魔銃使いは迷宮を駆ける   作:魔法少女()

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第八十話

 気怠さと鈍痛に意識がうっすらと覚醒していく。意識を覚醒させる要因、鈍い水底から耳を澄ましているかのようなぼやけた怒声が響いていた。ヴェルフの声、だと思う。

 うっすらと、鉛で出来ているかのような重たい瞼を必死に持ち上げてみれば、ぼやけた視界に映るのは布地の天井。罅割れた石材の天井でもなく、薄暗いダンジョンの洞窟の天井でもない。人工的な明りに照らされた木組みの骨組みに厚い布地が張られたテントの様な天井。

 口から漏れ出たのは呻き声。声にならない呻きを上げて手を上げようとするが、体にかかる薄い掛布団を押しのける事すらできない程に腕が重い。首を巡らそうにも少し動かしただけで激しい頭痛が襲い掛かってきた。

 

「ミリア?」

「ミリア様、大丈夫ですか」

 

 ベルの声と、リリの声。二人は無事なのか。此処は何処だろうか。

 

「ここは……?」

「ミリア君っ!」

 

 声だけではなく誰かが覆いかぶさる様に視界に現れた。心配するような色を宿した蒼い瞳、艶やかな黒いツインテールに髪飾り。ヘスティア様が目の前にいた。

 ……此処は地上? にしてはテントの中っていうのはおかしいはずだ。ダンジョンの中で違いない? いや、でもそれならヘスティア様が此処に居るのはおかしい訳で、でも地上ならわざわざテントで治療する必要はない様な気もする。此処は何処だ?

 

「ヘスティア様?」

「目が覚めたんだね。よかった」

 

 安堵した様な吐息を零したヘスティア様の横。ベルやヴェルフ、リリが此方を覗き込んでいるのが確認できた。皆、ちゃんと生きているみたいだ。

 ……キューイとヴァンは、確実に居ないが。呼び出そうと思えば呼び出せるとはいえなぁ。

 

「うっ、此処は? なんでヘスティア様が?」

 

 身を起こそうにも起こせない。体が鉛とすり替えられたのではないかと言う程に重く、腕を持ち上げる事すら出来ずにヘスティア様を見上げたまま質問すれば、答えが一つ一つ帰ってきた。

 

 ベル曰く、此処は十八階層の安全階層(セーフティーポイント)。ロキファミリアの野営地であり、ロキファミリアの厚意によって天幕の一つを借りている事。治療等も全てロキファミリアができうる限りは行ってくれた事、昼過ぎにはベルが目覚め、日暮れ頃にはリリとヴェルフが、最後に日が落ちてようやく俺が目覚めたとの事。

 んでヘスティア様がなんで此処に居るのかと言うと、冒険者依頼(クエスト)を発注して一緒に同行してきたらしい。一般的な恩恵を持たないヒューマン並みの身体能力しか持ち合わせていない神があの危険なダンジョンを突破出来た事に驚いたが、どうやら実力のある冒険者が同行してくれたらしい。

 あのリューさんも同行していたっぽいんだが、此処にはいないっぽい? 後はヘルメスファミリアの団長と主神ヘルメスも同行してきたが、ロキファミリアと交渉に行っているらしく姿は見えない。

 

「なるほど、状況はわかりました」

 

 つまりキューイとヴァンを呼び出すのは明日の朝以降になる訳か。

 身を起こせないままに首だけを巡らせれば、困ったような表情をしたミコトと、腕組をしてヴェルフと睨み合う桜花の姿、そしておろおろとしている千草と呼ばれていた少女も見えた。

 タケミカヅチファミリアも居る? って事は無事に地上まで帰れたのか? にしては人数が足りないが……。

 

「其方のタケミカヅチファミリアの方は、人数が減った様に見えますが……」

「他の者は足手まといになりかねないので待機しております。皆無事に地上に帰還できました。本当にありがとうございます」

 

