魔銃使いは迷宮を駆ける   作:魔法少女()

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第九十五話

 皆が思い思いの場所で温泉に浸かっているのを眺めつつも思考をコロコロー。

 人の年齢は『精神年齢』と『肉体年齢』に分けられる。

 では、俺はどうなるのかというと神々の認識では『自分を騙し過ぎてわからなくなっている』もしくは『自分の年齢を誤認している』となる訳だ。

 確かにかつて俺は自身の実年齢と異なる役柄を完璧に演じきったりしていた訳なんだが、そうなると今の自分すらも信じられなくなりそうで怖い。

 

 つまり俺が『過去』だと思っている『記憶』全てが『自分自身で作り上げた都合の良い記憶』って可能性すらあるという意味になる訳だ。

 

 ……頭が痛くなってくる問題なのでこの考えは全て投げ捨てておく事にする。気にしても仕方ないし、俺は『神ヘスティアの眷属、ヘスティアファミリアのミリア・ノースリス』で十分だ。

 年齢は『13~14歳ぐらいの()()()()発育不足が目立つ小人族』って事で良い、のか?

 というか()()()()か? 発育不足が()()()()で済むのか?

 もっと、こうさぁ、リリと1~2歳程度しか違わないんだから背丈的に……いや、普通なのか?

 ……そうだね、認めよう()()()()発育不足なのさ。うん、ちょっと……ちょっと?

 

「ベル君、この奥、まだ先があるみたいなんだ。一緒に行ってみよう」

 

 ぼんやりと温泉に浸かっているとヘスティア様がベルを誘って奥へ行こうとしているのが見えた。

 うぅん、ちょっと警戒心緩いんじゃ……あー、結晶竜、何処に居るんかね?

 

《どうしたのー?》

 

 すぐ近くの結晶の中から此方を見ている結晶竜の姿があった。というか吃驚したわ、呼んだら瞬間で来るんかい……。あぁ、ヘスティア様とベルの周辺警戒頼む。危なそうならこっちに声かけてくれ。

 

《分かったー!》

 

 元気一杯で良い事だ。少し不安は残るが、リューさんとアスフィさんも一応警戒……警戒してる?

 いつの間にか大きな蓮の葉の様な植物の上に乗り、竹竿に木の実の浮きで釣りっぽい事をしているリューさんの姿があった。というか温泉で釣り? そもそも釣り竿なんてどこで……手製か。其処らの素材で適当に作ったっぽいな。針は? 餌は? というか得物は? 疑問は残るがまぁ良いか。警戒はしてるんだろうし。

 

「はい神様、すいませんちょっと行ってきます」

 

 気を付けて行ってくるんだぞー。安全、かどうかの保障が無いしなぁ。

 アスフィさんがミコトと千草の近くに居るし、桜花とヴェルフが一緒に居る。ヘスティア様はベルと一緒で、リューさんはそれとなく全体を見回してる感じ。リリは俺の近くと。

 戦力的にはLv2以上がそれぞれ一人ずつついてるし良い感じなのかね?

 

「役得って奴か」

「なんせ【リトル・ルーキー】って奴だからな」

 

 ヴェルフと桜花がヘスティア様と一緒に奥へ行ったベル君の背中を見てなんか言ってる。嫉妬かな?

 ベルが去った事でヴェルフと桜花が取り残されてるなぁ。ヘルメスの姿は見えないし……。

 ふとヴェルフ達の方に千草が近づいて行くのが見えた。目的は桜花かな?

 

「桜花、ミコトが温泉の噴き出し口を見つけたの。そこに居た方が怪我の治りが早いかもしれないって……一緒に、いこ?」

「お、おう」

 

 恐る恐る、恥ずかしそうに桜花に声をかける千草と、どもりながらも答える桜花。うぅん、青春だねぇ?

