終焉の聖騎士伝説~オメガモンとなった青年の物語~   作:LAST ALLIANCE

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今回は”デジクオーツ”関係の事件をお休みし、オメガモンとバグラモン一家との因縁の再会を書きました。
更にデジタルワールドの事や色々な事を書いた説明回であり、重要な回となりました。補足説明は今後していきます。



第8話 因縁の再会 オメガモンとバグラモンファミリー

 “電脳現象調査保安局”のランチルーム。そこでは局員が昼食を取りながら、何気ない雑談に花を咲かせている。

 一真は実家暮らしである為、自分でお弁当を作って持って来ている。彼の目の前に座っているウィザーモンとテイルモンは、食券を買って頼んだ物を食べている。

 

「そうでしたか……2人にはそういう過去があったんですね」

 

 一真はウィザーモンとテイルモンの過去話を聞き終えた所。彼らは『デジモンアドベンチャー』と、漫画版『デジモンクロスウォーズ』に登場した個体と同一。

 ウィザーモン。彼程数奇な運命に生きたデジモンはいない。デジタルワールドの長い旅の果てに倒れた彼は、とあるデジモンに命を救われた。そのデジモンは選ばれし子供のパートナーデジモンだった。

 そのデジモンとパートナーを邪悪な攻撃から庇った事で、彼は最初の死を迎えた。しかし、彼は完全に死んだ訳ではなかった。残骸があちらこちらに散らばり、長い年月をかけて友達となったデジモンによって再生された。

 そんな時に立ち会った“巡り会いの戦い(クロスウォーズ)”では、子供達と共に行動した。その終盤で復活した終末の千年魔獣の秘密を見抜いたものの、友達を庇い、今度は時空の彼方へと吹き飛ばされた。

 そこで彼は知った。自分がこの戦争に子供達を導く役割を担っていた事を。自分がした事が皇帝の目論見や、神の予言すらも超える奇跡を起こした。その役割を終えて友達の所に向かっている最中、このデジタルワールドに転生した。

 

「でも驚いたわね……アンタがなっているオメガモンが私達に関わりのあるオメガモンだったのは」

 

「うん。もしかして僕達の出会いも何か運命だったのかな?」

 

 テイルモンもまた数奇な運命を歩んだデジモン。選ばれし子供のパートナーデジモンだったが、邪悪なデジモンに出会って部下になった事で、彼女は自身の使命を忘れていた。

 そんな時に自身のパートナーと出会ったが、その過程で一人の友達を失ってしまう。長い年月を経た後、彼女は友達と再会する為に旅に出た。友達と再会し、後一歩で復活する所で再びその友達と別れてしまった。

 それが“巡り会いの戦い(クロスウォーズ)”の終結間近で起きた悲劇。しかし、彼女は諦めない。友達との再会を信じて旅に出て、デジタルワールドに転生して友達と再会する事が出来た。

 

「どうやら、ここにいるデジモンの共通点は“全員転生している”という事みたいですね。2人はオメガモンの事を知っているんですか?」

 

「そりゃあもちろん。有名人だからね」

 

「アタシも。でも一真君。アンタがなっているオメガモンはこんなもんじゃない」

 

 テイルモン曰く、一真が究極進化して戦うオメガモンはまだまだ当時の力を取り戻していないとの事。

 世界を滅ぼす力を宿す無数の悪魔を一瞬で消し去り、数万ものデジモンを瞬く間に殲滅する程の力を持っているとされている。

 その活躍と実力を誰よりも知っているのがテイルモンとウィザーモン。彼らから見れば、一真はまだまだ未熟。

 

「アンタがなっているオメガモンはもっと強いわ? つまりまだ伸びしろがある。アンタを鍛えるのもアタシ達の仕事なのかもしれないわね」

 

「……それは重々承知しています。2人は何の為に戦うんですか?」

 

 テイルモンから聞いた話は事実だった。一真自身、オメガモンの力はこんな物ではないと思い、常日頃からトレーニングに励んでいる。

 しかし、努力すればする程、オメガモンの凄さを突き付けられる。それでもめげないのが一真らしさなのだが。

 

「僕は時空の彼方から戻ろうとしていた時、転生する事が出来た。しかもテイルモンに再開する事も出来た。きっと何か意味がある。究極体デジモンに進化出来るのも……だから僕は学者として、デジモンとして出来る事をやるだけさ」

 

「アタシは変わらないわ。やれる事をやる。それだけよ?」

 

「僕は今なっているオメガモンの事がよく分かりません。どうして僕を選んだのか。何をさせたいのか。分からない事が多過ぎます。だからこそ知りたいんです。オメガモンの事を。人間として、デジモンとして生きながら……僕は答えを探したいです」

 

