終焉の聖騎士伝説~オメガモンとなった青年の物語~   作:LAST ALLIANCE

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今回からオリジナルデジモンが登場します。
私は『Pixiv』でメインに活動をしていますが、そこで書いていた小説で登場したデジモンのリメイク版です。ここからレギュラー出演になりますが、後で小説情報を編集します。
それと章の名前が若干変更されたので、分かりやすくなった筈です。
もう少しで1クールが終わりますが、2クール目最初の第14話から展開が加速するので、引き続きよろしくお願いします!



第11話 パラティヌモンの剣 聖騎士VS聖騎士

「これで剣術の一通りの型となる。どうだったかな?」

 

「はい。おかげでより戦いの幅が広くなりました」

 

 とある休日。一真はタクティモンの道場で剣術の稽古を終えた。今日は肆の型と伍の型をタクティモンから教わり、実戦練習を行った。これで一通りの型は習得した事になる。

 肆の型は最もアクロバティックな型。体術と攻めに重点を置いたフォーム。一言で表現するならば、“ヒットアンドアウェイ”。全身の柔軟性と瞬発力とを駆使し、超速移動を行いながらあらゆる方向から相手に素早い連続斬撃を行う。

 アクロバティックな動きで体格差を補う事ができ、威嚇・牽制の効果も高い。しかし、それが通じない格上の相手には無意味であり、動作の大きさから隙も多く、大きな危険を伴う型でもある。

 伍の型は剣技と力による斬撃を重視する粘りの型。強い剣の振りが特徴。強打や振り抜き、連続攻撃や力押しで相手の防御を突破して攻め込んでいく超攻撃型の剣術。相手の攻撃の跳ね返しも、防御よりも攻撃に使用される回数が多い。

 

「一真君。リリスモンから聞いたが、明日もお休みの筈だ。君は一度デジタルワールドに行くべきだ」

 

「デジタルワールドに? そう言えば僕は一度も行った事ありませんでした……」

 

 タクティモンは一真にデジタルワールドに行く事を推奨する。一真はデジタルワールドが一体どのような所なのかを知らない。何しろ行った事がないのだから。

 元々彼がなっているオメガモンはデジタルワールド出身。人間界で転生したから、デジタルワールドの事は分からないでいる。

 これから来るであろう戦いだけでなく、デジモンとしてデジタルワールドを見る事は極めて重要になる。そう判断した上で、タクティモンは一真に提案した。

 

「あぁ。君がなっているオメガモンもそうだ。一度その目で見て来るが良い。世界の真実を」

 

「はい。そうさせて頂きます」

 

 イグドラシルとホメオスタシスによる分割統治。デジタルワールドがどのような世界なのか。そこに生きるデジモン達の存在。デジモンであるにも関わらず、それらを知らない一真は目を輝かせている。

 同じ頃。デジタルワールドの何処かにある暗い空間の中。茶髪のショートヘアーの女性がとあるデジモンと話をしている。彼女の名前はホメオスタシス。

 デジタルワールドのセキリティシステムで、デジタルワールドの安定と繁栄の為に光と闇のバランスを監視している。基本的には保守的で温和な神様なのだが、時々ぶっ飛んだ決断を下す事もある。その決断で周囲を混乱させ、振り回す事もしばしば。

 

「正気ですか!? あのデジモンの封印を解除すると……」

 

「はい。こうでもしないと私は……いえ人間界が危ないです」

 

 ホメオスタシスと話をしているデジモン。巨大で長い半透明な体をしていて、全身に十二個の『電脳核(デジコア)』を浮遊し、四つの瞳を持ち、長い鬚を棚引かせ、蒼く輝く角をしたチンロンモン。

 彼はホメオスタシスの決断に耳を疑うが、ホメオスタシスは人間界を守護する為にとあるデジモンの封印を解除すると告げた。

 ホメオスタシスの決断に秘められた覚悟を読み取り、チンロンモンは反論する事が出来なかった。仮に反論したとしても、言い返される事が目に見えていたからだ。

 

「そこまでして……人間界を守りたいのですか?」

 

「はい。それにイグドラシルを止める為には、オメガモンの力が必要不可欠です。ですが、彼女の力もまた必要となるのです。かつて厄災大戦と呼ばれた戦いを終わらせた聖騎士の力が」

 

「皮肉な物ですね。かつてイグドラシルが封印したデジモンを貴女が解き放つのは。分かりました。私は他のデジモン達にこの事を伝えます」

 

「ありがとうございます」

 

 ホメオスタシスが封印から解き放つと決めたのは、かつてイグドラシルが封印した1体の聖騎士。

 厄災大戦。創世期のデジタルワールドで起きた次元規模の電脳大戦。行き過ぎたイグドラシルの統治を切っ掛けに勃発し、300年にも渡る長き戦いの末に、文明が大きく後退する程の壊滅的な打撃をもたらした。その聖騎士は電脳大戦の終結に大きく貢献した。

