるかもとか思ったが、あいにくと裁縫技術を持つ奴が居なかったので廃案になったし。最悪質にでもいれちまうかとも考えたがそれはヘスティア様はやめておいた方が良いと言っていた。早いとこ稼げるようになってヘスティア様に恩返しをしたいところだ。
さて、ここが
まぁ、早々出会う事なんて無いは――
「あ? アンタ昨日の」
噂をすればなんとやら。丁度ロキファミリアの本拠『黄昏の館』の入口からエルフとおっぱい小さい方、後パツキンのネーチャンを引き連れて件の女性が出て来た。うっそだろオマエ。
何? 其の……うわぁ、日差しの下で見るとおっぱいでっけぇなぁ。額に浮かんだ青筋っぽいモノが……うぅん。俺の冒険は此処で終わってしまうのだろうか?
ずかずかと近づいてくる件の女性……ティオネ・ヒリュテ、ヤバイ殺されるっ!
「アンタ、昨日団長を誑かそうとした」
ギギギギッというヤベェ擬音が聞こえるぐらいには表情が歪んだ美女。断言しよう、この女性は間違いなく美女である。おっぱいもでかいし引き締まったおへそ回りとか素晴らしい女性的な曲線を描いており男なら視線が吸い込まれるのは仕方が無い。仕方ないから顔じゃなくておっぱい見よ? ねぇ、あの顔はヤバイって、視線逸らせない。ほら俺、そこにたわわなおっぱいがあるんだからそんな青筋浮かんでキレる寸前みたいな顔じゃなくておっぱい見よ?
「何しに来たのよ」
「ティオネ、どうしたのよ」
「どうしたの?」
「ティオネさん?」
えっと、おっぱい小さい方がティオナでおっぱいがティオネに比べて小さく、髪もショートである。エルフっ娘がレフィーヤちゃん。見た目は中学生位の女の子で割と可愛らしい子である。
んで、最後のパツキンのネーチャン。お前もパツキンだろとか言ってはいけない。事実だけど。
なんと、彼女こそうちのベル君をたぶらかした修羅系少女、アイズさんである。普通に綺麗で思わず視線が吸われる……吸われ……ぁ、これ無理、ティオネちゃんから目を逸らしたら死ぬ。
「なんとか言いなさいよ」
なんとか、とか口にしたらたぶん死ぬ。しなくても死にそうとか笑えん。助けてヘスティア様……。
「ティオネさん、その子って昨日の……」
レフィーヤって子は俺の事覚えてたのか。
「そだっけ?」
……ティオナちゃんの方は、まぁあれだね。酔ってたしね? 覚えてなくてもしょうがないよね。
というか、俺の運悪すぎ? 噂をすれば影だったか? そんなことわざがあった気がするが考えただけでアウトなのか……出
「あの、私はロキファミリアと少し話がありまして」
決して団長さんと個人的な話をしに来たわけではない。
「先日のミノタウロスの件で……」
「ああ、なるほど」
ぽんと手をうったティオナと、納得の表情のレフィーヤ、二人は納得させられたはずなんだが肝心のティオネさんはあれだね、鼻をすんすんならしてる……なにしてんの?
「ねぇ、あんたから団長の匂いがするんだけど……どういうことかしら」
うぇあっ?! どういうことぉっ!? いやっ! それこっちの台詞だろっ!? 団長の匂いってなんだ!?
「え? えっと……すいません、何がなんだかわからないのですが」
なにこの子、団長の匂いがとか犬かなにか? もしかして匂いで人を追跡できちゃう人? ヤバいよヤバいよ。
「……あんたの服の中からするわね。隠してるもの出しなさい」
なにも隠してねぇよっ!?
「まさか……団長の下着とか盗んだんじゃ……っ!!」
無いよっ!? なんでそうなるのっ?!
「ティオネさんだけじゃないですか? 団長の下着とか盗むのって」
「何言ってるのよ。私は下着になんて興味はないわ」
何を言っているんだこいつ……。
「団長の裸が無いなら布切れに意味なんてないでしょ?」
じゃあ何で俺が下着泥棒したみたいに言ったんですかね? つか、団長の匂いってなんだ?
「あの」
「なによ」
顔怖すぎだろ、何で敵視されてんの。
「匂いと言いましたけど、もしかしてアマゾネスって匂いに敏感なんですか?」
もしそうなら、成る程ティオナちゃんも危ない感じ? この姉にしてあの妹ありって感じで。
「いや、私そんな匂いなんてわかんないから」
「そんなわけ無いでしょ」
ティオナちゃんが凄く必死に否定してる。だよね……アマゾネスについてエイナさんから色々聞いたけどそんな話聞かなかったし。
しかし、団長の匂いね……フィンから渡されたハンカチが原因か?