「良いんじゃない? そういう生き方も」

 

「僕も好きだな。そういう生き方は」

 

「ありがとうございます」

 

 テイルモンとウィザーモンに背中を押される形で、これからどうしていくかを考える一真。戦いの中に生きる事もそうだが、自分自身の事を知る事から始めようと考えた。

 先ずは自分がなっているオメガモンの事を。本来の強さや性格、築き上げた神話等。その全てを知る所から始まろうとしている。

 

 

 

「一真君。明日から2日間休日だけど、何かする事ある?」

 

「そう言えば今日は金曜日。明日と明後日はお休みでしたね……」

 

 この日の仕事を終えた一真と鏡花。この日は金曜日。それを思い出した一真は2日間の休日をどのように過ごすのかを考えていなかった。

 何も考えていなかった訳ではない。毎日色々な事があって、気が付けばもう週の終わりに差し掛かっている。それを思い出させられた為、改めて休日に何をしようか考え始める。

 

「う~ん、デジモンの事は忘れて気晴らしに出掛けたり、美味しい物を食べたりとか……でしょうか?」

 

 ありきたりではあるものの、実に人間らしい過ごし方。それを聞いた鏡花は、微笑ましく思いながら提案する。

 自分の実家に遊びに来ないかと。それは自分の事や原点、家族となっているデジモン達を紹介する事を意味している。

 

「一真君は実家から車で通っているんだった……そうだ。良かったら明日、私の家に遊びに来ない?」

 

「鏡花さん……リリスモンさんのお家に? 良いんですか?」

 

「えぇ。私がここで働いている理由や、この世界に来た理由、大切な家族が分かるわ」

 

(今の一言で何となく察しが付いたけど……そう言えば、リリスモンさんについて僕は全く知らない。いや知ろうとしていない……それは仲間として、同じデジモンとして良くないんじゃないかな?)

 

 一真はふと思い出した。鏡花ことリリスモンについて自分が殆ど知らない事を、何一つ知ろうとしない事を。

 初対面の時から詳しい話を聞いていない。きっと何かの事情があってデジタルワールドを離れ、この世界に来たと思っていた。でも実際の所は分からない。あくまで憶測だけで考えていたから。

 

「分かりました。明日はお邪魔させて下さい」

 

「ありがとう! 待ち合わせ場所は行き付けの喫茶店で9時で良いかしら?」

 

「はい。大丈夫です」

 

 こうして明日はリリスモンの実家に行く事になった一真。この時、まさか因縁の相手と再会する事になるとは微塵も思っていなかった。

 そこでデジタルワールドで起きている異変、リリスモン達が人間界に来た理由を知る事になろうとは知る由もなかった。

 

 

 

 次の日。喫茶店で待ち合わせをした一真と鏡花。鏡花の車の助手席に乗ると、一真は彼女の実家へと向かっていく。

 待ち合わせの喫茶店は鏡花のお気に入りで、紅茶とトーストメニューがお薦めとの事。一真も知っている喫茶店でもある。

 

(どんなお家なんだろう……何か街の外れにあるみたいだけど)

 

 助手席から見る景色。様々なビルや建物といった都会的な物から、家や田んぼといった田舎的なイメージへと移り変わる。

 

「どうしたの一真君? 何か考え事をしているの?」

 

「いえ……鏡花さんのお家が気になってつい……」

 

 運転席から声を掛けて来た鏡花。その声に微笑みを浮かべながら答え、一真は引き続き助手席から見える景色を眺める。

 

「そう。これから向かうのは私の実家だけど、絶対に驚くわ。色々あるから」

 

「まぁそうでしょうね……僕を誘うくらいなので、何かがあるのは分かっていますけど」

 

「貴方の勘は鋭いから……もしかしてこれから向かう先に誰がいるのか。それさえも分かっているのかもしれないわ」

 

「確信はありませんけど、何となく分かります」

 

 一真と鏡花が雑談に話をしながら十分後。彼女が運転する車は実家もとい、バグラモンファミリーの家に到着した。

 その家は豪邸に匹敵する程大きいが、そこまで豪華ではない。正直見掛け倒しに近い。大きくて広いだけで、後は普通の家と何一つ変わらない。

 

「ただいまー! ブラストモン、帰って来たわよー!」

 

 鏡花は車を駐車場に泊めると、畑にいる大柄で筋肉質の男性に向けて自身の帰宅を伝える。余程実家に帰って来た事が嬉しかったのだろう。仕事中よりも活き活きしているように見えた。

 彼女の声に気付いた大輔と言う名前の男性。彼は鏡花の姿を見ると、手を振りながら駆け寄って来る。

 

「ブルァアア!!!! リリスモンお帰り~!」

 

(何かキャラの濃そうな奴が最初から来たぞ~!?)