 しかし、その後は強大過ぎる力を危惧された為、イグドラシルによって封印された。その封印を解除した上で、ホメオスタシスは来たるべきイグドラシルとの大戦に備え、戦力に取り込もうと言うつもりなのだろう。早速ホメオスタシスはその場所へと向かっていく。

 デジタルワールドの中心部の奥深くに位置する空間。デジモン達の間では、“カーネル(神の領域)”と呼ばれている場所がある。そこはオファニモン、セラフィモン、ケルビモンの『三大天使』が守護している。

 その最も奥深くにデジモン達は干渉するどころか、近付く事を禁止されている場所がある。その場所は絶対触れてはならないと言うように、雁字搦めに封印されている。封印の中にいるデジモンを無数の鎖に封じる為に。

 

(……私を起こしたのは誰でしょうか? この場所に声を届かせる力と意志を持つのは神々しか考えられません。イグドラシル……いえ、ホメオスタシスでしょう。まさか私を封印した神が助力を願うとは考えにくい……)

 

 その場所にいるデジモンは世界に名前と正体を知られては良くないのか。その姿さえも覆い尽くす程の長さと太さを両立する程の鎖で雁字搦めに封じられ、ゆっくりと眠りについていた。

 しかし、デジモン達が決して干渉出来ない場所に“何か”が起きた。何者かのエネルギーと一つの切実な想いがそのデジモンを目覚めさせた。赤くつぶらな瞳で周囲をキョロキョロと見渡す。

 

(もう充分休暇は楽しませてもらいました……そろそろ目覚めるとしましょう)

 

 何処からともなく届いて来た願いに応えるように、そのデジモンは自分自身を拘束していた鎖を木っ端微塵に破壊し、その姿を完全に現した。

 同時に悲鳴と苦痛を上げるように、空間が軋みを上げながら崩壊していく。何としてもそのデジモンを世界に解き放つ事だけはさせない。そう言わんばかりに無数の鎖が伸びていくが、そのデジモンが一睨みしただけで無数の鎖が破壊されていく。

 そして崩壊していく空間を斬り裂かんと黄金の聖剣が振るわれ、デジモンを拘束していた場所が完全消滅した。神によって封じられたそのデジモンは空間から飛び立っていく。

 

―――おはようございます。私はホメオスタシス。貴女の封印を解除させてもらいました。

 

「ホメオスタシス……一体何のつもりですか?」

 

 デジタルワールドに降り立とうと飛んでいる最中、デジモンの目の前に突然ホメオスタシスが姿を現した。

 自分の封印を解除したのはやはりホメオスタシスだった。そう思いながらも、その意図を探る為にホメオスタシスに問い掛ける。

 

―――貴女の力が必要になったのです。実は……

 

「……良いでしょう。経緯はどうあれ、貴女には私をこの場所から解き放ってくれた恩があります。それを返すまで、私は貴女に仕えます」

 

―――分かりました。早速の頼み事なのですが……

 

「了解しました。少し興味が湧いてきました」

 

 ホメオスタシスからデジタルワールドの現状を大まかに聞き、そのデジモンはホメオスタシスに協力する事を決めた。

 その理由が例え何であれ、ホメオスタシスは自分を封印から解き放ってくれた恩人。その恩人に仕える事を決めた。早速ホメオスタシスから依頼を頼まれて挑む事となり、全速力で地上に向かっていく。

 

 

 

 デジタルワールド。そこはコンピュータネットワーク上に存在する電脳空間。デジタルモンスター、もといデジモン達が生きている世界。

 近年の研究で明らかになった事がある。それは広大な空間に浮かぶ惑星のような球状の世界な事。地球と同じように大陸や海が存在する事。人間界に存在するコンピュータサーバーの役割を持っている事。

 見渡す限り岩や荒野が広がる場所。そこをオメガモンは静かに歩き続ける。転生してから初めて見るデジタルワールドに、心をウキウキさせている。

 デジモンとのバトルの時にしかならないオメガモンの姿。戦いの事を忘れてのんびりと過ごす事の出来る休日。伸び伸びと自分の好きなように動ける現状に喜びを覚え、デジタルワールドを観光する事を決意して歩き続けている。

 

「おかしいな……数時間歩いているのに、デジモンの『波動(コード)』を全く感じられない。どうやらイグドラシルが統治する地方みたいだな。完全な外れだ。せめて1体でも多くのデジモンに会って、色々話を聞きたいのだが……」

 

