魔銃使いは迷宮を駆ける 作:魔法少女()
透き通った湯を手ですくい、丁重に髪を洗っていく。
綺麗な髪なので切るのは勿体無いとヘスティア様達に言われてそのままにしているが、長い髪は単純に邪魔だ。
まあ、無理にカットする必要はないか。
「ミリア様の髪は綺麗で良いですよね」
「そう? 長いから結構面倒なんだけど」
リリは少し癖っ毛なのか跳ねてるしね。素直なストレートである俺の髪を羨ましいと思うのは普通か? むしろリリくらいの癖っ毛だったらそれを理由にショートに纏めるんだがねぇ。
ふと周囲を見回してみると、桜花は一人で程よい湯加減の湯に浸かっており、ヴェルフは煩悩を払うべくヘファイストス様の彫像を彫り込んでいる。
ミコト、千草、アスフィの三人は談笑しながら湯に浸かっていて、リリは俺の隣で此方を羨ましそうに見ていた。
リューさんは、釣りモドキをしているさ中で────温泉の色が急激に変化していく。
湯の色合いが透き通る色合いから、淡い緋色に変化していってる。何事?
沸きだし口の湯から一気に色が変わっていっている。間違いなく異常事態だろ、湯が毒性に変化するとかそんな感じか?
俺が先程、桜花に回収を頼み、結局使わずに温泉に浮かべていた桶が変化した温泉の辺りを漂い────ジュゥッという異音と共に溶けた。一瞬で、である。
おいおいっ!? こんな罠聞いてねぇぞっ!?
リリの腕を掴んで引っ張って温泉から飛び出しつつも声を上げた。
「全員、今すぐ温泉から上がって! 何かおかしいわ!」
「ミリアさんに同意見です、すぐに上がるべきかと!」
「え?」「おかしい、ですか?」
「ちょっ、ミリア様いったいどうしたんですか」
って変化早過ぎるだろ! 上がるのが間に合わん。リリだけでも──ダメだなこりゃ。
湯を掻き分けて温泉を出ようとしたが間に合いそうにない。お姫様だっこの要領でリリを抱え上げるが、変化した赤い色合いが俺の元まで辿り着く。それだけにとどまらず一瞬で湯が薄い緋色に染まりあがった。
ジュゥッという異音。リューさんの浮かべていた釣り糸の先の浮きも綺麗に溶けてなくなり、湯が遂に俺の腰下の所まで辿り着き────下半身を溶かされる可能性に背筋が泡立つ。
下半身の痛みは無い。特に違和感は────布の欠片の様なモノがさぁーっと湯舟の中で踊っていた。赤色の布切れ、ちょうど俺の水着と同じ色合いの布切れだ。
水着が溶けた? 下半身に違和感はない、しいて言うなれば下半身を守っていた布の感触が消えただけで他に異常はない。
「ミリア様、いったいどうし────」
「きゃぁっ!?」「なっ!?」「水着がっ!」
アスフィさん達の所まで辿り着いた所で水着が凄まじい勢いで溶けていく。まるで湯に溶ける様に消え去り、俺が抱えるリリと湯に浸かっていないリューさん以外が生まれたままの姿を晒していく。
アスフィさんのスク水も、ミコトのタオルも、千草の水着も、俺の水着も溶けた。ついでに桶とリューさんの釣りモドキの浮きも溶けた。しかし人体に異常らしい異常は発生していないのか?
「これは、どういう」
「おぉ! 凄い眺め」
岩場の影からひょいと顔を出しこちらをニヤけた笑顔で見つめる穴の開いた羽帽子の男神の姿を見た瞬間、アスフィが目にもとまらぬ速さで動き、その男神を拘束して向こう側に顔を向けさせて此方を見れない様にした。
早過ぎて何が起きたのかわからんかったぞ。
「な、何が起きているのですか」
「わからないけど、水着が溶けたわ」
「溶け……え?」
抱えているおかげで水着が溶けずに済んだリリをそのまま温泉の外まで運び、神ヘルメスに詰め寄っているアスフィの後ろから近づいた。
「『ショットガン・マジック』『リロード』」
「まっ、待ってくださいミリアさんっ!」
「どいてください。ソイツの頭吹っ飛ばしますんで」
「ちょっ、そこをなんとか。今事情を聞きますんで! ヘルメス様っ! あれほど余計な事をするなと!」
ヘルメスに詰め寄る姿を見つつもこれ見よがしに銃口をチラチラ。テメェさっきまで何処かに隠れてこそこそしてやがったろ。犯人はヘルメス、間違いねぇ。
「言いがかりさ、俺は無関係さ」
あぁ? 何言ってやがるテメェ。
無関係かどうか確かめてやろうか? あぁ?
