終焉の聖騎士伝説~オメガモンとなった青年の物語~   作:LAST ALLIANCE

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元々デジモン小説は『Pixiv』様で書いていたのですが、今回からその小説のヒロインだった女性(一部設定変更あり)が登場します。無論ヒロインとして続投させています。
今回の小説は2クール(=全26話)で1章を目標に書こうと思っています。
その方が読みやすいですし、切れ目が分かりやすいかなと考えた上で決めました。




第4話 暗黒騎士の襲来

 ”電脳現象調査保安局”に氷漬けにしたクワガーモンを送り届けたオメガモン。彼は車を置いてある場所に向かうと、一真の姿に戻って自宅へと帰宅した。

 その日の夕食。一真は勇気を出して伝えた。昨日ディアボロモンに一度殺された事。オメガモンとなって復活し、ディアボロモンを倒した事。

 今日は”電脳現象調査保安局”に転職が決まり、明日から勤務する事。台番株式会社に退職の挨拶を済ませた事。クワガーモンを撃退した事。

 その全てを話し終えた一真は、両親を心配そうに見つめる。この2日間で慌ただしく、色々な事があったのだから。頭の中で整理しなければならない。その上、この現実を受け入れなければならない。

 

「そうなんだ。あのディアボロモンという悪魔と戦ったオメガモンは、一真だったのね」

 

「凄いじゃないか。立派に戦ったんだ。しかも倒したんだろう?」

 

「……えっ?」

 

 予想外の反応だったのか、一真はポカンとなった。人間ではなくなった自分は両親から拒絶される。そう思い込んでいた。

 しかし現実は違う。両親はディアボロモンと戦い、倒した事を誇りに思っている。一真はそれに戸惑うしかない。

 

「だって僕は人間じゃなくなったんだよ? どうして平気でいられるんだ?」

 

「私はオメガモンがどういうデジモンなのかが分からない。そもそもデジモンが一体何なのかよく分からないから……でも一真は私達を守る為に戦っている。それは事実。だって……例えデジモンになっても、一真は一真だから」

 

「母さん……」

 

「それにデジモンになって何か変わったのか? 何も変わっていないじゃないか。オメガモンになって戦っている事くらいしか変わりないのに」

 

「父さん……」

 

 母親の涼子と父親の総司の言う通りだ。一真は何も変わらないし、変わっていない。悪い事は何一つしていない。むしろ称賛されて当たり前の事をした。

 人間の中にも良い人間と悪い人間がいるように、デジモンの中でも正義のデジモンと邪悪なデジモンもいる。

 オメガモンは邪悪なデジモン達と戦う存在。しかも世界を守る大事な組織に所属し、己が掲げた正義を貫く聖騎士。

 そんなデジモンに息子がなった。そうなった息子を疑う事は出来ない。何故ならディアボロモンと戦い、苦戦しながらも倒した実績があるのだから。

 

「だから私達は一真を信じ続ける。デジモンになった一真を。誰かの為に戦う一真を」

 

「もう俺達の言われたように生きる事はない。好きなように、やりたいように生きなさい。一真、それがお前の俺達への最大の親孝行だ」

 

「ありがとう……母さん、父さん……」

 

 誰かを守る為に戦い始めた一真を信じる涼子。自分の好きな事や、やりたい事をするように言って背中を押す総司。

 2人の愛情と優しさを感じ取り、一真は静かに涙を流した。誰かを助けたいと言う心があれば、自分はまだ人間でいられる。そう思えたからだ。

 

「所で、その”電脳現象調査保安局”でどういう仕事をするの?」

 

「ブラックじゃないかどうか見極めなければ……」

 

 しんみりとした優しい雰囲気から、元通りの家族団欒な雰囲気に戻った八神一家。両親が”電脳現象調査保安局”について尋ねると、一真は鏡花と薩摩から渡された書類の全てを手渡した。

 その書類を受け取った両親は一つ一つ見ていきながら、表情を変えていく。色々と思う所があるのだろう。

 

「良い職場じゃない。給料も高いし、福利厚生もしっかりしているし……」

 

「胸を張って仕事をするんだよ?」

 

「はい!」

 

