終焉の聖騎士伝説~オメガモンとなった青年の物語~   作:LAST ALLIANCE

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先にお知らせを1つさせて下さい。
近いうちに投稿する話でオリジナルデジモンを出します。
今後もオリジナルデジモンを出す予定ですが、出す時はその都度連絡します。

どうも文字数が1万をいくのがやっとなので、もう少し話の内容や地の文を練り込もうと思う今日この頃。少しずつで良いので、頑張っていきます。



第9話 生徒を救え! ホーリーナイトモン降臨!

 オメガモンこと一真と因縁の再会を果たした次の日。自室でホープナイトモンは考え事をしていた。彼は大学の教授を務めている事から、本棚にはびっしりと本が入っている。

 兄であるバグラモンと生前で因縁があったオメガモン。その聖騎士が人間と一体化する形で復活した。しかも自分の勤務している大学の卒業生。

 

(兄上達が転生した理由は分かる。でも聖騎士の姿で私が転生した理由は一体何だ……?)

 

 ホープナイトモンは考えていた。自分が何故聖騎士になった上で、転生したのかを。彼はバグラモンと共にデジタルワールドで過ごしていたが、世界情勢の問題で人間界に移住してきた過去がある。

 彼はデジタルワールドに転生してからもずっと、自分が転生出来た理由について毎日考えているが、思うような答えに辿り着いていない。生前は暗黒騎士で決して許されない外道な事をしたからなのか。

 

(一真君は“ホメオスタシスの戦力増強の為”と言ったが……どの道イグドラシルとの戦争は避けられそうにないか)

 

 ホープナイトモンはいずれ来るであろうデジモン達との戦いに備え、毎日タクティモンと共に修行を重ねている。そのおかげで、今は三元士レベルにまで強さが上がっている。

 話に出た一真はと言うと、タクティモンのいる道場で剣術の修行をしている。理由は簡単だ。来たるべき戦いの時までに強くなりたい。その思いだ。

 

「先ずは基本の型から教えよう。斬撃は九つの種類がある。上から下に振り下ろす唐竹斬り。相手の左肩から右脇腹にかけて振り下ろす袈裟斬り。相手の右肩から左脇腹にかけて振り下ろす逆袈裟斬り。右から左に水平に振るう右薙。左から右に水平に振るう左薙。右脇腹から左肩にかけて振り上げる左斬り上げ。左脇腹から右肩にかけて振り上げる右斬り上げ。舌から上に振り上げる逆風。そして刺突。これが基本となる九つの斬撃だ」

 

 元々、タクティモンは武人デジモンの数万年分の怨念のデータを練り固めて作られたデジモン。今は怨念を力として行使しているが、武人デジモンのデータを使って兵法書を書いたり、剣道の先生をしている。

 

「さてこれから教えるのは攻撃や防御等の基本技。剣術の基本が全て集約されたシンプルな型。壱の型。極めれば無駄のない剣術となる。さぁ始めるぞ!」

 

「行きます!」

 

 お互いが竹刀を握り締め、剣術の稽古を始めた一真とタクティモン。道場には竹刀を打ち合う快音が鳴り響く。

 

 

 

「……以上が僕の考えです」

 

 休日明けの月曜日。“電脳現象調査保安局”の会議で、一真は鏡花ことリリスモン達から告げられた事実を踏まえ、自らの意見を伝える。

 自分がオメガモンになった理由。何故転生したデジモン達がこの世界に集結しているのか。その全てを皆の前で堂々と発言した。

 

「成る程な……そう考えていたとは」

 

「確かに……私も疑問に思っていたが、そういう事だったのか」

 

 薩摩とクダモンは一真の説明に理解を示している。彼らも自分達がこの世界に来た理由を考えていたが、どうにも分からない事が多過ぎる。

 それが今回一真の口からホメオスタシスによる戦力増強と言われ、ようやく納得する事が出来た。デジタルワールドの情勢も踏まえた上で。

 

「そうなんだ……まさか私がなっているアルファモンにもそういう秘密があったなんて……」

 