 

 帰りを祝福するように喜ぶ大輔。“ブルァアア”という口癖と自己主張の激しい外見。それだけで一真は理解した。キャラの濃い男性だと。

 ふと大輔から発せられるデジモンの『波動(コード)』を探ってみると、知っているデジモンの存在を特定する事が出来た。

 

「鏡花さん……大輔さんってもしかしてブラストモンですか?」

 

「そうよ? 華麗なるブラストモン様よ?」

 

「か、華麗なるブラストモン様!?」

 

「ブルァアア!!!! そうだ……俺こそが華麗なるブラストモン様だ!」

 

 若本大輔はブラストモンの人間体。ちなみに“華麗なるブラストモン様”と呼ばれているのは、バグラモンが呼び始めたからだ。

 名付け親曰く、“何かそう呼ばないといけない気がした”との事。一体バグラモンに何があったのか。

 

「八神一真です。又の名をオメガモンと言います」

 

「ブルァアア!? オメガモン!? 止めろ! 止めてくれ~!」

 

「……鏡花さん。華麗なるブラストモン様に一体何が?」

 

「前世でオメガモンと戦った時にボコボコにされたのよ、その時の事が今でもトラウマになっていて……」

 

「……そりゃトラウマになりますね」

 

 自己紹介をした一真がオメガモンだという事を知り、ブルブルと震え始める大輔。その様子を見て首を傾げる一真に、鏡花は彼のトラウマを説明する。

 圧倒的パワーと強固な装甲でデジタルワールド最強の生命体の一角で、単身で一軍に匹敵するとも言われ、“天災”と表現される戦闘力を誇るブラストモン。

 一撃一撃の攻撃が必殺の域であり、気合を入れた一撃は凄まじい物になるが、オメガモンとの戦闘はトラウマになる程、酷い事になったらしい。何があったかは分からないが、とにかくボコボコにされた事は分かる。

 

「ブラストモン、大丈夫。彼は貴方を傷付けないわ。私達の味方よ」

 

「良かった……俺は若本大輔。ブラストモン。よろしく!」

 

 簡単な嘘に信じてしまう程単純な思考であるが、その思考故に思い込みが強いブラストモン。一真が味方である事を知り、安心したように胸を撫で下ろした。

 大輔ことブラストモンは一真と握手を交わす。そのゴツゴツしたような大きく、温かい手は彼の性格を伝えているように思えた。

 

 

 

「そう言えば陛下とタクティモンとホープナイトモンは?」

 

「タクティモンは道場にいて……陛下とホープナイトモンはお買い物に行っている」

 

「すみません。ホープナイトモンとは……」

 

「聖騎士になったスカルナイトモンの事よ?」

 

「何と……そういう事でしたか」

 

 聖騎士のような白い鎧の体となったスカルナイトモン。流石に縁起が悪いのか、ホープナイトモンという名前に改名したそうだ。デッドリーアックスモンもセイントアックスモンに改名した。

 その事を知り、驚きを隠せない一真。彼とバグラモンはお買い物に出ており、タクティモンは道場で修行しているみたいだ。相変わらずの武人。生前から何一つ変わっていない。

 一真達が道場に向かうと、その中央でタクティモンが座禅を組んで瞑想をしている。道場には極限まで張りつめたような雰囲気が流れている。

 

「タクティモ~ン。ただいまー!」

 

「む、帰って来たかリリスモン」

 

 鏡花が声を掛けると、タクティモンは目を空けて立ち上がる。家の中だからか、普通にデジモンの中でいる。大輔ことブラストモンは外にいたからか、人間の姿をしていた。

 

「そこにいる人間はもしや……」

 

「八神一真ことオメガモンです。リリスモンさんがいつもお世話になっています」

 

「ほぉ、君がリリスモンの言っていたオメガモンか。私はタクティモン。禎島拓郎。こちらこそいつもリリスモンがお世話になっている」

 

 お互いにお辞儀をして自己紹介をする一真とタクティモン。それが終わると、タクティモンは道場に置いてある2本の木刀を持ち、1本を一真に手渡す。

 

「早速だが、オメガモンとしての君の力を見せてもらおう」

 

「マジですか……はい。お手柔らかにお願いします」

 

 お互いに木刀を握り締めながら構え、正眼の構えを取る一真とタクティモン。その様子をリリスモンに究極進化した鏡花と、ブラストモンが見つめる。

 先に動いたのはタクティモン。ノーモーションで突進を開始し、開始早々に自身の誇る必殺技を叩き込む。

 

「鬼神突!!!」

 

「ガァッ!!」

 

