終焉の聖騎士伝説~オメガモンとなった青年の物語~ 作:LAST ALLIANCE
暖かい物を食べたり、モンスターエナジーにハマったりしてますが、皆さんモンスターエナジーは1日2本までにして下さい。健康の為にも。
という訳で第12話です。パラティヌモンの正体と設定を明かしていきます。
正直やり過ぎ感はありましたが、気にせず突っ走ろうと思います。
デジタルワールドの荒野。そこはつい先程まで2体の聖騎士による戦闘が繰り広げられ、大地が焦土と化し、至る所が破壊し尽くされた場所と変わり果てた。
その場所にいるのは2体の聖騎士。ダメージと体力を癒した敗者のオメガモンと、聖剣を鞘に戻した勝者のパラティヌモン。適当な大きさの岩を見付けて椅子替わりに座り、パラティヌモンが話を始める。
「オメガモン。貴方はこのデジタルワールドの事は全く知りませんよね? 戦いを始める前にこの世界の出身ではないとおっしゃってましたね? 別のデジタルワールドで死んで、人間界で転生したと」
「あぁ、そうだ。このデジタルワールドで何が起きているかは分かるが、詳しい歴史が分からない」
「では最初は私が造られた経緯について話しましょうか」
(造られた経緯……?)
オメガモンはこのデジタルワールドで誕生したデジモンではない。“巡り会いの戦い(クロスウォーズ)”があったデジタルワールドの出身。出身世界で戦死し、人間界に転生した為、このデジタルワールドの歴史は全く分からない。
今現在何が起きているのはバグラモン達から聞いて理解している。それを踏まえ、パラティヌモンは自分の事を話していく。
ただオメガモンが引っ掛かりを覚えたのは“造られた経緯”という単語。それだけで分かった。パラティヌモンは普通のデジモンではない事が。
「かつてこの世界では厄災大戦という次元規模の大戦がありました。勃発した切っ掛けは行きすぎたイグドラシルの統治に反発したデジモン達の武力蜂起……私はイグドラシルによってその大戦を終結させる為に造られました。300年も長きに続いた大戦は何とか終わりました」
「300年も続いたのか!?」
300年も続いた厄災大戦と呼ばれる大戦を終結させる為、イグドラシルによって造られた神造兵器。それがパラティヌモンの正体。
激戦の末、文明が大きく後退する程の壊滅的打撃を受けた大戦。それを終わらせたパラティヌモンは英雄扱いされてもおかしくない。それが何故製造主たるイグドラシルによって封印されたのか。パラティヌモンは話し始める。
「私が封印されたのは神を超える力を持っていた為です。将来的に私が脅威になると判断されましたが、それは表向きの理由。本当の理由は別の所にありました」
「本当の理由?」
「戦いの最中に言いましたよね? “貴方も人間と一体化している”と」
「あぁ言っていたが……まさか!」
「そう。私も貴方と同じ……いえ貴方の原型となったデジモンです」
パラティヌモンが封印されたのはデジタルワールドの将来の為。その強大な力がいずれ厄災となる事を恐れ、イグドラシルが封印した。だがこれは建前だ。
本当の理由は別の所にある。それはパラティヌモンの正体。オメガモンと同じく、人間と一体化したデジモンという事に関係している。
「私の原型……?」
「はい。私は貴方達聖騎士型デジモンの原型。後の時代の聖騎士のデータは私の模造品。派生形です。直接剣を交えて確信しました」
「何だと……!」
パラティヌモンの正体。それはオメガモン達聖騎士型デジモンの原型。プロトタイプ。聖騎士型デジモンの始祖。種族は古代聖騎士型。
それなら聖騎士相手に優位に立てる理由も分かる。全ての聖騎士型デジモンの原型となったのだから、彼らを束ねる“聖騎士王”と謳っても過言ではない。
「じゃあ君と一体化した人間は……!」
「貴方も名前くらいは聞いた事がある筈です。アーサー・ペンドラゴン。アーサー王です」
「馬鹿な……!」
