魔銃使いは迷宮を駆ける   作:魔法少女()

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第三話

 ふむ。ベルくんが優しすぎてマジ天使……と思っていた時期がありました。

 

 『ファミリア』に誘われ。

 

 ベル君に手を引かれ。

 

 ギルドでドロップアイテム……ダンジョンのゴブリンが消えて石ころっぽい物をとやらを落としていた気がする。

 

 換金して1800ヴァリスどうのとか、ハーフエルフのお姉さんがすっごく綺麗で惚れそうになったりとかしたが。

 

 ここまで見てきて思ったのは、この世界、俺が未プレイのMMORPGなんかじゃ? とか思った。

 

 ハックアンドスラッシュ? どっちかって言うとローグライク? かと思ったけどどうもダンジョンは固定マップっぽい? じゃあハクスラかな?

 

 まぁ、今はそんな考察はどうでも良いんだ。

 

 ギルドで換金が終わった後、ベル君に手を引かれて連れて行かれている訳だけど……

 

 少し迷いながらもベル君はしっかりした足取りで住宅街っぽい所をずんずん進んでいく。

 

 こうしてみると結構背中大きく見えるなー……俺が小さいだけか……

 

 とか思ってたんだが、なんか路地裏に入り込んでいくじゃないか……

 

 あれ? なんか人気が……とか思ってたらベル君が目指す先に日が暮れて薄暗くなった路地裏にある大きな建物まで連れてこられた。

 

 ……あるぇ? なんか、なんというか……薄暗くて解り辛いが……廃墟っぽくね? 明りついてネェんだけど?

 

 …………幼女を連れ込んでナニする気なんですかね? 孕まされちゃう? ちょっとマジ勘弁してくれよぉ(懇願)

 

 ま、無いと思うけどね。

 

 

 

 

 

 【ヘスティア・ファミリア】本拠の教会に近づくにつれ、ベルは不安感を覚えた。

 

 神ヘスティアは良心的な神であったのだが、眷属がベル以外にまったくできなかった。

 理由は単純で本拠である教会、それがどうみても廃墟にしか見えない。

 眷属になっても良いかなと思った人々は尽くその廃教会を見てヘスティアの眷属になる事を拒んだのだ。

 

 もしかして、ミリアもこの荒れた教会を見て考えを改めるかもしれない。そう考えてベルは恐る恐るミリアを振り返った。

 

「あの……ミリア、ここが僕達の本拠なんだけど……」

「……えぇ、まぁ、その。明りも点いてない廃墟に連れ込んで何をする気なのか気になる……とだけ言っておくわ」

「あっ…………」

 

 振り返ったミリアは苦笑を浮かべながら呟いた。

 

 その呟きにベルは今の状況を客観的に見てみると、日も暮れて街灯の少ない薄暗い路地を抜けて幼い女の子を人気の無い廃教会に連れ込もうとしている不審人物……それが自分であると気付いて両手をわたわたさせて否定する。

 

「わわっ、ごめん、そんなつもりじゃなくて! ここが僕達【ヘスティア・ファミリア】の本拠なんだっ!」

「いえ、此方こそすいません。別に疑っている訳ではないですね……この廃教会、良く見れば趣が……あるような…………あります……ある? ……暗くて見づらいのでアレなだけできっと昼間見れば趣がですね……」

 

 本拠である廃教会をなんとかフォローしようとしているが、徐々に声が小さくなり、ついには黙ってしまった。

 

「……えっと……とりあえず入る?」

「そうしますね」

 

 扉を潜り廃教会の中へとミリアを導けば、明かりの無い廃教会の内部が暗くベルとミリアを迎え入れた。

 

 廃教会の入口から真っ直ぐ進む穴が開き擦り切れた赤いカーペット、その両脇に置かれたささくれ立った木製の安っぽい長椅子、そして正面にあるステンドグラスは割れて隙間風がぴゅーぴゅーと吹いており、主祭壇は朽ち果てて隅の方へ寄せられており、祭壇に置かれた十字架らしきモノは砕けて半端な神聖さを残すのみ。

 

 かつては信仰する神への祈りを捧げる場であったこの教会は、神が地上に降りて来た事で無用の長物となり、それ以降は維持管理だけがされるまま時の流れに取り残され、ついに管理する者も居なくなり荒れ果てたソレを神ヘファイストスに拾い上げられ、神ヘスティアへと渡った。

 

 元々は相応に美しいはずだったその場所は哀愁を漂わせるだけの薄暗い廃墟の様な状態になっている。

 

「……すいません、ちょっとフォローしきれないです」

「あ、あはは……」

 

 凄まじく微妙そうな表情を浮かべたミリアは天井を見上げてぽつりと呟いた。

 

