魔銃使いは迷宮を駆ける 作:魔法少女()
大量の冒険者、冒険者……冒険者。
鎧姿、軽装のローブ、ガントレットにメタルブーツ。大剣に小剣、戦斧に戦槌、大盾に魔法用の触媒であるオーブが付いたロッド、スタッフ……どれもこれも冒険者の身に着ける物はやはり美しさも装飾も施されていてかっこいいな。ファンタジーと言えばと言う装備で満ち溢れている。
ダンジョン一階層、それもダンジョン入口はやはり冒険者が多量に詰る、詰る……いや、本当に多いな。と言うかおかしいな、この時間帯はダンジョン帰りの時間からずれてるはずなんだが。
「……皆、良い装備してるなぁ」
羨ましげな視線を向けるベル君。そりゃあ駆け出し装備である駆け出し用ナイフと駆け出し用のライトメイルを装備してるベル君からすりゃ羨ましい限りなんだろう。
俺からすると防具はあれば良いな程度……マジック・シールドがある所為でなぁ。
マジック・シールドで防げない攻撃=防具次第で助かるとは思えんし。そもそもそんな強さのモンスターと戦うこと自体が間違いだって時点でねぇ。逆にマジック・シールドで防げる場合は防具ってあんまりな。
ロキがくれた2万ヴァリスはとりあえず最低限の防具に回そうかとも思ったが衣類に回すように受け取った物を防具に回すのはと悩んだ末に言い訳がましいが普通のローブを買った。衣類としても使えるし良いよね? 可愛い服? 着飾るよりももっと優先すべき事があるでしょ……。後、長杖も買った。今度は金属製でそう折れない奴。でもミノタウロスクラス相手なら簡単に折れそうな気はする。
特殊な防御効果は何一つ無い一般的ローブを買った訳だが、なんか知らんが魔法が付与された防具とか言うのもあった。但し、目ん玉飛び出るんじゃないかってぐらい高かった。なんか桁が4つほど違ったし……。
あ? ゴスロリ風のドレス? 売り飛ばそうかとも考えたがやめといた。一応、神ロキからの贈り物だし? ただ、袖を通すことはないかなって……。
「まあ、いずれベルならあれぐらいの装備できますよ」
そう言いながらベルに背負われた俺は呟く。
なんでベルに背負われてるかって? 今日も今日とてマインドダウン……マジかぁ。しかも半日程度でぶっ倒れると言う不甲斐無さ。と言うか最近ベル君が頑張りまくってて焦りで俺の注意が疎かになってるっぽい。本当にどうにかしないといずれ痛い目を見るんだが……はぁ。
んで、この冒険者の人混みよ。一階層からバベルの地下へと上がる為の螺旋階段に人が沢山居る……と言うか、殆どガネーシャ・ファミリアじゃね? 階段を上がりつつベルに背負われながら観察していれば、大掛かりな木箱……なんか不自然だなありゃ。上面と下面は金属製で側面に木の板が取り付けられた大きな箱を地上へと大掛かりな荷揚げ用の装置を使って引き揚げてる。
確かロキ・ファミリアみたいな大きなファミリアが大規模遠征で地下深くまで潜って大量の魔石やドロップアイテムを持ち帰った時に使うダンジョン内用の荷車をそのまま地上に引っ張り上げる装置だったはずだ。エイナさんの講義で聞いた気がする。ただ、今回引き上げてるのはなんk――おいあの箱中から唸り声がすんぞ。何入ってんだあれ。
「あー、そろそろモンスターフィリアの時期かぁ」「一年はあっという間だなぁ」「今年もランクアップできなかったぜ」「ははは、慌てると碌な事は無いぞ。ゆっくりでいいんだ。神だって言ってるだろ?」「そうかぁ……二つ名欲しいよなぁ」「
うぎゃあぁぁぁぁぁあっ!?!? やめろっ!? 背中がむず痒くなる二つ名をあげるなっ!!
なんだこの世界、そんな二つ名をかっこいいとかマジやめろっ!! 背中の肉が捥げ落ちるまで掻き毟りたくなるわっ!!
「いいなぁ、僕も二つ名欲しいなぁ……」
……あぁ、うん、その……ベル君も欲しがっちゃうかぁ……。
徐々に見えてくる空に目を細めつつベルの背から降りて歩き出す。
「今日もすいません」
「仕方ないよ、マインドダウンばっかりはさ……僕の方もごめん。ミリアの方に何匹も行かせちゃって」
ベル一人で五匹のモンスターの足止めが出来ても、それ以上の数で来られれば当然抜けるのが何匹も居る。近接戦がさっぱりできない俺は何とかピストル・マジックで対応するんだが……やっぱ数が来られると対応が追いつかない。
詠唱が『ファイア』の一単語だけとはいえ連続で唱えるのが割ときつい。喉が痛くなってくるしどうしても狙いを定める時間と言うのも必要だ。しかもモンスターも馬鹿じゃないから俺の魔法の特性を理解した個体なんかはジグザグに蛇行して接近を試みてくるし……。
「そこのお前、止まれ」
「え?」
うん? なんだ……声をかけられた?
