魔銃使いは迷宮を駆ける   作:魔法少女()

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第八十一話

 ロキファミリアの首脳陣との面会を終えた感想。

 感心されたのは良いんだがなぁ。面倒事に巻き込まれそうで怖い。と言うかフィンの俺を見る目が、ね? ちょっと本気(ガチ)っぽかったのが少し気になる。

 

 神ヘルメスにフィン・ディムナ、二人も警戒しないといけないとかちょっと休ませてくれよぅ。

 俺の為に用意された朝食をロキファミリアが用意した食事に使ったらしいテーブルの一角で食べながら溜息を零していれば、レフィーヤが近づいてきた。わざわざ俺の分をとっておいてくれたのは彼女らしい。食事を渡してくれた猫人の女の人が言ってた。

 ……遠巻きで見てるエルフの人たちはなんなんだろうね。

 

「こんにちはミリアさん。調子はどうですか?」

「こんにちは、おかげ様でなんとかって感じですね」

 

 昨日よりはマシだが、貧血気味なのは変わらず。一日半ぶりの食事にありつくもあまり食べれそうにない。レバーなんかを食べたい所だが贅沢は言えない訳で。

 ……贅沢言えない割には見た事のない果物の様なモノがいくつか乗せられた木の板を渡された。

 綿みたいな繊維にたっぷりの糖蜜を染み込ませた様な不思議な果物や、中に液体の入っているひょうたんみたいな果物。他にもいろいろあるが、総じて言うなれば『地上では絶対にないだろうな』っていう代物ばかり。

 ひょうたんの水筒って確か中に水入れて中身腐らせて空洞にするんだっけ? ……中身腐ってるんじゃね? いや、そういう果物なのかもしれない。うん、食べて平気だよね?

 確か十八階層特有の果物もあるっぽいから多分ソレだろうなぁ。

 糖蜜の詰った綿っぽい果物、ベルが苦手そうだな。甘い物苦手って言ってたし。

 

「まさか中層進出初日に十八階層までくるなんて、凄いですね」

「運が良かったんですよ」

 

 団長達との会話を聞いていたんだから知ってるだろうに。まぁ、別に構わんか。なんか知らんが懐かれているらしいし……一体どういうこっちゃねん。

 

「それでレフィーヤさんは何か用ですか?」

「あ、そうでした。実はお礼を言いたくて」

 

 お礼? 思わず首を傾げる。はて、何かしただろうか?

 

「ミリアさんの助言もあったおかげで並行詠唱が出来る様になったんです! 実戦でも使えるぐらいになって深層でも活躍できたんですよ!」

 

 へぇ……え? 並行詠唱出来る様になったんだ。うん、凄いね。おめでとう。

 

「おめでとうございます」

「はいっ」

 

 元気一杯でよろしい。が、少し待て、俺のおかげって……ちょろっと助言しただけじゃろう? んなもんが役に立つとは思えんのじゃが……? ま、少しでも助力になったってレフィーヤが言うなら良いか。

 

「レフィーヤ、手を貸して」

「あ、はい。今行きます。すいませんミリアさん、今ちょっと立て込んでいて、またお礼に何か渡しますんで」

「え? あっ……」

 

 お礼に何かって、別に渡される様な事じゃないだろうに……。律義な子やねぇ……。あ、このひょうたんの果実どう食ったらいいの? へたの部分斬り落として中を飲めば良いの? 変わった果実出してくれるのは良いけど食べ方教えてくれる人ーは居なさそうだ。

 まぁ、毒で倒れた仲間がいるって話だしそっちを優先だわなぁ……。つか糖蜜の溢れ出てくる果実先に食うんじゃなかった、シチューの味が滅茶苦茶じゃないか……。

 

 

 

 

 

 食事を終え一服しながらも木製の椅子に腰かけながら空を、と言うか()()()()()()()()見上げれば、天井一面にびっしりと張り付いた青い透き通った結晶、英石……水晶だっけか? とその中心に花みたいに外に飛び出す様に張り付く真っ白い結晶塊。光を放つその結晶は地上の時間帯に連動して光の強さが変わるらしい。

 昨日は見なかったが夜になると美しい()()()()()っていうのが見えるっぽい?

 わざわざ解説してくれるなんて……団長さんって結構暇だったりするんですかねぇ。

 

「ははは、暇ではないかな」

 

 お茶、ではなく白湯で一服していたらふらっとやってきたのはロキファミリアの団長フィン・ディムナである。俺に何か用かなと思えば、重ねてレフィーヤのお礼を言われた。どうやら彼女は俺の助言のおかげで並行詠唱出来る様になったことを団長に報告していたらしい。

 いやはや、俺も有名人になったなぁ。

 

「それで、君の従えている竜種二匹は召喚するかい?」

「あー、できればしたいですけど、良いんですかね?」

 

 もう召喚できるはずだがロキファミリアに世話になってるから遠慮して召喚を控えてたんだよな。もしかして団長自ら足を運んだのって……?

