終焉の聖騎士伝説~オメガモンとなった青年の物語~   作:LAST ALLIANCE

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これで3話連続でタイトルに聖騎士が付いてしまった……次でもうラストにします。
今回で話のストックが無くなったので、次の投稿は少し時間が空きます。
直ぐにでも投稿したいですが、何しろ展開を考えないとなので……
では盛りだくさんの第2話、お楽しみ下さい!



第2話 聖騎士の初陣

 東京湾の近く。既に多くの人々が集まっているその場所では、2体のデジモンがゆっくり間合いを取りながら、睨み合いをしている。

 聖騎士ことオメガモンは目の前の悪魔を絶対倒すという強い思いを持ち、悪魔ことディアボロモンは、目の前の聖騎士を憎しみに満ちた視線で睨んでいる。

 彼らが考えている事は1つだけ。どのようにして目の前の相手と戦うのか。要は相手との戦い方だ。

 

(参ったな……戦いにくい)

 

 オメガモンこと八神一真。彼は目を横に動かし、周囲の状況を確認する。目の前にディアボロモンがいて、自分達で取り囲む形で多くの人間達がいる。

 この状況はオメガモンにとって好ましくない。理由はシンプルだ。自分が戦いにくいだけでなく、大勢の無関係の人々を巻き込む事となってしまう。そういう意味で“戦いにくい”と内心で呟いた。

 ちなみに、一真の親友たる武蔵は既に少し離れた所にいる。中々空気が読めるのか、デジモンに関する知識が豊富なのか。どちらにせよ、オメガモンにとって嬉しい限りだった。

 

(そう言えば、この場所の近くに東京湾があったな。あそこは海だから広い。そこに場所を移し、戦いを始めよう。先ずはそこからだ)

 

 この場所で戦っても両腕に装備されている武器を使用出来ない上に、大勢の人々を巻き込んでしまう。先ずはディアボロモンを戦いやすい場所に移動させる。

 そこからディアボロモンを倒せば良い。最初にやるべき事を決めたオメガモンの闘志が静かに昂る一方、ディアボロモンの憎悪が蒼い炎の如く燃え上がる。それを知らせるように、空気が焦げるような匂いが立ち込めて来た。

 それは2体の究極体デジモンの凄まじい闘志のぶつかり合い。そこに雄叫びも、動作もない。しかし、闘志をぶつけ合うだけで周囲一帯の空間を戦場に作り替えていく。

 2体の究極体デジモンを取り囲んでいた人間達。彼らは静かにその場所から後退し、安全と判断出来る場所まで離れた。

 それを横目で見ていたオメガモンが感謝するように頷くと、彼の目の前を一陣の風が吹いていった。

 

「ギャァァァァァァァァーーーーー!!!!!」

 

 

「勝負だ、ディアボロモン!」

 

 風が吹き終えた瞬間、戦いが始まった。ディアボロモンは雄叫びを上げながら、オメガモンに向けて突進を開始する。

 ただ突進するのではない。全身を丸めて地を這うように転がる状態で。その状態で突進し、相手を蹴散らす技。それがディアボロモンの得意技の一つ、“ページファルト”。

 

「(準備が良くて助かるよ!)行くぞ!」

 

 オメガモンは半歩下がって助走を付けると、“ページファルト”状態のディアボロモンに向けて駆け出していく。

 一体何をするのか。人々が見守る中、オメガモンは右足を大きく蹴り上げ、ディアボロモンを上空高く打ち上げる。

 

『えぇ~!?』

 

 驚愕と困惑が入り混じった声を上げる人々に構う事なく、オメガモンは屈伸をして空高く飛び上がり、ディアボロモンの真下に入る。

 ディアボロモンが自然落下を開始したその瞬間、オメガモンも後方宙返りを行い、右足でディアボロモンを東京湾の海面に向けて蹴り落とす。

 

『おお~!』

 

(成る程。一真は戦場を移したかったんだな……確かにここだと戦いにくいし)

 