「黙っていて済まない。でも隠し通すつもりじゃなかったんだ……まだ話す時期じゃないと思って」

 

「そうそう。まさか早い時期に真実を知ったのは意外だったわ……リリスモン。アンタ、何のつもり?」

 

「教えたのは私じゃないわ。でも遅かれ早かれ、一真君と優衣さんは知る必要があった。自分達の事を……戦う理由を」

 

 “電脳現象調査保安局”の中で、デジタルワールドから来たのは鏡花ことリリスモンと、テイルモンとウィザーモンだけ。

 クダモンは生まれてからずっと薩摩と一緒に居る。これはイレギュラーとしか言えないが、今後の事を考えると、ある意味妥当かもしれない。

 

「鏡花さん。でも本当なんですか? 一真君の言葉は」

 

「えぇ、大半が事実よ。私達の方でも“デジクオーツ”内のデータを調べているんだけど、これまで観測されてきたデジモン達の殆どが、イグドラシルが統治する地域から来ている」

 

「どうして“デジクオーツ”に来ているんですか?」

 

「逃れる為よ。イグドラシルの支配から」

 

 デジモン達は好きで“デジクオーツ”に来ている訳ではない。“デジクオーツ”に来て、人間界の様子を見て、そこでようやく自分の意志で考えて行動している。

 マリンデビモンやムゲンドラモンがその典型的な例だ。それ以外のデジモンも何かしらの理由があって動いている。

 心の奥底にあるのはイグドラシルから逃れる為。しかし、イグドラシルが嫌ならホメオスタシスが治める地域に行けば良い。そう考える薩摩だったが、テイルモンの言葉がその疑問に答えを出す。

 

「イグドラシルから逃れようにも、検問とか監視網が厳しすぎる。仮に潜り抜けても、秩序に反したという理由で『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』に始末される。それが精一杯よ」

 

「何と言う事だ……」

 

「ダークエリアは干渉こそ無かったけど、いずれイグドラシルの魔の手が来るのは時間の問題だったわ。だから会議を開いて皆に聞いたの。“このまま残って滅びる時まで好き勝手するか、人間界に逃れて反撃のチャンスを待つか”を。前者を選んだのはリヴァイアモン。後者を選んだのは私達。それ以外の道を選んだのはバルバモン。リヴァイアモンはそもそも動けないし……身体の問題で。バルバモンは“儂は儂で好きにする”と言っていたわ」

 

「それ以外の皆は人間界に来た……他の皆は?」

 

「それぞれが真っ当な仕事をしているわ。ただ……色々突っ込み所があるけど」

 

 リリスモン以外の『七大魔王』で、人間界に来ているデジモン達は全員自分の道を進んでいる。真っ当な仕事に就いているとの事。

 彼らが一体何をしているのか。それを知るのはまだ先になるが、予想の斜め上を行っている為、誰もが驚く事になるだろう。

 

「でも“デジクオーツ”に関する事件が終わったら、次はイグドラシルと全面戦争か……気が休めないわね」

 

「共通点が共通点だからね……確かに僕らは別の世界で一度死んで、デジタルワールドに転生した。それがホメオスタシスの仕業で、理由がデジタルワールドの安定の為か。実にあの神様らしいよ」

 

「巻き込まれる方はたまったものじゃないけどね……でも今は“デジクオーツ”の方を優先しましょう」

 

 “電脳現象調査保安局”の主要メンバーは理解した。“デジクオーツ”をどうにかした後は、イグドラシルとの全面戦争が待っている事を。

 それまでは“デジクオーツ”関連の事件に専念する。結論が出たところで解散となり、それぞれが仕事に戻っていった。

 

 

 

 東京首都大学。一真の母校たる国立大学。旧七帝大にワンランク劣るものの、それでも難関国立大学に長年君臨している。そこにはホープナイトモンこと獏良遼太郎が教授として勤務している。

 大学の掲示板にとある1枚の大きな紙が張り出されている。それは順位の結果。大きなテストや課題が終わり、その結果を記している。

 

