終焉の聖騎士伝説~オメガモンとなった青年の物語~ 作:LAST ALLIANCE
という訳で第10話。もう少し文字数が欲しいので、もっと頑張らないとと思っています。
「298、299、300!」
早朝のとある高校の道場。その中で一心に竹刀を素振りしている高校生がいる。彼の名前は最上竜馬。剣道部のエース。
来週は剣道部の新人戦がある為、早朝練習で汗を流している。恐らく全国大会出場を決める大一番の相手は私立東京第一高校。タクティモンこと禎島拓郎が率いる剣道部。
(俺は強くなりたい……先輩達が行けなかった全国大会に行く為に! もっと強く! もっと速く!)
竜馬は高校2年生。剣道部の新部長となり、先輩達が出来なかった事をやりたいという思いで練習に打ち込んでいる。それは全国大会出場。今年の都大会の決勝では惜しくも敗れ、全国大会出場を逃した。
その時の無念を胸に抱く竜馬が素振りを続けていると、彼の携帯電話が光り輝き、周囲の風景が“デジクオーツ”に書き換えられていく。
「何処だここは……?」
「勝負!」
「ッ!」
現れたのは背中にぬいぐるみを背負い、顔に仮面を被り、両腕に木の籠手を付け、両手に木刀を握る魔人型デジモンのヤシャモン。繰り出された唐竹斬りを竹刀で受け止め、お互いに背後に飛び退いて距離を取る。
「何者だ!」
「俺はヤシャモン。君は?」
「最上竜馬だ」
「竜馬……君は強くなりたいのか?」
「そうだ。俺は剣道部の新部長として全国大会に出場したい! 先輩が果たせなかった夢を叶えたい!」
竜馬の目と太刀筋だけで、ヤシャモンは竜馬の性格を理解した。真っ直ぐで嘘偽りのない性格。彼なら強くなる為の修行をさせても良いだろう。そう判断した。
「成る程……良き覚悟だ。君の夢の実現を手伝いたいな。それなら俺が稽古を付けよう」
「お前が……? 本当に出来るのか?」
「疑っているみたいだね……ならば見せてやろう!」
「行くぞ!」
剣道着姿となった竜馬と、木刀を両手で握り締めるヤシャモンが対峙する。両者の間を一陣の風が吹いた時、両者が同時に動き出す。
「面!」
「遅い!」
「……一本だな」
「あぁ、俺の負けだ」
竜馬が面を打とうと構えたその瞬間、ヤシャモンは面と胴と籠手の三か所を一瞬で、しかも同時に攻撃した。結果は竜馬の完敗。全く考えてもいなかった結果に竜馬は苦笑いを浮かべるしかなかった。
「俺に稽古を付けさせて下さい!」
「良かろう。一つ約束してくれ。正しき剣の道を歩む事を。その力で誰かをむやみやたらと傷付けない事を」
「はい! 分かりました!」
熱心な弟子が出来た事が嬉しいのか、ヤシャモンは優しく微笑んだ。それから竜馬と共に稽古に打ち込んでいく。
同じ頃、この日もタクティモンの道場で一真が剣術の稽古を受けている。ここ数日間は剣術の基本を骨の髄にまで叩き込まれた。
至る所に痣や擦りむいた痕がある。それだけタクティモンに打ち込まれ、鍛えられた事を示しているが、一真はこの程度では屈しない。諦めが悪く、最後の最後まで諦めない往生際の悪さが彼の取り柄の1つだからだ。
「基本のおさらいはここまでにして、今日は新しい型を教えよう」
「よろしくお願いします、師匠!」
タクティモンは内心で思う。“まさか自分がかつての敵を鍛えているとは”と。かつては敵として壮絶な死闘を繰り広げた2体のデジモンが、今では剣術の稽古をしている。これも年月の為せる技だろう。
一真は基本の型は一通りマスターした。これからも復習していくが、そろそろ新しい段階に進んでも良いだろう。そう判断したタクティモンは新しい型の説明に入る。
「今日教えるのは剣術の使い手同士の戦闘用の型だ。弐の型と言う。決闘に用いられると言えば分かりやすいかな? フェイント等に重点が置かれている。剣捌きの精度は非常に高く、疲労も最小限で済む。真正面から斬り合うだけが剣術ではない」
優雅だが、実践的な型。攻撃性と変則性が特徴な剣術を習得しようと、一真は今日も稽古に励んでいく。その師匠たるタクティモンは一真の姿勢を好ましく思っている。