 優良企業で働いている両親ですら、”電脳現象調査保安局”は良い所と言い切った。仕事内容は仕方ないが、それ以外は二重丸。

 新しい職場で働く自分を応援する両親。その期待の重さに押し潰されそうな気もしたが、何とか頑張ろうと思う一真だった。

 

 

 

「これから朝礼を始める。今日は新しい仲間が来たから、皆に紹介しようと思う。1日に現れたディアボロモンを倒したオメガモン、八神一真君だ。では一真君。一言頼む」

 

『おお~!』

 

 ”電脳現象調査保安局”の本部。そこは一真の自宅から車で30分程の所にある。車での通勤範囲内である為、一真は前職と大差ない生活スタイルでいける事となった。

 両親の見送りを受け、初出勤してきた一真。薩摩から出勤・退勤のやり方を教わり、朝礼に参加している。

 ちなみに、出勤・退勤のやり方はパソコンの画面にディーアークの画面をかざす事。たったそれだけだ。タイムカードは不要。流石はデジタルモンスターなだけはある。

 朝礼では薩摩から紹介されている一真。前職よりも人数の多い職場なのか、かなり緊張している。大勢の前で紹介され、歓声が上がる中、一真は自己紹介を始める。

 

「八神一真です。今日から勤務する事となりました。今紹介にありました通り、オメガモンに究極進化出来ますが、一昨日なったばかりなのでまだまだ未熟です。この職場では僕が知っている有名なデジモンや方々がいるので、憧れている方々と一緒に仕事が出来るのはとても光栄に思います。一緒に働く中で戦い、毎日成長していきたいです。これからよろしくお願いします!」

 

 物腰が柔らかく、丁寧でいて、心の中に情熱を抱く一真の自己紹介。それを聞いた誰もが拍手を送る。新しい仲間が出来たのも嬉しいが、それ以上に一真の人柄が伝わって来る良い自己紹介だったようだ。

 

「そういう訳だ。一真君はこれからの戦いに欠かせない貴重な存在となる。大切に育てていこう。では朝礼はここまでだ。各自、仕事に励むように!」

 

『はい!』

 

 薩摩の号令の下、局員達は一斉に仕事を始めていく。一真はと言うと、歩み寄って来た1人の女性と話をしている。長いストレートの黒髪に、釣り目をしたナイスバディな女性。彼女の名前は工藤優衣。

 

「初めまして。私は工藤優衣。この職場はね、最初の頃は先輩とペアを組んで仕事をするの。一人前になるまでの間だけど……でも貴方と私はタメだから遠慮なく話し掛けて欲しいな」

 

「初めまして、優衣さん。しばらくの間よろしくお願いします」

 

「もぉ、そんなに固くならなくて良いのに……じゃあ仕事を説明するわね」

 

 優衣が用意したのは1台のタブレット。それを操作すると、映像のタイトルと再生ボタンが表示された。

 ”電脳現象調査保安局”の局員には、1人につき1台のタブレットとディーアークが支給される。そういう決まりとなっている。

 

「これって……」

 

「一真君の最初の仕事。ディアボロモン戦とクワガーモン戦の映像を観ながら振り返り、レポートとして提出する事。午前中の仕事ね? 終わったら私に出して。私が席を外していたら、他の人に報告してね?」

 

「分かりました。でも……具体的にどういう事を書けば良いですか?」

 

 レポートはタブレットで入力し、それを印刷して優衣に提出すれば良い。仕事の内容は極めてシンプルなのだが、一真は分からない事があったのか、優衣に質問する。

 分からない事があったらきちんと質問をする一真。その姿勢に感心したのか、優衣は

目を細めながら答える。

 

「そうね……反省点とか上手く行った事とか、感想で良いわ」

 

「分かりました。早速始めます」

 

「頼んだわよ?」

 

 早速ディアボロモン戦を観始める一真。気になった所を一時停止してからメモを取っていく。その書いた内容をレポートを書くのに参考にする為だ。

 初戦闘は先ず戦場を移し、大勢の人々が戦闘に巻き込まれるのを防いだ。この心掛けは良かった。今後も続けていかなければならない。

 