桶、は使えないな。しゃーない、手ですくってかけるか。
一度魔法を解除し、ちっちゃな手でほんの少量の湯をすくい、ヘルメスの水着にかける。一度、二度、三度────水着が溶け始めた。
「ミリア様何をしているのですかっ!」
「溶けてますっ溶けてますって!」
「何って、ヘルメスが犯人か確かめてます。水着が溶けたので、灰色ですかね。ほぼ黒だと思いますけど」
「……ミリアちゃん、俺のお尻が寒いなぁーなんて」
ヘルメスの尻が丸出しになるまで温泉の湯をかけつづけ、ちゃんとヘルメスの水着も溶ける事を確認した。
とはいえ、これだけでヘルメスが犯人ではないと決めつけるには早いだろう。自分の水着にも細工していた可能性は高そうだしなぁ。
「……これは神ヘルメスの悪戯とは思えない」
「リューさん? ですが水着が溶けるなんてヘルメスがやりそうな気はしますが」
「そうでしょうか?」
「ほら、温泉の湯に何か混ぜると水着が溶ける様に細工してたとか」
皆が腕組をしてヘルメスの背中を睨みだした。いやだってそうとしか思えないし?
アスフィさんがヘルメスの耳を摘まんで問いただし始めた所で、結晶竜の声がそこら中から響き渡った。
《一杯居る! 止められないかもっ!》
「っ、この音は?」
「何でしょう?」
一杯居る? というか音? って、俺以外にはただの音色にしか聞こえないんだったか。
というか一杯? 何が一杯居るんだ?
《敵、敵が一杯! 追ってる! 止まらない!》
「敵、追ってる?」
誰を?
「まさか、神ヘスティアとクラネルさんは何処に」
「え、お二人なら奥に……」
あ、もしかして追われてるのベル達なのか?
ってヤバいっ! 結晶竜、直ぐにその場所に案内を────何してでも良いからベル達を守れっ!
小さな
温泉の奥に進んだ先に見つけたその広間の美しさに神ヘスティアと共に心奪われていたベルは、ふと違和感を覚えて周囲を見回す。何かが見ている様な、そんな違和感。
「神様、何か変ですよ」
「……変じゃないさ」
【剣姫】も居ないこの空間。ようやく邪魔者のリリが居なくなって二人きりになる事に成功し、盗られる前に想いを成就しようと告白せんとせまる神ヘスティアは違和感に気付かず、ベルに詰め寄る。
「ボクは真剣だよ」
「いや、その、そう言う事じゃなくてですね」
ミシリミシリという亀裂の走る音。鋭敏に感じ取った音に警戒し、腰を落とすベル。
対するヘスティアは今まさに胸に秘めた想いを口にしようとし────壁の崩落の音が響いた。
「なっ!?」
「モンスターっ! 神様っ!」
素早く神ヘスティアを抱えて飛び退いた瞬間。先程まで二人が居た場所に落下してくる無数の岩塊と砂利。そして怪物。
三対六つの深紅の瞳。ナマズの様な扁平な頭部に、額から生えるチョウチンアンコウを思わせる餌を惑わす誘引突起。先程まで星空とまごう輝きを担っていたのはこのモンスターの擬餌状体だったのだろう。
ベルが感じた違和感はこのモンスターだったのだろう。
急ぎ走りだし、広間から通路へと駆け込み、途中に生え茂る結晶より小さな影が飛び出し、ベルとヘスティアを追うべく水面をうねる様に走る怪物の前に飛び出した。
薄青い結晶によって形作られた手の平に乗ってしまう様な小さな飛竜。ベルが驚きで振り向いた瞬間、周囲に無数の蒼炎が弾け、通路を結晶塊が埋め尽くし封鎖した。
「あれはっ」
「結晶竜、ミリアが僕達に着けてくれてたんだっ」
封鎖された広間の向こうに数えきれない程の怪物が蠢き、幾度となく体当たりを繰り出して結晶塊を砕かんとしてきているのを見てベルは駆け出す。
結晶竜が扱う結晶塊の耐久は非常に低いのか見た目がド派手なだけであっさりと砕かれ、隙間から怪物がベル達に迫る。
武装を手にしていないベルに出来るのは魔法を使っての迎撃。
「『ファイア──ぐぅっ」
手の平を怪物に向けて魔法を発動しようとした瞬間。怪物の額から生えた擬餌状体が目も眩む閃光を放った。
一瞬で視界が白く焼けて目が眩んだ事で魔法の発動に失敗する。