勉強熱心な努力家。道場には1時間以上前に来て、ウォーミングアップやストレッチを済ませ、素振りをしながら剣術の復習をしている。それを数回眺めた事がある為、タクティモンは自分が率いる剣道部員も見習う所があると思った程だ。
数日後の土曜日。タクティモンが顧問を務める剣道部の練習試合が行われている体育館に、一真とバグラモンファミリーが来ている。
体育館には剣道部員の良い声と竹刀の音が響き渡り、一真はタクティモンとの剣術の稽古を思い出している。
「一真君もあの子達みたいに頑張っているわね。凄いわ……」
「はい。今は教わっている剣術を少しずつではありますが、習得しています。25歳でまだ若いからでしょうけど……でも彼らのような若い人を見ると、僕ももっと頑張らないとだなと思います。僕はまだ若いですし、これからもチャンスがあると思います」
「相変わらず真面目ね……何だかタクティモンが増えたみたいだわ」
「? 一真君、あそこだ……」
一真が鏡花と話をしていると、皇太郎がとある部員を指差した。タクティモンの剣道部の部員を圧倒する強さを見せる相手。
皇太郎が指差した部員。東京明館高校の最上竜馬。団体戦では全国大会出場を逃したが、個人戦では全国大会で3位入賞を果たした強者だ。
「彼がどうかしました?」
「タクティモンが言っていた強者、最上竜馬君だ。彼からデジモンの『波動(コード)』を感じる……」
「デジモンの『波動(コード)』を? 確かに……」
「もしかして“デジクオーツ”に関する事件の起きる前兆かもしれん。チェックしておこう」
「ですね……」
竜馬からデジモンの『波動(コード)』が発せられるのを、皇太郎ことバグラモンは感じ取り、それを一真に伝える。
一真もそれに気付くと、竜馬を警戒するように目を細めたその日の夜、稽古を終えて帰宅している剣道部員達の前に1人の武者が現れた。
「私と勝負しろ……!」
「何だお前は!」
「俺達は疲れているんだ……他を当たってくれ」
「帰れ帰れ!
「逃げるのか?」
剣道着を羽織り、竹刀を構える謎の少年。出稽古で疲れている剣道少年達が勝負から逃れようと口々に言うと、少年は彼らを煽るように不敵な笑みを浮かべる。
その様子を見て不快感を感じたのか。それとも勝負を受け入れたのか。剣道少年達は竹刀を取り出し、両手に握りながら構えを取る。
「仕方ない。その勝負、受けて立とう」
「防具を付けろ!」
「お前の竹刀なんざ、掠りもしねぇよ」
「その決断を後悔させてやる! 行くぞ!」
剣道少年は目の前の相手が自分より弱いと侮っているのか、防具を一切つける事なく勝負をしようとしている。
勝負の結果は武者の圧勝。一瞬で剣道少年達を完膚なきまでに倒し、勝利を確信してから何処かに去っていった。
それから1週間後。獏良家の道場で剣術の稽古に励もうとしている一真。彼はタクティモンと共に真剣な表情で何かを話している。
「辻斬り騒動?」
「あぁ、私が教えている高校生の友達で強い剣道少年がいるのだが……彼らが被害に遭ったそうだ」
「何と…幕末じゃあるまいのに」
辻斬りとは武士等が街中等で通行人を刀で斬りつける事。中世から見られたが、特に戦国時代から江戸時代の前期にかけて頻発していた。1602年(慶長7年)に徳川家が辻斬りを禁止し、犯人を厳罰に処する事でようやく収まりを見せた。
辻斬りをする理由としては、刀の切れ味を実証する試し切りや、単なる憂さ晴らし、金品目的、自分の武芸の腕を試す為といった様々な理由が挙げられる。また、1000人の人を斬ると悪病も治ると言われる事もあった。これを千人斬りと言う。
「出稽古の帰りに襲われて、全員があっという間にやられたそうだ。しかもズタボロになるまでやられていて、その時のトラウマでもう2度剣道をしたくないと言わさせている程だ」
「何と言う事だ……!」
タクティモンから辻斬り騒動の事を聞き、一真は遣る瀬無さに拳を握り締める。彼らの心にも傷を負わせ、大切な物を取り上げた。
その罪は許す事が出来ない。恐らくデジモンの仕業。“デジクオーツ”が関係しているだろう。となると、犯人は最上竜馬しか考えられない。