(出来れば自力で展開出来れば良いけど、今はまだ無理だな……)

 

 次に最初からグレイソードを使わなかった事が気になった。幾ら初戦闘とは言えど、自分の武器を使わなかったのはどうなのか。

 武器は使わないと使い方も分からないし、性能や使える技も把握出来ない。これは気を付けなければならない。

 

(それにディアボロモンの狡猾さに結構やられたな……でも最後には勝てた。やはり相手の情報を知り、そこから考えられる戦術を対策しないと)

 

 スペックで見れば格下だが、特殊能力等を含めると、オメガモンに匹敵するレベルとなるディアボロモン。その相手に苦戦しながらも勝利した。初めての戦闘にしては上出来の方だが、これからの戦闘を考えると、完璧でなければならない。

 反省点や気付いた事を書き進めていくと、メモ用紙も既に書ける所が無くなった。次のメモ用紙を用意し、クワガーモン戦の反省点や気付いた事を書き始める。

 

(クワガーモン戦は相手が何か強かったし、指令が指令だったから戦いにくかったな……それに場所も悪かった。やっぱりオメガモンの姿で戦うのって難しいな……)

 

 クワガーモン戦は人間界で戦う事や、オメガモンとしての戦闘の難しさを痛感させられた。何しろ、人間界は究極体デジモンが戦いやすい世界ではない。戦いやすい場所なら幾つかあるが、それは限られている。

 その上、オメガモンは世界を滅ぼす力を宿している。その強大な力を振るうには色々な制約がある。それを痛感させられた。戦闘スタイルを考えたりする等の。

 

(良し。これで出来た。後は印刷して渡そう)

 

 それから映像を観終えると、メモ用紙を観ながらレポートを打ち込んでいく。その速度は早く、一真が集中している事が分かる。

 レポート自体は30分もしない間に完成した。書く内容を決めるのに時間こそかかったが、それでも午前中いっぱいはかからなかった。

 

 

 

「よく出来たレポートね、上出来よ?」

 

「ありがとうございます」

 

 優衣は仕事で外出していた為、一真はリリスモンこと鏡花主任にレポートを提出した。鏡花は一通り目を通し、サムズアップをしながら感想を言った。

 一真は頭を下げてお礼を言う。ちなみにメモ用紙はノートに張り、記録を取っていくとの事。勉強熱心な性格のようだ。

 次の仕事を鏡花に尋ねようとした瞬間、局員全員のディーアークが鳴った。一真も慌てて取り出し、画面を見ると、そこにはこう書かれてあった。

 

“砂漠地帯に究極体デジモンの反応あり。早急に調査に向かって欲しい。なお、必要であれば戦闘も許可する”

 

「究極体デジモン……」

 

「一真君、行ける?」

 

 人間界にまたも現れた究極体デジモン。その文字に一真が険しい表情を浮かべると、その顔を覗き込むようにして鏡花が尋ねる。

 現状では究極体デジモンに対抗出来る戦力がそんなにいない。自然に一真が行く流れになるが、一真は直ぐに決断を下す。

 

「答えは最初から出ています。僕以外いないのなら……僕が行きます」

 

 鏡花に自分が赴くと伝え、一真は踵を返して走り去る。その姿を見送る鏡花は不安に感じる事があった。

 一真は戦う事を使命だと思っている。仕事だから仕方ないと言われればそこまでだが、何処か危うい一面がある。そう感じたから、鏡花は不安に思うしかなかった。

 

 

 

(誘っているのか、私を……?)

 

 砂漠地帯に向かうオメガモン。これで飛行での移動は2回目になるが、自力で空を飛べるのは心地良い。これが戦闘の為の移動で無ければ猶更なのだが。

 目的地に近付いたその時、まるで槍で突き刺すような殺意を感じた。そしてデジモンの『波動(コード)』を。この気配は間違いない。紛れもなく『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』と同等以上の実力者。

 その正体は知らないが、オメガモンにはそのデジモンの言いたい事が理解出来た。その証拠に頭の中に声が聞こえて来る。

 

―――この世界で新生した聖騎士よ。私を倒してみせろ!