「また下がった……どうして成績が上がらないんだろう?」

 

 その結果を見てショックを受けている女子大生。彼女の名前は須原美穂。経済学部2年生。順位は学年で7位と中々優秀そうに見える。

 しかし、美穂は落ち込んでいる。その理由は2つある。1つ目は高校生の頃、学年で常に1位を取り続けて来た為、その栄光を忘れられないでいる事。2つ目は1年生の頃より順位が下がった事。1年生の頃はトップ5をキープしていたが、ついに陥落した。

 

「私より前の人がいなくなれば良いのに……」

 

 勉強のやり方を変えたり、もっと努力しよう等の前向きな考えが出来ない程、美穂はネガティブに陥っているみたいだ。

 自分より良い成績を残している人がいなくなれば、自分が自然と一番になる。そう呟いた美穂の足元から“デジクオーツ”が広がり、枝やツタが美穂に向かって伸びていく。

 

「貴方は私の事を分かってくれるの? ありがとう……」

 

 その枝やツタを伸ばしているデジモンを見た美穂は微笑むと、彼を受け入れるように両手を伸ばした。彼女の瞳からは既に光が失われていた。

 それから数日後。獏良遼太郎のマクロ経済学の講義の時間に異変が起きた。遼太郎がパソコンを操作しながら、学生達に失業率の説明をしている。

 

「であるからして、この場合は……」

 

 遼太郎の説明を聞いている美穂が怪し気に微笑むと、突如として一人の生徒が石のように固まり、そのまま気を失った。

 真面目に講義を受けていたのに一体何があったのか。その様子の変わりようと物音に周りにいた生徒達が動揺し、中には悲鳴を上げる女子大生もいる。

 

「どうした! 何かあったのか!」

 

「何だよおい!」

 

 それを切っ掛けに次々と生徒達が気を失い、倒れ込んでいく。突然の事態に生徒達がざわついていると、遼太郎は何かに気付いた。

 この講義室の何処かからデジモンの『波動(コード)』が感じられる。しかも“デジクオーツ”のゲートが開かれている。

 それに加えてこの教室からいなくなった生徒が1人いる。彼女は須藤美穂。今日は大学に来ている事は確認している。これはきっと何かある筈だ。

 

「(これは一大事だ! リリスモンに伝えなくては!)直ぐに他の先生を呼んで来る! 君達は待機するんだ!」

 

 遼太郎は講義室を出てスマートフォンを懐から取り出し、“電脳調査保安局”にいるリリスモンこと鏡花に電話をする。

 要件は簡単。デジモンの仕業と思われる事件が起きた事。しかもそれが自分の教えている授業だという事。

 

「リリスモンか! 緊急事態だ! デジモンに関する事件が起きた!」

 

『ホープナイトモン!? まさか貴方の大学で!?』

 

「そうだ! 授業中に生徒が次々と体調不良となった。犯人は私の授業に出ている生徒で、しかも“デジクオーツ”が大学の敷地内にある! 至急応援を寄越して欲しい!」

 

『分かった! 一真君を向かわせるわ!』

 

「ありがたい。じゃあ!」

 

『気を付けるのよ!』

 

 遼太郎は大学の他の教授や職員に授業中に起きた事を正直に報告しながら、美穂が何処にいるのか探している。

 彼の直感が囁いている。今回のデジモンは美穂の心の何かに反応した事を。それが解決の重大なヒントになっている。

 

 

 

「一真君! 東京首都大学で“デジクオーツ”の反応が確認されたわ! 直ぐに向かって!」

 

「僕の母校で!? 分かりました直ぐに向かいます!」

 

 書類仕事をしていた一真は鏡花の連絡を受けると、直ぐに駐車場に向かって車に乗って東京首都大学に直行する。

 大学の駐車場に車を泊めて直ぐに出て、“デジクオーツ”の反応を探り始める。その前に1人の金髪の美男子が姿を現した。

 

「君が八神一真君か……」

 