 一人取り残されたのはヴェルフ。可哀相に……女の子に声かけて貰えなくて顔引き攣らせてるじゃないか。

 

「……ちくしょう」

 

 まぁ、ベルにはヘスティア様とリリが、桜花には千草が居て、他の女性はヴェルフと面識が深い訳でもない。あえて言うなれば俺かリリなのだろうが当然リリはベルの方に……ありゃ、いつの間にかリリはベルの方へ行ったのかね。姿が見えない……大丈夫か? 大丈夫か。奥の方からヘスティア様の声聞こえるし。なんでついてきてるんだーって、リリの事だろ。

 あのままヴェルフ一人は流石に可哀相か。声かけてやるかなぁ。

 

「一人の時間も時には必要です」

「おぁっ!?」

 

 ……声を掛けようと腰を上げた所でリューさんがすぃーっと水面を滑って移動してヴェルフの前に止まった。まってその蓮の葉っぽい植物どうなってんの? なんかリューさんの意図通りに動いてる様に見えるよ……?

 ヴェルフは唐突に目の前に現れたリューさんに驚いてるし、俺も驚いた。

 

「孤独は良い。何かを見つめなおす事が出来る」

「何かを、見つめなおす……?」

 

 リューさんの言葉の意味は、なんとなくわかるが。ヴェルフやい、視線が胸やら太腿やらに吸い寄せられてるぞ? いや、確かに人が乗れるサイズの蓮の葉の上にアヒル座りしてたらそりゃ……太腿は目立つわなぁ。

 というか体柔らかいなぁ。あの座り方って体の柔軟性が高い女児がしてる事が多いって話だっけか。

 

「……何故にブルマ?」

 

 ブルマ? あぁ、リューさんの服装、そういえば新緑色のブルマだったね。何故にブルマなのだろうか? というか待て待て、さっき桜花が連れていかれたのって温泉の噴き出し口……いやそこ熱湯じゃね?

 ヴェルフは一人寂しく温泉に浸かる必要がなくなった様子だしちょっと桜花の様子見て来よう……。

 

 

 

 

 

 ぐらぐらと泡立つ赤色の湯舟。まるで入浴剤を入れたジャグジーの様な温泉に肩まで浸かる桜花。

 そしてその桜花を見下しながら足湯に浸かるアスフィさん、ミコト、千草の三人。

 ……拷問かな?

 桜花を前にし腰かけているのもあって、桜花の目の前には魅力的な生足×3。というかミコトはあの体勢だと見えかねんぞ……さっき注意したやろ。

 

「熱くない? 桜花、熱かったら無理しないで出てね?」

「お、おう……」

 

 いや、待て待て、見た目からして沸騰してる湯舟にぶち込んでる様にしか見えんし、桜花の顔真っ赤やぞ……。あれって何? 釜茹での刑にでも処されてるの?

 というか桜花動けんだろアレ。下手に視線逸らしたり動いたりするとアレだろ。というか飴と鞭やな。桜花の顔が赤いのは目の前の花園の影響か、それとも温泉の温度の所為か……いや、あれ助け出さないと桜花が茹で上がるぞ。

 

「先程は失礼しました。自分、温泉とみると見境が無くなってしまって」

「別に良いじゃないですか、それにタケミカヅチファミリアの方々と知り合えて、良かったです」

「そんな、此方こそ光栄です」

 

 いやいやいや、三人は和やかに談笑してるけど桜花が天国と地獄を味わってるぞ。いや、でもどうやって声かけようか。桜花を借りる? うぅん。

 

「なあ」

『ん?』

「その足湯、結構熱いんじゃないか? あんまり熱いのに入ってると体にも良くないし、そろそろ────」

 

 桜花が自力でなんとかしようとしてる。ガンバレ、その調子だ!