アーサー・ペンドラゴン。かの有名な『アーサー王伝説』に登場する円卓の騎士の一人であり、ブリテンの伝説的君主。選定の剣を引き抜き、不老の王となった騎士王。
その偉大なるアーサー王がデジモンになった。しかも自分がつい先程まで剣を交えた相手がそのアーサー王。オメガモンは驚愕と歓喜のあまり笑う事しか出来なかった。
「まさか……貴方がかの有名なアーサー王だったとは……えっ? でも女性……」
「はい。私は女性です。男装をして男性らしく振る舞っていましたが、色々大変でした……」
「(それは色々と大変だっただろうな……)でも何故デジタルワールドに?」
「あれは厄災大戦の末期になりますね……」
パラティヌモン、もといアーサー王が話し始める誕生の経緯。『アーサー王伝説』の通り、アーサー王はカムランの丘で自分の息子たるモードレッドを討ち滅ぼしたが、自らも傷を負って膝を折った。
息を引き取る直前、聖剣エクスカリバーを湖の乙女に返還するべく、最後の腹心たるベディヴィエールに預け、現世から退場した。その後は死後において運ばれた地―アヴァロンに向かう。その筈だった。
「アヴァロンに向かっている最中、次元の歪みに飲み込まれ、この世界に来ました。何日も食わず飲まずで彷徨っていた所、イグドラシルに助けられました。そこで事情を話した所、謝罪を受けて厄災大戦の事を知りました」
「元々はイグドラシルの統治が原因で起きたのだろう? 何故協力した?」
「では貴方に聞きます。仮にイグドラシルを殺しても、誰が代わりに統治するのですか? 代替案もないのに、好き勝手な事を言うのは止めなさい」
「……すみませんでした」
パラティヌモンが怒りを見せながら睨み付けると、オメガモンはあっさりと引き下がった。流石はアーサー王だけある。
彼女がイグドラシルに協力した理由。それはイグドラシルに助けられた恩を返す為。国を滅ぼした自分が、今度は世界を守る。その大義もきっと関係していたのだろう。
「私は戦いを終わらせたいというイグドラシルの思いや、荒れ果てた世界を見てかつてのブリテンを思い出しました。例え国を滅ぼしたとしても、私は王でした。王として戦いを終わらせなければならない。そう思い、イグドラシルに戦いに参加させて欲しいと頼みました」
「それで今の姿に?」
「はい。流石にアーサー王の姿ではデジモンとは渡り合えなかったです。とは言えデジモンになる方法も無かった為、私はイグドラシルに頼みました。“私をデジモンにして欲しい”と」
「ッ!」
アーサー王は自ら志願してデジモンとなった。その覚悟の強さに胸を打たれたオメガモンの目の前で、パラティヌモンは話を続ける。
まるで過去の自分の行いを懺悔するように。自分自身の歩みを振り返るように。過去を思い返しながら話しているように見えた。
「イグドラシルは私に『電脳核(デジコア)』の移植手術を行い、人間界に伝わるありとあらゆる神話や伝説のデータを使って肉体を再構成させました。そうしてデジモンとして生まれ変わった私は、新たにパラティヌモンという名前を授かりました」
中世および初期近代ヨーロッパの多くの国で見られた、一定の高位にある騎士。それが聖騎士。パラティヌスというのはラテン語で聖騎士と言う。
しかし、ここで疑問が生じる。何故人間界に伝わるありとあらゆる神話や伝説のデータを使って肉体を再構成させたのか。長きに渡って続いた厄災大戦の為に世界は疲弊し、存亡の危機に瀕していた。
世界を救うには誰かが大戦に終止符を打たなければならない。その為には単体で戦いの勝敗を決める圧倒的な力が必要とされていた。その為にイグドラシルはアーサー王をデジモンに転生させると共に魔改造を施した。
その圧倒的な力で厄災大戦を終結に導いた英雄。それにも関わらず、イグドラシルはパラティヌモンを封印した。その理由をパラティヌモンは話し始める。