「お前は何者だ? 初対面な筈なのに何故僕の事を知っている!」

 

 初対面である筈なのに、自分の事を知っている人物。それに違和感を覚えながら、一真は相手の『波動(コード)』を探る。

 

「君の心は美しい。自らが戦う理由や使命を理解している。でもその反面、自分がなっている聖騎士を羨んでいる。彼のように上手く戦いたいと思っている。努力すれば努力する程、輝きは増して自分が小さく思える」

 

「どういう意味だ!」

 

「そのままの意味だよ? 八神一真……いや、オメガモン」

 

「カオスデュークモン……お前だったのか!」

 

 金髪の美男子が不敵な笑みと共にそう言い放つと、周囲の景色が一変して“デジクオーツ”となった。自力で“デジクオーツ”に行けるデジモンだと気付くよりも前に、一真は目の前のデジモンの正体に気付いた。

 目の前にいるデジモンはカオスデュークモン。かつて砂漠地帯で戦い、自分を後少しで殺す所まで追い詰めた因縁の相手。

 

「究極進化!!!……オメガモン」

 

 迷わずオメガモンに究極進化する一真。ここに暗黒騎士と聖騎士による2度目の戦いが繰り広げられようとしている。

 最初の戦いは暗黒騎士が圧倒して後一歩の所まで追い詰めたが、果たして今回は一体どうなるのか。

 

「君は用事があって来たみたいだ……少し私と遊んでもらおうか」

 

「悪いがお前との遊びに付き合う程、私は暇ではない。速攻で切り上げる」

 

「そうか……なら強くなった君の力、見せてもらおうか」

 

 カオスデュークモンは右手に魔槍を、左手に魔盾を握り締めながら構えを取る一方、オメガモンは右腕の大砲と左腕の聖剣を装備する。

 言葉を言い終えたカオスデュークモンが動き出す。一瞬でオメガモンの懐を侵略し、魔盾を構えながら距離を詰めて来た。

 そのまま『ゴーゴン』で殴り付けるが、オメガモンはカオスデュークモンの構えを見ただけで、一体何をするのか予測していた。左肩に装備している『ブレイブシールドΩ』で魔盾の攻撃を防ぐ。

 

「ほぉ、良い反応だな。だが甘いぞ!」

 

 オメガモンの反応速度と対応力に舌を巻きながらも、カオスデュークモンは更なる攻撃を繰り出し続ける。

 右手に握る『バルムンク』の先端に暗黒のエネルギーを集中させ、オメガモンに向けて突き出し、暗黒のエネルギー波を放つ。

 

「『カオスショット』!!!」

 

「ムッ!!」

 

 背中に羽織っているマントで暗黒のエネルギー波を防ぎながら、オメガモンは背後に飛び退く。カオスデュークモンに更なる追撃を許さない為だ。

 それでもカオスデュークモンは攻撃の手を緩めない。右手に構えた魔槍を突き出し、突進を開始して来る。

 

「そうはさせない!」

 

 カオスデュークモンの勢いを削ごうと、オメガモンは右腕の大砲の照準を合わせ、カオスデュークモンに向けて青いエネルギー弾を撃ち出す。

 暗黒のエネルギーを纏わせた魔槍で貫いて破壊されるが、それでも黒煙と爆炎が巻き起こる。それらを隠れ蓑に使いながら、オメガモンは横に滑るように移動を開始する。ガルルキャノンからエネルギー弾を連射していく。

 

(効かないと分かっている攻撃を繰り返すとは……何のつもりだ?)