 

「あぁ、問題ないよ。その件で足を運んだのもあるね」

 

 なんか他にも話があるみたいな言葉選びやめぇや。対面の席でクスクスと悪戯っぽく笑うフィンの姿に視線を逸らす。

 

「他の件とは……?」

「あぁ、実は……今ちょうどティオネが出かけていて丁度良くてね。……縁談の話さ」

 

 ズドンとテーブルにナイフが突き刺さる。と言うのはただの比喩で実際には強い衝撃を真正面から浴びせられた様な感覚だ。随分と思い切った言動をするな。

 明らかに駆け出し……じゃないな。一応上級冒険者にはなったんだがそれでも成りたての身分不明な小娘に……自分が小娘なのかは置いておくにしろ、こんな()()()()()()に声をかけるなんて相当だぞ。

 

「まだ私を狙っているので?」

「そうだね。むしろ──今回の一件でより君が欲しくなったかな」

 

 あー、あー、あー、面倒臭い。神にも目を付けられてる現状……フレイヤにも目を付けられてるっぽいのに、神ヘルメスまで目を付けてきてるっぽいんだよ。そこにフィン? 勘弁しろよ全くさぁ、俺が何したっていうんだか。

 ……キューイとヴァンを生贄に捧げましたね。ささやかな罰かな? ……ささ、やか?

 

「それで、前に君に目的を話した時に言われた事を少し考えていてね」

 

 子供の未来を親が勝手に決めるのは云々って話か。子供にパルゥムの英雄の名を継いでほしいって考えだったよな、強制されて束縛されるのは本当に可哀相。と言うかもしも、仮に俺がフィンとの間に子供を儲けたら子供が『嫌』と言ったら俺は全力でフィンから子供を引きはがすだろう。それぐらいするし、その過程でフィンとの殺し合いに発展したとしても、俺は全力で子の為に戦うだろう。

 あの糞女は殺せなかったが、それぐらいはしたい。

 

「それについてなんだけど、僕は子に強制はしない」

 

 ふむ。

 

「ただ()()()()()()()()()だ。こうしろ、ああしろと子に何かをやらせはしない」

 

 …………んむ。

 

「その子が僕の背に憧れを持ち、自分の意思で僕の背を追いかける。そうであるのなら────キミはそれを全力で応援してくれるだろう?」

 

 真っ直ぐに此方を見つめてくるフィンの姿から思わず視線を逸らしてしまった。

 

 俺は、フィン・ディムナと言う人物はあまり好きではなかった。

 理由は、やはり人を動かす為に表面上演技をしている所が、前世の俺と重なったからだ。要するに、勝手に同族だと()()()()()身勝手に嫌っていただけである。

 今の話を聞いた上で、申し訳なくなった。俺は彼を勝手に()()()()()()()()()などと言う失礼な評価を下していた。表面だけを見て判断していたわけだが……中身は全く違う。

 

 と言うか、その在り方『僕の背に憧れを持ち、自分の意思で僕の背を追いかける』と言うモノ。それは、あの人────親父と呼び、慕ったあの人と同じ在り方だ。

 

『俺はゲームが好きで、俺の子にもゲーム好きになってほしい。けど楽しくないって思うなら無理にやらせはしない。ただ、俺が楽しそうにゲームしてれば、我が子も楽しんでくれないかって期待はしてるな』

 

 うん、楽しそうにゲームしてるあの人の背を見て育ったからこそ。俺はゲームを好きになったし、『ミリカン』等と言う、どちらかと言えばバカゲーに分類されるゲームをやりこんだ。いや、ジャンルはVRFPSなんだけど……やっぱ登場するキャラや世界設定なんかがバカゲー要素多すぎてね……?

