魔銃使いは迷宮を駆ける   作:魔法少女()

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第五十五話

 ベルと共にギルドへとエイナさんに会いに来た訳だが。受付にエイナさんの姿が見えずにベルと二人で首を傾げた。

 

「エイナさん居ないね」

「みたいね。何処か──あ、居た」

 

 見つけたのは窓際の席。対面に金髪の誰かが座っているのが見えた。

 エイナさんも此方に気付いた、と言うよりベルに気付いて声を出してきたのでとりあえず手を上げて存在をアピールする。俺も居るよー。

 

「ベル君?」

「ん?」

 

 ベルが振り向いて漸く気付いた様子でエイナさんの方を向いて──エイナさんの対面に座っていた金髪の女性が此方を振り向いた。と言うか知ってる顔だった。アイズ・ヴァレンシュタインである。

 エイナさんと何を話してたんだ?

 

 アイズ・ヴァレンシュタインの瞳が僅かに見開かれる。ベルの方を確認すれば目を真ん丸にして驚いてる。

 

「ひっ」

 

 ベル君が妙な声を上げて怯み、そのまま踵を返して逃げようと──おい何逃げようとしてんだよ。

 慌ててベルの腰のベルトを掴んで止める。

 

「ベル、逃げちゃ──っと」

 

 うわ、力強ぇ。止めようとベルトを掴んだのは良いが、そのまま止められずに引っ張られてしまう。

 ベルの方が基礎アビリティ高いもんね、仕方ないね。とやめる訳にもいかない。前にアイズさんに『ベルが逃げようとしたら止める』って約束しちまったし。

 

「ちょっとベル、逃げるのは無しで……あぁもう」

 

 強引に俺を引き摺ってでも逃げようとしてるみたいだ。と言うか俺の声が完全に届いてないっぽい。逃げるな逃げるな。しゃーない、足引っ掛けてこけさせるか。

 

「うわっ!?」

 

 足を絡ませる様に引っ掛け──上手い事ベルがすっこけて、そのまま前転して転がって入口に向かって進んでいきやがった。何其の身のこなし、スゲェ器用な事するなぁ。

 って感心してる場合じゃねぇ、あのまま逃げる積りだぞ。

 

 慌ててベルの後を追おうとして、頭の上を何かが通過して行ったのに気付いた。と言うかアイズ・ヴァレンシュタインだった。天井すれすれを跳躍していった彼女がベルの進行方向にしゅたっと着地して──あ、ヤベェ。

 

 前転した勢いのまま、起き上がろうと前に進みつつ膝立ちして進もうとしたベル。目の前に降り立ったアイズ・ヴァレンシュタインはベルに背を向けており──ベルが勢い良くアイズ・ヴァレンシュタインに突っ込んで行った。

 

「んぐっ!?」

 

 ……尻にである。

 

 擬音で表すならぽふっだろうか? ともかく、アイズ・ヴァレンシュタインの尻に顔面から突っ込んで行ってしまったベル君。周りにはギルドの目があり──周りの冒険者の視線がベルに突き刺さった。

 

「おい、アイツ剣姫の尻に顔から突っ込んだぞ」「アイツ死んだな」「不運な奴だな。いや幸運な奴か」「どっちにせよ命は無いだろ」

 

 おぉう……俺が足を引っ掛けたばかりにベルの命の火が潰えそうになっている……。冗談を言っている場合では無い。

 ベルは顔を引き剥がしてから、目の前に現れた柔らかい壁に目を白黒させている。

 

「え? 何これ?」

「……大丈夫?」

「ひぇっ!? ヴァレンシュタインさんっ!?」

 

 目の前の柔らかなそれがアイズさんの臀部だと気付いたのだろうベルの顔が一瞬で真っ青になる。急いで二人の間に割り込んだ。

 

「アイズさんお久振りですっ! 元気でしたかっ!」

 

 剣を抜く前に挨拶。挨拶超大事、良いかい? まだ剣を抜いちゃだめだ。いきなりお尻に顔から突っ込んでこられて怒るのはわかるけど落ち着いて話し合おう。と言うか土下座するからマジ赦して。

 

「ん? ミリア、久しぶり。元気だよ」

「ですよねっ! 今のベルの行動はアレですよ、私の所為で──ごめんなさいっ!」

 

 後ろでエイナさんがベルの説教をしてる。うん、とりあえずギルドでバッサリは無いよね?

 

「……? えっと、ミリア? どうしたの?」

 

 ……? え? 俺今頭下げてんだけど、どうしたのって反応おかしくね?