 オメガモンが歩き始めてから数時間。まだ1体もデジモンに会っていない。どうやら自分がいるのはイグドラシルが統治する地方のようだ。

 どうやら厳格な決まりでデジモン達は縛られ、思うような日々を過ごせないでいるのだろう。デジモン達に同情したくなる程だ。

 或いは自分のいる場所が問題なのか。そう思いながらオメガモンはカチャ、カチャという金属音を鳴らしながら歩き続ける。

 

「ッ!」

 

 オメガモンは突如として巨大過ぎる『波動(コード)』を探知し、足を止めながら『波動(コード)』が感じられる方向に目を向ける。

 今まで感じた事のない巨大としか言えない『波動(コード)』。まるで世界その物を体現しているとしか思えない程の濃密さ。自分よりも遥かに強大で格上の存在が近付いている。そう確信したオメガモンの目の前に、1体のデジモンが舞い降りた。

 その見た目は天使その物だが、敵対する相手には魔王としか見えない。その二律背反を思わせるデジモンだった。

 

「君は……(聖騎士だと……!? 私の知らない聖騎士がこの世界にいたのか!?)」

 

「貴方は……(彼がホメオスタシスの言っていたオメガモンですか……)」

 

 そのデジモンを一言で言うなら聖騎士。白銀に輝くシンプルでスマートな細身の体格。白銀を基調としながら、所々に青色のアクセントが施されている聖鎧を身に纏っている。

 背中には一対の翼が備わっていて、両腕に籠手を付け、両腰には鞘込めの聖剣が帯びられている。赤くつぶらな瞳が特徴の聖騎士。

 その美しくも威風堂々とした姿にオメガモンが圧倒される一方、デジモンはオメガモンの姿を確認してから前に向けて歩き始める。自分に似ている姿をしているオメガモンの存在に興味を抱いたのだろう。

 

「私はオメガモン。君は何者だ? 初めて見るデジモンだが……」

 

「私はパラティヌモン。初めまして、オメガモン」

 

 デジモンの名前はパラティヌモン。聖騎士でありながら、穏やかで可愛らしい女性の声でオメガモンに話しかける。

 女性な聖騎士に違和感を覚えながらも、オメガモンはパラティヌモンに挨拶をする。少なくともオメガモンの記憶(メモリー)の中にはパラティヌモンというデジモンは存在しない。その事を疑問に覚え、パラティヌモンの笑顔を静かに見つめ続ける。

 同時に『波動(コード)』を解析しながら正体を探っていると、解析結果が出る前に、笑顔を浮かべているパラティヌモンがオメガモンに質問を始める。

 

「オメガモン。貴方は『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』の一員である筈です。どうしてこんな所を歩いているのですか?」

 

「私はこの世界の出身ではない。別のデジタルワールドで死んで、人間界で転生した身。デジモンなのにデジタルワールドを知らないのはどうかと思い、友人に薦められる形で来た」

 

「フフッ。良き友達がいるのですね」

 

 パラティヌモンの声音は優しく、無条件に甘えたくなる蠱惑的な物。女性らしい仕草を時折見せるパラティヌモンに、オメガモンは好意を抱いた。

 正確には八神一真が好意を抱いたと言えば良いのだろう。どうやら好みの女性のタイプだったらしい。

 

「さっきまで歩いていたが、デジモンには会っていない。そんな時に君に会えた」

 

「そうですか……デジモンに会えないのは残念でしたが、初めて会えたデジモンが私で嬉しかったです。実は私も初めて会えたデジモンが貴方ですから」

 

「何と……どういう事だ?」

 

 パラティヌモンはオメガモンの話に喜びを見せながら、同じように初めて会えたのがオメガモンである事を喜ぶ。

 その言葉に首を傾げるオメガモン。彼女は一体どういうデジモンなのか。その答えがようやく彼女の口から明らかになる。

 

「私は神を超える力を宿していた為、神によって封印されて深く長い眠りに付いていました。それが何らかの理由で目覚め、封印から解き放たれました。貴方がこの世界に来た目的はまさか観光だけですか? いえ、きっと違います。貴方の心の奥底には戦いたいと言う強い思いがあるのを感じます」

 

「戦いたいと言う思い……」

 

「貴方が望むのは死力を尽くした戦い。でもそれが出来ずにいて、内心フラストレーションが溜まっている……幾ら聖騎士と言えど、デジモンである事には変わりありません。戦いたいのでしょう、強いデジモンと」

 

 パラティヌモンはオメガモンの本心を言い当てた。オメガモンは満足するまで戦えた事が少ない。特に転生してからそれが顕著になっている。

 1体の聖騎士ではなく、1体のデジモンとして心の底では強敵との死力を尽くした戦いを望んでいる。

 

「私もちょうど戦いたかったのです。ブランクを埋める為にも……」

 