「もしかして、これの匂いですか?」
ハンカチを取り出して示す。
「確かにこれから団長の匂いがするわね」
マジでわかるのかよ……一体どんな嗅覚してんだよ。
「これどうしたのよ」
盗んだのかと聞かれなかった。よかった……でも目つき怖いままなんですが。
「先日、ミノタウロスに襲われた日に、その日は仲間の安否の確認の為に直ぐ帰還しまして。後日訪ねてくれと、訪ねる際に門番にこれを見せる様に言われました」
これ信じて貰える? 嘘じゃないよ。マジマジ、大マジ。
「…………」
どうだ?
「へぇ、そうだったの」
「ティオネさん、疑うのはかわいそうですよ。なんか本気で脅えてますよ」
「そりゃぁ第一級冒険者に詰め寄られたら大体の人は怖がるでしょ」
「そっか……怖がられちゃうんだ……」
待って、レフィーヤちゃんとティオナちゃんの援護射撃は凄く嬉しいんだけど、なんでアイズちゃんがダメージ負ってるんですかね?
……あっ! もしかしてアレか? ベル君に逃げられた事か? 多分ソレが原因だよな?
「あの、アイズさん」
「……何?」
目の前に居るティオネは無視してアイズちゃんのフォローをしておかなくては……一応ベル君の事で傷ついているみたいだしね? 一応ね?
「先日は私の仲間を助けて頂いてありがとうございます」
「仲間?」「アイズ誰か助けたの?」
「あ、もしかして酒場で言ってたあのトマト……あっごめんなさい、こっちの話…………あれ? 昨日ミリアさん酒場に居ましたよね?」
唐突な話題変更に首を傾げるティオネ、ティオナ……レフィーヤちゃんはそう言えば酔い潰れてなかったねこの子。話が拗れて来た、超面倒臭ぇ。
「えぇ、件のトマト野郎……私のファミリアの団長だったんですよ。助けて頂いたので礼をと……非常に申し訳ないのですが礼の品は用意できず……」
えっと渡せる物なんて何もない。だって第一級冒険者の稼ぎからして駆け出し冒険者しか居ないヘスティアファミリアで用意できるモノなんて喜んだりしないだろ。
……じゃが丸くんが好物なんだっけ? ヘスティア様に言って山ほどじゃが丸くん用意すれば喜んでもらえるか?
「あの子の……」
考え込むアイズ・ヴァレンシュタイン……にしても綺麗な子だなぁ。じゃない、ベル君が惚れてる相手に俺まで惚れてどうする。しかも今は女の子である。流石に百合の花を咲かす訳にはいかない。手遅れな気がしなくもないが女神に忠誠を誓うのは別枠だと信じてる。
と言うかティオネさんはそろそろ離れて貰っても良いですかね?
「ふぅん……ウチのベートが悪かったわね」
うぇ?
「ほんとごめんねー。ベート口が悪くてさ」
「ごめんなさい」
何でこの子らが謝るんですかね? 別に事実でしょ?
「いえ、事実でしたし。本人にとっては良い発破をかけられた様なモノでしたし冒険者になってから慢心を抱いていた私とベルには良い薬の様なモノでしたよ。ミノタウロスの件でも身に染みましたし」
ベル君がかっこよくなったのも一応そのベートって奴のおかげだしね。あの時はむかついたしキューイで襲撃しようかと考えたが今となればベル君に発破をかける言葉でもあった訳で……昨晩のベル君は凄くかっこよかったし。
「そっか……と言うか慢心?」
気になるの其処かよ……と言うか早くロキファミリアの方へ行きたいんだけど。門番もこっち見てるし。と言うか見てるんだったら助けて門番さん……ロキファミリアの一員っぽいし無理か。
「ねぇ」
んむ? 考え込んでたアイズちゃんが凄く不安そうにこっちを見ている。この子、第一級冒険者なんだよね? なんでそんな脅える様な表情してんの?
「あの子に怖がられてない?」
………………。うん? 怖がる? 誰が? 誰を?
「アイズ、それ気にしてたの?」
「あー、逃げられちゃったんだっけ?」
「アイズさんに助けられておきながら逃げるなんて酷いですよねっ! あっ、いえ責めている訳ではなくてですね」
少し恥ずかしそうに頬を染めつつも真っ直ぐ見据えてくるアイズちゃん。ここでベル君の恋心を暴露するのは絶対にしないしとりあえずフォローしておかなきゃなんだよなぁ。
「いえ、別に怖がっていたとかは無いですね。ミノタウロスに出会った事で気が動転してしまったんです。私もミノタウロスに出会った時の記憶がとんでいますし」
言い訳としちゃ完璧である。と言うかマジで解放してくれ。
「怖がってはいないですね。むしろ礼を言わずに逃げてしまった事を本人も気にしていましたし」
俺の言葉に安堵の吐息を零してそっかと呟くアイズちゃん。一応、大丈夫っぽいか?