 

「やはり私を狙いに来たか……」

 

 オメガモンが砂漠地帯に降り立つと、待ちくたびれたと言わんばかりに一体の暗黒騎士が立っている。

 全身を漆黒に輝く魔鎧で覆い包み、右手に長大な魔槍“バルムンク”を持ち、左手に円形の巨大な魔盾“ゴーゴン”を持った暗黒騎士。その名前はカオスデュークモン。

 

「初めまして、と言うべきか。人間界で新生したオメガモンよ。私はカオスデュークモン」

 

「何が目的でこの世界に来た?」

 

「別に人間達を殺しに来た訳でも、世界を破壊しに来たのではない。オメガモン、お前の力を調べに来た」

 

「何だと……?」

 

 自分を狙いに来たまでは予測する事が出来た。しかし、力を試しに来たと言われたのは意外だった。オメガモンがその意図を探るように訝しむと、カオスデュークモンは苦笑いを浮かべながら答える。

 

「私が仕える主はお前と近しい存在なのだ。もしかしてあのお方と仲良くなれるかもしれない。それを確かめに来ただけだ」

 

「お前の主が何者なのか。それは分からないし、興味もない。だがこの世界とデジタルワールドには手出しさせない!」

 

「その強がりも今の内だ。いずれ分かるだろう。人間達の醜さと愚かさを」

 

「どういう事だ?」

 

「いずれ分かる。そう焦るな」

 

 カオスデュークモンは右手に持っているバルムンクの槍先をオメガモンに向けてから、構えを取った。

 オメガモンも黄金の竜の頭部を象った左手からグレイソードを射出し、腰を落としながら横薙ぎに構える。

 

「行くぞ、オメガモン!」

 

「来い、カオスデュークモン!」

 

 聖騎士と暗黒騎士による一騎打ち。その決闘の開幕を告げたのはカオスデュークモンが繰り出した攻撃。稲妻を思わせる速さと鋭さを併せ持つバルムンクの刺突。

 対するオメガモンは右足を一歩踏み込むと共に、グレイソードを左斜め上にかけて振り上げ、バルムンクの軌道を逸らした。

 受け流された魔槍がオメガモンの頭の左横を通過している間に、オメガモンは左足を一歩踏み込む。そこから大上段に掲げたグレイソードを振り下ろす。

 

「ハァッ!!」

 

「ムッ!!」

 

 カオスデュークモンは左手に持っているゴーゴンで防ぎながら、右手に持っているバルムンクを構え直す。

 そこからバルムンクを振り下ろしてオメガモンの白兜を叩き潰そうとするが、オメガモンは左足を蹴り上げ、バルムンクの軌道を再び逸らす。

 

「喰らえ!」

 

「グッ!!」

 

 尽かさずオメガモンは右拳を突き出し、カオスデュークモンの左頬に強烈な右ストレートを叩き込む。

 思わずよろめいたカオスデュークモンだったが、直ぐに体勢を立て直し、背後に飛び退いて後退する。オメガモンに追撃のチャンスを与えさせない為だ。

 

(ディアボロモンと戦っていた時より力が戻っているな……大したものだ)

 

(今はまだ小手調べだろう。次からギアを上げて来る)

 

 構えを取り直しながら、両者はゆっくりと間合いを取る。カオスデュークモンはオメガモンの力が戻ってきている事を感じ取り、オメガモンはカオスデュークモンがまだ本気を出していない事に気が付いた。

 今度はオメガモンから仕掛けるつもりだ。深く腰を落としながらグレイソードの剣先を相手に向けながら、刀身に軽く右手を添えた構えを取る。

 

「私も舐められた物だな。槍を使う相手に刺突を使って来るとは」

 

「舐められたかどうかは喰らってから言うんだな!」

 

 カオスデュークモンが溜息を付きながら構えを取り直すと、オメガモンはその構えを取ったまま、突進を開始。そこからグレイソードを突き出す。

 閃光の如き速さと威力の刺突。これにはカオスデュークモンも驚きを隠せなかったが、咄嗟にゴーゴンで防ぐ。

 

「(速い! それに強烈だ!)フッ!!」

 