怪物は素早く大口を開けてベルとヘスティアに飛び掛かった。不揃いにならんだ鋸歯が視界一杯に広がり、ベルはヘスティアを守る為に目を瞑ってヘスティアを押し倒す。
もうダメかと諦めが脳裏を過った瞬間、聞き覚えのある詠唱が響いた。
「『ファイア』『ファイア』」
タタン、タタンという連続した子気味良い発砲音。ベルとヘスティアに飛び掛かろうとしていたナマズの様な怪物に無数の風穴が刻み込まれ、一瞬で灰と化して二人に降り注いだ。
「ベル、ヘスティア様、無事?」
「ミリア、ありが────うひぃっ!?」
「ミリア君助かっ────君なんで裸なんだい……?」
一糸纏わぬ生まれたままの姿のミリアが面倒そうに頭を掻き、ボヤく。
「服を着るより二人の安全確保を優先しただけです。っと、まだモンスターが来ますよ」
ベルがミリアを視界に入れない様に逸らした先。結晶竜が懸命に押しとどめようとしている大量の怪物を見てベルは慌てて手の平を向けて構える。
ミリアも揃えて構え、結晶塊が砕け散る音と共に通路の幅限界までギチギチに詰め込まれた状態で突っ込んでくる怪物の群れを見据えた。
「ミリア、あの頭の突起、閃光を放つんだ」
「そう、とりあえず気を付けるわ」
「二人とも……」
肩を並べた二人がヘスティアに背を向けたまま言い切る。
「大丈夫です。神様は僕達が守ります」
「あれぐらいは余裕ですよ。欠伸してて待っててください」
ミリアの放つ速射の『ピストル・マジック』『デュアル』とベルの速攻魔法『ファイアボルト』によって瞬く間に殲滅されていく怪物。ついでに結晶竜も無遠慮に蒼炎を撒き散らし、結晶塊にしては砕いてモンスターを掃滅していく。
ものの十秒もかからずに二人と一匹の手によって綺麗に片づけられた怪物たち。膝丈の温泉に沈んだ無数の魔石の輝きを眼にしつつもベルは気を抜いて後ろを振り返り────水着が溶け落ちた神ヘスティアを見て表情を引きつらせた。
「二人とも流石だよ!」
「まっ待ってください神様っ!」
興奮した様にベルに抱き着く神ヘスティア。抱き着かれた事で形を変える二つの肉を眼にしたミリアが溜息を零し、呟いた。
「先程ベルが押し倒した時に溶けたんでしょうねぇ」
「溶けた!? どういうことミリアっ!」
「なんでかは知りませんがこの温泉は人体以外を溶かす効果があるっぽいですね。水着とかが溶けてしまったんですよ」
ぎゅっと抱き着いてくるヘスティアにベルが離れてと騒いでいると、数人がバシャバシャと音を立てて走って近づいてきているのに気付き、ミリアが其方の方に視線を向けた。
「クラネルさん、神ヘスティア、ご無事ですか!」
「リューさん」
ヘスティアとベルの危機に気付いた瞬間に駆け出したミリアを追ってきたリュー達の姿を確認し、ミリアは肩を下ろした。
しっかりと衣類を纏ってきたアスフィ、リリ、ミコト、千草の姿にミリアが呆れた様に吐息を零す。
「ミリア様、服ぐらい着て行けば」
「それで間に合わなかったら私はどんな顔をすればいいのよ……」
リリから外套を受け取り肩から掛けた所でミリアは近くにふらふらととんできた結晶竜を掴み取った。
ヘスティアはアスフィから外套を借りて身を隠し、ようやく一息つけるとベルが吐息を零して、気付いた。
ベルの手に薄っすらと光が宿っている。【アルゴノゥト】の発動状態となっているのに気付いたベルが周囲に視線を向けた所でミリアが奥の広間を指さして言った。
「あの巨大な赤い球体。あれもモンスターの一部みたいです」
「……新種? あの巨大なアレが?」
「先程居たモンスターの、親玉でしょうかね」
先程の無数に居た怪物の大きさがおおよそ2M前後。その擬餌状体の大きさは20C程。
そして大部屋の中央に存在する擬餌状体の大きさはそれだけで1Mは在りそうなほど大きい。その全体の大きさを想像したベルが身を震わせ、他の皆は眉を顰める。
同時に響き渡る地響き。巨大な化け物が脈動し、迷宮に響き渡る鼓動の様な振動。
ミリアの言葉を裏付ける様に天井から釣り下がる赤色の球体の周辺に亀裂が走り、遂に重さに耐えきれなくなったのか大量の土砂と共に化け物が現れた。