「私も戦いたかった所だ。強い相手との死合を通じて、より自分を高める為に」

 

「決まりですね。お互いに死合ましょうか」

 

 パラティヌモンはまだ封印から解かれたばかり。相当なブランクがあり、戦いの勘といった何もかもを忘れているまっさらな状態。

 その状態から全盛期に戻ろうとしているつもりだ。腰に帯びている2振りの聖剣―パラティヌス・ソードの柄を掴むと共に鞘から引き抜き、構えを取る。その姿は聖騎士のようでいて、魔神にも思えてしまう。

 相手は戦う気に満ち溢れている。それが分からないオメガモンではない。相手が戦うつもりであれば、こちらも戦うしかない。そう割り切り、戦闘態勢に移行する。

 いつものように右腕を振るい、メタルガルルモンを象った右手から大砲を展開する。それから左腕を掲げながら、ウォーグレイモンを象った左手から聖剣を射出した。

 ニコリと微笑むパラティヌモンと、目を細めるオメガモン。2体の聖騎士の戦い。まるで何かの運命に導かれたかのように、この戦いの幕が上がった。

 

 

 

「『Omega-Gain-Force(オメガ・イン・フォース)』、発動……ッ!(何て情報量の多さなんだ……相当な格上だ!)」

 

 オメガモンが静かに呟くと、胸部の紅い宝玉が光り輝く。脳内に無数の情報が伝達されていくが、今回伝達される情報は過去最高を更新した。

 その情報量の余りの多さはオメガモンの表情が歪んでしまう程だった。それは僅か一瞬だったが、直ぐに根性で持ち直した。

 ディアボロモン戦とアルファモンとの模擬戦。その時に脳内に直接伝達された情報量とは桁が違う。相手は確実に格上の聖騎士。能力を発動させて正解だったようだ。

 

「戦闘レベル、ターゲット確認。戦闘を開始する」

 

「本気で行きましょう!」

 

 先手を取ったのはパラティヌモンの方からだった。背中の翼から青い光を放ちながら、オメガモンに向けて凄まじい勢いで襲い掛かる。

 そのスピードは超神速の領域。『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』最速のアルフォースブイドラモンや、デジタルワールド最速を誇るメルクリモンを遥かに超えている。それ程までに凄まじい機動力を見せている。

 

(スピードが速い……だが捕捉出来ない事はない!)

 

 オメガモンの脳内にはあらゆる情報が直接伝達されている。真っ直ぐに迫り来るパラティヌモンを捕捉すると共に右腕の大砲を構え、砲撃を撃ち出す体勢に移行する。

 自らの体内に貯蔵している生命エネルギーを砲身の内部で圧縮し、極限まで消滅エネルギーを砲弾状に凝縮したエネルギーを撃ち込む。

 目にも写らない速度で迫り来る青いエネルギー弾。それを見ても回避する気配を見せず、パラティヌモンは尚も突進して来る。オメガモンの撃ち込む砲撃に向けて。

 

(回避しないとは何のつもりだ……?)

 

 パラティヌモンに青いエネルギー弾が命中したのを見て、オメガモンは彼女が攻撃を回避・迎撃しなかった事に疑問を感じ、目を細めながら首を傾げる。当然の事ながら警戒する事と、構えを取る事は忘れていない。

 次の瞬間に脳内に直接伝達された予測結果。その内容を知ったオメガモンは驚愕で目を見開いた。思い描いていなかった未来だったからか。

 青いエネルギー弾が命中した事で発生した爆炎と黒煙の中から、パラティヌモンが現れ、オメガモンの目の前に一瞬で姿を現われた。

 

「ッ!(無傷だと!?)」

 

「成る程。どうやら状態は思っていたより良さそうですね」

 

 オメガモンが驚いたのは砲撃が命中したにも関わらず、パラティヌモンが無傷だった事だ。スピードが速い聖騎士はその代償に防御力が低くなりがち。それを知っているからこそ、砲撃を撃ち込んだが、パラティヌモンの防御力は予想以上に高かった。

 砲撃が直撃した部分を軽く触り、体の状態を確認したパラティヌモン。オメガモン目掛けて右手に握る黄金の聖剣を振り下ろす。

 

「ハァッ!!」

 

「チィ!!(エネルギー弾が駄目なら……!)」

 

 パラティヌモンの唐竹斬りを後方に跳ぶ事で回避しながら、オメガモンはパラティヌモンにもう1度砲撃を撃ち込むと、照準を合わせる。

 エネルギー弾は通用しなかった。同じ手は二度も使わない。砲身のナイフに自身の生命エネルギーを集束させる。砲身の内部で圧縮する。プロセスはここまで一緒だが、違うのはここからだ。

 砲弾の形に凝縮させず、圧縮した消滅エネルギーを大砲から撃ち出した。青いエネルギーの波動砲。世界を灰塵と為す熱量と破壊力を持った純粋破壊の巨大な奔流。

 パラティヌモンは砲撃を左手に握る聖剣だけで受け止める。刀身は真っ二つに折れるどころか、軋みすら上げない。相当頑丈に出来ているようだ。そのまま右薙ぎに払って砲撃を消し去った。

 

(これで復活したばかりなのか……封印される理由がよく分かったが、封印される前はどれだけ強かったんだ!?)

