終焉の聖騎士伝説~オメガモンとなった青年の物語~ 作:LAST ALLIANCE
この後数回登場しますが、大ボスはクオーツモンです。
今回からアニメで言う第2クールに突入したので、別の曲を聴きながら作業しています。
最近メインで活動しているサイト様で、小説の書き方なる物を見付けたので、読みながら更に読みやすく、面白くなるように勉強中です。
これが高評価が沢山もらえる等の目に見える形での結果になれば良いですけど(苦笑)
デジタルワールドの何処か。そこにいるのはカオスデュークモン。彼は目の前で佇んでいる1体のデジモンを見て満足そうな顔をしている。
「ついに完成したぞ、対オメガモン用のデジモンが!」
カオスデュークモンが造ったのは対オメガモン用に用意したデジモン。見た目は騎士のような姿をしているが、兜や鎧といった大事な物が存在していない。しかも単眼。外見だけでなく、存在自体も歪に見えてしまう。
それでも全身から放たれるオーラはオメガモンに匹敵するか、同等以上の力を秘めている。何しろ、そうなるように造られたのだから。
「バンチョーレオモンとダークドラモンを用意するのに時間はかかったが、無事に完成した。カオスモンが」
カオスデュークモンが造ったのはカオスモン。カオスモンという名前はデジモンではない。通常のジョグレス進化をする場合、2体のデジモンの『電脳核(デジコア)』が完全に融合し、新たなるデジモンに生まれ変わる。
しかし、中にはジョグレス進化をする前のデジモンの『電脳核(デジコア)』をそれぞれ保持し、非常に不完全な状態となる。限りなく低い確率の話だが。
カオスモンとは“本来であれば存在しない”デジモンのコードネームであり、デジワールドの『中心原理(セントラルドグマ)』では絶対に有り得ない存在でもある。
「本来であれば失敗作なのだが、これは成功作だ。何故ならオメガモン……八神一真のデータを利用したからな。1人の人間を生贄に使って、カオスモンという名前のデジモンを造り上げた。我ながら素晴らしい作品だ」
先述した通り、カオスモンは極めて不安定な存在だ。デジタルワールドの管理システムが放つ『特異(バグ)』を排除するプログラムが流れる為、寿命が短くなってしまう。
それを解消する為、カオスデュークモンは2度に渡るオメガモンとの戦闘で持ち帰ったデータを解析し、人間とデジモンの融合体『電脳人間(エイリアス)』を造り上げようと考えた。それを対オメガモン用のデジモンとする為に。
人間界から拉致した1人の人間。彼にバンチョーレオモンとダークドラモンの『電脳核(デジコア)』を移植し、不安定な存在でありながらも、完全なデジモンとなったカオスモンを造り上げた。
造り上げる時にオメガモン戦で得た戦闘データと経験を埋め込み、戦闘に関してはド素人なのに戦えるようにした。非人道的な行いだが、カオスデュークモンは自分が仕える主に依頼されて仕事をした為、罪悪感を全く抱いていない。
「さぁ “デジクオーツ”に行け、カオスモン! 憎きオメガモンをお前の力で倒してみせろ!」
カオスデュークモンの言葉に頷いたカオスモンはその場から飛び立ち、“デジクオーツ”へと一直線に向かっていく。その理由は只一つ。自らの存在を証明する為に。八神一真ことオメガモンを抹殺する為に。
“デジクオーツ”をパトロールする前、デジモンに関する事件がないかどうかを調査する為、一真とアルトリウスは聞き込みを行っている。
今回訪れたのはとある大衆食堂。名前は『ぽかぽか食堂』と言い、“皆を幸せにする”と謳われる、優しくて温かいおふくろの味で有名なのだが、2人が『ぽかぽか食堂』に入った途端、“デジクオーツ”に入り込んだ。
「いきなり“デジクオーツ”になった……」
「あれは……!」
“デジクオーツ”に入り込んだ一真と、何かに気が付いたアルトリウス。彼らが目にした物は1体のデジモンに脅されながら、料理を作っている『ぽかぽか食堂』の店主だった。