 サッカーのプロ選手顔負けのオーバーヘッドキックに歓声が上がる中、オメガモンは東京湾の海面に向けて急降下し、そのまま海面の上に浮かび上がる。

 オーバーヘッドキック。サッカーにおいて、地面に背を向けた状態のまま、空中にあるボールを頭より高い位置でキックする事。

 これで戦場を移し、人々に危害をもたらす心配なく存分に戦う事が出来る。それを感じた一真が見守る中、海中に沈んだディアボロモンが立ち上がった。

 

 

 

「ウオオォォォォォォォーーーーーー!!!!」

 

「ギャァァァァァァァァーーーーー!!!!!」

 

 聖騎士と悪魔の戦いが本格的に始まった。2つの巨大な力がお互いを喰い破らんと言わんばかりに、真正面からぶつかり合う。

 オメガモンは裂帛の気合を上げながら、ディアボロモンに向けて突進していく。その速度は神速の領域。目にも止まらぬではなく、目にも写らぬ超速度。

 突進の余波で周囲に膨大な量の海水を撒き散らしていく中、ディアボロモンは両腕を伸ばしてオメガモンを攻撃していく。

 ケーブルクラッシャー。伸縮可能な腕を伸ばし、五本の爪で相手を粉砕するという、ディアボロモンの得意技。

 

「ハァッ!!」

 

 目の前から迫り来るディアボロモンの両手。オメガモンはそれをスケート選手のような華麗で最小限の動きで回避し、一気にディアボロモンとの間合いを詰める。

 幾ら伸縮可能とは言えど、伸ばしたり、縮めたりするのに若干の時間が必要になる。そのタイムラグを利用して接近し、与えられる間にダメージを与える。シンプルだが、非常に効果的な作戦だ。

 オメガモンは上半身を捻って右肘を曲げると、身体の捻り戻しを利用し、強烈な右ストレートをディアボロモンの左頬に打ち込む。

 

「ガァッ!!」

 

 どうやら渾身の一撃だったのだろう。ディアボロモンはダメージよりも、頭に凄まじい衝撃が襲い掛かった為か、動きが止まってしまった。

 そのチャンスを逃すオメガモンではない。動きが一時停止しているディアボロモンの腹部に左フックを叩き込み、今度は右アッパーでディアボロモンを打ち上げる。

 この後もオメガモンはパンチやキックといった攻撃を繰り出し続けるが、それを見ている武蔵は疑問に感じた。

 

(何で一真の奴、グレイソードを使わないんだ?)

 

 実の所、一真はオメガモンとしての初の初陣、オメガモンは久し振りの戦闘なので色々な意味で戦闘に慣れていない。

 それに加えて、ディアボロモンの戦闘スタイルも関係している。彼のパワーは究極体の中では然程高くないが、スピードは割りと高い方だ。速度はそうでもないが、敏捷や素早さではトップクラスと言っても良い。

 その相手には確実にダメージを与える事が出来る攻撃が無難だ。グレイソードのような武器は止めに使うべきだろう。幾ら左手に装備されるとは言え、振るうのにそれなりのエネルギーを使うのだから。

 

「ウオオォォォォォォォォォォーーーーーー!!!!!」

 

「ギアァァァァァァァーーー!!!!!」

 

「すげぇ!」

 

「あの白い奴押しているぞ!」

 

「このまま押し切れ!」

 

「この勝負もらった!」

 

 次々と、しかも確実にディアボロモンにダメージを蓄積させていくオメガモン。その姿に観戦している誰もが息を呑み、その勇姿に圧倒されながらも応援の声を送る。

 本来のオメガモンの力を出せれば、ディアボロモンなど一撃で倒す事が出来てもおかしい事はない。今のオメガモンはブランク等の様々な要因もあって本来の力を出す事が出来ないでいる。

 それでもディアボロモン相手に優勢でいられるのは、基本性能の高さと一真の戦闘センスもあるのだろう。

 しかし、ディアボロモンの中では憎悪の念が増してきている。元々、彼は何者かに八神一真の抹殺を命じられ、任務を果たしたかと思ったら、計算外の事態に陥っているのだから。

 自分の手で死ぬ筈だった人間が、自分を消し去ろうとする聖騎士になった。しかもその聖騎士によって、これから殺されようとしている。その事実にディアボロモンは憎悪に満ちた雄叫びを上げた。