「聞いた話によると、身長と体格が高校生らしい。お面を被っていたから顔までは分からないが、普通なら考えられない強さだったらしい。これは本人から直接聞いた部員の話だ」
「このまま見逃すと被害者が増え続けてしまう……早い段階で止めないと!」
「あぁ、今回は君に協力しよう。部員が巻き込まれたらたまったものじゃないからな」
「ありがとうございます!」
こうしてタクティモンの協力を得た一真は動き出す。犯人の可能性が高い最上竜馬が通っている高校の道場。その前で待ち伏せし、彼が出て来るのを静かに待つ。
部活を終えて出て来た竜馬。その後を拓郎と一真が静かに追うと、竜馬が唐突にスマートフォンを取り出し、“デジクオーツ”へのゲートを開いた。
「行くぞ!」
「はい!」
竜馬の後を追って“デジクオーツ”へのゲートに入り込み、“デジクオーツ”に足を踏み入れた拓郎と一真。そこで彼らが目にしたのは意外な光景だった。
防具を付けてヤシャモンの稽古を受けている竜馬。それだけを見ると、物凄く真っ当にしか思えなかった。
「……あれ?」
「何か……違うな」
「もっと腰を入れろ! 鍔競りから引き籠手!」
「面!!!」
「もっと声を出せ!」
「胴!!!……あれ? 禎島先生と貴方は……?」
想定外の光景を見てお互いに首を傾げる一真と拓郎。背後を振り返り、意外な訪問者に驚きを隠せずにいる。
2人の人間から発せられるデジモンの『波動(コード)』を感じ取り、ヤシャモンは警戒するように2本の木刀を構える。
「“電脳現象調査保安局”、八神一真。最近起きている辻斬り騒動の調査をしている。何か心当たりはないか?」
「竜馬君。君を疑うつもりはないが、君からはデジモンの『波動(コード)』が探知された。ここ最近起きている事件はデジモンが絡んでいる。我々は君が犯人ではないかと思っている。正直に話して欲しい」
「確かに俺が疑われても仕方ありません。でも禎島先生、一真さん……俺は剣道で誰かを傷付けるような真似は絶対にしていません! それをヤシャモン師匠と約束したんです!」
『ヤシャモン師匠……?』
自分が疑われている事に理解を示しつつも、自分はしていないとはっきりと言い切った竜馬。彼の言葉にあった“ヤシャモン師匠”という単語に引っ掛かりを覚えると、ヤシャモンが説明を始める。
「彼を弟子にした時、俺は約束した。“正しき剣の道を歩み、その力で誰かをむやみやたらと傷付けない事”を。今回の事件の犯人は竜馬ではない。それは師匠の俺からも言わせてくれ」
「あぁ、分かった。疑って済まなかったね……」
「良いんです。疑われても仕方ない立場にいるので……その代わりに実は俺なりに調べた事を教えます」
竜馬は一真、拓郎、ヤシャモンに見えるように大きな紙を広げると、ペンを出して彼らに説明する。今回の事件について。今まで何処の誰が狙われ、次に誰が狙われているのかを。
「今まで狙われているのは俺の高校の近辺の学生ばかり。高校生や大学生ばかりが狙われています。中には俺の先輩や友達がいて、俺もいつかは狙われる……そう思って普段は剣道の道具を師匠に預け、師匠との稽古に励んでいます」
「犯人は君の剣道部の中にいると?」
「と思って聞き込みをしてみたんですが……どうやらそれが違うんですよ。犯人は人間離れしたスピードとパワーを持っていて、しかも実体がないんです」
「実体がない……? 幽霊、それとも亡霊なのか?」
「そこまでは分かりません。俺も聞き込みを中心に集めて整理した情報なので……でも今回の事件に俺も協力させて下さい。先輩や友達が狙われて、いずれ俺が狙われるのなら……その前に俺達の手で犯人を懲らしめましょう」
「竜馬君……君の思いは分かるが、相手は強いぞ?」
剣道部の顧問として、高校の教師として竜馬に忠告する拓郎。その姿はタクティモンを彷彿とさせている。
その思いを理解しながらも竜馬は伝える。自分の意志と考えを。流石は剣道部の新部長だけある。