 それでも衝突の瞬間にゴーゴンで捌いたのは流石としか言えない。そこから無防備となったオメガモンの胸部目掛け、バルムンクを突き出す。

 しかし、初撃を迎撃されるのを予測していないオメガモンではない。上半身を捻り、左肩のブレイブシールドΩで攻撃を防ぐ。

 更に上半身をもう1度捻り、左腕に力を溜めながらグレイソードを突き出し、渾身の力を込めた刺突を繰り出す。

 

「ハアァァァッ!!!!!」

 

「グァッ!!」

 

 左手に持っているゴーゴンで防ぐカオスデュークモン。しかし、オメガモンのパワーまでは防ぎきる事が出来ず、苦痛の声を上げながら吹き飛ばされる。

 咄嗟に空中で体勢を立て直して着地する一方、オメガモンも力強く構えを取り直す。カオスデュークモンは決めた。ここからギアを上げていくと。

 

(この短期間の間にここまで力を取り戻していたのか……それとも元の性能なのか。いずれにせよ、ここで取り除かない限り、危うい気がする!)

 

(ッ! カオスデュークモンの『波動(コード)』の凄みが増した……やはり今までは小手調べだったのか!)

 

 カオスデュークモンは力を一段階上げると、それを証明するかのように全身から凄まじい不可視のエネルギーが放出される。

 それを感じ取ったオメガモンは気付く。やはり先程までは手を抜いていたと。ここからが本番であると。

 

 

 

「ここからが本当の戦いだ!」

 

「ッ!?(速い!)」

 

 両手に持つ武器を構え直したカオスデュークモン。その姿が突如として消失したと思った瞬間には、オメガモンの目の前に姿を現していた。

 瞬間移動したと錯覚してもおかしくない程の超速移動。その勢いに乗りながら、カオスデュークモンは力強い気迫と共に、目にも写らぬ速度でバルムンクを連続で突き出す。

 一撃だけでも並大抵の究極体デジモンを葬る速度と威力が込められているが、それが連続して放たれている。しかも神速で。

 

「ハアァァァァァァァァァァァーーーーーー!!!!!」

 

「クッ!!」

 

 オメガモンは前に一歩踏み出して間合いを詰めながら、グレイソードを最小限の動きで振るい、バルムンクによる連続刺突を受け流していく。

 それを見てニヤリと笑うカオスデュークモン。邪悪なエネルギーをバルムンクの槍先に集束させ、オメガモンに向けて突き出すと共に、邪悪なエネルギーを放つ。

 

「カオスショット!!!」

 

「グァッ!!」

 

 カオスショットを咄嗟に両腕を交差させて防ぐオメガモン。直撃は免れたが、それでも吹き飛ばされる。

 空中で体勢を立て直すオメガモンを見逃す程、カオスデュークモンは甘くはない。即座に追撃に移行した。

 

「クルーエルバルムンク!!!」

 

「チィ!」

 

 カオスデュークモンは軽く跳躍して体を高速回転し始める。これによって漆黒の竜巻となると、オメガモンに向けて突進を開始する。

 吹き荒れる漆黒の竜巻。オメガモンは空中に浮かびながら構えを取り直し、襲い掛かる漆黒の竜巻と対峙する。

 自分に向かってバルムンクが突き出されている事に気付き、グレイソードを左斜め下から左斜め上に振り上げ、バルムンクの軌道を逸らすと共にカオスデュークモンを空高く打ち上げた。

 

「デュークチャージ!!!」

 

「グァッ!?」

 

 急降下の勢いと共に振り下ろされるバルムンク。オメガモンは左肩のブレイブシールドΩで防ぐが、デュークチャージを防ぎきれず、防御した上から斬り下ろされた。

 胸部に縦一文字の斬り傷が刻まれ、体勢を崩すオメガモン。その目の前に着地したカオスデュークモンは、暗黒のエネルギーをバルムンクの槍先に集中させ、暗黒の魔槍を構えながら一歩前に踏み込んだ。

 

「デモンズディザスターーー!!!」

 

「ガアアアァァァァァァァァァァァーーーーーー!!!!!」

 

 一瞬で繰り出された魔槍による連続刺突。それがオメガモンの全身に叩き込まれ、苦痛に満ちた叫び声が砂漠に響き渡る。

 デモンズディザスターを叩き込んだカオスデュークモンが睨む中、オメガモンはゆっくりと崩れ落ち、そのまま倒れ込んだ。

 目の前には地面に倒れ込んだオメガモン。それを見下ろしながら、カオスデュークモンは息を整える。

 

(ここで仕留めるか、味方にしないと危ない気がする!)