 

「ギャァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーー!!!!!」

 

「何だと!?」

 

『なっ!?』

 

 その雄叫びに応えるように、海中から2本の長い腕が飛び出し、オメガモンを拘束しようと伸びていく。

 突然の事態に一瞬だけ動きが止まってしまったオメガモン。二本の長い腕によって拘束されてしまった。やがて海中からもう1体のディアボロモンが姿を現した。

 その隙に距離を取ったディアボロモン。隣の海面が盛り上がり、その中から更なるディアボロモンが2体姿を現す。

 

「どういう事だよ!?」

 

「何でもう3体いるんだ!?」

 

「まさか……分身出来るのか!?」

 

「何てことだ!」

 

「折角良い所まで来たのに!」

 

(まさか海中に沈んだ僅かな時間で自分をコピーさせていたのか……海中なら誰にも気づかれないし、任意のタイミングで奇襲を仕掛ける事が出来る。何て奴だ!)

 

 人々が戸惑いや悔しさに満ちた声を上げる中、武蔵はディアボロモンの特殊能力を思い出し、悔しそうな表情でオメガモンを見つめる。

 ディアボロモンの特殊能力。それは自らを大量にコピーする能力。しかも数秒間で大量のコピーを作り出す事が可能。

 武蔵の考え通り、ディアボロモンは先程海中に沈んだ時、自分のコピー体を2体作り、海中に伏せていた。後は任意のタイミングで奇襲するだけだ。

 ディアボロモンは不気味な見た目に反し、狡猾な策士だ。初めて存在が明らかになった個体の場合、アメリカ合衆国の軍事基地の軍事コンピューターに侵入し、核ミサイルを発射したのだから。

 

「クッ、離れろ!」

 

 ディアボロモンのコピー体による拘束。何とか逃れようと力を込めるオメガモンだったが、ディアボロモンは右手の爪をオメガモンの首筋に突き刺した。

 そしてオメガモンの体内に何かが注入される。それは強力なウィルス。相手を弱体化させたり、動きを封じたり等何でも出来る便利なウィルス。鋭い爪から強力なウィルスを敵に埋め込む技。それは“ウィルスダウンロード”だ。

 

(何だ……力が……出ない……)

 

 羽交い絞めにされている状態に加え、ディアボロモンのコピー体に強力なウィルスを注入され、身動き一つ取れなくなったオメガモン。

 ディアボロモンのコピー体が更に力を込めて抑え込むと、3体のディアボロモンはまたとないチャンスの到来に歓喜の笑みを浮かべると、胸部に内蔵されている砲身の照準をオメガモンに合わせる。

 そして周囲一帯に存在するエネルギーを砲身に集束させ、砲身の内部でエネルギーを弾丸状に形成し、凝縮すると、次々とオメガモン目掛けて撃ち出す。

 

「グアアアァァァァァァァァーーーーー!!!!!」

 

 カタストロフィーカノン。胸部の発射口から強力な破壊エネルギー弾を発射する、ディアボロモンの必殺技。

 それを3体同時に次々と撃ち込む。十発。ニ十発。三十発。何発撃ち込んだのか途中で数えるのが嫌になる程、3体のディアボロモンは破壊エネルギー弾をオメガモンに向けて撃ち込まれていく。

 純白に輝く聖鎧が次第に凹み、傷付いていく。オメガモンの全身から爆炎と黒煙が立ち込める中、聖騎士の口から苦痛に満ちた叫び声が聞こえて来る。

 

「……」

 

 もうそろそろ良いと判断したのだろう。3体のディアボロモンが砲撃を撃つ事を一旦中止すると、爆炎と黒煙の中からオメガモンの姿が見えて来た。

 その姿に誰もが絶望しながら息を呑んだ。純白の聖鎧の至る所が傷付き、ボロボロになっているオメガモン。つぶらな空色の瞳から光が完全に消滅している。目から光が失われているとは正にこの事だ。