 

 左手の魔盾で連続砲撃を防いでいくが、カオスデュークモンは内心でオメガモンの考えを探っている。

 それに答えるように、オメガモンは目を細めて不敵な笑みを浮かべる。カオスデュークモンの足元に狙いを定め、一瞬の溜めを作ってから青いエネルギー弾を撃ち出す。

 青いエネルギー弾は地面に着弾すると同時に、カオスデュークモンの周囲一帯に夥しい破壊を撒き散らしていく。

 

「これは……!」

 

 咄嗟に左手に持っている魔盾で防ぐカオスデュークモン。彼は気付いた。今の一撃が散弾型エネルギー弾だという事に。

 青色のエネルギー弾の中には小型のエネルギー弾が多数凝縮されており、炸裂する事で通常よりもすさまじい破壊力を見せる。

 

「驚いたな……まさかこの短期間で成長するとは」

 

「一つ貴様に質問したい事がある。クオーツモンのデジタマを奪い、クオーツモンを蘇らせたのは貴様か?」

 

「違う。私ではない。私はデジモンキングのシャウトモン達相手にやり合える程、強いデジモンではない」

 

「と言う事は貴様が仕えるデジモンが黒幕という事だな? そのデジモンは誰だ!」

 

「悪いがそれは教えられない。今日はここまでにしよう。また会おう、オメガモンよ」

 

 カオスデュークモンは当初の目的を達成したのか、オメガモンの目の前で姿を消し、“デジクオーツ”から去っていった。

 それを見て暗黒騎士の『波動(コード)』が完全に消えた事を確認すると、オメガモンは大学の中に入るべく、一歩を前に踏み出した。

 

 

 

「何だこれは? 巨大な植物に支配されているみたいだ……」

 

 大学の建物の中に入ったオメガモン。彼が目にしたのはあらゆる所を侵食している蔦。まるで植物が文明を侵食しているみたいだ。

 今回の事件の犯人は植物系のデジモンかもしれない。そう思いながら講義室に入ってみると、何人かの生徒に蔓が巻き付いている事に気付いた。

 

「成る程。蔓で動きを封じながら、エネルギーを吸収しているのか。あくどいやり方だ」

 

 何人かの生徒はまるで石像のように動かない。それに加えて活力を吸収されている。本当ならグレイソードで蔦を斬って、生徒達を助けてあげたいのが本心。

 しかし、オメガモンはこの事件の犯人を突き止める事を優先した。感情ではなく理論で動く。それがオメガモンという聖騎士だ。

 

「蔓の先にデジモンがいる……だがこれ以上先には進めない」

 

 大学の構内を駆け抜け、一通り蔓の事を調査したオメガモン。彼は蔓の終着点に辿り着き、この先にデジモンがいる事を考える。

 犯人を炙り出すにはどうすれば良いのか。オメガモンは考える。大学の至る所にある蔦その物がデジモンの一部だとしたら。しかもデジモンは正体を見せていない。かなり手強い相手になるだろう。

 一方の遼太郎。彼は図書室で須藤美穂を見つけた。声を掛けようとすると、彼女が何かを呟いている事に気付いた。

 

「1~7位の皆が消えた。これで私が一番よ! アハハハハハハッ!!!!!」

 

「何を言って……ハッ! まさか須藤さん……君が!」

 

「そうです。大学に進学するまでは常に私は学年トップ。でも大学ではトップではなくなった。悔しくて、惨めで……だから私より出来の良い生徒を消してやってるんです!」

 

「だからと言って、やって良い事と悪い事がある筈だ! それが分からない君ではない! 目を覚ますんだ!」

 

「先生は分かってくれますよね? 自分より輝いている人が直ぐ近くにいて、自分の矮小さを思い知らされる。自分だけ取り残されるような、そんな気持ち……」

 

「ッ!?」

 

 まるで自分の心の奥底を言い当てられたような錯覚。自分にどうにか出来るのか。彼女を救う事が出来るのか。それを考えながら遼太郎は険しい表情となる。

 その頃、“デジクオーツ”にいるオメガモンは蔓を見ながら考え事をしている。これまでの戦いで分かって来た事。それは相手の戦術や特徴を理解する事。

 今回の相手は植物系のデジモン。枝のような触手や蔦が広がっている。そうして自分のテリトリーを拡大していく。厄介なのは本体が何処にいるのか分からない事。

 

(まるで森の中に迷い込んだみたいだな……待て。今回の犯人はジュレイモンではないのか? 可能性は在り得るが、さてどうやって確かめるか……)