その隣にいるデジモンはメフィスモン。巨大な雄羊の頭をした堕天使型デジモン。彼を倒そうと前に一歩踏み出すアルトリウスに、真剣な表情をした一真が話し掛ける。
「アルトリウスさん、この近くに究極体デジモンの『波動(コード)』を感じた。そっちを調査して来るから後は頼んだ」
「分かりました。ご武運を」
一真がその場から走り去ると、アルトリウスはパラティヌモンに超越進化してゆっくりとメフィスモン達の方に歩み寄る。
突如として近付いて来る巨大な『波動(コード)』。それに気付いたメフィスモンがパラティヌモンの方を見る。
「その人を放してもらいましょうか」
「私が何をした?」
「戯言を。お店の主人を脅しているではありませんか」
「フッ、どうやら話は早いようだな。私はこんな所で死ぬつもりはない!」
メフィスモンが死の祝祭を祈祷する暗黒の呪文―ブラックザバスを唱える一方、『ぽかぽか食堂』の店主がパラティヌモンの方に駆け寄って来た。
安心するように優しく抱き締めると、戦闘に巻き込まないように指で宙に文字を刻み、店主をすっぽりと覆い包むドーム型の結界を張った。
パラティヌモンが刻んだのはルーン文字。ルーン魔術。それは北欧から古くから伝わる魔術の1つ。数々の神話や伝説のデータを保有している為、パラティヌモンはルーン魔術を使う事が出来る。
「お前のような相手に剣を抜く必要はない。魔術で充分だ」
「ほざけ! 『デスクラウド』!!!」
メフィスモンは全てを腐食させる暗黒の雲をパラティヌモンの真上に発生させ、その雲から暗黒の波動を降り注がせる。
真上から降り注ぐ暗黒の波動。つまらなさそうな表情のパラティヌモンは上を見上げ、右手を伸ばして暗黒の波動を受け止めた。正しく言えば、右手の平から聖なる光を発生させた上で受け止めている。
「何!?」
「喰らえ。『ストレートフラッシュ』」
「グアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
パラティヌモンは右手の平を前に突き出し、聖なる光をメフィスモンに向けて放つ。『ストレートフラッシュ』。それはパラティヌモンの相手の攻撃を吸収し、光に変換しながら収束・増幅して跳ね返す攻防一体の得意技。
その攻撃に呑み込まれ、メフィスモンは苦痛の雄叫びを上げながら消滅したと思った次の瞬間、メフィスモンが立っていた場所には巨大なデジモンが姿を現していた。
山の様に大きく、強靭な四肢を持つ魔獣。その下半身には全てを飲み込む程の大きな穴があり、そこはダークエリアの深淵に繋がっていると謳われている。
「ガルフモンか……」
「『デッドスクリーム』!!!」
ガルフモンは下半身にある巨大な口を開き、聞いた物全てを殺す程の悲痛な死者の叫び声を放ち、パラティヌモンを攻撃する。
『デッドスクリーム』を受けてもビクともしないパラティヌモンを見て、ニヤリと不気味な笑みを浮かべながら、ガルフモンは巨大な右腕を振るって攻撃するが、パラティヌモンは右手だけで受け止めた。
(この程度の相手には剣を使う必要はない。せいぜい使っても……ルーン魔術一回だけだ)
「ガハッ!!」
ガルフモンは左腕を振るうが、パラティヌモンは右腕に力を込めて弾いた。そのまま跳躍し、ガルフモンの顔面に右回し蹴りを繰り出す。
反撃しようと両腕から攻撃を繰り出すガルフモン。その攻撃を余裕で躱すと、ガルフモンの両拳は地面にめり込んだ。その状態から引き抜くには若干のタイムラグが必要となる。その隙を逃すパラティヌモンではない。
再び跳躍すると共に、今度はガルフモンの巨大な腕を足場に使って目の前に躍り出て、左ストレートを顔面に叩き込む。
「グハッ!!」
(成る程。巨体だけあって随分とタフだな……それに人間の力を何らかの方法で利用して強化した。厄介だが、この程度はどうという事はない)
ガルフモンは巨体だけあり、理性や知性やスピードを代償に強大な力を得た。それに加え、『ぽかぽか食堂』の店主を利用して力を増した。