 

「問題ありません」「快適です」「気持ちいいよ?」

 

 ……あの三人は空気読めない子なのかな? 桜花が地獄に突き落とされたぞ。目の前に天国あるけど熱中症は命に関わるだろうに。

 

「……おう」

 

 桜花ぇ……。

 

「でも、地上に戻る前に此処に寄れてよかった。桜花殿の回復も早まるはずですし」

 

 ミコトォッ!! 桜花が茹ってる! 顔真っ赤で目がグルグルし始めてるっ! あぁしゃあない。

 

「あの、すいません。桜花さんちょっと良いですか?」

「ん? どうかしましたかミリア殿」

「あぁ、ちょっと桜花さんに用があってですね」

「な、何の用だノースリス」

 

 ヤバい桜花の目が意識飛びかけてんぞ。とりあえず適当な理由、理由を……。

 

「えぇっと、そう、あそこのアレをとってほしくてですね」

「あれ、というと……あぁ、あの桶ですか」

「私の背丈だと厳しいですし桜花さんさえ良ければ……」

 

 俺の背丈じゃ取れない位置の桶っぽい植物とってー。これならいける。後桜花、きついんやろ……今なんとかするからもう少し耐えてくれ。

 

「っ! 任せろ、すまん少し行ってくる」

「私が代わりにとって来ようか?」

 

 千草ぁっ、違うそうじゃないその気遣いは無用だよっ。桜花が茹で上がる前になんとかしないとなんだよ!

 

「いや、俺が頼まれたんだ。俺が行こう」

「そっか、気を付けてね?」

「おう」

 

 桜花が若干ふらつきながらもなんとかこっちに歩いて来ようとしてるのをひやひやしながら見つつも千草達から引きはがす事に成功した。というかあのジャグジーみたいに見えたあの温泉、沸騰してないか? キューイならまだしも桜花入れるのは流石にきついだろ。

 って桜花、此処で倒れるな倒れるな、まだ千草達から見える。

 

 

 

 

「すまん、助かった……」

「いや、最初から熱いなら熱いって言えばいいじゃないですか」

 

 茹で上がる寸前になんとか助け出して水分補給したおかげか、顔色は若干戻りつつある桜花を荷物を置いてある場所に預けー、一応とってもらった桶は……そこらに浮かべておくかなぁ。

 ヴェルフの所にでも戻って、桜花は一人で大丈夫か?

 

「あぁ、少ししてから戻る」

「そうですか。何かあったら声上げてくださいね?」

 

 今の所はモンスター居ないけど、どう転ぶかわからんしね。

 桜花は問題なさそうなのでヴェルフの所に戻るかと足を向けた先。

 ヴェルフが岩に向かって(ノミ)(ハンマー)で彫刻を彫っていた。いや何してんだヴェルフさんや。

 

「心頭滅却、心頭滅却」

 

 リューさんはその後姿を眺めてるだけだし。何してんだ……? 心頭滅却? 熱かったのか? だったら温泉出て涼めばいい話だろうに。

 

「どうもリューさん、ヴェルフは何を?」

「私にもわかりません。唐突に彫刻を始めたモノで」

 

 ふむ? リューさんに背を向けて懸命に岩に何かを刻み込むヴェルフ。迷宮だから再生しちゃうし無駄なんだが────見事な神ヘファイストスの彫刻が岩に刻み込まれている。いや凄いな、流石というかなんというか、その器用さの使い方はどうなんだ?

 

「先程から何をしているのですか?」

「それを言うならお前こそ……此処は温泉だぞ」

 

 ヴェルフのツッコミも尤もである。がヴェルフの行動も突飛といえば突飛なんだよなぁ。

 振り返りもせずに返事をするなんてヴェルフらしくないというかなんというか。誰相手でも視線を真っ直ぐ向けて話す男だと思ってたんだがなぁ。

 

「知っています」

「じゃあなんで」

「此処が本当にただの温泉なのか、私には少々疑問なのです」

「なっ、どう言う事だ……あっ」

 

 やっと振り返ったかと思えば顔真っ赤にしてすぐに岩の方に向き直る始末。向けられた視線はー、リューさんの太腿。視線の置き場に困ったのか?

 

「心頭滅却、心頭滅却、心頭滅却!」

「ただの勘です。クラネルさんにも伝えましたが私の勘はよく外れる」

 

 リューさんは視線を向けられた事に気付いてるのか……。気付いてはいるのか。触られたりしたら問答無用でぶっ飛ばされるけど、視線だけならオッケーなのか?