 非常に整った美しい土下座を披露するミコトはわかる。桜花とヴェルフの睨み合いの原因は? なんで睨み合ってるの? 意味わかんないんだけど。

 身を起こそうと何度目かの挑戦をすると、リリとヘスティア様が身を起こすのを手伝ってくれた。身を起こすとサーっと頭の血が落ちていく様な感覚と共に一瞬視界が暗くなる。貧血の症状だ、多分回復しきってない。

 

「ミリア君、大丈夫かい? まだ寝ていた方が……」

「そうですよ。ミリア様が一番重傷だったんですから……」

「これぐらいは平気ですよ。ヴェルフはどうしたんです? 怒鳴っていたようですが?」

 

 睨み合いを続ける桜花とヴェルフ。代わりに説明してくれたのはリリだった。

 リリ曰く、今回のタケミカヅチファミリアを助けた一件について感謝の言葉を述べたタケミカヅチファミリアの面々であったが、最後に桜花が余計な一言を言ったらしくヴェルフが怒った。

 桜花の言った事。『逆の立場なら、お前たちを見捨てて俺は逃げる判断をした』だそうだ。

 

 見捨てずにあの場でできうる最上級の選択を行い。なおかつ皆……一応、皆生存したと言える最高の結果を残した今回の一件。逆の立場なら見捨てていた等と言われてヴェルフが不機嫌になり噛みついたのだが、桜花はそれに対して『俺はその選択をしたとして後悔も反省もしない』とまで言い切ったらしい?

 其の上で『責めたければ責めろ』等と腕組をしてヴェルフと睨み合いを始めた、と。

 

 うぅん? 空気読めないって訳でもなさそうな気はするんだが。はてさて……。

 

「ヴェルフ、とりあえず此処は抑えて……」

「この大男はふざけた事抜かしてるんだぞ。ベルは其れで良いのかよ」

 

 んー。ベル、そうベルねぇ。ベルに対して言ったらしい言葉。

 なんとなく察しは付いた。違ったらアレだけど、桜花の言いたい事はなんとなくわかる。

 パーティーのリーダーとして、正しい選択とは何かって話だと思うんだよ。

 

 あの時、ベルは迷わず『助ける』を選んだ訳だが、それを選ぶリスクを考慮していなかった。

 桜花が言いたいのは仲間を危険に晒す真似を考え無しに行う愚行についてだろう。

 まぁ、十五階層に落ちた時点でようやく気付いた感じなのでアレだが……。其処でベルはリスクを考慮した上で『進む』と選ぶ事が出来た訳で、要するにもう必要ないとまではいかないが少し遅い忠告であろう。

 

「桜花さん、言いたい事はなんとなくわかりました。其の上で、少し遅かったです」

「おい、どう言う事だよミリア」

 

 ヴェルフは直情的な所あるからなぁ。迂遠な言い回しはわからんだろう。

 

「桜花さんが言いたい事はつまりベルに対して仲間を危険に晒すリスクを考慮したのかって事ですよ」

 

 リリとヴェルフが何かに気付いて桜花の顔をまじまじと見つめ、ベルだけが少し俯いてから顔を上げた。

 

「ありがとうございます桜花さん。ですが、僕はもう大丈夫です」

「そうか」

 

 静かに腕組をしたまま目を閉じた桜花に対し、ヴェルフはまだ不満なのか睨み続けている。

 態度とかが悪いと感じるのは仕方ないとはいえ、仲間を危険に晒す真似に対しての苦言みたいなもんだしちゃんと受け止めてあげるのが良いんでない?

 まぁ、確かに言うべきタイミングではないとは思うが。

 

 若干空気が悪い中、天幕の入り口をばっと勢いよく開けてひらりと飛び込んできた影が一つ。いや二つ? 一人は優男風の旅装束の男、もう一人は青い髪に眼鏡をかけて……なんか死んだ目をした女性。

 話の中に登場した、優男の神ヘルメスと【万能者(ペルセウス)】アスフィ・アル・アンドロメダって人物だろうか? いや、アンドロメダさん死んだ目してるけど大丈夫かあれ?