 

「えっと……アイズさん?」

「何?」

「……怒って、無い?」

「…………? 何が?」

 

 えぇ? 怒ってない? お尻に顔から突っ込まれたんだよ? 普通怒るよね?

 

「あの、今ベルがアイズさんの……臀部にですね」

「……あ」

 

 はっとなった様なアイズさん。やっぱ怒ってる?

 

「怪我、させちゃったかな……?」

 

 不安そうな瞳で此方を窺うアイズさん。うん、その反応はおかしい。

 

 

 

 

 

 席に座るアイズさんの対面に座る俺。そして机の横に直立不動で背筋を伸ばして立つベル。

 

 なんつーかな。尻に顔から突っ込まれた反応が『怪我させてないかな』とか、もうなんとも言えないと言うか……女性として動じないってのはなぁ。もしかしてアイズさんも俺と同じで性転換した感じ? 無いか。

 

「このまえ、ダンジョンでオークに襲われてたよね」

 

 アイズさんの切り出した話題は本題らしい。はっきり言ってアレだ、さっきの尻にぶつかった件はマジで気にしていないらしい。この人大丈夫かよ。

 

 と言うかオーク? リリに嵌められた時の話か? あの時、見知らぬ冒険者がオークを片付けてくれたって言ってたがまさか?

 

「あ、はい。どうしてそれを」

「これ、君が居なくなった後に落ちてたから、返そうと思って」

 

 ……ベルってさ、なんかこう、持ってるよね。運命の赤い糸的な物をさ。偶然通りかかったのがアイズさんってねぇ。

 

 アイズさんが差し出したのはベルが無くしたと言っていた、エイナさんからの贈り物のグリーンサポータである。

 

「あっ、それじゃああの時助けてくれたのは……」

 

 見つめ合う二人。アイズさんの方は凄く真剣そうな表情であり、ベルの方は戸惑いの色が浮かぶ。二人だけの空間であり、俺はお邪魔虫と言う奴だろう。空気に成りすますのだ。

 

「ずっと、謝りたくて」

「え?」

「私が逃がしたミノタウロスの所為で、君の事をいっぱい傷付けたから。ごめんなさい」

 

 立ち上がり、深々と頭を下げるアイズさん。本当に申し訳ないと思っているらしい行動。ダンジョン内に潜っているのは本人の意思であり、あのトラブルに関してもアイズさんの不手際はあれど、謝る必要は何処にも無いってのが一般的なんだがなぁ。

 

「ちっ違いますっ! ヴァレンシュタインさんは何も悪くなくて、むしろ助けてもらった命の恩人で、と言うか謝らなければいけないのはお礼も言わずに散々逃げ回った僕の方で、ごめんなさいっ!」

 

 ……うぅん、これはなぁ。とりあえずベルの足を叩いておく。

 

「ミリア?」

「ベル、まだお礼言ってないでしょ。さきにそっちを言うべきじゃない?」

「あっ、そうだ。アイズさん、助けてくれてありがとうございましたっ!」

 

 驚いた表情のまま固まっていたアイズさん。少しの間頭を下げていたベルが不安から顔を上げ、互いの視線が交差した時に、アイズさんが微笑んだ。不安が解消され、緊張から解き放たれた様に柔らかな微笑みを浮かべたアイズさんの表情にベルが見惚れているのを見つつ、俺は何とも言えない。

 

 なんつーか、もやもやする様な、そんな感じ。

 

 

 

 

 

 アイズさんが帰るらしいので、ギルドを後にする事にした俺とベル。ギルドの入口から出た所でアイズさんが口を開いた。

 

「ダンジョン探索、頑張ってるんだね」

「え?」

「こんな短期間で十階層に辿り着いて、凄いね」

 

 おぉー。第一級冒険者の剣姫からのお褒めの言葉を頂いた。憧れの剣姫からのお褒めの言葉にベルも面食らってるし。同時に嬉しそうに口元が緩んでるけど、このままの速度じゃ追いつけないって焦りも混じってる。

 

「いえ、そんな事無いです……もっと強くならなくちゃいけないのに、まだまだで……ミリアが居なかったら何度も死んでたと思うし」

 

 そりゃこっちの台詞だ。ベルが居なきゃとっくの昔に死んでたよ俺は。

 

「戦い方も素人同然だし、目標にも全く手が届かなくて……」

 