 強烈な刺突を腹部に受け、苦痛の声を上げながら吹き飛ばされる一真。道場の壁に叩き付けられ、落下すると共に地面に倒れ伏せる。

 地面に叩き付けられた衝撃と腹部から伝わる強烈な痛み。それに耐えながら立ち上がり、手放した木刀を掴んで構えを取り直す。

 

(何という威力……これでもまだ手加減している。本気を出したあいつとバグラモンを圧倒したオメガモン……どんだけ化け物なのかが分かって来たよ)

 

「まだ終わらんぞ……鬼神突!!!」

 

 再度繰り出された鬼神突。横に飛んで躱し、側面からカウンター攻撃を繰り出そうとする一真だったが、それをタクティモンは予測していた。

 左横から迫り来る木刀を横薙ぎの一閃で弾き、返す刀で鬼神突を放つ。咄嗟に木刀を左斜め上に振り上げ、鬼神突の軌道を逸らす事で受け流す。

 

「少しは出来るようだな……だがまだまだだ。お前はオメガモンの力を一部しか引き出せていない。私の知るオメガモンはこんな物ではない!」

 

「あぁ、その通りだ。僕はまだオメガモンの力を全然引き出せていない。だからこそ知りたい。オメガモンの本当の力を。本当の強さを」

 

「そうか。実は私も知りたい。私と言う武人が何処までの力を持っているのかを。試してみたいのだ。私の限界を」

 

「つまり悪人ではないという事だな?」

 

「そういう事になる。それにリリスモンからお前の事は聞いている。私はお前を強くしたい。強くなったお前に挑むのではない。人間界とデジタルワールドの最後の希望、オメガモン。お前を育てたいのだ」

 

「分かった。なら期待に応えて見せる!」

 

 木刀を構えながら目を閉じ、集中する一真。オメガモンに究極進化する感覚を思い出したその瞬間、彼の黒い瞳から空色の光が放たれた。

 その意味に気付いたタクティモンは注意深く木刀を構えると、一真が先程とは比べ物にならないスピードで突進し、木刀を振り下ろして来る。

 

「速くなった!」

 

「ブルァアア!!!! 何が起きたんだ~!?」

 

 斬り下ろしを躱し、瞬間移動で一真の背後に回り込むタクティモン。その気配に気付き、一真は木刀を振るうが、タクティモンは再び瞬間移動で一真を攪乱させる。

 オメガモンの力を使っているのか、直ぐにそのスピードと動きに慣れた一真は反撃に出た。木刀を振るってタクティモンと数合斬り合う。

 先程は一方的にやられたが、今は互角。一真本人が一番驚いている中、タクティモンは背後に大きく飛び退く。

 

「そろそろ陛下とホープナイトモンが戻って来るだろう。この一撃で決着を付けるぞ!」

 

「あぁ、行くぞ!」

 

 同時に駆け出すタクティモンと一真。タクティモンは鬼神突を繰り出し、一真は全力で木刀を振り上げる。

 交差する両者。ぶつかり合う2本の木刀。どちらかの木刀がバキリと折れ、上空高く打ち上がる。一真の足元に突き刺さった。

 勝者はどちらなのか。リリスモンとブラストモンが目にした物。それは根元から折れた木刀を振り上げた一真と、一真の喉元に木刀を突き付けるタクティモンだった。

 

「私の勝ちだな」

 

「僕の負けだな……」

 

「驚いたな。オメガモンの力を引き出し、戦闘経験を蓄積させたとは……」

 

 一真は敗れたとは言え、タクティモンに恐ろしいと思わせた。オメガモンの力を行使しながら戦闘経験を蓄積させた。言わば、オメガモンを自らの身体に憑依させて戦っていたという事になる。

 木刀が折れてさえいなければ、まだまだ勝負は分からなかった。タクティモンは内心では冷や汗を掻き、見ていたリリスモンとブラストモンは唖然としていた。

 

「ブルァアア……リリスモン、一真って凄い奴なのか?」

 

「オメガモンになれるだけだと思っていたけど……こういう事も出来るのね。凄いわ……あら、陛下が戻って来たみたいね。話はその後にしましょう」

 

 獏良兄弟の乗っている車が駐車場に停まったのを見たリリスモンの言葉を聞き、一真達は道場を後にした。

 

 

 

 時刻は正午を過ぎ、昼食を食べる時間となった。バグラモン一家と共に昼食を食べている一真。今日は客人を招く為、リリスモンが張り切って豪華料理を作った。

 食事をしながらバグラモン達と話をしていると、次第にバグラモン一家の事が分かって来た。大部分は一真の予想通りだった。

 

「やはり……別のデジタルワールドで死んだ後、別のデジタルワールドで新生。その後に人間界に来たという事でしたか。よく馴染む事が出来ましたね……」

 