「分かっています。それに……剣道少年達ばかりを狙っているなら、俺を囮にしても構いません。今部活も自粛中なので……部員皆の為にも、いえ剣道少年の皆の為にも俺は正しき剣の道を貫きたいです!」
「拓郎殿。こうなった竜馬は誰にも止められない。師匠の俺からもお願いしたい。今回の辻斬り騒動の解決に、彼の力を役立てて欲しい」
「……分かった。こちらも無理させない範囲の協力をお願いする。一真君、それで良いか?」
「分かりました。責任は僕が取ります」
今回の事件解決に竜馬&ヤシャモンが協力する事になり、“デジクオーツ”内で2人の人間が剣道・剣術の修行を始める。
竜馬が竹刀を打ち込み、それをヤシャモンがチェックしながら修正点を指摘していく。その適切なアドバイスを聞きながら、竜馬は何度も竹刀を振るう。
一方、タクティモンは一真に剣術の型を教える。この型はタクティモンが独自に考案した物であり、他では習う事の出来ない貴重な型でもある。
「今回教えるのは跳ね返しや防御を重視した参の型。この場合は独特の構えを取る」
「おおっ……」
タクティモンはそう言うと、左手を前に突き出しながら右手を大きく後ろに引き、弓を引き絞ったような独特な構えを取った。
これが防御主体の参の型。先読みと反射神経を利用して相手の攻撃を跳ね返したり、受け流したりする事で、自分を守りながら反撃する。カウンターを両立させた型でもある。完璧に極めれば集団戦や格上相手にも対応出来るだけでなく、十分通用する事も出来る。
「さぁ行くぞ!」
「はい!」
強くなりたいという思いは敵味方関係ない。その純粋な思いを持つ者こそ、本当に強くなる事が出来る。
だからと言って強さだけを追い求めてはいけない。大事なのは力としての強さではなく、心の強さ。心の強さを剣や銃に乗せる事。それが力に繋がる。
それから1週間後。高校の道場を出て、部活帰りを装った一真と竜馬が帰宅を始める。最初は竜馬だけが囮になる話だったが、心配に思った一真が付き添う形となった。
周囲がすっかり暗くなった頃、一真と竜馬の目の前に竹刀を構える鎧武者が現れた。辻切騒動の犯人だ。
「勝負!」
「来たぞ」
警戒するように目を細めながら竜馬に促すと、竜馬は静かに竹刀を構える。一真も同様に竹刀を構えると、跳躍して後方宙返りをして鎧武者の背後に着地する。
これで挟み撃ちとなった。例え正面の竜馬を撃退したとしても、一真が残っている。その逆もまた同様だ。
「面!!!」
「胴!!!」
面を繰り出す竜馬に対し、鎧武者は胴を繰り出す。勝負が付くかと思われたその時、竜馬は持っていた竹刀を手から放し、両手で鎧武者の振るう竹刀を掴み取った。
驚きの表情を浮かべる鎧武者が竜馬の手から竹刀を離そうと力を込めた瞬間、背後から一真が竹刀を振り下ろす。その竹刀には橙色のエネルギーが纏われており、この一撃で鎧武者を消し去るつもりだ。
「喰らえ!!!」
「ギャアァァァァァァァーーーーーー!!!!!!」
一真の竹刀から繰り出された面。それを喰らった鎧武者は苦痛に満ちた雄叫びを上げながら、データ粒子と変わって消滅した。
竜馬の言う通り、鎧武者は実体のない影だった。ならば本体は一体何処にあるのか。そう思っていると、周囲一帯が“デジクオーツ”へと変わっていく。
「お前はザンバモン……!」
一真達の目の前に現れたのは1体のデジモン。全身を黄金の鎧で身を包み、下半身が馬と一体化している騎馬武者のような姿をしたザンバモン。
ムシャモン軍団の将軍として君臨している猛将でありながら自ら軍団の先頭に立ち、敵に切り込んでいく戦い方を好むデジモン。
「お前の仕業だったのか! 何故このような事を……!」
「私のパワーアップに人間の強い欲望を使っただけだ。剣道や柔道、武術をしている奴らの“強くなりたい”というエネルギーを利用させてもらった。その成果を今から見せてやろう!」
「下がっていてくれ竜馬君。ここから先は僕の戦いだ」
「はい! 頼みます、一真さん!」
今回の事件の犯人はザンバモン。彼は配下のムシャモン達を人間界に送り込み、剣道少年等の“強くなりたい”という心の欲望をエネルギーに変え、それを糧に自らを強化しようと目論んだ。