湿気によってそれほど土埃は立たず、それでも舞い上がった多少の土埃もすぐに晴れてその全貌が明らかになる。
五対十つの深紅の瞳は怒りに染まりあがっていた。横幅だけでおおよそ8M、高さは4M、その額には真っ赤な擬餌状体と、それに加えて無数の誘引突起の様な触手。それも鞭の様にしなり、周辺の結晶塊を無差別に砕き壊している様からただの器官の一つではなく攻撃手段の一つである事が伺える。
「あれが」
「温泉の主……」
大きく振り上げた深紅の誘引突起。丸太の様な触手にも見えるソレが通路の途中に居たベル達に振り下ろされる。天井に生え茂る結晶もものともせずに振り抜かれ、リューが神ヘスティアを、アスフィがリリを抱えて飛び退り、残りの面々は各々回避した。
轟音と共に振り抜かれたソレ、ミリアが舌打ちしながら様子見に発砲するも滑り気を帯びた軟体に弾かれるのではなくヌルリと逸らされて魔弾はあらぬ方向に飛んでいく。
「チッ、効いてないっ」
「ミリアっ! おおおぉぉぉぉおおっ!!」
振り下ろされた丸太の様な触手。天井にまで飛び上がり回避していたベルが天井を蹴って落雷の如き勢いでその触手を踏み潰す。
ブチリという音と共に大量の血を噴き出した触手が引き戻される。先端についていた擬餌状体は千切れ落ちて転がる中、ミリアとベルが視線を交わし、頷き合う。
「ミリア、道をお願い」
「おっけぇ、真っ直ぐ進んで良いわよ」
二人が頷き合い、ミリアがその場で両手を突き出し、魔法を詠唱する。
先程までの簡易詠唱による並行詠唱ではなく、集中詠唱による威力の増大を図った詠唱。
対するベルはミリアの詠唱が終わる前に光が零れ落ちる拳を握り締めて呟く。
「『ピストル・マジック』『デュアル』『リロード』」
「神様は必ず守ります」
「ベル、いつでもいけるわ」
「わかった!」
真っ直ぐ、何の小細工も無しにただ真っ直ぐベルが怪物に向かって駆け出していく。
一番太い触手を千切られた怪物は痛みで悶えながらも恨みを晴らすべくベルに集中し、無数の細い触手がベルに襲い掛かった。
「ベル君っ!」
「彼は何を……」
ヘスティアの叫び。そして無謀ともとれる愚直な突撃にアスフィが目を細める。
真っ直ぐ駆け抜けるベル、その背後から無数の魔弾が飛来して彼に当たる軌道を描いていた触手が弾け散る。
ビシャンビタンと水が爆ぜ、壁が爆ぜ、縦横無尽に振るわれる無数の鞭による嵐にも見紛う触手の乱舞。
アスフィとリューが目を見開いた。
「『ファイア』『ファイア』『ファイア』」
タタン、タタン、タタンと断続的な発砲音。
左右の手それぞれに宿る魔法陣、銃口から放たれる魔弾がベルに迫りくる触手を片っ端から打ち落とし、真っ直ぐ進むベルの障害を撃ち落としている。
ほぼ間をおかずに放たれる魔弾。それも両手の指先から、魔法による補助もなくただ集中する事で鞭の様にしなる触手を寸分狂い無く撃ち落とし続けるミリアの姿に第二級冒険者である二人が驚愕の表情を浮かべる。
「まさか、一瞬で狙いをつけている」
「それもあの無秩序な乱舞から的確にクラネルさんに当たるモノだけを弾いて」
ミリアの神業の様な射撃に感心すると共に、そのミリアの腕に完全な信頼を置いて一切の回避行動をとらずに、すぐ目の前に迫った一撃にすら瞬きの一つもなく駆け抜けるベルの姿にも驚愕して言葉を失う。
「ミリアっ!」
「了解っ!」
ベルが大きく跳躍した瞬間。一気に両手の指では数えきれない程の触手がベルを打ち落とさんと迫り、ミリアが瞬く間に打ち落とした。
温泉の主である怪物が触手での迎撃が不可能だと判断したのか、そのまま大口を開けてベルを迎え撃つ。
立ち並ぶ歯列。数え切れぬ程の鋭い歯の生えたほの暗い口内を見据え、ベルは大きく拳を突き出した。
「『ファイアァボルトォッ』!!」
ベルの左手より弾けた炎が温泉の主の口内へと吸い込まれていき、その巨体が風船の様に膨らむ。
瞬きの間を置き、爆炎が弾けた。
爆風と共に周囲を薙ぎ払い、温泉の湯が吹き飛んで一瞬だけ底があらわになる。
以前に此処を訪れて犠牲となった冒険者達の遺骨が沈んでできた底に積り積もった骨。それも一瞬で戻ってきた若干くすんだ湯によって覆い隠されてしまう。