「これで話は終わりで良いでしょうか? 一応ロキ・ファミリアを訪ねた後にダンジョンに潜る事になっていますし」
お金お金、前世では惰性で集めていた金だが今世では本拠の教会の修理費とか色々入り用なのだ……前世の俺って何気に金持ちだったしなぁ……お金に苦労した記憶ってあんま無かったんだよな。正攻法での金の稼ぎ方なんて知りもしない辺り……いかん、後ろ向きな思考はやめるって約束があんだろ。
「ふぅん……まぁ良いわ」
「そっか」
よし、このまま解放の流れで。
「アンタに一応言っとくわ……団長に必要以上に近づいたら……わかってるわよね?」
アッハイ……。
件の第一級冒険者の三人+αの子らと別れた後、門番にハンカチを見せたらそのまま少し待つように言われて待っていたら団員が案内してくれると言ってくれて応接室まで案内された。部屋に現れたのは団長と神ロキ。なんで主神が居るんですかね?
「こんにちは」
「こんにちは、先日はすまなかったね……大丈夫だったかい?」
「おー、アンタ大丈夫やったんか? どっかで自殺でもかましとるんやないか思っとったんやけど」
先日、豊穣の女主人って酒場で会った日の事か。あの時は気が動転して逃げる様に何処かに行ってしまったからな。と言うか神ロキの予測が正確過ぎるだろ。なんか心の中読まれてね?
「はい、仰る通りですね。外壁から飛び降りました」
「……マジか、すまん冗談やったんやけど……と言うか良く無事やったな」
驚愕の表情になった神ロキ、フィンの方も顔が引きつってる。まぁ当然か。
「いえ、その件はもう済みましたし。それよりも改めまして挨拶の方を……ミリア・ノースリスと言います。ミノタウロスに襲われた所を助けて頂いてありがとうございます」
「……あぁ、僕はフィン・ディムナだ。助けた事は気にしなくても良い。元はと言えば僕達の所為とも言えるからね」
冷静に返してくるフィン……神ロキは、目を真ん丸にしてる。
「なんやアンタ……数日で何があったん? ……まあええわ。ええ主神に会えたみたいやな。良かったなあ。ウチは神ロキや」
慈しみの目を向けられた。この女神に対する印象がガラリと変わった。悪戯好きの悪神ではなく子供にやさしい目を向けられる道化だったか。
「そうですね。主神に出会えたことは本当に奇跡の様なモノですね。私には勿体ない位の」
その奇跡を前世で与えてくれりゃ良かったのにな。まあ終わった事に関していったってしゃーない。
「はぁ、アンタがまだネームレスやったらウチが名前決めて
あぁ、神ロキと神ヘスティアって仲悪いっぽいし出来れば隠しておきたいんだけどどうするかなぁ。
「彼女の主神かい? 彼女はヘスティアファミリアの眷属だったはずだよ。神ヘスティアの眷属だね」
「……ドチビ?」
うぉおおおおおおおいッ!?!? 人がどう誤魔化すか考えてるそれを暴露しやがったぞコイツっ!?
神ロキの雰囲気が変わったぞっ!? なんかドロリとした粘着質ななんかを感じるっ!!
「……あんたドチビんとこの眷属なんか?」
「アッハイ」
どうなる? ここで叩き潰される? やだ嘘どうしてこうなった来なきゃよかった……。
「出て行け」
うん?
「ドチビの眷属やと? アンタは可愛いし嫌いやないで? ネームレスの事に関しても正直悪い思っとる。せやけどソレとコレは話は別や」
え? 何この流れ。
「フィン、こいつ摘み出しぃや」
「えっと……ロキ? 落ち着きなよ」
フィンも困惑してる。何この……仲が悪いとは聞いてたけどここまでっ!?
「ええから、あんたには謝ったる悪かったわ。せやけどアンタがドチビの眷属やっちゅーならウチのファミリアの敷地に入る事は
団長の権限と主神の権限、より強い方はどちらかって? 主神の方に決まってんだろ?
何がどうなったかって? 普通に追い出された。流石に摘まみ出されはしなかったが……。
俺がヘスティア様の眷属だと知った瞬間の神ロキの豹変っぷりはドン引きするレベルではあった。
と言うかヘスティア様はいったいどんな恨みを買っているんだ。あのヘスティア様が恨みを買う光景なんてさっぱり想像出来ん。
フィンは入口で謝罪してくれたが、用意していた謝罪金は神ロキが渡す必要なんてないと取り上げていってしまったらしい。フィンのポケットマネーから出そうとしていた様子だが断っておいた。あんだけ神ロキに恨まれてんだし団長からなんか受け取ったりした日にはなんかいちゃもんつけられそうだし?
一体何が……。
それとキューイ、本当にごめんな。ロキファミリアから貰うはずだったお金で林檎買う積りだったんだが買えなくなったわ。
「……キュイ」
しおれた花の如く力ない返事を返すキューイ。本当にごめんな、この後ベルとダンジョンに潜って稼げるだけ稼ぐから。そしたら林檎買ってやるからな? できればグレてレーダー不調とかやめてくれよ? 頼むよキューイ。