 それはともかく、今目の前にいるフィン・ディムナは俺如きが貶して良い相手ではない。

 今まで内心毛嫌いしていたが、早合点で勝手な思い込みから嫌っていた訳で、正直合わせる顔が無い。

 

「フィンさん。まず、謝罪させてください」

「どうしたんだい?」

「すいませんでした。正直、貴方の事は嫌いでした」

 

 過去の自分を見ている様で、気持ち悪かった。だが──何処が過去の俺と同じだというのか、失礼にも程がある。

 詐欺で人を騙しては金を搔き集めて不幸をまき散らした屑と、自ら志す目標に向かって邁進するフィン・ディムナ。何処が同じだというのか。手段こそ似通った点があった、だが在り方は全く違う。

 そういう意味で、申し訳なく思う。

 

「一方的に貴方のイメージを決め込んで、嫌いになってました」

「…………そうか」

「ですが、今の話を聞いて、好きになりました」

 

 手の平を返す様な反応ではあるが。それでも言える。この人物は好感を持てる人物だ。

 その姿に憧れすら抱いた。見た目がカッコいいとかそう言う事ではない、在り方が美しい。もし、もしも出会う順番や、抱いた想いが違えば……。

 

 改めて真っすぐフィン・ディムナの顔を見据えた。申し訳なさもある。もし出会いさえ違えばと言う思いもある。けれども、俺は出会った最初にフィン・ディムナを嫌悪し、彼について何の考慮もしなかった。それが分岐点であり、今悔やんだ所で戻る事の出来ない過去である。

 

「その上で、ごめんなさい。貴方の想いには答えられません」

「そっか……。やっぱり、か」

 

 俺は、神ヘスティアに救われた。あの日、あの満月の下で『ミリア・ノースリス』として定まった。それ以前の曖昧な()()ではない。一人の人として与えられた名と立場。

 真っ直ぐに夢と憧憬に直走る少年の背を見た。同じ家族(ファミリア)として、その想いの成就に力を貸したいと思った。

 

 神ガネーシャは素晴らしい神だ、もし先に出会っていれば彼の神の為に身を粉にして尽くしたいと思う程に。

 フィン・ディムナは素晴らしい人物だ、もし出会いの場の思い違いさえなければ身を粉にして尽くしたいと思える程に。

 其の上で、言わなければならない。

 

「私は、ベルとヘスティア様の為に尽くしたい。あの人たちの為に、何かがしたい」

 

 ()()ってなんだ? 未だに曖昧な部分もあるが何を言っているのか。鼻で笑われそうである。それでも……彼らの為に尽くしたいと思ったのだ。

 だから、神ガネーシャの為に尽くせない。フィン・ディムナの為に尽くせない。

 他の誰でもない、ベル・クラネルと神ヘスティアの二人に尽くしたい。だから、他の誰かを顧みる余裕はない。

 

「だから、貴方の想いには応えられません」

 

 真摯な彼の申し出に、此方も真摯に答えねばならない。

 頭を下げて、断る。俺はフィン・ディムナの為に動けない、動かない。だからこそ、余計に俺を惑わせないで欲しい。

 

「だろうね。それは────わかってたさ」

 

 強化種のミノタウロスとの戦い。変異し異常な力を手にし普通なら敵うはずもない強敵を前に、ベル・クラネルは立ち上がって見せた。そしてその背をひたすらに支えたミリア・ノースリスの姿があった。

 あの瞬間には、わかっていた。理解できていた。彼女は自分に振り向く事は無いのだと。

 

 それでも、想像せずにはいられなかった。

 

 もし、もしも自分がベル・クラネルの様に彼女に支えて貰えたのなら。

 もし、ロキファミリアに入団し、神ロキと二人きりで始めたあの初期のファミリアにキミが居てくれたら。

 もし、今までのフィン・ディムナの道にミリア・ノースリスが寄り添っていてくれたら。

 

 きっと、今よりも良い結果が出ていたんだと思う。

 

 しめくくりの言葉を静かに聞いた上で、フィンとの視線が交わった。

 

「仕方のない事だったとはいえ、後悔してるよ」

「私も、後悔してない訳ではないです。でも──」

 

 ────もしやり直せたとしても、俺はきっとベルとヘスティア様を選び取る。

 

 他の誰でもない()()()()()()()()()()()()()()()()()を選び取るのだろう。

 

「……雰囲気を考えるべきだったかな」

 

 おどける様に小首をかしげる姿に苦笑する。どれだけ雰囲気を整えたとしても、俺はフィンを選ぶ事は無い。それだけは言える。

 

 

 

 

 

 水晶の光源が目に刺さる程に強くなり、地上が昼頃である事を伝えてくる。地上の光の強さがイコールで天井の水晶の光の強さがどうのこうの。

 キューイとヴァンを召喚しての再会について色々とあったが、とりあえずロキファミリアが滅茶苦茶警戒してるのはしゃーないっちゃ仕方ない。まぁ、モンスターだしね……俺の魔法で呼び出したとはいえ警戒はするか。

 警戒するロキファミリアに安全だよーと行動で示すべくキューイとヴァンとじゃれ合っていると、ロキファミリア最速にして解毒剤を地上にとりにいっていた【凶狼(ヴァナルガンド)】ベート・ローガが帰還してきたらしい。

 

 ………解毒剤のつまったバックパックらしきものをレフィーヤに手渡しながらもすさまじい形相で此方を睨んでいたから間違いない。あの灰色の獣人、殺意がヤバいでしょう? あれ、第一級冒険者なんだぜ……?