ザンバモンは右手に巨大な斬馬刀を、左手に妖刀を握り締める一方、一真は隣にいる竜馬に下がるように言った。自分達の戦いに巻き込みたくないという一心だ。
竜馬はその考えを理解し、タクティモンとヤシャモンと共に少し離れた所で一真とザンバモンを見守る。
「ザンバモン! 人の心を利用して得た偽りの強さなんかに僕は負けはしない! ウオォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
一真がザンバモンに宣言してから雄叫びを上げると、全身を覆い尽くす程の膨大なエネルギーの奔流が発生し、一真の周りにエネルギーの繭が形成された。
初めて見る光景に竜馬とザンバモンとヤシャモンが一真を見つめていると、エネルギーの繭の中心で一真の両目が空色に輝き、咆哮を上げる。
「ウオォォォォォーーーーー!!!!! 究極進化!!!!」
一真が咆哮すると同時にエネルギーの繭が光り輝く。やがてエネルギーの繭が消失すると、そこにはオメガモンが立っていた。
信じられないと言わんばかりに竜馬とヤシャモンが目を見開く中、ザンバモンは左手に握る妖刀の剣先をオメガモンに向ける。
オメガモンも右腕のメタルガルルモンの頭部を象った籠手から巨大な大砲を展開し、左腕のウォーグレイモンの頭部を象った籠手から聖剣を射出し、剣先をザンバモンに向けた。
ゆっくりと動きながら間合いを取っていく2体の究極体デジモン。時折オメガモンは片足を一歩踏み込んでフェイントをかけ、ザンバモンに攻撃するタイミングを狂わせる揺さぶりをかけている。
それだけでなく、聖剣を構える位置を変えたりしながら突撃するタイミングを伺っていると、ザンバモンが下半身となっている騎馬を疾走させる。
「行くぞ!」
「来い!」
突進を開始するザンバモンに対し、オメガモンは右手を前に突き出しながら左手を大きく後ろに引き、弓を引き絞った防御主体の参の型を取る。
間合いに入ったと同時に、ザンバモンは右手に握る斬馬刀を振り下ろす。斬馬刀。騎馬上から敵騎馬めがけての突きや斬り払い、または馬上から歩兵に向けての突きや斬り払いを行う武器。
オメガモンは上半身を捻りながらグレイソードで受け止め、その状態から最後まで振り切る。斬馬刀を弾きながら、右斬り上げが繰り出された。
「チィ!!」
咄嗟に背後に飛び退いて右斬り上げを躱し、距離を取るザンバモン。体勢を立て直しながらオメガモンを睨む。
叩き付けられる殺意にオメガモンはビクともせず、グレイソードを下段に構える。このバトルでは必要最小限の動きしか取っていない。防御主体の参の型。その戦い方の教科書通りに動いている。
「オオォォォォォォーーーーー!!!!!」
ザンバモンは凄まじい速度でオメガモンとの間合いを詰めると、今度は左手に握る妖刀を振るう。
下段に構えたグレイソードを右斜め下から左斜め上に振り上げ、左斬り上げで妖刀を受け流し、オメガモンはそこから斬り合いに移行する。今までは防御の型を取っていたが、今度は決闘の型に移行する。
左手首のスナップを効かせた重く鋭い斬撃。それをザンバモンの左側に集中させる事で、防戦一方に追いやる。
「すげぇ……」
「圧倒的じゃないか……」
(成る程……取り回しの難しい斬馬刀の方に攻撃を集中させているのか。大した者だ)
目の前の戦いに言葉を失う竜馬とヤシャモンの隣で、タクティモンはオメガモンの戦い方を見て目を細める。
オメガモンは斬撃の全てを斬馬刀を握っている左側に集中させている。斬馬刀は威力こそ大きいが、取り回しが難しく、小回りが効かない。それを利用して片側に攻撃を集中させる事で、ザンバモンを防戦一方に追い込んで戦いを優位に進めていく。
しかし、このまま終わるザンバモンではない。両手に握る2本の刀を交差しながら斬撃を防ぐと、そのままの勢いでオメガモンに斬り掛かる。
「フッ!」