 

 直接槍と剣を交えた事で、カオスデュークモンは理解した。オメガモンはまだ本調子ではない事を。確かに力その物は本物で同等なのだろう。戦闘経験も全て所有している事も間違いない。

 しかし、まだブランクを埋め切れていない。それに加え、人間としての精神(こころ)が追い付いていない。人間たる青年が戦うと言う行為にまだ慣れていないのか、それとも戦う事に戸惑っているのか。

 だからこそ、今回の戦いは全てにおいて一枚上を行く事が出来た。それでも最初はオメガモンの持つポテンシャルと実力の高さを見せ付けられた。その事実がカオスデュークモンに危機感を抱かせている。

 今の内に、未熟の内に倒すか、味方にしなければならないと。ダウンしている今の内にどうにかしないといけないと。

 もし次に相まみえた時、オメガモンは更なる強さを以て自分を倒すだろう。その時は最低でも自分と互角以上に渡り合う強さになるに違いない。最悪の場合、“切り札”を使わないと勝てないだろう。

 確実に勝利を掴むのならば、最悪の可能性を消し去る必要がある。カオスデュークモンはバルムンクを突き立てようと、一歩前に踏み出した。

 

 

 

(クッ……立たないと殺される……!)

 

 オメガモンは立ち上がろうと全身に力を込めるが、中々起き上がれないでいる。デモンズディザスターが急所にも繰り出された為か、思うように力が入らない。

 究極体デジモンとの戦闘は2回目。ディアボロモンの時は相手の攻撃力の低さと、『Omega-Gain-Force(オメガ・イン・フォース)』に助けられたが、カオスデュークモンのように、戦闘スタイルが似ている相手だと、そうもいかない。

 『Omega-Gain-Force(オメガ・イン・フォース)』を発動しようにも、どうやら発動条件があるのだろう。何も起きない。

 何とか真上を見上げると、カオスデュークモンの無機質な目と合った。彼の瞳に宿るのは殺意。バルムンクを構えており、これから自分の首を刺し貫かんとしている。

 

(ここまでか……)

 

「デジタライズ・オブ・ソウル!!!」

 

「ッ! まさか……!」

 

 突き出されたバルムンク。何も出来ないオメガモンは静かに目を閉じ、数秒後に迫り来る自らの死を受け入れようとする。

 しかし、オメガモンの死を認めないと言わんばかりに、突如として何処かから何者かの声が聞こえて来た。

 同時に緑色の光線がカオスデュークモンに向けて放たれ、カオスデュークモンは咄嗟にゴーゴンで防ぐ。咄嗟に後退する事も忘れない。

 

「貴方は……!」

 

「まさか!」

 

 突如として感じ取られた巨大な『波動(コード)』。オメガモンとカオスデュークモンが同時に声がし、光線が放たれた方向を見ると、そこには右手を突き出した1体の聖騎士が立っていた。

 漆黒に光り輝く聖鎧に身を包み、背中に内側が青く、外側が白いマントを羽織り、背中に翼のような物を備えた聖騎士。

 それは聖騎士団(ロイヤルナイツ)の一員でありながら、聖騎士への抑止力的な存在と言われている存在。通常時は姿を現すことはなく、蒼いマントを翻す“孤高の隠士”とも呼ばれ、“空白の席”と呼ばれる所に位置する聖騎士。名前はアルファモン。

 

「俺の名前はアルファモン」

 

「馬鹿な……アルファモンとは名前は知られてはいるが、実在しないと言われている……言わば、神話の中の『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』!」

 

「しかし、俺はここに存在する。オメガモンを助る為に駆け付けた。カオスデュークモン……俺の仲間を傷付けた落とし前を付けてもらおうか」

 

