魔銃使いは迷宮を駆ける   作:魔法少女()

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第二十七話

 ダンジョンで心行くまでベル君と一緒にモンスターと戯れる事半日。特に問題は無かったと言えるだろう。

 やる気に満ち満ちたベル君がまるで無双するかの如くモンスターを薙ぎ払っていったのは驚いた。と言うか本当に強くなってんじゃん。何アレ、俺の活躍の場とか殆ど無かったぞ……ベルが薙ぎ払うのを横目に慌ててピストル・マジックを連射、連射、連射と頑張ったら毎度の如くのマインドダウン。

 俺、マインドダウンし過ぎ? ちょっと魔力を早く高めないとヤバイよこれ。

 

 ダンジョン帰りはいつものごとく冒険者ギルドの換金所へと足を運んで換金所にベル君が向かい。いつも通りマインドダウン気味で疲労状態の俺は待合席で待たせて貰ってたら、なんか『~ッス』とかいう下っぱ口調が特徴的な黒髪で角刈りの何処にでも居そうな普通の青年が声をかけてきて手紙と小包を渡された。

 なんだこりゃ……と疑問を覚えるもその青年は渡す物を渡すとそのまま軽く頭を下げて行ってしまった。少なくとも俺の知り合いでは無い筈なんだが。

 

 小包の中身も気になるがそれよりも重要なのは差出人。

 

 神ロキが差出人だと言うではないか……と言うか下っぱ口調の青年はロキ・ファミリアの冒険者だったっぽい?

 

 ベルが魔石やドロップアイテムの換金をしてるのを確認してからこっそりと小包と手紙を手にエイナさんの所へ……。

 

「エイナさん、こんにちは」

「こんにちは、ミリアちゃん。今日は大分稼いできたみたいね……また無理なんてしてないでしょうね?」

 

 おお、怖い。ティオネちゃんの怖さはチビりそうになるが、エイナさんの怖さは身が縮こまる思いがする。

 ってこの間のミノタウロスに襲われたときに無謀にも適正階層よりも深く潜ったことを言っているんだろう。

 流石にあんな無茶はもうしない。ベル君もヘスティア様に無茶はしませんなんて誓いを立てていたしな。

 

「はい、あんな思いは懲り懲りですからね」

「そっか」

 

 安心したように吐息をこぼすエイナさん。疑ったりはしないのかね?

 

「それで、どうしたの?」

「あっ、いえ、少し話がしたくてですね。時間を頂けないかなと」

 

 あ、これなんかナンパの誘い文句みたいだな。エイナさんの苦笑を見るに、同じ文句で誘いを受けたことがあるのだろう。

 

「今からでも構わないわよ。この時間帯は換金目当ての冒険者しか居ないし」

「あ、はい。えっとですね―――」

 

 事情の説明に当たりロキ・ファミリアの団員について、先程の『~ッス』と言う下っ端口調の青年について質問したらすぐに答えが出た。割と有名な冒険者であり第二級(レベル4)冒険者の【超凡夫(ハイ・ノービス)】ラウル・ノールドと言う青年が俺の言う冒険者に該当しているのではとの事。

 ファミリア内部でパシり役としてこき使われている冒険者だとかどうとか……うぅん? 第二級(レベル4)って事はかなり強いよな? パシられてる? いや、気にするところは其処じゃないか。

 

「それで? ノールド氏と何かあったの?」

「あ、いえ……つい先ほどロキ・ファミリアから小包と手紙を頂きまして。見知らぬ人でしたので本当にロキ・ファミリアの方なのか確認をと……」

「成る程……中身は確認したの?」

「いえ、これからですね」

 

 エイナさん曰く、そう言うものは人前で開封しない方が良いとかどうとか。こっそり手渡してきた、それも目立たない団員筆頭とも言えるノールド氏が手渡してきたって事はかなり配慮されているので本拠に帰還してからの開封をおすすめされた。

 まあそうだよな、パッと見普通の青年にしか見えない普通の青年だったしなぁ。と言うか鎧着ててもエンブレムをしてないとそこらの冒険者に混ざって目立たなくなるとか言う個性はマジ凄いな。普通に声かけられて『ミリア・ノースリスさんッスか? ロキから届け物ッス。あっ、中身は確認してないッスから』とか言って唐突に小包と手紙を手渡された訳で……完全に無警戒で受け取ったわ。アレ詐欺師の才能あるんじゃね? 少しイメチェンすればいろんな印象を人に与えやすいし平凡な容姿ってのは其れだけで詐欺をする上で凄い有利に……いかん、前世の癖が抜けん。どうするかなぁ。