声をかけて来た方向を見るとガネーシャ・ファミリア特有の仮面を付けた男性が仁王立ちしていた。神威は感じないからガネーシャ・ファミリア団員だろう。どうし……うん? こいつの耳……ヒューマンじゃない。
……
「……ミリア・ノースリスだな?」
うそん、何で名前知ってんのっ!? 俺って実は有名人……照れるなぁ、じゃない。ふざけてる場合でもなんでもない。今もキューイは服の中で……あ、これ昼寝してるわ。
「神ガネーシャから話がある。ついてきて貰おうか」
「ミリア、何かしたの?」
「…………こっ心当りは……あったり……無かったり……」
逃げる? いや無理だろ、ガネーシャ・ファミリアって規模が段違いだし。人数だけで言えばオラリオ最大なんでしょ? ヤバイよ……どうする?
「危害を加える積りは無い。ただ話があるだけだ。神ヘスティアへ話は通してある」
ヘスティア様に? ……そう言えばガネーシャ・ファミリアのパーティに行ったんだっけか? それとなんか関係がある? と言うかヘスティア様居なくなってもう二日目……うーん……。
「私一人が同行すれば良いですか?」
「あぁ、神ガネーシャが話を通したがっているのはミリア・ノースリス一人だ。もう一人、ベル・クラネルに関しては特に指定は無かった」
じゃあ俺一人同行すりゃ良いか。ヘスティア様の名前も出してたしなぁ……。
「ベル、申し訳ないのですが私は今からガネーシャ・ファミリアの主神と会ってくるので一人で……帰るのはまだ早かったですし、ダンジョンに潜るのが良いでしょう」
今日は俺が早々にマインドダウンしちまって早めに切り上げる事になったし、ベルとしては消化不良だろうしね。
「でも……」
「私は大丈夫ですよ。ヘスティア様の名を出している以上変な事はされないでしょう」
よもやこんな昼間っから堂々と神の名を騙ってまで変な事はされないだろうしね。噂に聞く神ガネーシャってのは……まぁ、控えめに言って変わった神様って話ばかりで、特にあくどい噂は聞かないし。ファミリア総評でもガネーシャ・ファミリアは人気の高いファミリアだ。
流石に名を落とす真似はしまい……しないよね?
……………………あぁ、変わった神ってそう言う。
「すまないな、唐突に呼び出してしまって……ここがガネーシャ・ファミリアの本拠だ、入り難ければこの仮面を付けると良い。少しは楽になる」
もしかして、もしかしなくてもなんだけどさ。ガネーシャ・ファミリアの団員が全員仮面つけて行動してるのってさ……この本拠に入る時に恥ずかしいからなんじゃね?
そんな考えが脳裏に過りそうなガネーシャ・ファミリアの本拠……アイアムガネーシャと言うらしい。見た目? 神ガネーシャが胡坐かいてる。なお入口は股間部分。股間部分っ!?
マジで? アソコから入らなきゃいかんの? いや、臀部から入れとか言われても困るし、
つか人の形をした建物を住居にするってちょっと……その……ハイセンスだなって。
手渡されたガネーシャ・ファミリアの団員が身に着けているのと同様の仮面を無言で受け取って装着する。ちょっと大き目だがまぁ顔隠すだけなら十分だろう。
「では行くぞ……俯くと目立つから顔を上げておくと良い。堂々としていれば大丈夫だ」
俺を案内してくれているガネーシャ・ファミリアの団員さん……すっごい気を使ってくれてる。と言うかこの人もあの本拠に思う所があるのか……門番代わりに股間の左右に人が立ってる。うん、その……門番の人大変そうだなって……。
外観はアレだったが。中はすっごい普通……と言うか何? 凄く
過度に華美になり過ぎず、かといって貧相さは一切感じさせない、それでいて足を踏み入れた者に圧迫感を与える事も無い落ち着いた雰囲気の調度品が等間隔に並べられた廊下。
一つ気になる事と言えば廊下に飾られた絵画が全て『神ガネーシャ』を描いた物であると言う部分だろうか? それ以外の部分はパッと見で凄く良い感じだ。
そんな廊下をガネーシャ・ファミリアの犬人の団員に先導されつつ観察していたら、目的地に到着したっぽい?