「私が封印された本当の理由。それは私の存在が“禁忌”に当たるとされたからです。厄災大戦後、イグドラシルの抑止力としてホメオスタシスが建造されました。そして東側をホメオスタシスが、西側をイグドラシルが統治する時代となりました。ここで1つの問題が出てきました」
「貴女の存在か?」
「それもありますが、私のようなデジモンをイグドラシルが13体造っていたのです」
「13体も!?」
「私を含めたデジモン達。イグドラシルは“超越体”と呼んでいました。デジモンという存在を超えたデジモンとして……それが明らかになると、色々まずい事になりますから」
厄災大戦が終了した後、パラティヌモン達13体の“超越体”デジモンは、彼らの存在が明らかになる事を恐れたイグドラシルによって封印された。
一番の理由は“人間を素体として利用した事を隠す為”だ。厄災大戦を終結させた英雄達が実は人間だった。それが明るみに出ると、再び厄災大戦のような次元規模の大戦が勃発してしまう。それを防ぐ為、厄災大戦の終了後に封印されたのだ。
しかもパラティヌモン以外の13人の人間は人間界から全員連れて来られた。彼らは『電脳核(デジコア)』の移植出術の成功作。人間にとって『電脳核(デジコア)』は異物。身体に移植する時に身体は拒否反応を起こし、拒絶反応に蝕まれる。その過半数が移植して身体に馴染ませる途中で精神に変調をきたしたり、適応負荷を起こして死亡した。
例え適応出来たとしても求められている結果を残せないと、そこに待っているのは“死”だけ。最終的に生き残った者は数百人中僅か13人。それでも最初の予想を上回る結果だった。移植された『電脳核(デジコア)』に適合した13人は人間とデジモンの融合体でありながら、デジモンを超越した存在として覚醒した。
超強化された身体能力と特殊能力の開花。人間というアナログとデジモンというデジタルの融合。神による前代未聞の非人道的な実験。神によってデジモンに作り替えられた人間。彼らは『電脳人間(エイリアス)』と呼ばれている。
「そもそも私は人間を素体にし、イグドラシルによって造られた神造デジモン。貴方は心臓が『電脳核(デジコア)』で、オメガモンに進化出来る人間。似ているようで実は違いましたね……」
「悪かったな。似てなくて……」
「いえ、すみませんでした。私の封印を解除したのはホメオスタシス。彼女に人間界に行って、オメガモンに接触するように頼まれました。でもその必要はなかったです」
「ホメオスタシスが? よく封印されている場所が分かったな……」
パラティヌモン達を封印した後、イグドラシルは彼らのデータの全てを消去した。しかし、厄災大戦を調査している時、ホメオスタシスはパラティヌモンの存在を知った。
それから独自に調査した結果、パラティヌモンが封印されている場所に辿り着き、封印を解除した。そして今に至る。
残る13体の“超越体”デジモンが何処に封印されているのか。それは分からないが、パラティヌモンを味方にする事が出来たのは大きい。
「それでこれからどうする?」
「ホメオスタシスに報告してきます。貴方は?」
「私は人間界に戻るよ」
「ではこれにて失礼します」
「あぁ、また何処かで」
オメガモンと別れた後、パラティヌモンは何処かへと向かっていく。そこはホメオスタシスがいる場所。彼女の目的は極めてシンプル。任務完了の報告をしに行く事だ。
任務完了の報告を終えると、ホメオスタシスはパラティヌモンにもう1つの任務を頼んだ。その内容に驚きながらもパラティヌモンは了承し、その場から消え去った。
それから数日後の”電脳現象調査保安局”の本部。この日の朝礼では薩摩本部長が局員達に新人を紹介する事となった。
そこには一真もいる。数か月前は自分も同じような事をされた。そう思うだけで微笑みを浮かべていると、薩摩が新人局員を紹介し始める。
「今日は新しい仲間が来た。皆に紹介したい。では自己紹介の方をお願いします」
「皆さん初めまして。アルトリウス・ペンドラゴンです。これからよろしくお願いします」
『おぉ~!』
(えっ……?)