 

「やぁ戻ったよ。っと、どうしたんだいこの空気? 重いなぁ」

 

 大げさな驚き具合でテント内の皆を見回す神ヘルメス。気持ち悪いなこの神、苦手なタイプだ。演劇に登場するような大げさな身振り手振りは腹の内を探られない様にする為のフェイク臭くて嫌いだ。

 見回しているヘルメスの視線が、止まった。ちょうど俺と視線が交じり合う形で……うわ、なんか目つけられてる臭い。一瞬だけ探る様な目をした後、ヘルメスは大げさに両手を大きく広げて笑みを浮かべた。

 

「眠り姫もお目覚めときた。おめでたいはずなのにこの空気はどうしたんだ? 何か悪い事でもあったのかい? ヘスティア?」

 

 神ヘルメスの質問にヘスティア様が簡単に状況を説明すれば、神ヘルメスは明るく一笑した。

 

「堅苦しく考える必要はないさ。ベル君達はミコトちゃんたちに貸しが出来た。いざという時に荷馬車の様に働いてもらう。それでいいじゃないか」

 

 ヘラヘラと笑う姿に毒牙を抜かれたのかヴェルフが眉を顰めつつも睨むのをやめ、呟く。

 

「理解はしてやる。けど納得はしねぇ」

「それでいい」

 

 ヴェルフの呟きに対して律義に返答を返した桜花。それからわざわざこちらに向き直って桜花は、と言うかタケミカヅチファミリアの面々が深々と頭を下げてきた。

 

「十三階層で助けてくれた事、非常に感謝している」

「どういたしまして。此方こそヘスティア様を守って十八階層まで送って頂いてありがとうございます」

 

 困った様に桜花達が『俺達は何もしていない』と言っているが、リューさんと……実力者っぽいけど何処となく疲労していて頼りないアンドロメダさんの二人だけよりは確かな実力のある桜花達が居てくれたのは安心できる。

 と言うかアンドロメダさんはなんであんな死んだ目してるんだよ、凄い気になるんだけど……。

 

「それじゃあ、今後についての話し合いをしようか」

 

 半場強引に場を治めた神ヘルメスの一言を聞いたアンドロメダさんの目に光が宿り、疲れた表情のまま口を開いた。

 

「まず地上への帰還ですが。ロキファミリアに階層主を倒してもらった後で、我々はこの十八階層を出ましょう。回避できるのであれば、危険な橋を渡る必要はありません」

 

 もっともである。もう二度とあのゴライアスの顔は見たくない。できうるならばあの顔を吹き飛ばしたいが出来ないだろうなぁ。

 

「ロキファミリアが移動を再開するのは早くとも二日後だそうです」

「つまり一日は暇があるって事さ。せっかくだし明日一杯は十八階層の観光でもしようじゃないか」

 

 わくわくと言う擬音が聞こえてきそうな程の笑顔を見せる神ヘルメス。ただ、時折探る視線を向けてくるのが少し気になる。

 まぁ、その観光って意見には反対はしないが。そもそもの話、今すぐにでも寝たいぐらいにだるいし。頭痛も酷い。眩暈もするし……増血剤欲しい。

 

 とりあえず寝よう。うん、きついし辛いし寝たい。

 

 

 

 

 

 真っ先に就寝した俺であったが。目覚めたのはまたしても一番最後であった。

 昨日、十八階層にあるというリヴィラの街って所に行くはずだったのだが、俺がいつまで経っても目覚めない為に先に行くということで話がまとまったらしい。神ヘルメス曰く『お土産を期待しててくれ』だそうだ。

 先に行くのを渋った者を神ヘルメスが全員言い包めたらしい……。まぁ、無事なら良いんだけど。

 んでその間にロキファミリアが様子を見てくれるという事でレフィーヤが来たっぽいのだが。

 