 いや、モンスターと仲良し小好ししてんのはそんなにアレなんか……?

 『怪物趣味かよ』とか吐き捨ててるし。怪物趣味……? アレかね、動物性愛(ズーフィリア)みたいなもんかね? ……言っちゃ悪いが変態的な性癖の分類の中には『疑似獣姦(スードウズーフィリア)』っていうのがあってだな。簡単に言えば『獣耳や獣尻尾の生えた人がしゅきぃ』って言うのも変態性癖の一つだt……。

 

 あ、こっちの世界だと割と普通の性癖に入るのか? 獣人が普通にいるし、獣人の娼婦もいるらしいし?

 …………角とか生えたモンスターが性癖に刺さっても不思議じゃないと思うんだけどなぁ。多分だが常人には理解できない異常性癖に入るんだろうなぁ。つか、見た目カッコいいとは思うけど竜相手に欲情はしないに決まってるだろ。

 ……もしかしてかっこいいって思うのも変?

 こういう考え方ってこっちじゃおかしいんかね。あんま口にしないどこ。

 

 第一級冒険者の殺気に冷や汗を流しながらキューイ共々震えているとヘスティア様達が帰還した。ヴァン、おまえあの殺気平気なの? 凄いな……って気絶してね? 白目剥いてるぞこいつ。

 

「おかえりなさいヘスティア様」

「ただいまミリア君」

 

 ヘスティア様ー、超会いたかったです! 昨日は疲労困憊で何がなんだかわかんなかったけど、今朝になって冷静に考えると超やばい事してるって気付いた上で、わざわざ迎えに来てくれて本当に感謝してる。

 ……でも、危険な事はやめて欲しいなぁって。いや、心配される状況ではあったんだけどね?

 

「ただいま帰りました。ミリア様、リヴィラの街で買い物するのはオススメしません。あそこはおかしいです!」

 

 リヴィラの街に行ってきたそうなんだが……。

 なんかリリはプリプリ怒ってるし、ヴェルフは相変わらず桜花の事を時折睨んでいるし……。ヘスティア様はなんか香水でもつけてるのか妙な香りがするし。此処で買い物ってどう考えても値段吊り上げてくるだろうに。

 香水は……悪臭ではないんだが、香水ってあんま好きじゃないんだよ。あの糞女もいっつも香水つけていたせいか、香水そのものは悪くないのに香水は嫌いになっちまったんだよな……。

 

「お土産物を買ってきたよ!」

 

 手渡されたのはパン。それも焼き立てっぽい香ばしい香りに、たっぷりのクリーム、溢れんばかりの果物……あ、さっきのハニークラウドってのも入ってるっぽい。

 『ダンジョンサンド』なる食べ物。

 ……ダンジョンの中の街で買い物すると高そうな気がするんだが、ってそうか。リリが怒ってるのってそういうことか。

 古びた補修まみれのバックパック背負ってるし、大分足元でも見られたのではないだろうか。

 まぁ、()()()()()()みたいなもんだろう。それに此処に物資類運び込むだけでも相当危険なんだし足元見られるのも当然っちゃ当然だろうなぁ。

 リリみたいに縁下力持(アーテルアシスト)なんてあるから荷物一杯持てるよって方が少ないだろうし。

 

「やぁミリアちゃん。昨日は大分お疲れだったようだから改めて自己紹介させてもらうよ。ヘルメスさ、そっちはアスフィ。よろしく」

 

 ……気さくそうに片手を上げて微笑む優男の神ヘルメス。その目に映るのは探る様な深い色。いや、神ってそう言うモノだって思って相手しないと、悪感情読み取られてしまうってのはわかっても感情制御なんてできやしない。

 表面上の感情ならいくらでも演技できるが、神相手に表面を取り繕ったって意味ないからなぁ。

 

「よろしくお願いします、神ヘルメス。ミリア・ノースリスと言います」

「ありゃりゃ、嫌われちゃってるみたいだね。何か嫌われる様な事しちゃったっけ?」

 

 おどける様な仕草をしながらアスフィに問いかける神ヘルメス。微弱に漏れているはずの神威が全く感じられない所為か、神と言う雰囲気は一切無く、顔立ちの()()()()()()優男にしか見えないんだが。まぁそれはヘスティア様も同じっちゃ同じだ。ダンジョン内では神威隠さないといけないらしい?