 

 極めて厄介な相手なのは分かった。相手が誰なのかは何となく分かって来た。問題なのはどうやって本体を見つけ出すか。

 その方法を考えながら目の前に広がる蔦を見ると、オメガモンは左腕を振るい、ウォーグレイモンの頭部を象った籠手から大剣を射出する。

 

「あまり使いたくはない手段だが……許して欲しい」

 

 オメガモンは大上段に掲げた聖剣を振り下ろし、蔦を真っ二つに両断する。蔦が身体の一部だとすると、痛みがフィードバックして苦しむ事となる。

 数秒後、何処かから苦痛に満ちた声が聞こえて来た。これで本体の居場所が明らかになった。オメガモンは直ぐに向かっていく。

 同じ頃。人間界では、突如として美穂は頭を抱えながら苦しみ始めた。“デジクオーツ”で傷付けられた事で、フィードバックが来た事を意味している。

 彼女の足元から“デジクオーツ”に繋がるゲートが開かれ、遼太郎は迷わず飛び込みながら、ホープナイトモンの姿となった。

 

 

 

 図書室から大学の中央にある広い場所に来た美穂とホープナイトモン。明らかに様子がおかしい美穂を見て、ホープナイトモンは出方を伺う。

 全身から人ならざる者のオーラが出ている。彼女はデジモンに憑り付かれている。ホープナイトモンの目でも、それは確かだった。

 

「よくも……よくも!」

 

「まさか……ジュレイモンと一体化していたのか!?」

 

 今回の事件の犯人はジュレイモン。大きな樹木のような姿をした植物型デジモン。枝のような触手や蔦を伸ばして来ると、ホープナイトモンは双剣を両手に握り締め、振るいながら斬り裂いていく。

 しかし、人間と疑似的な一体化をしているジュレイモンは全体的なスペックが上昇している。それに加え、一体化をしている美穂を助けなければならない。そういった要因もあり、ホープナイトモンは戦いにくそうにしている。

 一瞬の隙を突かれて触手に拘束され、エネルギーを吸い取られていく。その時に美穂によって心の奥底で抱いている思いが暴かれた。

 

「私は自分より出来の良い人達に嫉妬していました。その心が私のエネルギーです。ジュレイモンが私に力を貸してくれました。今では一心同体だから、何でも出来る!……先生は分かってくれますよね?」

 

「違う! それはただの思い上がりだ! 誰かを蹴落とし、羨んでも何の解決もしないじゃないか!」

 

「よく言いますね……先生も同じ事をしたくせに!」

 

「ッ!」

 

 ホープナイトモン、もといスカルナイトモン。かつて強制デジクロスで様々なデジモン達を取り込み、強化していた。美穂が理解者として口にする一方、美穂の気持ちを理解しながら止めようとしている。

 

「バグラモン……」

 

「何!?」

 

「先生はお兄さんがいて、心の底から羨んでいるんですね。兄は偉大な発明家であり、世界的に有名。なのに自分は大学の教授止まり。常に兄と比較され続けている事への苦悩や焦りが渦巻いている……安心して下さい。お兄さんは必ず仕留めますから」

 

「兄上を……兄上を傷付ける者は誰であれ許さない!!」

 

「そうだ! 例え誰であろうと、世界に厄災をもたらす者は許さない!」

 

 若い男性の威厳に満ちた声。それが響き渡ると共に青白い三日月形の刃が飛来し、ホープナイトモンの触手を消し去った。

 直ぐに距離を取るホープナイトモンの隣に降り立ったのはオメガモン。前に人間体として会った事があるが、デジモンの姿はこれが初対面となる。お互いに簡単に自己紹介を済ませ、並び立つ。

 

「貴方がホープナイトモン……?」

 

「あぁ、初めましてオメガモン」

 