 

「ただのブルマだ、そうただのブルマ……」

 

 おいヴェルフ、心の声漏れてるぞ。というかブルマは刺激がつよ……過ぎ? 水着と大して変わらんだろうに、ブルマの何が男をそんなに駆り立てるのか。下に下着も履いてる訳だから防御力は水着より高いだろ?

 

「煩悩退散っ、煩悩退散っ」

 

 まあ、男ってのはそういうところあるからなぁ。しかし、ただの温泉、とは思えんよなぁ。

 ヘルメスが姿を隠してるのも気になるし。やっぱ警戒はしとくべきだろうなぁ。

 

「ミリア様、どうかなさったんですか?」

「リリ? 戻ってきたの?」

「はい、喉が渇いてしまったので。ベル様なら彼方の方に行きましたよ、ヘスティア様と一緒に」

 

 リリに水を渡しつつも視線を向けるが、結構入り組んでいるのかベル達の姿は見えない。というかくるぶしが浸る程の深さの浅い温泉が通路の奥まで続いているのが見えた。奥地は危なそうなんだが、迎えに行くべきか?

 

「ミリア様、一つ気になったのですが」

「何?」

「ミリア様はベル様の事がお好きではないのですか?」

 

 んむ? 好きかって?

 

「そりゃ好きだけど、どうしたの?」

 

 疑問に答えるとリリが不思議そうな顔で首を傾げてきた。

 

「いえ、好きだという割には、ヘスティア様みたいにあまり積極的にいかないなーと思いまして」

 

 ああ、ヘスティア様みたいにガンガンと距離詰めていちゃいちゃしようとしないって事か。

 『好き』なのは間違いないんだが、多分リリの言う『好き』と俺の言う『好き』は違うんだよな。

 

「私の好きはLOVEではなくLIKEですからね」

 

 イチャイチャしたい、とは思わない。どちらかといえば、そうだな……一緒に居たいってのは多分同じなんだ。けれどそこから先、深い関係になりたいかっていうと、うぅん。

 そもそもの話、LOVEとLIKEって同じようなモンだと思うんだよなぁ。違い? んなもんセックスしたいかしたくないかじゃないか? 性欲と混じり合えばLOVE、混じらなければLIKEだろう? 違うのか?

 

「ミリア様は、なんていうか……欲が無いですよね」

 

 なんて失礼な。俺にだって欲の一つや二つあるに決まってるだろ。

 

「例えば、何があります? リリはベル様と一緒に居たいですし役に立ちたいです。後ヘスティア様には負けたくありません」

 

 俺もほぼ同じなんだが。

 

「ミリア様は積極性が無さ過ぎて無欲に見える事があるんですよ」

 

 無欲って程無欲じゃないだろ。流石に……美味しい食べ物は食べたいし。気持ち良い事は嫌いじゃない。楽しい事だってしたいし。人並にはあると思うんだがね。

 

「私にも人並に欲ぐらいありますよ」

「……そうは見えませんけどねぇ」

 

 どうしてそんなに疑うんですかね。

 リリの疑いの眼差しを受けつつももう一度温泉に浸かっておく。温泉から出て動き回ってたからか少し冷えた。桜花は桜花でもう回復して程よい湯加減の所で浸かってるし、ヴェルフは煩悩を払うべくヘファイストス様の彫刻を彫り進め────全然、煩悩払えてねぇよアレ。上半身は完璧なのに下半身、ヘファイストス様がブルマ履いてんだけど……。

 ミコトたちも吹き出し口から戻ってきてゆったり浸かって。リューさんはいつの間にか蓮の葉を降りて岩場に腰かけて釣り糸を垂らしてる。ちょっとリューさん上級者過ぎませんかね。

 リリが俺の横に浸かって再度口を開いた。

 

「そうですよ、だってミリア様から()()()()()()()ってのを聞いた事ありませんし」

 

 いや、俺は俺で予定立てて動いてるし、ね? やりたい事はちゃんとやってるよ?

 

「そうですかぁ?」

 

 なんでそうぐいぐい来るんですかね。俺何かしましたっけ……?