「……雨漏りはしてそうな感じですが。天井の造りはかなりしっかりしてるみたいですね。最低限の強度は確保されてると……突然天井が崩れる事は無さそうですが……」

「あー、ミリア、僕達の本拠は此処なんだけど……実際に寝泊まりしてるのは地下室なんだ」

「………………地下室?」

 

 ミリアが怪訝そうな表情を浮かべてから、警戒心を露わにしてベルから一歩距離をとった。

 

「いえ、ベルさんが()()()()()をしない人だと言うのは分るのですが……女性を地下室に連れ込もうとするのはいかがなものかと」

「へ? あっ!? 違うよッ!! えっと……そうだ、ミリアはここで待っててっ!! 僕、神様を連れてくるからっ!!」

「え? あっ」

 

 慌ててミリアの懸念を解消すべく、ベルは隠し扉を開けて中に飛び込んで行った。

 

 

 

 

 

 しまったな。人気の無い、明かりも無い廃教会。プラスアルファで地下室と、薄い本的展開待ったなしなシチュエーションに思わず警戒してしたら、ベル君が凄く慌ただしく扉を開けて地下へと続く階段の中へと消えて行ってしまった……

 

 薄暗い廃教会の中、一人で取り残されるのは若干心細いのだが……

 

 ふぅむ……しかしここは不思議な場所だな。さっきまで隠れてた月が雲から顔を出したのかステンドグラスが淡く光だし、朽ち掛けた十字架を明るく照らしている。

 それ以外の場所には闇が淀み、些か恐怖を抱きそうな……気が?

 ホラゲーに有りそうなシチュエーション。なんかでそう()

 

 そんな事を思っていると、月が再度雲に隠れたのかステンドグラスから差し込む光すらも薄くなくなり、薄暗いから完全に暗いと言う形容できるような明るさになってしまった……何か光源になるもの無いかな……ちょっぴりチビリそう。

 

「キミ、そこで何をしているんだい?」

 

 ッ!?

 

 唐突に後ろから声をかけられ、思わずバッと振り返れば、十歳ぐらいの女の子が立っていた。

 扉の外から入ってくる微かな明るさのおかげでシルエットはわかるが、顔は全く見えず、身長的に十歳ぐらいの女の子だと言う事しか分らない。

 

 ねぇ、待って。なんかあの子のシルエットおかしくない? 薄暗くて良く見えないんだけど、胸の辺りのシルエット歪んでね? 腕を広げ……いや、無いな。なんか胸に着いてるぞアレ。

 

 いつの間にか気配も無く入口に立っていた女の子に思わずたじろいで一歩後ろに下がる。

 

「ふむふむ? 君、脅えているのかい? 大丈夫さ。ボクは何もしないよ。親御さんはどうしたんだい? もしかして迷子なのかな?」

 

 非常に優しく、諭す様な声で話しかけてくるその女の子は、妙な雰囲気を纏っていた。

 

 具体的に言うとベルと手を繋いで街中を歩いている時に『幼女可愛いよ(ハァハァ)』と鼻息も荒く血走った目を向けてきた男集団に感じたあの感じ……そう、これは……悪寒っ!?

 

 ……あれ? ヤバくね? 今の自分、普通にこの女の子より身長低いんだぜ? 抵抗できない? できなくない?

 

「えと……其方こそこんな所で何を……」

「うん? ボクかい? そりゃボクは此処に住んでいるからね」

 

 こんな所に住んでいる……まさか……へんt……ッ!?

 

 月明かりが再度廃教会の中を照らしだし、ついにその女の子の全容が明らかになった。

 

 黒い髪を白いリボンでツインテールにしている。服装は胸元の開いたホールネックの白いワンピースに左二の腕から胸の下を通して体を巻き付けるように青いリボンを結んでいる。

 小首を傾げながら、紙袋を手に持った幼い容姿の小学生ぐらいの女の子。

 

 ちょっとまって。何あの子? 胸でかすぎね? 化け物? いや、にしてはすっごい可愛い。

 

「君、大丈夫かい? なんだか混乱している様子だけど」

「え? あぁ……その……」

 

 その神聖な雰囲気を持ったロリ巨乳ちゃんの優しげな声色にどもっていると、ドタバタと足音がして地下へと降りていたベル君が扉から顔を見せた。

 

 ベル君ナイスゥ。

 

「ごめんミリア、神様ちょっと出かけてるみたいなんだ。それで「あぁ、ベル君。お帰り」神様っ!? 何処に行ってたんですか」

「ふふん、君が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()記念に今日の夕食は豪華にしようと思ってね。買い物に行ってたんだ……ちょっと想定外の事があって遅れたけど……ロキの奴……今度会ったら只じゃおかないぞ……」

 

 どうやらこの二人は知り合いらしい……待って、このロリ巨乳ちゃん神様なの? マジかよ……(驚愕)

 ……あ、でも人間離れした美しさや可愛さを持ってるし、神様って言われても納得できるわ。

 神聖な雰囲気もするし……っておいまて、さっき感じた悪寒だと思ったあの感覚、アレって神聖な雰囲気の事だったのかっ!?