オメガモンは聖剣で交差斬りを防ぎながら鍔迫り合いに移行する。傍から見れば2本の剣で押しているザンバモンの方が有利だが、基本性能で言えばオメガモンの方が格上である為、オメガモンが有利となっている。
それを示すように、聖騎士は左腕のエネルギーを瞬間的に解放させ、左腕のパワーを増強させる。その勢いと共に左腕を振り切り、ザンバモンを押し返した。
とは言えど、ザンバモンも歴戦の戦いを潜り抜けた強者。素早く体勢を立て直すが、そこから更なる追撃にオメガモンが出た。
右腕の大砲の照準をザンバモンに合わせ、青いエネルギー弾を連続で撃ち出す。ザンバモンは右手に持つ斬馬刀を振るい、次々とエネルギー弾を斬り裂いていく。
「遅い!」
オメガモンは聖剣を下段に構えると同時に、一瞬でザンバモンとの間合いを詰める。聖剣を振り上げ、右斬り上げを繰り出す。
それに対し、ザンバモンは右手に握る斬馬刀を振り下ろす。斬馬刀と聖剣が激突する次の瞬間、突如としてオメガモンの姿が消えた。
「後ろか!」
背後に感じた巨大な『波動(コード)』。それを頼りに背後を振り返り、ザンバモンは左手に握る妖刀で唐竹斬りを防御した。
妖刀を振り抜いてオメガモンを弾き飛ばすが、オメガモンは空中で体勢を立て直して地面に着地すると同時に、弾き飛ばされた勢いを使って空中に飛び上がる。
「『グレイソード』!!!」
「『打首獄門』!!!」
聖剣を大上段に掲げ、自身の生命エネルギーを刀身に流し込んで一気に振り下ろす。青白いエネルギーの刃がザンバモンに向けて放たれ、一直線に飛来していく。
迎撃するザンバモンは右手に持つ巨大な斬馬刀“龍斬丸”を振るい、青白いエネルギーの刃を真っ二つに斬り裂き、消し去っていく。例え相手が防御していようとも、巨大な刀身で鎧ごと斬り落とす威力を持つ必殺技だ。
その隙に地面に着地したオメガモンを牽制するように、ザンバモンは左手に握る妖刀の剣先を向けるが、オメガモンは臆する事なく聖剣を横薙ぎに構えつつ、突進を開始する。
(消えた……?)
「後ろだ、オメガモン!」
先程のオメガモンと同じように、ザンバモンは突如として目の前から姿を焼失した。その居場所を探そうと『波動(コード)』を放つと、背後に妖刀を構えたザンバモンが出現した。
ヤシャモンの声を聞いて居場所を特定出来たオメガモンは背後を振り向き、振り下ろされた妖刀を左肩に装備している聖盾で防ぎ、受け流しながら体勢を崩していく。
左腕の聖剣を横薙ぎに構え、右から左に賭けて一閃し、バランスを崩したザンバモンに右薙の斬撃を叩き込む。
「グハァッ!!」
苦痛に満ちた叫び声を上げ、横一文字に刻まれた斬り傷が痛む事を感じながらも、ザンバモンは反撃の一手を繰り出す。
右手に持つ斬馬刀を大上段から振り下ろすものの、オメガモンは右手たるメタルガルルモンの頭部を象った籠手を翳して受け止める。
甲高い金属音が周囲一帯に鳴り響く中、オメガモンは右腕を振るって斬馬刀を弾き、右足でザンバモンを蹴り飛ばす。
「馬鹿な……私は人間の心のエネルギーを得て強くなった! それなのにどうしてこうも押されている!」
「強くなったのは確かだ。でもそれは本当の強さではない。偽りの強さだ。自らを鍛え上げて会得したのではなく、他人の力を奪い取って得た強さ。そんな金メッキが本物に勝てる筈がない!」
強く言い放ったオメガモンは右腕の大砲を構え、青色のエネルギー弾を連射しながら、ザンバモンとの距離を詰めていく。
右手に持つ斬馬刀を振るって連射砲撃をかき消し、ザンバモンも突進を開始するが、その時には既に正面にいた筈のオメガモンが消えていた。
オメガモンは一体何処にいるのか。ザンバモンは突進を止めて周囲を警戒していると、何処かから何発もの青いエネルギー弾が飛来して来る。
「何!? クッ!!」
「我が聖剣と共に踊れ! 『ソード・オブ・ルイン』!!!」
先程と同じように斬馬刀を振るって連続砲撃をかき消すが、それがオメガモンに付け入る隙を与えてしまった。ザンバモンの背後にオメガモンが現れ、大上段に掲げた聖剣から究極剣舞を繰り出す。