 聖騎士を羽交い絞めにしているディアボロモンは更なる追い打ちをかけてきた。オメガモンの背中にぴったりと張り付く。

 一体何をするつもりなのか。人々は不安と恐怖に満ちた視線で見つめる中、オメガモンの背中に張り付いたディアボロモンは、ニヤリと不気味な笑みを浮かべながら全身のエネルギーを開放し始める。

 

「まさか……!」

 

 その様子を見た武蔵は直ぐに理解した。ディアボロモンがこれから行おうとしている事に。どのような技を繰り出そうとしているのかを。

 オメガモンの背中に張り付いたまま、ディアボロモンが全身のエネルギーを全て解放したその瞬間、ディアボロモンの身体は大爆発を引き起こした。

 

「自爆したぞあいつ!?」

 

 ディアボロモンが発動した得意技。その技名はパラダイスロスト。全身の全てのエネルギーを解放し、自爆する技。俗に言う自爆技だ。

 それを見た誰もが悲鳴に満ちた声を上げたり、中には恐怖と狂気でワナワナと体を震わせ、その場に崩れ落ちる女性もいる。

 大爆発によって生じた黒煙と爆炎。それらが徐々に晴れていくと、全身がズタボロになったオメガモンが姿を現した。

 ディアボロモンのコピー体が羽交い絞めにしていたのが身体の支えとなっていたが、今はもうそれがなくなった。オメガモンはそのまま力なく崩れ落ち、海面に倒れると共に海中に沈んでいく。

 

「嘘だろ……オメガモンが、一真が負けた」

 

 海中深くに沈んでいくオメガモン。それを目の当たりにした武蔵は目の前の現実が信じられなかった。目の前で友人を失い、オメガモンとなって復活した。そのオメガモンが負けた。つまり、一真が負けた事になる。

 何も出来ない自分が悔しい。本当に親友を失う事が悲しい。武蔵は崩れ落ち、瞳から大粒の涙を流していく。

 

 

 

(真っ暗な世界だ……僕はまた死んだかな?)

 

 全てが真っ黒に染まった虚無な世界。そこに再びやって来た一真。ゆっくりと落ちて来る彼は、ぼんやりと自分の死について考える。

 オメガモンとなったこの場所から飛び立った筈が、短時間で再びこの世界に戻ってしまった。その事を深く恥じながら思う事があった。

 

(僕はこの場所を知っている。僕がオメガモンと出会い、オメガモンとなった場所。ここから新しい僕が始まった。僕はオメガモンになったんだ。なら……やる事は決まっている)

 

 右手を前に翳して真っ黒な世界を真っ白な世界に書き換えると、再び一真はその世界から飛び立つ。内面世界から現実世界に戻る為に。

 再び立ち上がり、ディアボロモン達を倒す。負けないように抗う。そうやって生きて来たのが八神一真。現在(いま)も、そしてこれからも変わらない一つの真実。

 

 

 

『ッ!』

 

「何だ!?」

 

 突然海面の一部が盛り上がり、誰もが驚いてその場所に視線を向ける。それは勝利を確信し、雄叫びを上げていた3体のディアボロモンも同様だった。

 海水が巻き上がる中、ズタボロになりながらもオメガモンが立ち上がった。満身創痍としか言えない状態だが、まだ戦える事に誰もが希望を抱き、中には感動で泣き出す者もいる。

 

「(こんな所で終われないよな……まだ始まったばっかりなんだ。僕達のストーリーって奴がよ。なぁ終われない……フフッ。じゃあ行きますか!)ウオォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

 

『ッ!!』

 

 オメガモンが内心で自分を鼓舞しながら雄叫びを上げると、胸部に埋め込まれた紅い宝玉が眩い輝きを放つ。

 その瞬間、オメガモンの全身を覆い尽くす程の膨大なエネルギーの奔流が発生し、周囲一帯に凄まじい量のエネルギーが渦巻く。

 一体何が起きているのか。戦っていた3体のディアボロモンだけでなく、東京湾に集まっている大勢の人々や、武蔵が見つめる中、渦巻くエネルギーの中でオメガモンの瞳が空色に輝き、光を取り戻す。

 

「戦う気力がある限り負けたとは言えない……本当の戦いはここからだ!」

 