「入れ」
割とぶっきらぼうに言われた言葉に首を傾げつつ、部屋の中に入ると殺風景な大部屋があった。廊下の品の良い調度品の数々からは一変した雰囲気に思わず足を止める。
「あの、ここは?」
神ガネーシャが居る訳でも無いみたいだし……と言うか殺風景ではあっても
なんか檻が置いてあるんだが? と言っても殺風景な大部屋の中央、テーブルの上に小動物を入れておけそうな檻が一つ……なぁにここ?
「ミリア・ノースリス。その檻にお前が連れているワイバーンを入れてくれ」
「あ、はい」
あー、キューイ用の檻かぁ……あぁ……あ? いや、待て、おかしいだろ。なんで俺がワイバーン連れてるって知ってんの?
「安心しろ、危害は加えない」
…………。うんとね、何が何だかわからん。何でキューイの事を知られてんのか。どういうことだよ。
とりあえず言われた通りに服の中で居眠りこいてるキューイを檻の中に入れる。入れ終わった辺りで犬人の人が南京錠を掛けた。マジかぁ……人質にとられた?
「この鍵は渡しておく。ガネーシャ様と話す間は開けないで欲しい」
……え? 何それ、キューイを入れた檻を開けれない様に南京錠を掛けて、その南京錠の鍵を俺に渡してきた。
「言ったはずだ、危害を加える積りは無いと。ガネーシャ様を呼んでくる。鍵を開けずに待っていてくれ」
そう言うと犬人の人は部屋を出て行く。入れ替わりに二人のガネーシャ・ファミリアの団員が入ってきた。仮面を付けていて解り辛いが興味津々といった様子で遠巻きにキューイを眺めているっぽい?
何が起きてんのこれ? キューイの事で呼び出されたと思うんだよね。多分、でもなんか問答無用で襲い掛かってくるわけでもないし拘束される訳でも無い。いや、入口の両脇を固めたガネーシャ・ファミリアの団員からして一応拘束に近い状態と言えるが監禁と言う程厳重でもない。どういう事なんだこりゃ?
「ミリア・ノースリスだな?」
「はい、ヘスティア・ファミリア、神ヘスティアの眷属、ミリア・ノースリスです」
目の前の偉丈夫を見上げながら半口をあけて惚けてしまった。うん、その、本拠名が『
「俺がガネーシャだっ!!」
うるせぇ。至近距離で叫ばなくてもわかる……いや、一応神様相手だしアレか。神ガネーシャは興味深そうに檻に入れられたキューイを見てから大業に頷く。
「うむ。ヘスティアから話は聞いていたが、神に害意を抱かぬモンスターか……」
うん? ヘスティア様から話聞いてた?
「えっと? ヘスティア様が?」
「うむ、あぁ、そう言えば一筆頼んだのであったな。アレを持ってきてくれ」
神ガネーシャが団員に指示を出すと即座に団員が何かを取り出して神ガネーシャに手渡した。手紙?
「ヘスティアに一筆頼んだのだ。わけあって用があったのだがそなたはヘスティアの眷属。モンスターフィリアで忙しい今、余計なトラブルは避けたかったのだ」
モンスターフィリア……?
ガネーシャ・ファミリアとギルドが主催のお祭りで、確かガネーシャ・ファミリアの持つモンスターのテイム技術を自慢する為のモノとか聞いたんだが。
神ガネーシャは手紙を此方に差し出してくる。ガネーシャの言が正しいのであればそれはヘスティア様から一筆したためて貰ったものらしいが……果たして。
ミリア君へ
すまない。キューイ君についてガネーシャに問い詰められて答えてしまった。君のステイタス全てではなくキューイはミリア君の魔法で呼び出された特殊なモンスターである事だけではあるけど、勝手に教えた事については謝る。本当にごめん。
それで僕もついさっきまで知らなかったんだけどモンスターを連れ歩くのには許可証が必要だったみたいで、このままだと重罪を犯したと言う事で罰金か罰則が科せられる事になるんだけど、ガネーシャが協力してくれるなら助けてくれると申し出てくれたんだ。
詳しくはガネーシャに聞いてくれ。
追記:ガネーシャは変わってるけど悪い奴じゃないから信用しても大丈夫だよ。
帰れなくてごめん。寂しがってるんだよね?
ヘスティアより
ねぇ、一つ良い? ガネーシャが変わってはいても良い神ってのは別に良いよ。でもさ、寂しがってるとか決めつけるってどういう……。
……もしかしてなんだけど、ファルナ越しに俺の感情が読まれてる? まさかぁ……まさか?
つか、何時ばれた? 今回の件ってかなり用意周到に準備してたっぽいんだけど……何時からガネーシャ・ファミリアは俺がキューイを連れている事に気付いてたんだ?
聞いたら答えてくれるかね? つかキューイ、てめぇは何時まで寝てんだ……。