ほんの少し抉れた広間の中央。膝を突いたベルが顔を上げ、ミリアに向かって微笑んだ。
「ミリア、ありがと」
「こっちこそ、ありがと」
道を切り開いてくれて、自分を信じてくれて。互いに感謝の気持ちを伝え合い、駆けてきたヘスティアがベルに飛びついた。
「ベル君っ!」
外套一枚下が裸であるにも拘わらず恥ずかしがるでもなく飛びついたヘスティアの様子に同じく外套一枚のみでその下が裸のミリアが顎に手を当てて呟いた。
「あれ、外套着てる方が痴女っぽさある気がするんですけど」
「何を言っているんですかミリア様、というか前ちゃんと閉じてください、見えてますから」
近づいてきたリリの指摘にミリアが肩を竦め、外套をしっかりと着込み、再度ベルの方に視線を向けた所で顔を引きつらせた。
「あ……」
「どうしたんですかミリアさ────あっ」
同じ方向を向いた瞬間にリリも同じ光景を目にし、一瞬で顔を真っ赤にして動きが止まった。
アスフィもリューも、ミコトも千草もベル達の方を見て一瞬動きを止めた。
「神様が無事でよかったです。アスフィさん、神様を庇っていただいてありがとうございました」
ベルの言葉を聞き、再起動したアスフィがそれとなく視線を逸らして呟く。
「礼はともかく、その……隠した方が良いのではないでしょうか」
リリは顔を真っ赤にして鼻血を零し。ミコトと千草は頬を染めて何度もベルの方をちらちらと見る。
リューは目を覆い隠し、指を開いたり閉じたりしてチラチラとみている。
ミリアの方は額に手を当てて呆れ顔でリリを見て小さく呟いた。
「いや、たかが裸如きで鼻血出すのはどうなのよ……処女でもそれはないでしょ」
皆の不思議な反応にベルが首を傾げ、ミリアとのやり取りを思い出して顔を引きつらせる。
彼女はこう言っていた『なんでかは知りませんがこの温泉は人体以外を溶かす効果があるっぽいですね。水着とかが溶けてしまったんですよ』と、そして彼はつい先ほど膝を突いていた。
水着はばっちり温泉に浸かっていた事も同時に思い出す。
温泉の主を倒した事でその効力が失われていないかと一瞬期待するも、ベルが自身の下半身に視線をやればグズグズに溶けた水着がはらりと零れ落ちる瞬間であった。
「わあああっ!?」
一瞬だけ露わになったそれをみていたミコトと千草がか細く悲鳴を上げ、リューは目を覆うふりをしてばっちり目撃。アスフィは眼鏡の位置を直しつつも見据え。
リリは興奮し過ぎたのかそのままふらりとよろめき、ミリアに抱えられた。
ミリアの方は呆れ顔のままリリの容体をみて溜息を零す。
水着が溶け、シャツ一枚になったベルが必死に下半身を隠そうとする。
「見ないでください神様っ!」
「良いじゃないかベル君、ボクとキミの仲じゃないか」
がっしりと抱き着くヘスティア様を振り払うに振り払えないベルが必死に下半身を隠す中、ミリアの溜息が小さく響き渡った。
温泉の入り口。見渡せる限りの幻想的な温泉を見渡したヴェルフが口を開いた。
「しっかし、温泉全体がモンスターの罠とはなあ」
「此処を見つけた冒険者は皆彼らの餌食になったのでしょう。道理でマッピングされていないはずです」
アスフィの言葉を聞き、ミリアが大きく頷く。
此処に居たモンスターの性質。そして温泉の性質から武装類を強制的に使用不可能にし丸裸にしたうえであの奥地での強襲。
それに加えて額に生えた突起から放たれる強烈な閃光。
武装の損失と強襲に狼狽えつつも立て直そうとした所を閃光で目眩ましして一飲みにする。そんな方法で数多くの冒険者が屠られたのであろう事は容易に想像がつく。
「帰ったらギルドに報告しないといけませんね」
危険極まりない怪物の罠場としてギルドに報告せねば、運良くこの未調査区域を見つけ
そう締めくくったリリの言葉に全員が頷く中。
ミコトが皆に対し極東における最上級の謝罪法である土下座を披露した。
「本当に申し訳ありません。自分が温泉に目が眩んだばかりに……」
「気にする事無いさ。のんびりできたのは事実なんだし」