 迫り来る触手を薙ぎ払おうとホープナイトモンが双剣を構えるが、オメガモンは灼熱の火炎を纏わせた左手を地面に打ち付ける。

 これによって発生したのは灼熱の炎壁。ジュレイモンと言えど、迂闊に攻撃出来ない。触手や蔦を伸ばせば、灼熱の火炎で焼き尽くされる事が目に見えている。

 

「『チェリーボム』!!!」

 

「そう来たか……」

 

「奴の力が上がっている……そう簡単には行かないようだな」

 

 ジュレイモンは直ぐに頭部の茂みに生える禁断の木の実を投げ、それらを爆発させる事で灼熱の炎壁を消し去った。

 その行動にオメガモンが表情を険しくさせる一方、ホープナイトモンは注意深く双剣を構える。

 

「もう1度先生のエネルギーを吸収してあげるわ!」

 

「先生?」

 

「彼女は私の授業に出席している。普段の成績に伸び悩んでいる事から、今回の事件が起きた!」

 

(成る程。デジモンに取り付かれたのではなく、心でデジモンを動かしているような物なのか。デジモンは人間の心に良くも悪くも影響を受ける。暴走する事もある……のか)

 

 今回の事件は今までの事件とパターンが違う。今まではデジモンが人間の心を利用しているが、今回は人間の心がデジモンの心を利用している。完全に正反対。

 

「オメガモン。ここは私に任せてくれないか?」

 

「ホープナイトモン……」

 

「彼女は私の生徒だ。教師たるもの、生徒を導く物。そして道を誤った時は必ず引き戻す。それが真の教師だ!」

 

「分かった。何かあったら援護するよ」

 

 ホープナイトモンの真剣な眼差しを見て、オメガモンはその覚悟を悟った。後方に飛び退くと、それを確認したホープナイトモンが美穂を説得し始める。

 その姿を見たオメガモンは“真の教師”という物を感じ取った。教育問題が叫ばれる昨今、このような教師は世に珍しい。

 

「美穂さん、もう止めよう。そのデジモンから離れるんだ!」

 

「嫌です。私は離れません。先生なら分かってくれると信じていたのに!」

 

「確かに私は羨ましかった……兄上や皆が輝いているのを見ていたから。だが、それが誰かを蹴落としたり、傷付けて良い理由にはならない!」

 

「違います! 先生も私と同じ! 先生が私に力を与えると信じているのに……」

 

 ホープナイトモンもとい、スカルナイトモン。彼はバグラモンの弟であり、大天使だった兄とは違い、人の絶望の心をその魂に反映して生まれたデジモン。生まれた時から世界を呪うことを宿命づけられ、世界から忌み嫌われ、蔑まれ憎まれ続けて生きてきた。

 前世の事を今でも色濃く覚えている為に美穂に揺さぶられるが、それを跳ね除けながら説得を続ける。

 

「それは昔の話だ! でも今は違う……私はかつて取り返しの付かない罪を犯した。それは他でもない私のせいだ!……兄上や皆と一緒にいて、一緒に生きたかった!前はそれが出来なかったけど、今はそれが叶っている。もうこれ以上大切な物を失いたくはない!」

 

「……ホープナイトモン」

 

「変わるしかない自分自身が! 自分の力でピンチをチャンスに変えるしかない! 他の人を羨んだり、憎んでも何も起こらない! 自分で行動してやれる事をやろう! 今自分に出来る事を精一杯やるんだ! 今からでも遅くない! 戻って来るんだ!」 

 

 ホープナイトモンの熱い言葉。熱い説得。それはまるで太陽のようだ。熱いようでいて、暖かい。その説得に美穂の心の闇が消え去っていく。

 その様子を見守るオメガモンは驚いていた。前世では悪辣極まりなかった暗黒騎士から、今では聖騎士になっているのだから。

 

「ごめんなさい先生……」

 

「良いんだよ、美穂さん」

 

 瞳から大粒の涙を流しながら、正気に戻った美穂。素早く触手と蔦を掻い潜り、双剣を振るって彼女を助けると、ホープナイトモンは優しく頭を撫でる。

 安心させる為の行動だったようだが、美穂は今のでホープナイトモンに惚れてしまったようだ。その様子を見ていたオメガモンは苦笑いを浮かべる。

 