新人局員の名前はアルトリウス・ペンドラゴン。長い金髪に王としての気品を感じる緑色の瞳。ビジネススーツの似合う長身でスタイルの良さが輝く女性。
女性局員の入局に男性局員は歓声を上げる中、彼女の正体を知っている一真は固まる事しか出来なかった。
「アルトリウスさんは日本に来たのは初めてだが、日本語は話せる。皆仲良くするように。朝礼はここまでにして仕事に励もう!」
『はい!』
「一真君、ちょっと本部長室に来てくれ。話がある」
薩摩の掛け声で朝礼は終わって局員達が仕事を始める中、一真は薩摩に呼ばれて本部長室に向かっていく。
本部長室に入ると、薩摩に座るように促されて座った一真。何処か真剣な顔をしている薩摩にとある頼まれ事をされた。
「アルトリウスさんの正体は分かるよな?」
「はい。パラティヌモン。かつて厄災大戦を終結させた英雄の1体。あのアーサー王です」
「ホメオスタシスから伝達があったのだが、彼女を人間界に寄越したようだ。理由は人間界の事を知ってもらう為だ。その為に一真君、君とペアを組んで欲しい。彼女と剣を交え、親しくなった君にしか出来ない事だ」
それはパラティヌモンの相方になる事。彼女は日本の事を全く知らない。何しろアーサー王という、今でいうイギリスの出身なのだから。
元々この職場では新人は先輩とペアを組んで仕事をしているが、一真の場合はあまりペアを組まないで仕事をする事が多かった。こればかりは仕方ない。ペアを組んだ優衣にも事情があるのだから。
これからは本格的なペアとなる。一真とアルトリウス。オメガモンとパラティヌモン。これからの戦いでは重要となる2体の連携や親密度を上げようと言う魂胆だろう。
「分かりました。それで何をすれば良いですか?」
「デートだな」
「デート? ドライブしたり、一緒にご飯食べたり……とか?」
「そこは君に任せるよ」
今日の仕事はアルトリウスとのデート。果たしてデートが仕事となって良いのか。苦労して働きながら収入を得ている労働者に申し訳ないと思いつつ、一真は駐車場でアルトリウスを待った。
待ち合わせを済ませて一真の車に乗ろうとすると、アルトリウスは初めて見た車を物珍しそうに見つめる。
「オメガモン……いえ、一真。これは何ですか?」
「車と言う乗り物。移動手段として使うんだ。乗るには免許が必要だから誰でも乗れる訳じゃないけど」
「これが人間界の乗り物……機械で出来ているんですね」
「そりゃね。デジモンのような超合金じゃないけど、安全性と乗りやすさはピカイチだね」
「おお~!」
人間界は物凄く久し振りだが、現代の世界は初めてなアルトリウス。車に乗って一真が運転席に、アルトリウスが助手席に座る。シートの座り心地に夢中になるアルトリウスを見て苦笑しながら、一真はシートベルトを付ける。
シートベルトを目にしたアルトリウスは不思議そうな様子で一真を見つめたが、自分も付けようと思い、一真の動きを見てシートベルトを付けた。エンジンを吹かしてアクセルを足で踏み、デートもといドライブに出掛けていく。
「薩摩さんから聞いたよ。ホメオスタシスが派遣したんだって?」
「はい。人間界の事を学んで来いと言われました」
「そうなんだ。人間界はデジタルワールドと違うし、この世界も色々と変わっているから慣れないと大変だけど……」
「その所は上手くやりますよ」
隣にいるのはあの伝説のアーサー王。それにも関わらず、一真はフランクに話す事が出来ている。これもオメガモンになった影響か。
信号が赤信号になり、青信号に変わるのを待っている間、一真はホメオスタシスがパラティヌモンを派遣した事を知り、嬉しく思いながらホメオスタシスの狙いを探った。
ホメオスタシスは来たるべき大戦に備え、戦力を増強している。人間界はいわゆる避難所として使っているのだろう。
「どうかな? 久し振りの人間界、始めて来る日本という国は」
「活気が溢れていますね。何もかもが私の時代から進歩していますし、変わらない物もあります」
「まぁ変わった物もいくつかあるんだけどね……」
それからドライブをしていると、お昼ご飯を食べる時間となった。久し振りの人間界での食事となる為、一真はあまり外れのない食事をしようと考えた。