 

 

 

 

 

 ヘスティア・ファミリアの本拠へ帰還……いつもならヘスティア様が「おかえりー」と出迎えてくれるのだが、今日はヘスティア様不在……少し寂しさを覚えるのも致し方なしである。早く帰って来ないかなぁ。

 まだ初日だってのに何言ってんだ俺は。

 

「ミリア、シャワー先に使って良いよ」

「いえ、私は先にやる事があるので。お先にどうぞ」

「うん? そっか、じゃあ先にシャワー借りるね……キューイ?」

 

 服から引っ張り出して床に置いたキューイがベルにすり寄って行っている。

 

「キュイキュイ」

 

 シャワーシャワーとベルにねだっているのを見るにシャワーを浴びたいっぽい? お前さ、ずっと服の中に居ただけじゃん……もしかして俺って汗臭かったりする訳? 服の中で蒸れてて気になるとか? そんな汗かいた記憶無いんだが。

 

「キューイもシャワー浴びたいそうなのでお願いしても良いですか?」

「うん、わかった。じゃあ行こうかキューイ」

 

 ベルがキューイを連れてシャワーを浴びに行っている間にさっと手紙でも読みますかねぇ。

 

 割と質の良い紙に、ロキ・ファミリアのエンブレムの蝋印を施されてはいるが全体の印象は質素。宛名の部分には『ミリア・ノースリス』とだけ書かれている。差出人の所には何も書かれていない。小包の方は余り大きくは無いがポケットに入らないぐらいの大きさ。ずっしり重い様なそんな感じはするが何が入っているんだろうか?

 

 手紙を開封、つかペーパーカッターどっかにあるっけ? あ、ナイフで開けりゃいいか。

 

 駆け出し冒険者セットの中の駆け出し用ナイフで初めて切ったのは、モンスターではなく手紙でした。つか魔法あるのにわざわざナイフなんて使わないんだよなぁ。持ち歩いては居るけどぶっちゃけ日本人的感覚だと銃刀法違反とか気になる感じ。まぁそんな法律こっちにゃ無いが。

 

 中に入っていたのは一枚の便箋、うっすらとロキ・ファミリアのエンブレムである笑う道化師の姿が映し出されて居ながらも文字を読むのには特に困らない程度であるが……うわ、共通語(コイネー)で書かれてんじゃん。

 

 いや、今なら読めるよ? すごい大雑把にだけど……エイナさんの集中講義のおかげで割と読める様にはなった。ただ割と意訳が多くなるが……何々?

 

 ………………。

 

 …………。

 

 ……。

 

「うぇあっ!?」

 

 やっべぇ、変な声出たわ。俺って殺されても文句言えない事やらかしてたのかよ。マジか……まじかぁ。

 

『ミリアどうしたの?』

『キュイキュイ?』

「何でもないです、すいません少し驚いてしまって」

 

 シャワーの音でかき消されて聞こえていなかったわけでは無かったみたいだ。とりあえず誤魔化しておいてっと……。

 

 

 

 

 

 手紙の内容を大雑把に翻訳するとこんな感じ。

 

『ミリア・ノースリスへ

 

 あんたが何を考えて『モンスター』をウチのファミリアに連れ込んだのか知らへんけど、他のファミリアやったら問答無用で殺されとったで? 他のファミリアの敷地内に『モンスター』連れ込んだなんて知られたら殺されても文句は言えへんしな。

 運良く獣人と会わへんかったから良かったんやけど、獣人やったら間違いなく気付かれとったで。

 前回はアンタと関係無い所でウチ等が勝手に連れ込んだだけやし許したるけど、今回はアンタが連れ込む形やったし。

 まあ、今回は見逃したるから今度来る時はモンスターを連れて来たらアカンで? こっちも十分に悪い事したっちゅーんは分っとるけどアンタがしたんは準襲撃(テロ)行為や。謝罪する気は無い訳やないけどちょいと考えればわかるやろ? まあフィンも見逃しとった見たいやしウチも襲われとらんから気にせんけど。

 ウチの子らが気付く前に適当に理由付けて追い払ったったけど、先にウチの子が気付いとったらウチは止めへんかったで?

 

 追記:いくらなんでも金が無いからってそんなボロッちいローブっちゅーんは女の子としてどうなん?