「ミリアさんが目を覚ましたら団長に伝える様に言われてますので」

 

 との事。昨日目を覚ましたのは日の落ちた後であったし、夜遅いという事で声掛けしなかったが今朝目を覚ましたので今から団長達の居る天幕へと案内されるらしい。

 血塗れだったローブや鎖帷子、革ブーツなんかは全部綺麗にしてくれた様子なのだが魔女帽子を何処かで落っことしたのかなくなっていたのと、ヘスティア様が銃剣型の杖を見つけてくれたらしく武装はそれ一つ。

 背中に槍の様にも見える不思議な形の武装を背負っているからかジロジロとロキファミリアの団員に目をつけられながらも足を運ぶ事となった訳で……武装取り上げはしないっぽい?

 

 案内されたのは周囲の天幕より一際大きな幕屋。

 ロキファミリアのエンブレム入りの旗の立つその天幕の中にはロキファミリアの超有名人三名が居た。

 

「気分はどうだい?」

 

 入ってすぐ真正面に置かれた木箱の上に腰かけている柔らかな黄金色の頭髪、碧眼。苦笑する様に緩まる瞳の前。深々と頭を下げて礼を言っておく。

 昨日の時点では余り詳しく聞けなかったが、どうやら十八階層の入り口当たりに転がり出てきた所をアイズさんが見つけてくれたらしい。ベルの幸運のおかげではないだろうか?

 

 そしてその正面の木箱に腰かけるフィン・ディムナの左右。左手方向には優し気に口元を緩めた麗人、リヴェリア・リヨス・アールヴの姿。その反対には筋骨隆々としたまさに戦士と言った風体の男性、ガレス・ランドロックと言う人物の姿もある。

 フィン・ディムナとリヴェリア・リヨス・アールヴの二名は顔を合わせた事があるが、ガレス・ランドロックとは初対面である。

 普通に、カッコいい人だな。冒険者と言うよりは戦士って感じがする。タワーシールドを持ってモンスターの突進を受け止めるのも、大斧を両手に持ってモンスターを薙ぎ払う姿もどちらも似合う様ないぶし銀の様な人物だ。

 

「ほう、この者がお主らの話しておった例の冒険者か」

「ああ、彼女がミリア・ノースリスだ」

 

 値踏みする様な視線が降り注ぐ中、助けられたという事で粗相のない様に平伏するべきだろうか?

 

「そう畏まる必要はないから楽にしてほしい」

 

 フィンがそういうのなら良いのだろう。多分、顔を上げてみると興味深そうに此方を見下ろすガレス・ランドロックと顎に手を当てて此方を見据えるリヴェリア・リヨス・アールヴの姿。

 

「一応、ベル・クラネルからも状況は聞いているけれど、よければ君からも聞かせて欲しい」

 

 説明、と言ってもなぁ。

 できうる限りで説明はしたが、おおむねベルの説明と変わらない訳ですんなりと話はすんだ。

 それよりもフィンが驚いていたのは俺がレベル2になっていた事。後インファントドラゴンをテイムした事。

 

「レベル2、それは凄いね」

「まあ、ガネーシャファミリアの補助があってこそでしたし……」

 

 なかったら倒した後に衰弱死してただろう。ダンジョン内であの怪我を負っていたら間違いなく死んでただろうし。

 

「いや、謙遜する必要はない。神の恩恵が認める程の偉業なのは違いないんだから」

「そうじゃぞ。その小さな体躯でよくやった」

 

 うんうんと頷いて肯定する横で、リヴェリアさんだけが難しい表情で眉根を寄せている。どうかしたのかとちらりと窺うと彼女はこちらを鋭く見据えて口を開いた。

 

「ノースリス、お前は……死にたがりか何かなのか?」

「リヴェリア、どうした」

 

 リヴェリアさんの言葉にランドロックさんが反応するが、リヴェリアはちらりと其方に視線を向けたのみですぐに此方を見つめてくる。

 