「そうだ! ぶちかませオメガモン!」

 

 オメガモンの声は若い男性の声色。しかし、そこには荘厳たる威風堂々とした聖騎士らしさがある。武蔵の歓喜に満ちた声が響く中、ボロボロになっていた純白の聖鎧があっという間に元通りになっていく。

 胸部の紅い宝玉によって戦場における様々な情報が分析され、それらから予測された結果が直接オメガモンの脳に伝達されていく。これにより、オメガモンは未来予測を行えるようになった。

 

(どうやら失われた秘奥義が一時的に使用可能となったようだな……)

 

 オメガモンは左腕を軽く振るい、黄金の竜の頭部を象った籠手から一本の聖剣を射出した。聖剣の名前はグレイソード。刀身にデジモン文字で『オールデリート』と刻まれている。

 腰を深く落としながら右肩を前に出しながら右手を伸ばし、グレイソードの刀身を地面と平行にしながら左肘を引いて剣先を相手に向け、右手を刀身に少し重ねる構えを取る。

 

「『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』が一員……“終焉の聖騎士”オメガモン、行くぞ!」

 

 名乗りを上げながら体重を前方に移動させると同時に、先程の戦いとは比べ物にならない程の超速度で突進を開始したオメガモン。

 3体のディアボロモンは完全に動きが止まっている。オメガモンの突然の復活。そして超強化。計算外の事態は立て続けに起きた事で、脳の思考速度が完全に処理速度を超え、パンクしてしまったからだ。

 オメガモンはディアボロモン達に構う事なく、目の前にいたディアボロモンの胸部に向けてグレイソードを突きだす。

 突進の勢いと強化された力、そして上半身の捻りによって生み出される必殺の刺突。それがディアボロモンの胸部の砲身を貫いた。

 

「ハアッ!!!」

 

「ガァッ!!」

 

 胸部を刺し貫かれたディアボロモンは苦痛に満ちた叫び声を辺りに響かせるが、オメガモンは構う事なく左腕を振るい、近くにいたディアボロモンに向けて投げ付ける。

 自分自身を何とか受け止めたディアボロモンだったが、その時の衝撃でバランスを崩し、海面に膝を付いてしまう。

 その間にオメガモンはグレイソードを横薙ぎに構え、周囲一帯のエネルギーを刀身に集束させていく。

 誰もが感じ取った。凄まじい量のエネルギーを。それを行使するオメガモンの圧倒的な力を。でも確信している。あの聖騎士は悪魔を倒すと。

 刀身が青白く光り輝くグレイソードを横薙ぎに振るいながら、オメガモンは聖剣の名前を声高らかに叫ぶ。

 

「グレイ……ソーーードォォォォッ!!!!」

 

 左横に薙ぎ払われた聖剣から放たれたのは青白い斬撃。巨大な刃の形をしたエネルギー波と言えば分かりやすい。

 放たれた一撃は2体のディアボロモンに向かって襲い掛かる。その超速度を前にして、回避する事が出来ないディアボロモン達。

 彼らは叫び声を上げる時間を与えられないまま、青白いエネルギー波に呑み込まれ、データ粒子に変わりながら消滅していった。

 

「す、すげぇ……!」

 

「やっぱすげぇよオメガモン!」

 

『……』

 

 中には歓声を上げる者もいるが、彼らは少数。大多数の人々はオメガモンの圧倒的な強さの前に言葉を失い、ただ圧倒されている。

 先程まではダメージを与えるだけで精一杯だったディアボロモン。それを復活してからはたった2回の攻撃で倒した。しかも最後の攻撃は凄まじいとしか言えない程の威力と規模を持っている。

 残る1体の悪魔を睨むオメガモンに対し、ディアボロモンは完全に恐怖で竦み上がり、何も出来ずにいる。

 

「ガアァァァァァァァーーーーーー!!!!!!」

 