 バグラモン一家の面々は別のデジタルワールドで死んだ後、何らかの理由でこのデジタルワールドに転生。その後は人間界に来た。問題なのは人間界に来た経緯。それを知りたい一真が話を振ると、バグラモンが真剣な表情で答え始める。

 彼の口から明らかになったデジタルワールドの真実。何故七大魔王やバグラ軍の幹部達が人間界に来たのかが。

 

「でもどうしてデジタルワールドからこの世界に?」

 

「イグドラシルが関係している」

 

「イグドラシルが?」

 

 イグドラシル。オメガモンやバグラモン一家が生きたデジタルワールドの先代の神。かつてデジタルワールドの安定の為に人間界を消滅させようとした過激で攻撃的な性質を問題視され、破棄された。

 今はその失敗を教訓に建造された温和で保守的なホメオスタシスがデジタルワールドの神を務めている。その存在を忘れ去られた現在でも、莫大な量の過去のデジタルワールドの記録が保管されている。

 半身を裁きの雷で焼かれて喪失したバグラモンは、このイグドラシルの一部を削り出し、失った半身を補った事で莫大な知識と強大な力を得た。

 

「私達が転生したデジタルワールドは少々特殊なのだ。イグドラシルとホメオスタシスが分割統治している。ホメオスタシスは温和で保守的なのだが、イグドラシルは過激で攻撃的。デジモンと人間の共存を拒み、世界のリセットを考えている」

 

「ッ……! イグドラシルにまともな奴はいないんですね」

 

「そのようだな。実は“デジクオーツ”に来ているデジモン達もイグドラシルが支配する地域のデジモン達が多い。それだけイグドラシルの統治に問題があるようだ」

 

「そういう事でしたか……という事は皆さんが人間界に来たのも……」

 

「そうだ。リリスモン以外の我々はイグドラシルが統治する地域出身。ウィザーモンやテイルモンもだ。私はイグドラシルのやり方が長続きしないと思い、タクティモン達とリリスモンを連れてこの世界に来た。ホメオスタシスの治める地域に逃れるという選択肢もあったが、それが出来なかった。イグドラシルには『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』がいる」

 

「最悪じゃないですかそれ……!」

 

 デジタルワールドの真実を話すバグラモンの言葉。そこには凄まじい怒りと、深い悲しみが込められている。

 リリスモン以外のバグラモン一家はイグドラシルが統治する地域の出身。前世でイグドラシルの行いを見ていたバグラモンは、このデジタルワールドでもイグドラシルが変わらないと分かると、直ぐに行動を起こした。

 しかしここで疑問が残る。何故人間界に来たのか。バグラモン達は何故転生したのか。転生させたのは一体誰なのか。

 

「それに私は人の心に宿る可能性を信じている。希望の心は未来への虚無感や絶望の心を克服できると。前世で私はそれを信じる事が出来ず、長きに渡る戦乱を起こし、弟や数多くのデジモン達を巻き込んでしまった。無論オメガモン……君もだ。その罪を私は償っていない。可能性を気付かせてくれた少年達が生きる世界を消させはしない。そう思った私は人間界で虎視眈々と来たるべき戦いの時に備えた」

 

「そして我々は出会った。優衣さんことアルファモン……そして一真君。君にもだ」

 

「他の七大魔王の連中に声を掛けると、バルバモンとリヴァイアモン以外は賛成していたわ。イグドラシルによる支配が相当嫌だったみたいね……」

 

 この人間界に来たデジモン達の共通点。それは何らかの世界から転生して来たという事だった。“巡り会いの戦い(クロスウォーズ)”が起きたデジタルワールドの出身が今の所多いが、それは何かの偶然だろう。

 

「ようやく分かりました。オメガモンがこの世界に転生し、僕と一体化した理由が」

 

「ほぉ。その話を聞こう」

 

「ホメオスタシスの戦力増強の為です」

 

 オメガモンが自分に宿る形で転生した理由を一真は理解した。簡単に言えば、ホメオスタシスによる戦力増強。『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』に対抗する為だ。

 

「オメガモン達の共通点。それは一度別の世界で死んだ事。彼らをこの世界に転生させたのはいずれ来るであろうイグドラシルの戦争に備える為です。増してや、バグラモンさん方々の力は強い。戦力としては申し分ない。テイルモンさんとウィザーモンさんも単体で究極体に進化出来ますし、優衣さんは言わずもがな」

 

「成る程。では重ねて質問する。何故君と優衣さんの場合、人間に宿る形で転生したと思う?」

 