 

 特殊能力を使用している為、オメガモンの基本性能は上昇している。そのオメガモンですらダメージを与えられないパラティヌモン。これでブランクがあるとは信じられない。

 封印される理由は分かった。ここまで強いのなら何かしらされてもおかしくない。では封印される前は一体何処までの強さだったのか。考えるだけで恐ろしい。

 右腕の大砲から撃ち出す砲撃が通用しない事が分かり、表情を険しくさせるオメガモンとは対照的に、パラティヌモンの赤くつぶらな瞳が輝く。

 

「成る程。貴方も人間と一体化しているのですね? 道理で『波動(コード)』が特殊だと思ったら……」

 

「まさか……!」

 

「分かるのですよ。私と貴方は同じですから」

 

 まだ出会ったばかりなのに、戦いを始めたばかりなのにも関わらず、パラティヌモンはオメガモンの秘密に気付いて言い当てた。

 自分と同じ。つまりは人間と一体化したデジモンとなる。一体どういう事なのか。そう考えながらも、オメガモンは近接戦に移行する事を決めた。

 深く腰を落としながら聖剣の剣先を相手に向け、左ひじを曲げてから刀身に軽く右手を添える独特の構えを取った。必殺剣技の『聖突』の構えだ。

 

「ほぉ……(あの構えは一体……?)」

 

「行くぞ!」

 

 その構えを見て感心しているのか、パラティヌモンは目を細めた。それでも警戒はしているようだ。両手に握る聖剣を注意深く構える。

 目の前にいたオメガモンが突然消失したと思ったら、一瞬で間合いを詰めて来た。移動したと気付かせない、消失したと錯覚させる程のスピードで突進したのだ。

 

(瞬間移動……ですか)

 

「『聖突・壱式』!!!」

 

 目にも写らぬ速度で突き出された聖剣を、パラティヌモンはあっさりと弾き返した。左手に握る聖剣を左斜め上に振り上げて『聖突』を弾き、右足を一歩踏み込みながら右手に握る聖剣を突き出す。

 教科書通りの双剣士。片手の剣を防御、片手の剣を攻撃に使っている。それを予測していないオメガモンではない。

 

(良い刺突ですね……でもまだ甘い!)

 

「そう来ると読んでいたよ」

 

 オメガモンは『聖突』を最初から捌かれる事を踏まえた上で、『聖突』を繰り出した。これまでの攻防で分かる。パラティヌモンが自分よりも格上の相手だという事が。総合性能で劣っている事が。

 それでも必殺の剣技を繰り出したのには理由がある。それは距離を詰める事。オメガモンはパラティヌモンの行動を逆に利用し、カウンターを叩き込もうとしている。

 『聖突』を弾かれた勢いに負けないよう左足で踏ん張りながら、左足を支点にしながら回転して刺突を躱すと共に、パラティヌモンの背後に回り込む。

 

「ッ!(ほぉ、そう来ますか……)」

 

 パラティヌモンの後頭部に向けてオメガモンは全力で聖剣を薙ぎ払うが、パラティヌモンはオメガモンの『波動(コード)』でカウンターに気付いた。

 背後を振り返り、右手に握る聖剣で左薙ぎを受け止めるパラティヌモン。カウンターに気付かれた事に表情を険しくさせるが、オメガモンは聖剣を最後まで振り切ろうと左腕に込める力を強める。

 同じく聖剣を振り抜こうとしたパラティヌモンは右足から回し蹴りを繰り出し、オメガモンを蹴り飛ばす。空中で体勢を立て直したオメガモンは危なげなく地面に着地した。

 これで一度仕切り直しとなった。2体の聖騎士はお互いの武器を構え直しながらお互いの出方を伺う。

 

(速い上に正確……しかもこれでまだ全力ではない。底が見えない相手だ……)

 

 オメガモンがパラティヌモンの強さに戦慄を覚えながら、聖剣を構えながら時折フェイントを織り交ぜる。

 パラティヌモンの強さは速度と剣技から来ている。動きだけでなく、攻撃や反応速度が速い。それに最高峰の剣技が合わさり、近接戦闘においては他の追随を許さない。シンプルであるが故に至高の強さ。