 元々、ディアボロモンはネットワーク上のあらゆるデータを吸収して進化と巨大化を繰り返し、電脳世界(デジタルワールド)で破壊の限りを尽くして来た悪いデジモン。

 多くのデータと知識を吸収してきたから自らを全知全能の存在と思い込み、破壊と殺戮を楽しんで来たが、自分のアイデンティティーの崩壊どころか命の危険に晒されている。

 ディアボロモンは周囲一帯のエネルギーを集束し、胸部の砲身で砲弾の形にして連射していくが、それに対してオメガモンは冷静に対処する。

 横薙ぎに構えると同時に左横に振るい、破壊のエネルギー弾をディアボロモンの胸部に向けて跳ね返す。

 

「ガァッ!!」

 

 まさか自分の技でやられるとは思っても見なかったのだろう。ディアボロモンは胸部にカタストロフィーカノンの直撃を喰らい、完全に動きを停止した。

 ディアボロモンの弱点。それは防御力の低さ。スピード(機動力)の代償なのかどうかは分からないが、強力な一撃が急所に一度でも直撃すれば、かなりのダメージを受けてしまう。

 その隙を突かないオメガモンではない。右腕を軽く振るい、右手である蒼い狼の籠手から巨大で黒光りする砲身を展開する。

 砲口をディアボロモンに向けると共に照準を合わせ、体内に貯蔵しているエネルギーを砲身に集束させる。そして砲弾の形に圧縮させると共に凝縮させ、技名を宣言した。

 

「ガルルキャノン」

 

 発射されたのは一発の青いエネルギー弾。その内部には膨大な量の破壊エネルギーが凝縮しており、それが超速度でディアボロモンに向かって直進していく。

 先程の攻撃で動けなくなったディアボロモンが最後に見た物。それは自分に襲い掛かる青いエネルギー弾だった。

 その直後に青いエネルギー弾はディアボロモンに命中し、内部に凝縮されていた破壊エネルギーが炸裂する。

 大爆発を引き起こしながら周囲一帯に黒煙と爆炎を撒き散らし、ディアボロモンをデータ粒子に変えながら消滅させていく。

 

「敵の波動(コード)の完全消滅を確認。……戦闘終了」

 

『ウオオオオォォォォォォーーーーー!!!!』

 

 ディアボロモンの波動(コード)を探知して感じられなくなった事を確認すると、オメガモンは両腕の武器を戻して戦闘終了を告げた。

 悪魔は聖騎士によって倒された。その事実を知った人々は歓喜に満ちた歓声を上げ、武蔵は親友たる一真ことオメガモンを見つめていた。

 

 

 

 時刻は午後3時30分。東京湾でのオメガモンとディアボロモンの戦闘が終わり、慌ただしくやって来たマスコミが目撃者に取材を進める中、東京湾から離れたとある公園のベンチで一真は寝ている。

 オメガモンから戻った後、一真は初めての戦闘の疲労とデジモンに究極進化した事によるフィードバックもあって、意識を失った。

 それをマスコミに気付かれないように、武蔵は一真を運んで公園のベンチに寝かせ、その隣に座っている。自動販売機で買って来た飲み物を両手に持っている状態で。

 

「よぉ、おはようさん。一真……オメガモン」

 

「武蔵……か」

 

 静かに目を覚ました一真にいつものように声をかける武蔵。憧れと親しみを込めて彼がなったデジモンの名前を口にすると、一真は苦笑いを浮かべながら起き上がる。

 武蔵が手渡したキンキンに冷えたペットボトルの天然水を受け取り、蓋を開けると共に口を付けて、中身を流し込むように一気に飲んでいく。

 

「ありがとう。誰か巻き込まれた人はいた?」

 

「お前が戦場を移してくれたから、死人や怪我人はゼロ。今はマスコミの取材が始まってるから、お前をここに連れて来た。まぁショックやら何やらで念の為に病院に行ったり、検査入院している人はいるだろうさ」

 

 武蔵が一真を東京湾から遠ざけた理由。それは一真の為だ。一真がオメガモンになってディアボロモンを倒した事が分かると、マスコミは連日のように取材しに来る為、一真とその家族のメンタルをすり減らす事が目に見えている。

 それに加え、オメガモンは世界を滅ぼす力を持っている。核兵器が全く通用しない為、軍事力においてオーバースペック過ぎる。その力を悪利用されるのを防ぐ為、そこまで考えた上で武蔵は一真を運んだ。