そこで向かったのはとあるカレーハウス。そこでカレーライスを頼んだのだが、アルトリウスは特盛りを頼んで一真を唖然とさせた。
「アルトリウスさん。厄災大戦では他にも13体デジモンが造られたそうだけど、現存しているのは何体?」
「それが分からないんですよ……封印される時に13体のデジモンのデータを消去されたので……でも何体かは戦死しているので、全員はいないと思います」
「そうなのか……けどイグドラシルの事だから、戦死した何体かのデジモンを復活させようと何か企んでいるのでは?」
イグドラシルは神とも呼ばれる絶対的な存在のホストコンピューター。ホメオスタシスとの来たるべき決戦では厄災大戦で投入した13体のデジモンを使うのではないか。
そう考えるこそ、一真は厄災大戦で戦死した何体かのデジモンを蘇らせる可能性を考えた。その意見にアルトリウスも頷く。
「その可能性はありますね。私は彼らの上位存在ですが、だからと言って安心出来ません。彼らを従える特殊能力もないので……」
「そうか……用心するしかないか」
どうやらホメオスタシスと同じく、イグドラシルの方も戦力を整えているようだ。来たるべき決戦の時までに力を高めなければ。改めてそう思う一真だった。
昼食自体は穏やかに進んだ。アルトリウスは初めて食べるカレーライスの特盛に満足し、一真も行き付けのカレーハウスの味を楽しんだ。
「ここが“デジクオーツ”なんですね……」
「そうだ。ここが普段の私の戦場だ」
“デジクオーツ”。そこは人間界を荒廃させたような異世界。やって来たのはオメガモンとパラティヌモン。パラティヌモンの場合、初めて来た“デジクオーツ”に目をキラキラ輝かせている。
この異世界にもデジタルワールドと同様にデジモン達が生息しているが、高確率で人間界で事件を起こしている。それを事前に防ぐ為、時々デジタルワールドに強制送還する為に戦う事もある。
「何だかデジタルワールドとも、人間界とも違う空気ですね。2つの世界が合わさったような……」
「人間界とデジタルワールドの狭間の世界で、世界の歪みだからな……敵デジモンを2体確認。これより交戦に入る」
目の前に現れたのは2体のデジモン。全身を黄金と灰色の装甲で身に纏い、右手に刃を、左手に手錠と火炎放射機を装備したゴクモン。上半身から緑色の触手を伸ばし、至る所に目があるアルゴモン(究極体)。
2体の聖騎士は顔を見合わせて頷くと、それぞれの敵に挑む。パラティヌモンはゴクモンに、オメガモンはアルゴモン・究極体へと向かっていく。
ゴクモンは右腕の刃を構えながら迎撃態勢を整える一方、パラティヌモンは両腰に帯びている双剣―パラティヌス・ソードを引き抜き、両手に握り締める。
「ハァッ!!」
先に仕掛けたのはゴクモンの方からだった。右腕の刃を振り下ろし、パラティヌモンを一刀両断しようとする。
パラティヌモンは右手に握る聖剣で受け止めた。ゴクモンはそのまま鍔迫り合いを行って相手を斬り裂かんとするが、パラティヌモンは右腕を振るい、ゴクモンを弾き飛ばす。
空中で体勢を立て直して着地したゴクモン。パラティヌモンは背中の翼を広げて青い光を放出しながら、距離を詰めていく。
左手に握る聖剣を振り下ろし、それをゴクモンが右腕の刃で受け止めた事で始まった斬り合い。ゴクモンは容赦なく右腕の刃を降り抜き、パラティヌモンを防戦に追いやる。
(これが“デジクオーツ”内での戦闘……!)
パラティヌモンは初めての“デジクオーツ”での戦闘に慣れていないせいか、少し戸惑うような動きを見せている。それがゴクモンに付け入る隙を与えている。
“デジクオーツ”に迷い込んだデジモン達の大半は人間の悪い心に影響され、負の感情を爆発させたかのような行動を取り、人間界で悪さをしてしまう。その悪い心によって生まれた負のエネルギーで自身を強化する事もある。
ゴクモンの場合、犯罪者と警察の心によって強化されている。指名手配犯の悪しき心や、警察の腐敗や汚職にまみれた爛れた心。それがゴクモンを強化している。
彼は元々指名手配犯リストのデータから生まれた逃亡者デジモン。実は自分が賞金首なのだが、犯罪者狩りをしている不思議な悪人。その在り方が犯罪者と警察の人間の悪い心に影響されたようだ。
(ですが、この程度で屈する私ではありません!)