神速で繰り出された究極剣舞。全身を斬り刻まれたザンバモンの鎧に無数の斬り傷が刻まれ、地面に倒れ伏せる。
「やりましたか?」
「まだだ。最後まで気を抜くな」
ヤシャモンの言葉通り、ザンバモンは最後の力を振り絞って立ち上がった。右手に握る斬馬刀を構えながら、オメガモンに向けて突進していく。
オメガモンは腰を深く落としながら半身の姿勢を取り、聖剣の刀身を地面と水平に保ちながら左肘を引いて剣先を相手に向ける。更に右手を前に突き出し、聖剣に重ねるようにして置いた。
戦いの最初に取っていた参の型に似ているが、若干異なる構え。その構えを取ったまま、ザンバモンに向けて凄まじい速度で襲い掛かる。
「『打首獄門』!!!」
ザンバモンが右手に持つ巨大な斬馬刀を振り下ろすよりも前に、オメガモンは左腕の聖剣を突き出す。
一瞬という刹那の時間に交差する2つの武器。結果は“龍斬丸”はオメガモンの左手で止まり、聖剣はザンバモンの『電脳核(デジコア)』を刺し貫いた。
ザンバモンはデータ粒子に変わりながら消滅していき、“デジクオーツ”からデジタルワールドへと戻っていった。
「勝ちたい・強くなりたいという欲望は時に人を迷わせる。本当の強さは自分を日々鍛え上げる事で手に入る。本当の勝利は正々堂々と戦って初めて得られる物だ。それが本当の強さとなる」
「はい!」
「今のは紛れもない聖なる刺突だった……技名を付けるとしたら『聖突』かな?」
オメガモンとザンバモンの戦いを見届けたヤシャモン。彼が竜馬に教えを授ける一方、タクティモンはオメガモンの事を頼もしそうに見守っていた。
タクティモンが命名した『聖突』。この必殺剣技はオメガモンの戦いを支えるだけでなく、オメガモンの代名詞となる技となるのだった。
それから数日後。行われた剣道の新人戦。竜馬率いる東京明館高校が見事全国大会出場を決め、拓郎が顧問を務める私立東京第一高校は惜しくも決勝戦で敗れた。その決勝戦を一真も観戦しに来ていて、試合が終わった後に竜馬に会って話をしている。
「竜馬君。全国大会出場おめでとう。優勝目指して勝ち進め!」
「はい! ありがとうございます!」
「竜馬。一撃に全てを込めた良い面だった。修行の成果が出ていたぞ?」
「いえ……師匠のおかげです」
一真の他に変装しているヤシャモンもいる。試合を観ながら竜馬を応援し、試合終了後には素直に褒め称えた。
ヤシャモンはあまり弟子を褒めない性格なのだろう。それだけに竜馬は謙遜しながらも、嬉しそうな表情を浮かべている。
「もう俺から教える事はない」
「俺は強くなる事を考えていましたが、一歩間違うとザンバモンのようになっていたかもしれません……これからは正しき剣の道を歩みます」
「そうだな……剣道は奥が深い。個人競技のように見えるけど一緒に特訓し合う仲間や、導き諭す先生がいる。色んな人がいて成り立っているんだな世の中は……」
今回の事件で分かった事がある。それは“デジクオーツ”に関する事。今までは人間の心に付け込んで悪さをするデジモンばかりだったが、中にはヤシャモンのように純粋な人助けをしているデジモンもいる。
ヤシャモンはこの後“デジクオーツ”を経由し、デジタルワールドに戻っていった。進化した彼と再会するのはまた別の話だ。
最近『BLEACH』や『Fate』の小説を読みましたが、ああいう話を書けるようになりたいと思いました。小説家で食べていく気はないですが、純粋に憧れます。
さて次回なんですが、いよいよオリジナルデジモンが登場します。設定もそれなりに練り込みました(ありそうでなかったみたいな感じです)
皆さん、よろしければ感想・評価の方よろしくお願いします。
あたたかい感想とか前向きなコメントや応援メッセージ、高評価を頂くと、作者のやる気が超進化します。
では次回をお楽しみに。LAST ALLIANCEでした!
次回予告
タクティモンの薦めでデジタルワールドに行く事を決めた一真。
彼の前に現れたデジモン。その正体は一体!?
2体の聖騎士の戦いの果てに待っている物は……!?
第11話 パラティヌモンの剣 聖騎士VS聖騎士