 ナイフを握ってからそろそろ一ヶ月程。はっきり言って素人が素人なりにナイフ振り回す事しか出来てないとしか言えないし、現状は高いステイタス頼りの戦い方をしていると言える。それは俺も同様だ。

 俺は一応リューさんにアドバイス貰って魔法つかっちゃ居るが、実戦の戦い方はまだ全然教えて貰ってない。そう言う意味ではリューさんに実戦における魔法剣士の戦い方を教えて貰うぐらいが良いのだろうがなぁ。

 

「ほんと、ぜんぜんだめで……それで……その……」

 

 ベルがダメダメだって言うなら俺はどうなるんだって話だよ。まあ、ベルの言いたい事はわかるが。今のままじゃ目標のアイズさんに届くはずもない。それを追うのだから当然もっと強くなりたい訳で……。俺は何処までついていけるだろうか。

 

「戦い方を教えてくれる人、居ないの?」

「……はい」

「……ミリアは戦えるんじゃないの?」

 

 はい? アイズさんは一体何を言っているので?

 

「え、いや別に、魔法は使えますけど戦い方なんて全然知らないですよ」

「……? でも、ミノタウロスに一矢報いたんだよね?」

 

 えぇ? なんか過大評価されてるよ。ミノタウロスに一矢報いたって、俺はその事を覚えてないっての。

 

「あれは……偶然と言うかなんというか……ともかく、私がもし戦い方を教えられたとしても、魔法を前提とした物だけですから。ベルに近接戦を教えるなんてとてもできないですよ」

「そっか……」

 

 そうなんだよ。と言うか焦らせないでくれ。なんか過剰評価喰らってると凄い苦しくなるからさ……ベルの背中を必死に追いかけてるさ中なんだから。

 

「…………じゃあ、私が教えてあげようか?」

「へ?」

「え?」

 

 アイズさんが教える? 何を?

 

「えっと、何をですか?」

「……戦い方。君達に」

 

 俺も?

 

「良いんですか?」

「うん」

 

 ……第一級冒険者に戦い方の指南をしてもらえる? 普通なら考えられない様な物なんだが。だってロキファミリアの第一級冒険者だよ? 他ファミリアの眷属にわざわざ指南とか有り得んでしょ……いや、なんだかんだ天然入ってるっぽいアイズさんなら有りなのか?

 

 

 

 

 

 日の出前の明るい空の事を黎明だとか暁だとか曙だとかいうらしい。欠伸しつつもアイズさんとの待ち合わせ場所に辿り着けば、既にアイズさんが剣を素振りしていた。日の出前と言う時間帯であるにも関わらず、だいぶ早いお人だ。と言うかファミリアの仲間に黙って他ファミリアの異性と会うとか完全逢引じゃん。まぁ、(余計なの)がついてるけど。

 

「おはようございます」

「うん、おはよう」

 

 アイズさんと挨拶もそこそこに、ベルの方は期待で胸を膨らませている様子で目がきらきらしてる。

 そりゃ憧れの人からの手ほどきとなりゃねぇ。

 

「それで、ヴァレンシュタインさん」

「……アイズ」

「はい?」

「アイズで良いよ。皆、私の事をそう呼ぶから」

 

 あぁー。うん、憧れのあの人を名前呼び。恋する少年になんという仕打ちを……天然って怖いなぁ。狙ってやってるなら凄いよ。まぁ、反応からして本物の天然なんだけど。

 

「嫌?」

「っ、嫌じゃないですっ」

 

 ぶんぶんと首を振るベル君。まぁ俺は前からアイズさんって呼んでたけどね……。だから何だって話なんだが。なんかもやもやするわ。

 

「アイズ……さん、所で訓練って僕は何をすれば……」

 

 緊張して声が裏返ってるベル君だが、アイズさんは気にしてないっぽい? と言うか俺も戦闘方法を教えてくれるって話だが……アイズさんの魔法って確か付与魔法(エンチャント)だよな? 俺の魔法とは系統が違うけどどんな感じで戦い方を教えてくれる積りなんだろうか?

 最悪、ベル君だけでも鍛えて貰って、俺は見てるだけでも良いんだが。リューさんに頭下げて頼むし?

 

「……何をしようか?」

「へ?」

 

 え? ちょっと待って、天然だってのは前々からわかってたけど、其処もぉっ!?