「聖騎士の力という水を入れる『器』を確保する為ですよ。優衣さんがなっているアルファモンはイグドラシルがドルモンに進化の光をもたせた事でなれました。つまり、進化の光を宿す『器』として優衣さんが選ばれた。僕の場合は……『Omega-Gain-Force(オメガ・イン・フォース)』をイグドラシルによって封じられた事に対する対抗措置だと思います。人間とデジモンが融合して新しい力がもたらされたという伝説があるくらいなので、それに賭けたのでしょう」

 

 一真の分析力と洞察力にバグラモンは舌を巻く。自分達の話と、周りの面々の情報。それだけで答えを導き出した。

 バグラモンは悟った。一真ことオメガモンは絶対に敵にしたくないと。強い上に冷静。頭も悪くない。

 

「最後に一つ聞きたい事がある。私とタクティモンの事は今でも恨んでいるのか?」

 

「いえ、恨んでいません。確かに敵討ちする事がオメガモンに筋を通す事かもしれませんが、それをオメガモンが望んでいるとは考えにくいです。それに、今は世界の危機。こんな所で味方同士で争っている暇は在りません」

 

「そうだな……その通りだ。私はかつて剣を交えた君と、今度は手を取り合いたいと思っている。それはどうかな?」

 

「はい。喜んで」

 

 一真とバグラモンは固く握手を交わし、“巡り会いの戦い(クロスウォーズ)”の時から続いていた因縁をリセットした。

 このまま良い流れになるかと思われたが、そうは行かないのが世の中という物だ。タクティモンがバグラモンに進言をする。

 

「陛下。武人たる私の我が儘を許して下さい。八神一真と……オメガモンと戦わせて下さい」

 

「タクティモン。君の考えを聞こう」

 

「はい。陛下が戻って来られる前、彼と道場で手合わせをしました。人間でありながらデジモンの力で強化された事もあり、中々の善戦を見せました。結果は敗北でしたが、私は彼を鍛えれば相当の物になると確信しました。まだオメガモンの本当の力を見ていません。どうか戦う許可をお願いします」

 

「成る程……良かろう。タクティモン。存分に戦うが良い」

 

「承りました、陛下」

 

 どうやらタクティモンは飢えていたようだ。この人間界に来てから、自分が全力を出せる相手との戦いに。やはり彼は武人だったようだ。

 デジタルワールドではいたようだが、思うような戦いが出来なかったのだろう。何しろ、イグドラシルが統治した地域で暮らしていたのだから。

 

「一真君は大丈夫か?」

 

「ここまで来たらやるしかないでしょう。答えは出ているんです。最初から」

 

「分かった。戦える場所を用意しよう」

 

 闘志を滾らせるタクティモンを見て、やる気を決めたのだろう。一真が戦う意思を見せると、バグラモンは静かに微笑む。

 元バグラ軍の皇帝。人間の心の可能性を信じていたように、オメガモンの可能性を見てみたくなったのだろう。

 昼食を終えた一真達は戦えるような場所へと向かっていく。そこで結界を張り、かつての大戦から続いていた因縁に終止符を打つ戦いを行う為に。

 

 

 

 一真がオメガモンに究極進化を終える一方、タクティモンが鎖で厳重に封印された鞘込めの巨大としか言えない刀を召喚する。

 その刀の名前は『蛇鉄封神丸(じゃてつふうじんまる)』。『ZERO-ARMS:オロチ』のデータを参考に、デジタルワールドを分断する為にバグラモンによって建造された。

 その強力で禍々しい力を宿しているが為に、デジタルワールドをゾーンごとに分断した後はバグラモンにより鞘に封印されて力を抑えられている。

 

「私が審判をしよう。では……はじめ!」

 

「バグラ軍の幹部。三元士が一人、タクティモン!」

 

「『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』が一員、終焉の聖騎士、オメガモン!」

 

「参る!」

 

「行くぞ!」

 

 審判たるバグラモンが振り上げた右腕を大きく振り下ろした瞬間、オメガモンとタクティモンによる決闘が始まった。

 お互いに名乗りを上げると同時に一歩を踏み込み、凄まじい勢いを以て突進を開始。両社は一瞬で間合いを詰める。最初に仕掛けたのはタクティモン。両手に握る『蛇鉄封神丸』を振り下ろす。

 

「ハァッ!!」

 

「フッ!!」

 

 それを迎撃するオメガモンは聖剣を右側から左斜め上にかけて振り上げ、『蛇鉄封神丸』を弾きながら、タクティモンの懐に入る。

 『蛇鉄封神丸』は両者の身長と同等か少し大きいくらいのサイズ。大きな槍を振るう戦士との戦いの感覚。間合いを詰めれば長所を活かす事が出来ない。しかし、それは人間界の常識だ。デジタルワールドの常識ではない。

 

「『参の太刀・天守閣』!!!」

 