「ヘルメスは反省してくれませんかね」
気にするなと口にしたヘルメスに対し鋭く睨み付けて不機嫌そうに声をかけるミリア。
未だに根に持っているのか彼女のヘルメスに対する風当たりは非常に強い。
アスフィはそれも仕方ない事だと諦めヘルメスのヘルプサインを意図的に無視した。
「ではそろそろ行きましょうか」
リューの言葉を皮切りとし、皆が立ち上がって帰りの上り坂を登り始める。
ミリア、ヘスティア、ベルと三人で肩を並べて歩く中、ヘスティアは笑みを零して二人の前に出て振り向く。
「帰ろう、二人とも、ボク達の
「はい、神様」
「そうですね」
ふと気づいた事を一つ。
いつの間にか赤評価になってるじゃないですか。ヤッター!
いやぁ、もう赤になる事は無いだろうなぁとか思ってたけどいけるもんですね。
なお低い評価一つついたら落ちる程度のギリギリのラインなので投降後に下がってないとは言い切れない模様()
っと、ただ自慢したい訳じゃなくてですね。私から言いたい事があるんですよ。
諦めなければ赤評価にだってなれるんですよ。ほらこの作品、一時期は6.20ぐらいだった評価が今では8.01ですよ。諦めずに更新し続ければ可能性はゼロじゃない。
つまりどう言う事かって? 橙評価で上がらないからって絶望して更新止めるんじゃなくて更新し続ければいつか赤にだってなれるのさ。つまりTS幼女モノもっと更新頑張って!
一つアドバイスというかダンまち長編書く場合、私が意識してる部分。
・レベル差は顕著にしとこう
簡単にレベル差を超えちゃうとランクアップが軽くなりがち。むしろ死ぬ気で頑張ってようやくぐらいにしとくとオリ主もカッコよく見えるし、そこらへん軽く扱わない様にすると長編で長くオリ主をかっこよく書ける。
・困ったときのフレイヤ様
オリ主の動きが明らかにおかしくなるなって思った時は『フレイヤ様の魅了の所為やったんや』ぐらいでなんとかできるのでフレイヤ様の魅了はむしろ効く方が書くの楽やね。
というかそうしないと性格的に『グリモア』の扱いに困った()
・能力にはメリット・デメリットを設定する事
強さは特に関係ないですが、強い能力とかは特にそうですかね。
デメリット無しの能力は長編だと途中で扱いに困る事があります。そうなったらどうするかっていうと『オリ主がその場面に居ませんでした』とかの対処法ぐらいしか出来なくなってオリ主がフェードアウトしかねないのでデメリットを入れてその場面において『デメリットの所為で使えません』という言い訳を用意しといた方が楽できる。
なんでもできる万能オリ主はカッコいい。私も認めるしそうしたいのも山々。
この作品のオリ主『ミリア』も万能感満載でいってるし。でもデメリットつけて色々と弱体化してようやくバランスを保ってる感じ。そうしないと途中で能力過剰過ぎて扱い切れずにエタる。
皆もTS幼女×ダンまちモノ書けば良いよ……私も頑張って更新する。皆も更新して作品が増えれば私も嬉しい。皆も嬉しい、まさにWin-Winな関係じゃないですか。
第一話だけ投稿してエタってるの悲し過ぎるから皆頑張って……。ミノタウロス編までとは言わないから、せめて怪物祭のシルバーバック=サンまではいこう?
戦争遊戯中にミリアに使用してほしいクラスについて(参考として)
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クーシー・アサルト
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クーシー・スナイパー
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クーシー・ファクトリー
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ドリアード・サンクチュアリ
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フェアリー・ドラゴニュート(追加習得)