ゴクモンが右腕の刃で斬り掛かって来たのを、パラティヌモンは左手に握る聖剣を振るって弾きながら、右手に握る聖剣を突き出す。
赤くつぶらな瞳を輝かせたパラティヌモンに対し、素早く距離を取ったゴクモン。彼は左手の火炎放射機から地獄の業火を放つ。
「『蛇炎煉獄(じゃえんれんごく)』!!!」
(この程度の火炎……オメガモンに比べたらどうという事はありません!)
「ッ!?」
太陽の灼熱という力をグレイソードに宿すオメガモンと一度剣を交えた以上、地獄の業火ではパラティヌモンには届かない。その証拠に、パラティヌモンは右手に握る聖剣を薙ぎ払い、『蛇炎煉獄』を斬り裂いた。
それを目の当たりにしたゴクモンは、驚愕のあまり動きを止めてしまった。その隙に左手に握る聖剣にエネルギーを流し込み、刀身から黄金の光を伸ばしながら薙ぎ払う。
ゴクモンは咄嗟に跳躍して黄金の光を躱すが、その隙にパラティヌモンとの間合いを詰めて右手に持つパラティヌス・ソードで斬り掛かる。
体勢を立て直している最中だった為、若干反応が遅れてしまった。それでもゴクモンは右腕の刃でパラティヌス・ソードを受け止める。
そのまま地面に着地しようとするが、それを見逃すパラティヌモンではない。左手に握る聖剣にエネルギーを流し込み、刀身から黄金の光を伸ばしながら突き出す。
「ッ!!」
「終わりです! 『ロイヤルストレートスラッシュ』!!!」
黄金の光に貫かれ、沈黙するゴクモンを右手に握るパラティヌス・ソードで斬り下ろし、戦いを終えたパラティヌモン。
彼女は考える。“デジクオーツ”という人間界でもなく、デジタルワールドでもない異世界で戦うオメガモンの事を。彼はデジタルワールドでの戦闘が初めてだった。それでも最後までよく戦った。
ならば自分はどうなのか。初めての“デジクオーツ”という異世界で戦いには勝利したが、オメガモンの事を見下せるのか。そんな事は出来はしない。お互いに切磋琢磨しながら力を高めていくべきではないのか。
(どうやら私は良き盟友に巡り会えたみたいですね)
パラティヌモンは思った。自分はオメガモンという盟友を得た事を。お互いに切磋琢磨しながら上を目指せる相手が出来た事に。
いつかオメガモンが自分と同等以上の格と実力を併せ持つ聖騎士となり、剣を交える日が来るまで彼の支えになる事を決意した。
パラティヌモンとゴクモンが激戦を繰り広げているのと同じ頃、オメガモンはアルゴモン(究極体)と戦いを繰り広げていた。
アルゴモン(究極体)が上半身に生えている無数の蔦を触手として伸ばす一方、オメガモンはグレイソードを掲げながら左腕に宿っている力を解き放つ。
「“万象一切灰塵と為せ”! グレイソード!!!」
グレイソードの刀身から太陽の火炎が発せられると共に、“デジクオーツ”内の気温が急上昇し、ムスペルヘイムとなっていく。
目にも止まらぬ迫り来る無数の触手に向けてグレイソードを一閃し、太陽の火炎で焼き払うと共に、右腕のガルルキャノンの照準をアルゴモン(究極体)の足元に合わせた。
同時に青色のエネルギー弾が撃ち込まれる。アルゴモン(究極体)の視界が爆炎と黒煙に覆い包まれる中、バランスを崩したアルゴモン(究極体)が転倒する。
その隙を見逃すオメガモンではない。アルゴモン(究極体)との間合いを詰めようと突進を開始する。その最中、次元をも歪ませてしまう程の威力を持った破壊光線が、爆炎と黒煙を突き破って放たれた。
「『ディストーションライン』!!!」
「フッ!!」
オメガモンはグレイソードを居合抜きのように構え、刀身から発する太陽の火炎を伸ばす。相手の攻撃を消し去りながら、相手を攻撃する魂胆だ。
グレイソードが横薙ぎに一閃されて太陽の火炎が放たれ、『ディストーションライン』を焼き尽くしてアルゴモン(究極体)に迫り来る。
回避しようにも、目にも止まらぬ速度で殺到する灼熱の大波となって襲い掛かっている。左右には逃げられない。下は時間的に無理。残るは上だけ。咄嗟に跳躍して太陽の火炎を回避するが、それがオメガモンの狙いだった。
(そこしか逃げ場はない!)