 タクティモンは弾かれた『蛇鉄封神丸』を地面に叩き付け、オメガモンの足元から巨大としか言えない岩石の天守閣のお城が伸びて来た。

 自分のピンチを咄嗟の機転で乗り切るタクティモン。“知謀、泉が如く湧くがごとし”と言われるほど計略と戦略に長けている。

 しかし、それはオメガモンも同じ足元から突然出現してきたお城を足場に使い、空高く跳躍し、体を反転させながら巨大な大砲から青いエネルギー弾を連続で撃ち出す。

 咄嗟に防御態勢を取ったタクティモンが爆発で発生した黒煙と爆炎の中に姿を消していく中、オメガモンは地面に降り立つ。

 

「『タネガシマ』!!!」

 

 黒煙と爆炎を突き破るように、突然放たれた砲撃。それはタクティモンの背中にある大砲から撃ち込まれた物。

 オメガモンがグレイソードを一閃して砲撃をかき消すと、目の前から岩石で出来た天守閣のお城が襲い掛かって来る。

 

「『参の太刀・改! 地槌閣(ちついかく)』!!!」

 

「何!?」

 

 突然の奇襲に驚きつつも、オメガモンは冷静に対処する。ガルルキャノンの照準を合わせ、青いエネルギー弾を撃ち込み、地槌閣を木っ端微塵に破壊する。

 しかし、それをタクティモンは予測していた。オメガモンとの間合いを一瞬で詰めると、渾身の力を込めた刺突を繰り出す。

 

「『壱の太刀・鬼神突(きしんとつ)』!!!」

 

「グァッ!!」

 

 咄嗟に左肩を前に突き出して防御するが、タクティモンのパワーと『蛇鉄封神丸』の衝撃、そして『鬼神突』の威力の前に耐え切れず、オメガモンは吹き飛ばされる。

 左肩の『ブレイブシールドΩ』で『鬼神突』を防いだ為、ダメージと衝撃を軽減していたから直ぐに立ち上がれた。

 

「どうやら貴様は私が全力を出さねば、可能性は見えて来ないみたいだ。陛下、賜ったこの剣の封印を解く許可を頂きたい。武人の我が儘でござる。何卒!」

 

「良かろう! 君の全力をもってオメガモンの力を解き放つが良い!」

 

「ならばこちらも……“万象一切灰塵と為せ”! グレイソード!!!」

 

 バグラモンの許可を受け、タクティモンは『蛇鉄封神丸』の封印を解いた。抜刀された『蛇鉄封神丸』。その刀身は翼のように見えるし、蛇の目が刻まれているようにも思える。

 背中に光の円が展開されており、タクティモンの全身から漆黒のオーラが発せられている。背後に見え隠れする巨大な蛇が。それはまるで八岐大蛇に見える。

 それに対抗し、オメガモンも左腕に宿るウォーグレイモンの力を解き放つ。巨大な聖剣は太陽の聖剣となり、その刀身から太陽の灼熱が発せられ、周囲一帯を灼熱地獄へと書き換えていく。

 

「ほぉ、それが新しい力か……」

 

「そうだ。相変わらずと言った所だが……何かが違うな」

 

「無論だ。人間界に来てから毎日鍛錬を重ねている。今の私はかつて敗れたシャウトモンEX6とシューティングスターモンに勝てると言える」

 

「成る程……その漆黒のオーラは妨害系の能力だな」

 

 タクティモンが放つ漆黒のオーラ。それは相手が発動した特殊能力の一切を封じ、無効化する恐ろしい効果持ち。

 しかし、『蛇鉄封神丸』の封印を解除していない時は発動出来ない。『蛇鉄封神丸』の封印を解除した後に発動した特殊能力は無効化出来ない。そういった制約がまだまだある。

 

「貴様の秘奥義にかなり苦戦したからな……対イグドラシルを想定して会得した新しい力だ!」

 

「ならば存分に見せてもらおうか!」

 

「無論だ! 『伍の太刀・五稜郭(ごりょうかく)』!!!」

 

「『怒涛たる勝利の聖剣(グレイソード)』!!!」

 

 タクティモンが『蛇鉄封神丸』を振るった瞬間、無数の斬撃がオメガモンに向かって襲い掛かる。あらゆる方向から襲い掛かる漆黒の斬撃の嵐。

 それに対し、オメガモンは太陽の聖剣の刀身から灼熱の波濤を生み出し、全力で薙ぎ払う事で漆黒の斬撃の嵐を消し去る。

 

「何と……!」

 

タクティモンはバグラモンによって、数万年分の武人デジモン達の無念の残留魂魄のデータを練り固めて作られたデジモン。

『蛇鉄封神丸』の封印を解き、鞘から抜刀した状態では三体以上の聖騎士を同時に圧倒し、シャウトモンX7をも退けるという桁外れの力を誇る。

 しかし、そのタクティモンをも驚嘆させる程、オメガモンの力は凄まじい。生前の力が戻っているのか、或いは新しい力に目覚めているのか。

 

(この感覚は一体何だ? 私は戦う事を楽しんでいるのか? 今まで感じて来なかったこの感情……一体どういう事だ!?)