「お前のやった魔力の過剰充填、間違いなく強力な一撃は放てるだろうが……後が無い。考え無しの一撃になるだろう」

 

 その通りにございます。思わず平伏しそうになった。

 事実、あの一撃を放った後、俺は死にかけてた訳で……治療間に合わなかったら普通に死んでた傷だったんだぜ? 笑えないだろ……。

 

「その通りです。あの時は、少し焦りもあったので……」

 

 ベルに置いて行かれるかもしれない。そんな焦りが無かったと言えば嘘になる。焦燥に駆られての愚行だった事に間違いはない。

 

「自分で反省しているならば言う事はない」

「リヴェリア、その過剰充填っていうのは?」

 

 フィンの質問を受けたリヴェリアさんが軽く説明をし始めた。

 

「簡単に言うと魔法の許容量を超えた魔力を込める事だ」

「イグニスファトゥスするだろうに」

 

 ランドロックさんの言う事ももっともだ。イグニスファトゥス待った無しの超危険な代物である。

 

「ああ、普通ならな。ノースリスの場合、詠唱派生魔法の中でも特殊なタイプであるからこそ可能な技法だ」

 

 派生詠唱魔法。

 ロキファミリアに居る魔法使いの中にも覚えている者が数名いるのだが、どれも扱いが難しくて俺の様にはいかないらしい魔法。

 

 第一詠唱、第二詠唱、第三詠唱からなる三文節、または四文節以上にもなる魔法。

 特徴は『変化後も本質自体は変化しない』と言うモノ。

 

 第一詠唱が『基礎』の詠唱。

 俺の場合は『ピストル・マジック』『ショットガン・マジック』『ライフル・マジック』の三種類。

 それぞれ単発低威力・低燃費のピストル、散弾近距離高威力・中消費のショットガン、単発高威力・高消費・長射程のライフルの三タイプに分岐する。

 第二詠唱が『装填』または『変質』の詠唱。

 俺の場合は『リロード』、装填そのままである。

 他の魔法使い、ロキファミリア所属の者の場合は『不変の魔矢』『燃え滾れ火矢』『凍て付け氷矢』『迸れ雷矢』で無属性矢、火属性矢、氷属性矢、雷属性矢の四種類に変化するらしい。

 第三詠唱が『発動』の詠唱。

 俺の場合は『ファイア』、他の場合も同様で『放て』であったり『穿て』であったりと発動詠唱は非常に短く、瞬時に連発できる特性がある。

 

 んで第四詠唱、これは『変化』だそうだ。

 俺の場合はピストルを両手に持ち二丁同時に使える『デュアル』、射程の短縮のデメリットと攻撃範囲の増大の効果を持つ『ソードオフ』、バレットタイム染みた効果とズーム機能を持つ『スナイプ』の三つ。

 

 まぁここらはどうでもいい。

 問題はこのうちの二つ目。『装填』または『変質』である。

 

 詠唱派生魔法は大雑把に何種類かに種別されるらしい?

 一つ目に『直接消費』か『間接消費』か。

 二つ目が『詠唱増大』か『消費増大』か。

 

 一つ目の方は簡単。俺で言う『マガジン』をその場で作成・装填するか、あらかじめ予備(ストック)を作っておいて装填するかの違い。

 その場で作る場合は第二詠唱が長くなるらしいが、その分威力が上がる。

 あらかじめ予備(ストック)している場合は第二詠唱が短くなるが、その分威力が低くなる。

 俺の魔法は後者の『間接消費』に分類される。あらかじめ『弾倉(マガジン)』を作って保持しておくからだ。

 他の者の場合は『矢束』や『魔力石(オーブ)』と言った術者独自の表現を伴う『魔力の塊』を自身の魔力とは別に保持している状態。

 