 

「私何かしたっけ?」

「むしろ何もしていない様に見えるんですよ」

「……してない様に見えるって言われても」

 

 じゃあ逆に何をすればいいの? って話よ。もっと欲望に素直になれって?

 普段から警戒しながら生活してるし、表面を取り繕ってるから無欲に見えるのかね。美味い話には裏があるって警戒して食いつかない所とか?

 欲、欲ねぇ。

 

「そういえば性欲は一切ないですかねぇ」

「は?」

 

 ミリアになってからムラムラしたりとかは一切無かった気がする。そもそも前世の時点でムラムラしたりとかは無かったなぁ。いや、完全に無欲って程じゃないけれど、やっぱ他の人と比べると淡泊だったというかなんというか。

 言いたくはないが、女性と性交するより親父とゲームやってた方が楽しかったし、高校生の時に付き合ってた彼女からデートに誘われてたのに親父とのゲームを優先して関係ぶっ壊れたりしてたしなぁ。

 彼女の名誉のために言っておくが、普通に美少女だったし学校ではかなりモテてる子だった。初めての相手でもあったのだが、なんというか何処まで行っても性交の度に違和感を覚えてたのも影響がでかいのかもしれん。

 

「セックスしたいとか、ムラムラしたりしないんですよね」

「…………ミリア様、リリが言いたいのはそう言う事ではないのですが」

 

 凄まじく冷たい視線が突き刺さる。いや、だって三大欲求じゃん? お腹空いたりするし、眠くなったりはするけどムラムラはしないんだよ。

 というかどう言う意味なのだろう? 察しが悪い訳ではないはずなんだが、言いたい事が良くわからん。

 

「はぁ、ですからミリア様がやりたい事っていうのをミリア様の口から全くと言っていい程聞かないんですよ」

「……? そうかしら?」

「そうなんです!」

 

 いや、其処まではっきり言わなくても。

 って言ってもなぁ、()()()()()ってのがそもそも何を指すのかわからんのよなぁ。

 

「ミリア様、ミリア様は今何がしたいのですか?」

「何って、特に何もないけど?」

 

 強いて言うなれば、何事も起きずにいてくれればいいし。あ、ヘルメスはもげれば良いと思ってる。

 

「……はぁ」

 

 これ見よがしに溜息つかれるとちょっと複雑な気分になるんだけどなぁ。

 

「ベル様は自分のやりたい事を口にしますよ。例えば────モルド達を助けたいとか」

 

 あー、あぁ、うん。ようやく察しがついた。

 それはアレだな、()()()()()というよりは()()()()だ。

 周りの意見を押し切って自分の意見を通そうとする。そういうワガママを全く言わない、それが気になるって事か?

 

「……そんな感じです」

 

 不貞腐れた仕草のリリに思わず首を傾げた。何をそんなに不貞腐れる必要があるんだか。

 ワガママ塗れっていうのは若干面倒くさい奴になるだろうに。

 

「ミリア様は、リリ達の事が信用なりませんか?」

 

 んむ?

 

「ベル様はちゃんとワガママを言ってくださります。普通なら見捨てる場面で『助けたい』って口にします」

 

 まあ、それがベルの美徳だしね。人によっては悪癖ともとられかねん部分ではある。俺からすれば魅力的な人物なんだがねぇ。

 

「ですが、ミリア様はそう言う事を口にしませんよね」

「してる積りだけど?」

「ミリア様は常に選択肢を上げるだけでした」

 

 十三階層にて所属不明な冒険者を助けるか否か。それがタケミカヅチファミリアだとわかった直後に『自らが囮になるか、見捨てて逃げるか』の選択肢を迫る。十五階層で『リーダーを代わるか否か』。

 俺が上げた意見は一つではなく複数。俺が選んだ選択を勧めるのではなく、俺はあくまでもベルの前に『こういう選択肢がある』と示しているだけにしか見えなかったらしい。

 選んだのはベル。そして俺はそれに従っているだけだと。

 ベルの事が好きだと口にするが、積極性は一切無い。これ見よがしにヘスティア様やリリがベルに迫っても平然と他人事の様に構えていて、まるで無欲に見えると。

 まるで俺の意思が見て取れない。何を考えていて、何がしたくて、何をして欲しいのかがさっぱりわからない。

 

「リリはベル様だけではなくミリア様にも恩があるのです。なのに、ミリア様に何をして差し上げればいいのかさっぱりわかりません」

 

 あー、何をしてほしいか。かぁ……恩返ししたいけど相手が何考えてるのかわかんなくて何したら良いのかって話ね。

 ……逆に聞いていい?