 

「そうか……でも皆が無事で本当に良かった。武蔵も……ごめんね」

 

「良いさ。そりゃ色々とハラハラしたけど、お前とオメガモンは本当によくやった。戦うのはすげぇ怖かったと思うよ。でもそれを振り切って最後まで戦ったんだ。お前は本当にすげぇよ一真」

 

「戦ったのは僕じゃなくてオメガモンだ。勘違いするな。僕が凄いんじゃない。オメガモンが凄いんだ」

 

「いや……そうだけどさ、お前が戦った事には変わりないからつい……」

 

「気持ちは分かるよ。ありがとう」

 

 初めての戦闘を終えてかなり長めのお昼寝を取っていた一真。おかげで車を運転して帰れるだけの体力が戻っている。

 凄まじい回復力としか言えない。それはきっと一真に憑依しているオメガモンのおかげなのだろう。

 

「さて、こっからどうする?」

 

「帰ろう。パパラッチには付き合いたくないし、もう用事は済んだから」

 

「そうだな。今日はもう帰ろう」

 

「家まで送っていくよ。ここから近いんだろ、君の家?」

 

「ありがとうな。お前は普段からそういう気遣いを会話に活かせれば、もっとモテるのに本当にもったいないな……」

 

「すみませんねぇ。中々モテなくて」

 

 一真は根が優しく、他人を思いやれる良い青年。武蔵に気遣いを見せると、武蔵は照れ隠しも含めて笑顔を見せながら軽口を叩き合う。

 その後は真っ直ぐ一真の車が置いてある駐車場に向かい、車に乗って真っ直ぐに帰り道を進んでいく。

 

「そう言えば、一真。お前……脳とか大丈夫か?」

 

「うん。今でも頭痛はするよ。何か……直接頭の中に沢山の物を流し込まれている感じがするし」

 

「間違いない。お前、ディアボロモンの猛攻撃から復活した時あったろ? 『Omega-Gain-Force(オメガ・イン・フォース)』を使っていたんじゃないかな?」

 

「マジで!? それヤバい奴じゃん!」

 

 『Omega-Gain-Force(オメガ・イン・フォース)』。それは戦闘において一瞬で先を読み、状況に対応出来てしまう究極の力。

 あらゆる状況下でのオメガモンの戦闘センスとポテンシャルが極限まで高められ、引き出された能力。

 

「でもさ、その力はX進化しないと使えない筈だよ?」

 

「いや漫画版のクロウォのオメガモンは使えた。クラッキングされたけどね。それにオメガシャウトモンの公式設定から推測すると、多分X進化しなくても使えるんじゃないかな?」

 

「流石デジモン博士だな……」

 

 デジモン博士とも言われている武蔵の考え。それには不思議と説得力があり、一真は頷く事しか出来なかった。

 “『Omega-Gain-Force(オメガ・イン・フォース)』を全身に纏ったことで黄金に輝き、キレのあるシャープな体付きとなっている”とされているが、そもそも纏えるエネルギーなのかを突っ込みをいれたくなる紹介文だ。でも気にしてはいけない。なにしろ公式の紹介文なのだから。

 

「でもさ、フィードバックが来ているという事はかなり負担がかかるんだろ? 嫌だな~廃人になったり、半身不随になるのは」

 

「というか人間としての精神が死ぬんじゃないかな? あまり使わないように気を付けてくれ」

 

「そうします……」

 

 『Omega-Gain-Force(オメガ・イン・フォース)』は確かに究極の力だが、代償は付き物だ。一真が頭痛を起こしている時点で理解できるだろう。

 情報量の多さから使用者の脳や精神に多大な負担をかけ、使い続けると、一真の身体に重大な障害を負わせることになる可能性が高い。最悪の場合、人間としての精神が死んで“デジモン化”してしまう可能性も在り得る。

 

「着いたよ。忘れ物はないよね?」

 

「あぁ、今日は本当にありがとうな」

 

「どういたしまして。またね!」

 

「ああ、またな!」

 