 ……あれ? じゃあ道中に居た鼻息の荒い血走った眼をした変態から感じたあれも……神聖な雰囲気?

 ……考えるのをよそう。碌でもない事にしかならない気がしてならないのだ。

 

「ところでベル君、この子は君の知り合いみたいだけど……どうしたんだい? 君、オラリオに知り合いは居ないって言ってなかったっけ?」

「あぁ、ミリアとは今日ダンジョンで出会って……えっと……危機的状況を……助けて……」

 

 ベル君、もっと自信を持って良いよ。確かに助けられたし。かっこ悪い所もあったけど、ぶっちゃけあの状況で助けに入ってくれた君には凄く感謝してる。

 

「それで、困っているみたいだったからファミリアに勧誘したんですよ。ほら、神様も眷属をどんどん作って大きなファミリアにしたいって言ってたじゃないですか」

「……なんだって?」

 

 信じられない、そんな表情を浮かべた神様は、ベル君と俺を交互に何度も見てから……バッとベルの両手をとった。

 

「流石ベル君だっ!! ボクが一人目に選んだ眷属なだけの事はあるよっ!!」

「はいっ神様っ!!」

「この調子で一日一人ずつ眷属を増やしていけばロキの所なんて目じゃないよっ!!」

「はいっ!! この調子でどんどん眷属を増やして、いつの日にか必ず有名なファミリアになりましょうっ!!」

「ベル君っ!!」

「神様っ!!」

 

 ひしっと二人して抱きつきあったその光景は、幼い容姿の妹と、背伸びした少年の微笑ましい光景にしか見えなかった。

 いや待って、なんか二人のテンションがおかしいんだけど……お?

 

 そんな事を思っていると、神様が此方を向いた。

 

「そうだ。自己紹介がまだだったね。ボクはヘスティア、神ヘスティアさ。こっちはボクの眷属のベル君。ほらベル君も自己紹介を」

「あっあのっ、神様、いったん離れて貰って良いですか……」

「うん? あぁ、わかったけど……ベル君、顔真っ赤だよ? 体調でも悪いのかい?」

 

 今更だけど、あのすごいおっぱいがベル君の体に押し当てられて凄い事になってるなぁ……ベル君もそれに気付いたのか顔真っ赤だし。可愛いなベル君。

 

「いえっ、そういう訳ではなくて……あぁ、えっと。ボクはベル・クラネルって言います……って、僕はもうミリアとは自己紹介してあったよね」

「そうですね。ベルさん。ヘスティア様」

「様なんて呼ばないでおくれよ。普通に呼び捨てで構わないよ」

 

 気さくにそう言ってくれるのは嬉しいのだが、どうにも神聖な雰囲気を纏った彼女を呼び捨てにする気には慣れない。

 

「はぁ……えっと、私はミリア・ノースリスと言います」

「よろしくミリア」

「…………」

 

 改めて自己紹介をすれば、嬉しそうに微笑みを浮かべてベル君が返してくれたのだが……ヘスティア様は何故か眉根を寄せて思案顔を浮かべていた。

 

「神様?」

「へ? あぁ、何でも無いよ。よろしくミリア君。……ミリア君も何か事情があるかもだしね」

 

 うん? 何か小声で言ってたが……なんと言ってたんだ? 後半、全く聞き取れなかったんだが……

 

「それで、ミリア君は【ヘスティア・ファミリア】に入団したいんだよね?」

「はい。そうなりますね」

「よしわかった、歓迎するよミリアくん。君はボクの二人目の眷属だ」

 

 柔らかな笑みを浮かべて迎え入れてくれると言うヘスティアの言葉に思わず首を傾げた。

 

「入団試験みたいなモノは無いので?」

「へ?」「え?」

 

 家族(ファミリア)に入団する場合は、最低限デスキルレートの確認ぐらいはするだろうし、大体の所では『入団試験』と称して団員と試合(マッチ)させてその様子で入団させるか決める等していたし。

 ミリカンだと連合(クラン)家族(ファミリア)なんかはランキングを競い合うガチ以外は存在を許されなかったしなぁ……お気軽クラン? まったりファミリア? 1か月毎に行われるランキング戦で100位以内に入れないクランとファミリアは消される運命だから。サーバーを圧迫しない為にね、ショウガナイネ。

 

 だから基本的にミリカンではクランやファミリアに所属出来る人自体少なかった。かく言う俺も無所属でプレイし続けたからね。

 


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