 予想外の相手の乱入に動揺しているカオスデュークモンに対し、アルファモンは静かな怒りを見せる。その怒りにカオスデュークモンのみならず、オメガモンも思わず震え上がる。

 そのやり取りを聞いていたオメガモンは理解した。アルファモンは自分の味方だという事と、アルファモンの力はカオスデュークモンを上回る事に。

 カオスデュークモンと戦う前に、アルファモンは左手を輝かせてオメガモンの頭の上に置く。すると、オメガモンの体力やダメージが瞬時に回復された。

 

「ありがとう……」

 

「礼には及ばないよ。貴方はここでゆっくり休んでくれ」

 

 アルファモンは歩きながら両手で魔法陣を描き、中心から光が集束して出来た聖剣グレイダルファーを引き抜き、構えを取る。

 両手に握る武器を構えるカオスデュークモン。その足元を聖剣グレイダルファーで指し示しながら、アルファモンは一言呟いた。

 

「エクスプロージョン」

 

「何!? グッ!!」

 

 その瞬間、カオスデュークモンの足元が大爆発を引き起こした。巻き起こる黒煙と爆炎。辺りに飛び散る砂。

 咄嗟に左手のゴーゴンで防いだカオスデュークモンとの間合いを詰めると、アルファモンは両手に握る聖剣グレイダルファーで斬りかかる。

 

「ハアアアアアァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!」

 

「チィ!!」

 

 先程までのオメガモンを圧倒した勢いは何処へ行ったのか。そう疑ってしまう程、カオスデュークモンは防戦一方に追いやられる。

 理由は幾つかある。1つ目はアルファモンとカオスデュークモンのスペック差。2つ目はアルファモンの剣技は防御・反撃を許さない程苛烈でありながら、見ている者を魅了する美しさがあるからだ。

 どうやらアルファモンには一個前のグレイドモンのデータがあるのだろう。グレイドモンは双剣グレイダルファーで戦う剣士。二刀流で戦う時、その剣技は神速になるが、制御不能に陥り、理性を保ったまま戦う事が出来ない。それを克服したようだ。

 

「(まさかアルファモンが出て来るとは……流石にこのままじゃキツイな)今日はここまでにしよう。オメガモンの力を知る事が出来ただけでなく、アルファモンと剣を交える事が出来た。これで貴重な戦闘データを持ち帰れる」

 

「このまま逃がすと思うか?」

 

「逃がさせてもらおう」

 

 カオスデュークモンが背中に羽織っている蒼色のマントを翻すと、カオスデュークモンの姿が消失した。まるで何かのマジックみたいに鮮やかな小技としか言えない。

 暗黒騎士の『波動(コード)』が完全に消失した事を確認し、戦闘が終わった事を感じたアルファモン。背後にいるオメガモンに一声かける。

 

「帰ろうか」

 

「……あぁ」

 

 自分を圧倒した相手を歯牙にかけなかったアルファモン。その実力の高さに驚きつつも、その正体が気になるオメガモン。

 2体の聖騎士はその場から飛び立ち、”電脳現象調査保安局”に向けて帰投する。この日の戦闘はオメガモンこと一真に戦う事の難しさを突き付ける結果となった。

 




敵キャラとヒロインの登場で影が隠れましたが、主人公初敗北&殺されかけるお話でした。やっぱり序盤での苦戦は付き物です。だって戦闘経験少ないですし……その方が成長具合が分かりやすくて良いですよね?
ちなみにこの小説のアルファモンはアニメ・漫画で見せた技以外に、テイルズシリーズのような魔法を駆使したり、モンスターを召喚したりとかなりフリーダムになっています。
活動報告は書くネタが出来たら書きます。毎回書いても反応ないですし……

皆さん、よろしければ感想・評価の方よろしくお願いします。
あたたかい感想とか前向きなコメントや応援メッセージ、高評価を頂くと、作者のやる気が超進化します。
では次回をお楽しみに。LAST ALLIANCEでした!

次回予告

カオスデュークモンとの戦いの翌日。
工藤優衣は一真を別世界に連れ、一緒に山登りをさせる。果たしてその真意は?
そして激突するオメガモンとアルファモン。戦いの勝者は?

第5話 空白の席の主による修行
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