 それだけではない。まるで未来予測を使用しているかのように、相手の攻撃に対して的確に動きながら、一つ一つ対処している。

 

(私が封印された後に誕生したオメガモン……まさかここまでの実力者だったとは)

 

 オメガモン相手に余裕を見せているパラティヌモンだが、実際の所はオメガモンの戦い方や強さに感嘆の念を抱いている。

 一閃しただけで幾千もの敵を消し去る聖剣と、一撃で全てを粉砕する威力の聖砲。卓越した剣技。一瞬にして未来を予測し、あらゆる状況に対応出来てしまう究極の力。

 彼女がイグドラシルによって封印された後、オメガモンは誕生した。自分が活躍した当時のデジモンのデータしかないパラティヌモンにとって、後の時代で活躍したデジモンとの戦いは刺激になる。その相手が強いデジモンであれば猶更だ。

 戦いを通じながら感覚を取り戻していくパラティヌモンとの戦い。今度はオメガモンの方から仕掛けて来た。

 

 

 

「(遅い! これでは遅い! パラティヌモンの反応速度を超越しろ!)ウオオォォォォォォーーーーー!!!!!」

 

 オメガモンは左腕の聖剣を力強く振るいながら、連続斬撃を繰り出す。相手の防御を一撃で斬り崩すような、一撃の威力を重視した斬撃。それが目にも写らぬ速度を以て、嵐の如く襲い掛かる。

 パラティヌモンは両手に握る聖剣で全て捌いた。刺突を弾き、薙ぎ払いを受け流し、それ以外の斬撃を悉く防いでいく。聖剣の操作と身のこなしには一切の無駄がなく、必要最小限の動きだけでというおまけ付きだ。

 攻撃しているのはオメガモン。それにも関わらず、戦いにおいて優位に立っているのはパラティヌモン。こうなっている理由は幾つかあるが、基本性能はそこまで差はない。

 幾らパラティヌモンの基本性能が高くても、封印を解除されたばかりでまだ病み上がり状態。オメガモンは『Omega-Gain-Force(オメガ・イン・フォース)』を発動している状態に加え、戦闘経験で幾分か優っている。

 最大の理由は戦闘技術。パラティヌモンはそれだけでオメガモンを圧倒している。相手の視線の先、身体の動き、斬撃の軌道。相手の動きの全てを見た上で、正確に動きながらその先を行っている。まるでコンピューターのように計算された戦略的な戦い方をしていると言えるだろう。

 まるで剣技を存在の根底にまで刻まれているみたいだ。全ての攻撃が次の攻撃への布石となっている為、全てが意味なく、無駄のない攻撃となっている。基本性能の高さと剣術の2つだけで、オメガモンを圧倒している。

 

「(私に勝利を見せろ!)行くぞォォォォォォーーーーー!!!!!」

 

「ッ!」

 

 『Omega-Gain-Force(オメガ・イン・フォース)』の強度を更に強めた証に、空色の瞳から眩い光が放たれた。世界を震撼させる程の雄叫びを上げながら、オメガモンは超神速の速度で突進を開始する。

 警戒するように表情を引き締めるパラティヌモン。右斜めに聖剣を振り下ろして先手を打つが、オメガモンは聖剣から右薙ぎを繰り出して弾き、返す刀で逆袈裟斬りを繰り出しながら、左腕に宿っているウォーグレイモンの力を解き放つ。

 

「“万象一切灰塵と為せ”! グレイソード!!!」

 

 ウォーグレイモンの頭部を象った左手の目の部分が光り輝くと共に、聖剣の刀身から巨大な太陽の灼熱が発せられる。

 周囲一帯が覆い包まれた事で、気温が急上昇を始める。これにはパラティヌモンも驚愕を覚え、一度後退して様子を伺う。

 

「ッ!?」

 

 パラティヌモンは気付いた。オメガモンが左腕に宿している力を解き放った事で、オメガモンの基本性能が爆発的に上昇した事を。

 そしてこの場所も太陽の灼熱によって変わりつつある事も。まるでムスペルヘイムにいるようだ。灼熱世界。北欧神話における、世界の南の果てにある灼熱の国。

 

(成る程。2体のデジモンが合体したデジモンなんですね……にしても凄いです。単独で太陽と同等の輝きと熱量を併せ持つ灼熱を宿すとは……)

 

 オメガモンはウォーグレイモンとメタルガルルモンが、善を望む人々の強い意志によって融合し誕生したデジモン。

 左腕に聖剣と聖盾を装備しているが、ウォーグレイモンの力を宿したのは武器だけではない。炎熱属性。太陽の灼熱という強大な力を宿している。

 その事実に驚愕しながらも闘志の昂りを隠せないパラティヌモンの目の前で、オメガモンはグレイソードを構える。

 

「『怒涛たる勝利の聖剣(グレイソード)』!!!」

 

(何というパワーとスピード……これがオメガモンの力!)