 車内で真面目な会話をしていると、武蔵の自宅に到着した。玄関の前に車を停めると共にハザードランプを押すと、武蔵は荷物を持って車から降りた。

 お互いに手を振って別れの言葉を交わすと、一真は車を走らせて自宅を目指す。それを武蔵は見つめながら、自分達を守った一真とオメガモンに改めて感謝した。

 

 

 

 デジタルワールド。デジタルワールドと人間界は相互関係で成り立っている。一真達が生きる人間達があれば、そこにデジタルワールドもまた存在する。

 そんなデジタルワールドの何処かで、2体のデジモンが話をしている。しかし、時間帯や場所の問題の為、姿や名前が一切分からない。

 それでも分かる事がある。1体は超巨大なデジモンであり、もう1体のデジモンは騎士のような姿をしている事が。

 

「ディアボロモンは失敗したか……まぁ予測はしていたが」

 

「はい。あの青年に憑依する形でオメガモンが復活しました。しかもあのオメガモンは……」

 

 話の内容は人間界であったオメガモンとディアボロモンの事。どうやら何らかの形で観戦し、一部始終を把握しているようだ。

 それに加え、話の内容から推測すると、彼らがディアボロモンを人間界に送り込んだ黒幕のように思える。

 超巨大なデジモンが上司で、騎士のような姿をしたデジモンが部下なのだろう。どう考えても悪役としか見えない。

 

「“巡り会いの戦い(クロスウォーズ)”があった世界の個体なのだろう? バグラモンと全力を出したタクティモンを以てしても、正攻法では倒せなかった圧倒的な強さの……」

 

「はい。間違いありません。確かに人間に憑依して復活した事と、長いブランクがあった事もあって、弱体化しています。本来の力をまだ出せていませんが……それでも戦いの途中から見せた力はあの時の……」

 

「そこから先を言うな。私は想像したくない……」

 

「失礼しました」

 

 騎士のようなデジモンの言葉を、超巨大なデジモンが遮る。その表情は恐怖に染まっており、冷や汗を掻いている。

 一方の騎士のようなデジモンは涼やかな表情をしている。オメガモンと戦いたがっているようだ。

 

「では私が直接人間界に赴き、オメガモンと戦いましょう。そして現時点での強さを確かめてきます。我々の計画には邪魔かもしれませんが、もしかして我々の仲間になってくれるかもしれません」

 

「成る程。お前が言うのなら間違いないな。後はお前に任せる。奴を殺すか、見逃すかも含めて。頼んだぞ、カオスデュークモン」

 

「了解しました、クオーツモン様」

 

 騎士のようなデジモンことカオスデュークモンは恭しく頭を下げると、超巨大なデジモンことクオーツモンは満足そうに頷いた。

 しかし、超巨大な身体のクオーツモンは気が付かなかった。カオスデュークモンが邪悪に満ちた笑みを浮かべていた事に。

 人間界で繰り広げられたオメガモンとディアボロモンの戦い。それはオメガモンの勝利に終わったが、この戦いは全ての始まりとなった。人間界とデジタルワールドを巻き込んだ、光と闇の戦いの最初の一歩に。

 




今回の戦闘解説の方を少々させて下さい。
デジモンが使った技の詳細は地の文で紹介していますが、基本的に得意技・必殺技を中心にしていきます。
オメガモンが放ったグレイソードの斬撃。あれは『X-evolution』で使った物ですが、分からない人は『BLEACH』の主人公、黒崎一護の必殺技の『月牙天衝』をイメージして下さい。
今回は今後の展開に関わるであろう単語も出しましたし、当面の敵と思われるデジモンも出したので、盛りだくさんでした。元々、導入部ラストを予定したので。

次回の投稿は少し日を空けます。ストックが無くなったので。
キャラと設定紹介は第3話の後に投稿します。

次回予告

オメガモンとなった事で、今後の事で思い悩む一真。
そんな彼の所に”電脳現象調査保安局”の者がやって来る。
それは一真にとって本当の意味での非日常への招待状。
果たして一真の答えは? そして現れたデジモンに対してオメガモンは?

第3話 スカウトされ、転職する聖騎士

そこ、タイトルがリアル過ぎるとか言わない!
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