 

自身の中から湧き上がって来る感情。戦う事が楽しい。強い相手と戦う事が楽しい。前世では有り得ない感情。それに戸惑いを覚える中、バグラモン達はオメガモンの戸惑いにとある一つの仮説を立てる。

 

「オメガモンの力がタクティモンとの戦いで少しずつ上がってきているな……」

 

「ブルァアア!!!! どういう事だぁッ!?」

 

「戦いの中で成長しているって事よ。今まで戦った相手は一部を除けば、オメガモンより弱い相手。今まで思うような戦いが出来なかった事に内心不満を抱いていたようね。でもタクティモンという自分と同等以上に戦える相手が現れた事で、オメガモンの奥底に宿っていた戦闘本能が目を覚ました。そうとしか考えられないわ」

 

 デジタルモンスターことデジモン。彼らは基本的に野生の本能による闘争心が強い種族であり、“戦闘種族”や“戦う種”とも称されている。

 それはオメガモンも例外ではない。心の奥底では強い相手との死力を尽くした戦いを望んでいるようだ。

 

「つまり……オメガモンの力が上がっているという事? でもどうして?」

 

「デジモンはデータの集合体。成長出来る可能性があるとすれば……心しか考えられない。人間の心とデジモンの心を持っている事。それがあのオメガモンの強み。デジモンという枠組みを超えた存在、いわば超越種」

 

 オメガモンが急激にパワーアップしてきた理由。それはオメガモンの存在その物。人間の心とデジモンの心の2つを持っている事にあった。心とは人間のみならず、生物において最も必要な物。そして強くなる為にも。心失くして強くなる事など有り得ない。

 ディアボロモン戦とアルファモンとの模擬戦で感じた強い思い。それがオメガモンにかつての秘奥義を発動させ、一時的かつ爆発的な力の上昇をもたらして来た。

 

「これで終いにするぞ! 『無の太刀! 六道輪廻(ろくどうりんね)』!!!」

 

「『燦然たる勇気の聖剣(グレイソード)』!!!」

 

 タクティモンは蛇鉄封神丸(じゃてつふうじんまる)を正眼に構え、全てのエネルギーを込めながら前のめりに大回転する。

 放たれたのは螺旋のように渦を巻いた巨大な漆黒の斬撃。対するオメガモンは太陽の聖剣から生み出される灼熱の波濤を集束する事で、左腕に巨大な灼熱の刃を作り出し、それを全力で振り下ろす。

 激突する両者の必殺奥義。眩い光が満ち溢れ、周囲一帯の全てを破壊し尽くす。これが究極体の戦い。世界の終焉を思わせる程の見るも無惨な光景だけが残っている。

 

「……引き分けのようだな」

 

「あぁ。良き戦いだった」

 

 結果は引き分け。お互いに全力を出せた良き勝負に、オメガモンとタクティモンは握手を交わし、お互いの健闘を称え合う。

 こうして、オメガモンはバグラモン一家との前世の因縁を断ち切り、新しい一歩を刻む事が出来た。彼らと共に戦う時は直ぐそこまで近付いている。

 




今回はデジタルワールドの”神”、何故バグラ一家や七大魔王達が人間界に来たのか、何故聖騎士達が人間と一体化する形で新生したのかについて回答しました。
ちゃんとした答えになっていましたか? 

これからの展開にも少しだけ触れましたが、第2章はイグドラシルVSホメオスタシスの代理戦争になります。新生バグラ軍VS『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』という形です。
そこでも新キャラは幾つか出てきます。
次回は”デジクオーツ”関連の事件に戻りますが、いよいよバグラモンファミリーのメンバーが参戦します。

皆さん、よろしければ感想・評価の方よろしくお願いします。
あたたかい感想とか前向きなコメントや応援メッセージ、高評価を頂くと、作者のやる気が超進化します。

では次回をお楽しみに。LAST ALLIANCEでした!

次回予告

ホープナイトモンこと獏良遼太郎。彼が教授を務める大学で事件が起きた。
授業に出席する生徒達が次々と体調不良を起こす中、その原因がデジモン絡みだという事が明らかになる。とある女子大生の心とデジモンの力。
生徒の危機にオメガモンとホープナイトモンが立ち上がる!

第9話 生徒を救え! ホーリーナイトモン降臨!
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