 

 聖剣から迸る太陽の灼熱が強大になりながら集束され、灼熱の波濤が刀身から生み出されていく。その聖剣を下段に構えながら、オメガモンはパラティヌモンとの間合いを一瞬で詰めながら斬り掛かる。

 これによって攻守が切り替わった。オメガモンが優勢に立ち、パラティヌモンが劣勢となる。攻守は先程と変わらない。オメガモンは灼熱の波濤を生み出すグレイソードを振るいながら、文字通り怒涛の攻撃を繰り出していく。

 先程までは余裕で捌いていた斬撃。それが今では凌ぐだけで精一杯になった。太陽の灼熱に焼き尽くされないよう、パラティヌモンは防戦に徹する事で精一杯だ。

 

「ハァッ!!」

 

(これは最早技でありながら“天災”の領域……!)

 

 オメガモンの繰り出す斬撃は剣術でありながら、天災となっている。その恐ろしさを感じながらもパラティヌスモンは踏み止まる。

 その防御を斬り崩そうと、力強い踏み込みと共に灼熱の斬撃が放たれた。全てを焼き尽くすと言わんばかりの左薙ぎ。

 受け流そうとするパラティヌスモンの右手から、パラティヌス・ソードが宙を舞う。持ち主の手から弾かれたと理解するよりも前に、オメガモンがグレイソードを振り下ろす。

 

「受けて頂く!」

 

「そうは行きません!」

 

 普通であればここで詰んだと誰もが思うだろう。しかし、現実はそう簡単には行かない物だ。パラティヌモンは左手に握る聖剣にエネルギーを送り込み、刀身から黄金の光を伸ばしながら振り上げる。

 黄金の光は灼熱の波濤を消し去ると共に、グレイソードを弾いていく。そのままオメガモンに直撃すると思われたが、オメガモンは咄嗟に後退して距離を取った。

 

(ここに来て隠し玉か……厄介だな)

 

(今の攻撃を躱すとは……流石ですね)

 

 パラティヌス・ソード。非常に斬れ味の良い黄金の聖剣なのだが、エネルギーを刀身に流し込むと、刀身から黄金の光を伸ばす事が可能となる。無論斬撃として放つ事も出来るだけでなく、黄金の光で対象を消し去る事も出来る。

 果たしてあの黄金の光を超える事が出来るのか。『Omega-Gain-Force(オメガ・イン・フォース)』を使うと、脳内に最良の直接戦術が伝達される。正直成功するかどうかは分からないが、この戦術をやるしかない。

 

(次の一撃に全てを込める!!)

 

 オメガモンは覚悟を決めると共にグレイソードを下段に構え、刀身から生み出していた灼熱の波濤を消し去った。

 パラティヌモンも次の攻防でこの戦いが終わる事を確信したが、オメガモンの行動と構えを見て疑問に覚える。今の構えを見て考えると、突進してグレイソードを振り上げるだけにしか思えない。

 単純な戦術は自分には通じない。真っ向勝負でも余裕で粉砕されると理解している筈だ。それにも関わらず、オメガモンは構えを解く事をしないで、全ての力を込めて自分を打倒しようとしている。

 パラティヌモンも相手の行動を分析・予測した上で、予測された未来への対処法や結末を脳内に直接伝達させようとするが、そのような暇があったら目の前の戦いに集中する事を考え、思い止まった。

 お互いに次の攻防で決着をつける為に全ての力を集中させ始める。2体の聖騎士の気迫が混ざり合い、ムスペルヘイムと化した世界が更に熱くなると、オメガモンが超神速の勢いでパラティヌモンに向けて突進を開始した。

 

「ハアアアアアアアアァァァァァッ!!!!!!!」

 

(最後は真っ向勝負で来ますか……面白い!)

 

 真正面から突進して来るオメガモンを見ると、パラティヌモンは左手に握るパラティヌス・ソードを振り下ろそうとするが、その直前にオメガモンはグレイソードを振るい、目の前に灼熱の炎壁を展開する。

 目の前に突然出現した灼熱の炎壁。パラティヌモンは戸惑いながらも直ぐにオメガモンの考えを悟り、パラティヌス・ソードから黄金の光を伸ばしながら一閃し、灼熱の炎壁を瞬く間に消し去る。

 その隙にパラティヌモンの背後に移動したオメガモンだったが、パラティヌモンは事前に予測していたのか、慌てる事なく右手に握るパラティヌス・ソードをオメガモンに向けて横薙ぎに一閃する。

 

「何!?」

 