「オメガモン。美穂さんを頼む。後は私が倒す。来い、セイントアックスモン!」

 

 ホープナイトモンの声と共に、“デジクオーツ”に現れたのはセイントアックスモン。義兄弟の杯を交わした弟分で、素早い動きと無限の体力に満ちた屈強の闘士。義兄に忠実に従っており、勝利を得るため義兄を信じて闘っている。

 

「ウオォォォォォーーーーー!!!!! ホープナイトモン! セイントアックスモン! ジョグレス進化!!!」

 

 ホープナイトモンが大声を上げると共に、全身を覆い尽くす程のエネルギーの奔流が発生し、ホープナイトモンとセイントアックスモンの周囲一帯にエネルギーが渦巻く。

 渦巻くエネルギーの中で、ホープナイトモンとセイントアックスモンがジョグレス進化する。エネルギーの繭が消失すると、そこには1体の聖騎士が立っていた。

 

「ホーリーナイトモン!!!」

 

 純白に光り輝く聖鎧に身を包み、左肩に巨大な刃を装備し、腰に鞘込めの双剣を装備した聖騎士。その名前はホーリーナイトモン。

 神話に出てもおかしくない程美しく、威厳のある姿に美穂がうっとりする一方、オメガモンは初めて見るデジモンの目を細める。

 

(聖騎士になったホーリーナイトモンか……)

 

「『チェリーボム』!!!」

 

「『ツインブレード』!!!」

 

 ホーリーナイトモンは両手に双剣を握り締める一方、ジュレイモンは頭部の茂みに生える禁断の木の実を投げつつ、触手と蔦を伸ばして来る。

 危ないと美穂が叫ぼうとした次の瞬間、ホーリーナイトモンの姿が消滅し、次の瞬間にはジュレイモンの背後に現れている。

 一体何があったのか。オメガモンと美穂が見つめていると、ジュレイモンがゆっくりと倒れ込んだ。あの一瞬で斬撃を叩き込んだようだ。恐ろしい剣技。恐ろしい速度。

 勝負は一瞬で終わった。ジュレイモンはデータ粒子に変わりながら、デジタルワールドへと強制送還されていった。

 

 

 

 それから数日後。大学の遼太郎の部屋では、遼太郎と美穂が話をしていた。あの後、生徒達は只の体調不良という事が分かり、3日以内で元に戻ると言われた。

 その3日が経過し、今では遼太郎も安心して講義を行えるようになった。生徒達も相変わらず活き活きとしている。

 

「先生、この前はありがとうございました。でもその時の事をあまり覚えていなくて……」

 

「私は何も知らないよ。君が一体何をしたのか。だって確かな証拠がないじゃないか」

 

「そうですけど……でも先生が必死で何かを伝えようとしていたのは覚えています。もう1度やり直そうと思います」

 

「そうか……良かった」

 

 次のテストで美穂はトップ5に返り咲いた後、初の学年1位を取る事になるのは別の話になる。そして、遼太郎もテレビ出演をする程の知名度を誇る教授になる事も別の話になるだろう。それらはこれから未来の話になるのだから。

 




”デジクオーツ”関連の事件にバグラモンファミリーのメンバーが参戦。
最初はホープナイトモン、もといスカルナイトモンでした。
彼のテーマソングを改めて聞きましたが、今の彼には合わないです。
次回も”デジクオーツ”関連の事件にバグラモンファミリーのメンバーが参戦します。

皆さん、よろしければ感想・評価の方よろしくお願いします。
あたたかい感想とか前向きなコメントや応援メッセージ、高評価を頂くと、作者のやる気が超進化します。

では次回をお楽しみに。LAST ALLIANCEでした!

次回予告

突如として発生した辻斬り騒動。犯人は剣道部の高校生が関係している。
調査していく一真とタクティモンは意外な事態に直面する。
果たして犯人は?

第10話 聖なる刺突 聖突誕生!
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