 んで次に二つ目の方。此方はちょっと難しいというかわかりづらい。

 俺の魔法は後者『消費増大』の方に分類される。

 『ピストル・マジック』と『ライフル・マジック』を比べればわかるだろう。詠唱時間自体に変化はないが弾薬消費量と効果が全く違う。

 『ピストル・マジック』が1発撃つのに消費1、『ライフル・マジック』が1発撃つのに消費10。威力は圧倒的に後者が高い。

 んで『詠唱増大』っていうのは……例えの魔法を一つだそう。

 

 『間接消費』の『詠唱増大』と言う種別の魔法と言う例えを出す。

 ため込むのは『矢束』と言う形の魔力塊。

 第一詠唱が射程の短い『ショートボウ』と射程の長い『ロングボウ』の二種類としよう。

 第一詠唱で『ショートボウ』を選んだ場合、発動詠唱が『放て』の一言で良し。

 第一詠唱で『ロングボウ』を選んだ場合『引け、引け、引け、放て』の四言必要、みたいな感じ?

 その代わりに消費する矢の数に変化はない。

 

 『詠唱増大』は効果を向上させるために詠唱分が長くなり、『消費増大』は効果を向上させるために消費が大きくなる。

 俺の魔法は『間接消費』型の『消費増大』型となる訳だ。面倒臭ぇ。

 

 んで重要なのが『間接消費』型である事。

 『間接消費』型は魔力の塊を本来持ち得る魔力とは別に保持している。

 本来なら『装填』した後にさらに『魔力の塊の作成』なんて高度な真似はできない。故に『直接消費』型では絶対に不可能ではあるのだが。

 『間接消費』型は一言で装填できてしまえる事から、魔力の過剰充填が非常にやりやすい。

 

 ただし、失敗はイコールで死に繋がる。

 何せ魔力の塊を制御下に置ききれない状態で使用しようとしている訳だから、当然暴発が起きる。勝手に火柱がたったり、風の刃が飛び交ったり、凍て付く風が吹き荒れたり。術者本人が死にかねない危険な技法である。

 つまり出来なくはないけど普通なら絶対にやんないよねって危ない技法らしい?

 

「むしろよく制御しきったな」

 

 感心したように此方を窺うハイエルフ様。どうこたえるべきか……。

 

 例えると自転車にジェットエンジン積んでかっ飛ばす様な行為を成功させたみたいな感じか?

 自転車如きの制御能力でジェットエンジンの速度を制御できるはずもなく、本来ならば吹き飛んでいたのが妥当な所を半ば力業で制御しきって魔法を発動させたって事になるらしい。

 

 …………いやね、分かってたんだよ? なんとなく超危ない技なんだろうなって?

 説明受ける内に青褪めたよ。彼の最高峰の魔術師ですら『制御不能に陥って魔力暴発して死ぬ』と言い切る技なんてさ。

 詳しい解説を聞いて確信したね。超危ない処か普通じゃない狂人ですらやらないヤベェ技だったんだって……。

 

「本当に良く死ななかったな……」

「あはは……気合と根性って奴ですよ。えぇ……」

 

 もう二度とあの技使うのやめよう。

 




 私は気付いてしまった。魅了耐性無いミリアちゃんがイシュタル様にぐちょぐちょにされてしまうのではないかという事に。(第七巻を読みながら)

 イシュタルファミリア編ヤバない? いや、フレイヤ自体ヤバない? ダンまちでフレイヤ様とイシュタル様ってヤバヤバですよ(語彙力の喪失)

 どう足掻いても勝てる気しない二人の女神。



 
 後、四コマのアイズさんが唐突にやってきて『おじゃましました。これは入場料です。受け取ってください』って言って札束投げ捨てていくのと、ペロキャン渡してきて『やっぱいいですよね。13階層ってなんかこう趣きがあるっていうか……』ってのがが頭から離れない。アイズさんェ……
 いや、ギャグ漫画だからアレなんだけどね、『トイレットペーパーの芯に雑草とタンポポ入れて180℃の油で揚げた特製春巻』とか、ね?
 いやなんというか読むべきではなかった気がしてきた。おもしろかったです()

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