「グアアアァァァァァァァァッ!!!」
一瞬溜めを作ってからガルルキャノンから青いエネルギー弾を撃ち出す。アルゴモンに向かって直進していく砲撃。突然エネルギー弾が爆裂し、小型エネルギー弾となってあらゆる方向からアルゴモン(究極体)に襲い掛かる。
格闘戦の能力をも増幅させた代償に巨大化したアルゴモン(究極体)に、次々と小型エネルギー弾が直撃していく。アルゴモン(究極体)が苦痛の声を上げる中、口を大きく開いて無数の光線を放つ。
「『テラバイトディザスター』!!!」
「効かないぞ!」
オメガモンはグレイソードを薙ぎ払って『テラバイトディザスター』を四散させ、返す刀で一閃し、太陽の火炎でアルゴモン(究極体)を焼き尽くした。
“デジクオーツ”内での戦闘も慣れて来たのか。或いはパラティヌモンとの戦いを経て少しずつ力を取り戻して来たのか。それはオメガモンにも分からない。でも分かる事がある。戦いを経験する事に強くなっていると言う事だ。
「どうだった? 初めての“デジクオーツ”での戦いは」
「はい。その……正直慣れなかったです」
“電脳現象調査保安局”に戻って来た一真とアルトリウス。アルトリウスは“デジクオーツ”内での戦闘について振り返った。
相手は格下のデジモン。それが強化されていたとは言え、やりにくさもあった。最終的には勝てたが、オメガモンこと一真の苦労が理解出来た。勝って当然の相手。勝たなければならない。その重圧の中で戦っている。
自分は何も知らずにいた。厄災大戦の頃とはまた違う大変さがある。その相手の考えを知らずに、自分の意見を押し付けていたのではないか。アルトリウスは内心で自問自答をすると、一真に自分の思いを話す。
「一真。私は貴方が普段どんな戦いをしているのかが分かりました。私は貴方を見ていて、ランスロット卿やガウェイン卿を重ねていました。それに胸が熱くなりました。貴方とは良き盟友になれそうです」
「良き盟友か……僕も同じ事を考えていたよ。オメガモンになって仲間は出来たけど、友達は出来ていないから。初めての友達だね、よろしく。アルトリウスさん!」
こうして一真とアルトリウスはお互いを認め合う良き盟友となった。彼らはお互いにまだ始まったばかりの聖騎士。最強の聖騎士コンビが誕生し、ここから運命が加速していく。
LAST ALLIANCEです。最新話楽しんでいただけましたか?
パラティヌモンの設定(特にアーサー王部分)は『ドリフターズ』を参考にしました。
僕は好きですよ? 平野先生が大好きなので。
今回からパラティヌモン=アルトリウスがオメガモン=一真の相棒として参戦しました。
何気に相棒ポジがいなかったので、ちょうど良かったです。
次回は第1クール締め括りとして、”寿司処 王竜剣”での話を書きます。
えっ? ネタが分からない? 漫画版『デジモンクロスウォーズ』を読もう!
皆さん、よろしければ感想・評価の方よろしくお願いします。
あたたかい感想とか前向きなコメントや応援メッセージ、高評価を頂くと、作者のやる気が超進化します。
では次回をお楽しみに。LAST ALLIANCEでした!
次回予告
”寿司処 王竜剣”。そこは工藤優衣が店主のお寿司屋さん。
集ったデジモンと人間たちがお寿司を食べながらトークを繰り広げる。
果たして何を話すのか?
第13話 戦士達の交流会