 

「私って、何をしてほしいんでしょうか?」

「……それをリリに聞きますか」

 

 いや、だってね? リリを助けたのは()()()()()()()()()()()からであって、リリに何かして欲しくて助けた訳じゃないんだよ。

 

「強いて言うなれば、そうね、今のままで良いと思うんだけれど」

「今の、ままですか」

 

 サポーターとしてパーティーの土台を支えてくれてる現状で十二分に満足してる。それ以上を求めるのはどうなのかとは思うし、何処まで求めて良いのかわからん。

 そういう意味では、無欲と言えば無欲なのかもしれん。

 

「じゃあ、地上で今度ご飯奢ってくれたら良いわ」

 

 正直、何かして欲しい事と言われても何も言えん。本当に()()()()のだ。

 

「はぁ、ミリア様はなんというか、凄くわかりやすい性格してる様に見えますけど、よく見ると何を考えているのかさっぱりわからない性格してますよね」

 

 それはー、そうかもしれないね。

 自分の心を隠して、相手の心の内を読み解き、相手の欲する姿を演じる。そうすれば人は容易く騙せる。今までそんなことを繰り返してきた影響か、やはり何処か心を隠して────隠してるのか?

 そもそも、欲求が薄いのは、何処かに無くしてしまったからか?

 

 食欲(美味しい物食べたい)睡眠欲(ぐっすり眠りたい)性欲(気持ちよくセックスしたい)

 

 そういった当たり前すら何処かに置いてきた? 困ったな、ベルに置いて行かれたくないとは思う。其の為に強くなりたいと思っているんだが、それ以外に何か欲しいモノっていうのがさっぱり浮かばない。

 強い武器? 高品質な防具? それは、なんか違う気がするし。

 

 そういえば、誰かに何かして欲しい。そういった事は、あんまり考えた事無かったな。




 現状のクラスと容姿について。

 クーシー・スナイパー:狐人(ルナール)
 クーシー・ファクトリー:犬人(シアンスロープ)(垂れ耳)
 クーシー・アサルト:狼人(ウェアウルフ)(尖った三角耳)
 ドリアード・サンクチュアリ:変化無し

 これは、アレじゃな? ケモ耳と言えば猫耳じゃろ? 猫耳が足りぬな?
 つまり猫人(キャットピープル)の為に召喚(ケットシー)型を追加するじゃろう?
 ……キューイ、ヴァン、結晶竜の三匹居る状態で召喚型追加って無理じゃね?

 でも魔法少女()に秘策有りなのだ。

 別に竜を召喚するだけが召喚魔法ではないであろう?
 つまり爆弾召喚して降らすとかそんな感じで良いんじゃない? 自分中心に爆弾の雨を降らして個人で絨毯爆撃しちゃう感じのぶっ飛んだケットシー型が居ても許されるでしょ。
 むしろぶっ飛んだ設定の多い『ミリカン』なら居そうだし。

 今までのが単体に強いクラス多いから、今度は集団相手に強いクラスを実装でより戦略に幅を持たせる事も出来る。良いのではないだろうか。
 ケットシー:ボンバーレイン? 良い感じの名前浮かべば……と思ったけどよくよく考えると現状でも持て余してるクラスあるし追加し過ぎても死に設定になるから活用できる場を考えてから追加した方がよさそう。

戦争遊戯中にミリアに使用してほしいクラスについて(参考として)

  • クーシー・アサルト
  • クーシー・スナイパー
  • クーシー・ファクトリー
  • ドリアード・サンクチュアリ
  • フェアリー・ドラゴニュート(追加習得)

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