 小遣いやるさかい、少しはまともな服買いいや。めかし込んだらウチにも見せてぇな。

 

  神ロキより』

 

 

 

 

 

 えっと、つまりだな。俺がロキ・ファミリアにモンスターを連れ込んだ事に気付いたロキがその場でそれっぽいこじ付けして追い払ったと……何がどういう事なのかって?

 俺ってさ、『キューイ』連れ歩いてるじゃん? 割と普通に連れ歩いてて気にしてなかったけどさ、一応ね? キューイってモンスター扱いじゃん? そんなのをファミリアの敷地内に連れ込むってどういう事になるかってぇとさ……。

 まぁ手紙の通り襲撃(テロ)行為に当たる訳よ。と言うかモンスターをダンジョンから連れ出す時点で許可を得てない場合は『オラリオ』に対する襲撃(テロ)行為な訳で? つまり見つかったらヤバイと。

 

 そりゃ、神の座す本拠にだよ? モンスター連れ込んだ阿呆が居たら眷属としちゃ見逃せないよね? 

 

 思い出す限りではロキ・ファミリアの本拠の門番はヒューマンとドワーフであり獣人では無かった。道中もすれ違った団員は何人か居た記憶はあるがどの人物も獣人以外の種族。

 ティオナ、ティオネ、アイズ、レフィーヤはそれぞれアマゾネス×2、ヒューマン、エルフと獣人はいなかったと……。

 

 背筋がゾワッとしたわ。これ見つかってたらヘスティア・ファミリア巻き込んでかなりのトラブルになってただろ。何気なくキューイ連れ歩いてたけど今度からはもっと慎重に行動しなきゃじゃん。

 

 つまりロキの態度が急変したのは俺がモンスター(キューイ)を連れ込んだ事に気付いていてなんか理由付けして追い払う為のモノだったと……はぁ、道化を演じるってそういう。

 小包の方はロキの方のお小遣いが少し入れられてて、それで服買えと。

 

 ……まず俺の犯した失態は『モンスター(キューイ)を他ファミリアの敷地内に連れ込んだ事』これは準襲撃(テロ)行為であり殺されても文句は言えない程の行為だったと。

 ロキは許すが眷属が許さず殺されていた可能性は高い。

 それをその場で適当な理由を付けて追い払う事で眷属、ロキ・ファミリア所属の獣人が気付く前に俺を逃がしてくれた訳だ。しかもその場でロキの評価が著しく下がる可能性のある方法で、である。

 

 道化を演じるってそういう事なのか。自身の評判よりも子供を優先するって……はぁ、借り作っちゃったよ……。いや、これはアレか。ロキ・ファミリアの失態と帳消し……じゃないな。

 今回の謝罪が割とおざなりだったのは俺の失態を見逃す代わりに、おざなりな謝罪で済ましたって感じか。これでしっかりとした謝罪されてたら俺は完全にロキ・ファミリアに借りを作る形になってたし。

 

 ……後でまた謝りにいかんとなぁ。でも少し期間を置いておこう。 

 

 んで次に、こっちは割と考えてなかったと言うか。他のファミリアに訪ねていくのにぼろいローブ姿って言うのは少し考えた方が良いな。せめて本拠に保管してある豪奢なローブとまではいかずとも人に会う恰好ぐらいはしとけって事だろうなぁ。

 

 そう言えばモンスターって神に殺意抱くレベルで神が嫌いなんだっけ? キューイって割と人懐っこいから気にしてなかったけど、やっぱ他の神からすると……。

 

 いや、そう言えば前行った時は神ロキと引き合わされなかったっけ? そりゃモンスター連れてる奴を引き合わせるなんて警戒してする訳無いよなぁ。

 

 ……つか、キューイの扱い難しいなこれ。ロキ・ファミリアは割と黙っていてくれているし、特にその件で脅されるなんて事も無いけど他ファミリアはどうかわからんしな。

 

 とりあえず今度からキューイを連れ歩く時はもっと注意しなきゃ……。

 

 あ、小包の方の中身確認しなきゃ。手紙を見るに少しお金が入って……お金が入ってるだけにしては少し大きいような?

 

 

 

 

 

 えっと二万ヴァリスと……服?

 

 なんでゴスロリ風のドレスが入ってるんですかねぇ……え? なんかサイズぴったりなんだけどこれっ!?

 

 何時の間にサイズを測りやが……まさか、酒場での強姦紛いのセクハラの時に? 神様ハイスペック過ぎじゃない?




 すまぬすまぬ、ロキファミリアアンチじゃないてす。
 ロキの名誉挽回しなくてはと慌てて書き上げました。

 (キューイが)何でもしますんで、許してください。
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