 パラティヌス・ソードがオメガモンに直撃する直前、グレイソードから太陽の灼熱が発せられた。同時にグレイソードから斬り上げが繰り出され、太陽の灼熱が推進剤となってオメガモンの攻撃速度を速める事となった。

 オメガモンの戦術は極めてシンプル。刀身の内部に太陽の灼熱を凝縮させたグレイソードを構えながら相手に向けて突進し、灼熱の炎壁を展開して隠れ蓑に使う事で相手の背後に回り込む。そしてグレイソードの刀身から太陽の灼熱を発しながら、相手を斬り上げながら焼き尽くすという戦術。

 『Omega-Gain-Force(オメガ・イン・フォース)』で伝達された戦術は成功した。パラティヌス・ソードは受け流され、返す刀でグレイソードを斬り下ろす。

 

「これで終わりだ!」

 

「貴方が、です。『ロイヤルストレートスラッシュ』!!!」

 

「ガアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

 しかし、伝達された戦術によって運命られた勝利は訪れなかった。パラティヌモンは左手に握る聖剣を振り下ろしてグレイソードを地面に叩き付け、右手に握るパラティヌ・ソードから黄金の光を伸ばしながら、全力で斬り下ろした。

 初めてにして致命傷とも言える大ダメージ。それを真正面から受けたオメガモンは崩れ落ち、その場に倒れ伏せる。

 

「今の戦術は悪くありませんでしたが、後一歩でしたね。私が貴方の先を行っていた。それだけです。貴方の敗因は1つだけ。物凄くシンプルな理由。戦い方でも実力差でもありません。正直そこまで差はありませんでした。ただあるとすれば……“自分より強い相手との戦闘経験の少なさ“です」

 

 グレイソードを地面に突き刺し、杖替わりにしながら立ち上がろうとするオメガモンに、パラティヌス・ソードを突き付けながらパラティヌモンは告げる。

 戦い方や実力差はそこまでなかった。途中からは良い勝負になっていたのだから。最後に勝敗を分けたのは格上相手との戦闘経験があるかないか。それだけだった。

 

「……そうか。私の負けだな」

 

「はい。私の勝ちです」

 

 オメガモンはあっさりと敗北を認めた。普段であれば往生際の悪さを見せるが、同時に潔さを併せ持っている。そこが聖騎士としての在り方なのかもしれない。

 パラティヌモンとの戦いで転生して初めての敗北を刻まれたオメガモン。この時の悔しさを胸に抱き、再戦する時までに強くなろうと胸に誓うのだった。

 




LAST ALLIANCEです。最新話如何でしたか?
 パラティヌモンの名前の元ネタはパラティヌス。ラテン語の聖騎士と言う単語から取りました。パラディモンを最初は考えましたが、露骨すぎるので没にしました。
 パラディオモンも検討しましたが、最終的にパラティヌモンにしました。遊戯王でパラディオスというエクシーズモンスターがいて、一時期使っていたので考えてはみました。

 パラティヌモンのデザインは『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』に登場したガンダムバエルを参考にしました。好きなんですよ、バエル。二刀流でシンプルなデザイン。しかもかっこ良い。乗っている人の声が櫻井さん。うん、最高だね!
 中身は『新機動戦記ガンダムW』のガンダムエピオン。武器がエレガントですが、めっちゃ強いです。ゲームではどうなんですかね? あんまり詳しくないので分かりません。
 後分からないと言えば、『Omega-Gain-Force(オメガ・イン・フォース)』。具体的にどういう能力なのかが分からないので、『新機動戦記ガンダムW』のゼロシステムを参考に書いています。ぶっちゃけそうとしか思えない。

 次回の前半はパラティヌモンについて深く掘り下げます。後半は秘密です。今考えていますので少しお待ちを。第13話を投稿したら設定集を投稿する予定です。
 
皆さん、よろしければ感想・評価の方よろしくお願いします。
 あたたかい感想とか前向きなコメントや応援メッセージ、高評価を頂くと、作者のやる気が超進化します。
というか真面目に感想とか評価が来ないので、若干不安になっています。
 書いていて自信がなくなるというか、本当に皆読んでいるのかという疑心暗鬼にかられるので……せめて「もっと他のキャラにスポット当てて!」とか、「もっと独自の色を出して!」とかみたいな感じのご意見ご感想を下さい。誹謗中傷はノーセンキュー。
欲しいのは暖かいご意見ご感想だけなので。アドバイスも欲しいです。

では次回をお楽しみに。LAST ALLIANCEでした!

次回予告

パラティヌモンから明かされる誕生秘話とデジタルワールドの歴史。
それを聞いたオメガモンは来たるべき大戦に向けて己を鍛える事を決意する。
そして人間界に現れた1人の女性。彼女の正体は?

第12話 明かされる世界の歴史 新たなる相棒
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