 

「昨日から何をしようかずっと、何をしたらいいか考えていたんだけど」

 

 顎に手を当てて考え込み始めるアイズさん。ちらりとベルの武装を確認して──俺の方にも視線をくれた。武装確認っぽいね。

 

「君の武装はナイフなんだよね。蹴りや体術は使うの?」

「いえ」

「ミリアの方は剣と杖、後魔法?」

「いえ、剣を直接使う事は無いですね。魔法がメインで杖は牽制。剣は手に持ってるだけみたいな感じで」

「……? 剣は持ってるだけ?」

 

 あぁ、俺の戦い方って割と変らしいしなぁ。一度見せるか。

 

「『ピストル・マジック』、とまぁこんな感じで魔法を使う用の物でして。直接斬りかかったりとかはしないんですよ」

 

 右手に剣を持ち、剣に重ねあわせる様に魔法を使って右手にピストル持ってる感じで使う。左手で長杖を振り回して接近してくるモンスターを軽く牽制するぐらい。基本攻撃は魔法のみって感じで。

 

「ミリア、それ……魔法の触媒なの?」

「いえ、只の剣ですよ」

「………………」

 

 信じられないと言う表情のアイズさん。どうしたんだ?

 

「アイズさん、どうしたんですか?」

「……ミリア、今すぐ止めた方が良いよ」

「はい?」

 

 え? やめる? 何を?

 

「魔法の触媒じゃない只の剣なら、そんな風に魔力を通して使うと直ぐに壊れちゃう。それにそもそも触媒じゃない物を通して魔法を使うのは効率的じゃない……ってリヴェリアが言ってたから」

 

 ……え? どういう事?

 

「魔法、についてどれぐらい知ってる?」

「……先天性とか後天性とか、イメージを込めるとかですかね?」

「魔法の触媒については?」

「まったく」

 

 え、何? 触媒ってそんなに大事なの?

 

「……魔法の杖、触媒には種類があって、単純に魔力を増幅させる物。魔力操作の補助になる物の二種類。増幅させるものは単純に威力があがるんだけど、魔力操作の補助の方も威力があげられる」

 

 ふむふむ?

 

「操作補助する事で詠唱に込める想像をより深く、鮮明に描いて込められるからその分威力と精度が上がる……はず」

 

 はず?

 

「リヴェリアが詳しく言ってたんだけど……私の魔法は付与魔法(エンチャント)だから」

 

 あぁ、うん。よく分った。とりあえず今の剣で魔法使うと剣がぶっ壊れるかもしれないのか……へぇ、ふぅん……とりあえず分かった事は一つ。俺って本当に馬鹿だなぁ。

 

「剣が壊れるって本当なんですか?」

「ただの剣だとするなら、魔力を込め過ぎると爆ぜる……魔力暴発(イグニスファトゥス)したみたいに弾けるかも?」

「……そうですか」

 

 うひぃ……どんだけヤバイ橋渡ってたんだ俺は。

 

「後、威力も精度も落ちる。余計な物が混じるから、魔力操作の補助じゃなくて邪魔にもなるし」

 

 つまり、触媒でも無い剣に魔力を通すのは逆に邪魔する事になってて……つまり、威力が落ちてたって事か?

 

「そんな気はしませんでしたけど」

「ミリアは魔力制御が上手いのかも。でもそのまま続けるのは危ないからちゃんとした触媒を使った剣を用意した方が良いと思う」

「……ちなみに、そう言った剣っていくらぐらいします?」

 

 安くは無いよね。

 

「…………二千……いや、三千? ぐらい出せば買えると思う」

「それは、万ですか?」

「うん、三千万ヴァリス」

 

 あぁ、うん。無理。




 アニメ版でベル君がアイズさんの腰かお尻に顔から突っ込んでたのに、アイズさん怒りもしなかった。天然で済ませて良いもんなのかアレは……なんつーか、胆が据わってる?


 ミリアが行っていた『只の剣に魔法を込める』は実は良くない事。
→只の剣じゃなくてれっきとした触媒を用意すれば威力上げれるよーって出来るからこれでいいや。




①キューイの上に乗っての竜騎兵。
→キューイの性質上ダンジョン内での使用は絶望的。
 アポロンファミリアとの戦争遊戯中は活躍できそうだし、そっちで出そうと思った。


②インファントドラゴンをテイムして仲間に。
→インファントドラゴンはあくまで上層のレアモンスター。黒いゴライアスとガチンコ勝負できる訳も無い。肉盾としても厳しそう?
 使い方次第でなんとかなりそうな気もするし、ドラゴンテイマー名乗るならもう一匹ぐらいドラゴン連れてても良いかもしれないっていう。
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