 『気付かれてしまう』って……何に? 気にはなるけど聞かないで欲しいって雰囲気だったので問うのはやめておくが。

 

「それで、率直に言いますが……。私の何を探っているのですか?」

「……おっと、ベル君と違って随分とまあ、スレてる子だね。それに察しも良い」

 

 何を探りにきた? キューイか? ヴァンか?

 

「んー。竜種を従える魔法っていうのも気になるっちゃあ気になるかな。でもそれよりも君の事が知りたい」

 

 ……。遠くの方でヘスティア様達がアイズさんと何か話してるっぽい? 水浴びがどうとか。とりあえず目の前の神ヘルメスの目的が曖昧と言うか、範囲が広すぎてわからん。

 

「私の何が知りたいのです?」

「そうだね。何処で何をしていたとか、かな。君の事について一通り調べたんだけどね。ある特定の日付以前の記録はさっぱりなんだ。正直言って()()()()()()()()()()()()

 

 怪しい経歴、ねぇ。

 

「私もどう答えたら良いのかわからないんですが……」

「じゃあ質問、何処で生まれたの? 誰に育てられたの?」

 

 何処で──生まれた? 知らん。 誰に育てられたの? 知ってる。

 

「何処で生まれたかは、知りません。どっかの闇医者に取り上げてもらったぐらいしか聞いてないですし。育ての親は…………少なくとも神ではないですよ」

 

 神ではない普通の人だった。俺を育ててくれたあの人は、老いて死んだ。あの糞女が死んだ後に、再度会いたいと願って探し回って、ようやく見つけた頃には墓の下だった。

 

「他に聞きたい事は?」

「そうだねぇ。まあそれは後で良いかな。ヘスティア達が水浴びに行くみたいだから一緒に行くと良いよ。うん……女の子にこう言う事言うのはちょっと憚られるんだけど……ちょっと匂うよ?」

 

 そりゃ血塗れになったり丸々一日ダンジョン歩き詰めだったりしたんだから匂うのは当然だろ。

 自分じゃ気付かなかったけど……。もしかして結構臭い? でも水浴びかぁ。

 

「ミリア君、今から水浴びに行くんだけど一緒に行かないかい?」

「あー、行きたいのはやまやまなんですが……ヘスティア様、ステイタスどうします?」

 

 背中に刻まれた神の恩恵のステイタス、入れ墨みたいな形で残ってるんだけど見られたらまずい……って、あれだな、気絶してる間にロキファミリアにみられた可能性高いな。後で確認しとかなきゃ。

 

「ステイタス? それがどうしたんだい?」

「あー、ヘルメス。塗装(ペイント)用の道具、持ってないかい? 持ってたら貸してほしいんだけど」

「は? 塗装(ペイント)? ヘスティア、何を言っているんだキミは」

 

 おかしそうな表情の神ヘルメス。

 前々から不思議に思ってたんだが、ステイタスって背中に出るじゃん? 俺もベルもそうなんだが入れ墨みたいに残ってる訳よ。

 んで、アマゾネスっていう種族いるじゃん? あの種族って凄い際どい格好してるし背中丸見えなんだが。アマゾネスの背中にステイタスが無いのよね。ティオネさんもティオナさんも、第一級冒険者なのは違いないのにステイタス貰ってないなんてありえない訳で……褐色だから目立たないのかなって思ってたんだけど違うっぽい?

 

「もしかして……『(ロック)』してないのかヘスティア」

「……ヘルメス、その『(ロック)』について詳しく!」

 

 え? ろっく? 何それ聞いたことな────いや、エイナさんが前に『鍵しめたほうがいいよ』とか言ってたっけど、もしかしてその『(ロック)』とやらの事だったのか?

 あの時は勉強云々でうやむやになって聞かなかったけど……聞いとけばよかったかも。




 感想は作者の力になる。つまり感想が沢山くれば早く更新する!

 なんて事は無い(断言)

 どっちかっていうと書きたいシーンが近づいてやる気が燃え上がっただけで全く関係ないのでご安心ください。
 水浴びの場面書きたい。超書きたい、と思って書いてたら水浴びまで行けなくて悲しい。

 本来なら第八巻で『(ロック)』について知るはずが此処で知る事に……この所為で変化するのって第七巻のイシュタルにベルのステイタス見られる場面ぐらいか?
 他に変化するとこ無いよな。第六巻の戦争遊戯では背中見られる描写無かった(はず)だし? まぁイシュタルがステイタスについて知ってもその後フレイヤ様に処されるのであんまり影響はないでしょう。たぶん、きっと、めいびー()


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