人間の欲望を利用したのではない。人間が食べる食事を利用して力を得た。知性が高く、策士家でありながら残虐極まりない性格だが、流石に強化の方法がシンプルでありながら定番過ぎる。そこまで人間界の食事は美味しいのか。アルトリウスには分かるのだが、パラティヌモンには分からない。
繰り出した巨大な左拳を受け止められたガルフモン。押し潰そうと力を込めるが、パラティヌモンはもう片方の腕で左拳を攻撃し、そこから怒涛のラッシュを繰り出していく。
「『ブラックレクイエム』!!!」
「耳障りだ!」
何処からともなく聞こえて来た荘厳な歌声。『ブラックレクイエム』。この歌を聞いたデジモンは程なく死に至り、そのデータは2度と修復する事が出来ないと言われている。
しかし、その歌声を耳障りと一蹴したパラティヌモンは左足から回し蹴りを繰り出し、『ブラックレクイエム』を中断させながらガルフモンを攻撃していく。
『ぽかぽか食堂』の店主はパラティヌモンの強さに圧倒された。純粋に強い。小細工抜きに強い。自分を脅した堕天使より強い。天使のように美しく、魔王のように恐ろしい側面を持つ聖騎士に見惚れてしまった。
「『F(アンザス)』」
「ギャァァァァァァァァァーーーーー!!!!!」
パラティヌモンがルーン文字を宙に刻む、ガルフモンの全身を灼熱の火炎が覆い尽くし、文字通り魔獣を焼き尽くしていく。
彼女の考え通り、物理攻撃でダメージを与えて最後はルーン魔術で充分だった。その後は“デジクオーツ”から出て、『ぽかぽか食堂』の店主を送り届けて任務を完了させた。
「この辺から感じるんだよな……」
パラティヌモンがガルフモンと戦闘を開始したのと同じ頃、一真は究極体デジモンの『波動(コード)』を探っていた。
この地点から究極体デジモンの『波動(コード)』を感じる。一真が注意深く周囲を伺っていると、突然足元に『暗黒物質(ダークマター)』のエネルギー弾が撃ち込まれた。
「ッ!?」
エネルギー弾が地面に着弾した事で発生した黒煙と爆炎。それに呑み込まれ、自分に向けて砲撃が撃ち込まれた事に表情を険しくさせながらも、一真はオメガモンに究極進化を行い、黒煙と爆炎を切り裂いた。
姿を現したオメガモンに向けて再び砲撃が撃ち込まれるが、オメガモンは左手に装備したグレイソードを振るい、砲撃を四散させながら消し去る。
「フフフ……」
「……誰だ?」
オメガモンがエネルギー弾が撃ち込まれた方向に目を向け、注意深く構えを取っている中、周囲一帯に男性の不気味な笑い声が響き渡る。
デジモンのようでいて、人間の男性でもある不思議な声。それに首を傾げながら目の前を睨み続けていると、目の前から単眼の騎士のような姿をし、右手が獅子で、左手が機械竜を象った籠手をしているデジモンが姿を現した。
「我が名はカオスモン。オメガモン……お前を抹殺する為に生まれたデジモンだ」
「私を抹殺する為に生まれた、か……(この『波動(コード)』、間違いない。私のように人間とデジモンを融合させたカオスモン。誰が造ったかは知らないが、命を弄ぶ非道な輩を許す訳には行かない!)」
現れたのはカオスモン。対オメガモン用に造られたデジモン。一目見て、『波動(コード)』を感じ取っただけでオメガモンは分かった。
このデジモンは自分と同じだという事に。自分と同じ人間とデジモンの融合体。人間に『電脳核(デジコア)』を移植した存在だという事に。
オメガモンは一瞬悩んだ。カオスモンは倒せる。だがカオスモンとなった人間を救う事が自分には出来るのか。それでも戦うしかない。何故なら相手は敵。自分を抹殺する為に生まれ、その使命を遂行する為にここにいるのだから。
グレイソードを振るい、刀身から青白い刃のエネルギー波を放つと、カオスモンは右手に仕込まれているBAN-TYOブレイドを装備する。それを振り上げる事で青白い刃のエネルギー波を一刀両断し、消し去った。
(成る程……力は私と同等か。やってくれるな……)
今の攻防でオメガモンには分かった。カオスモンの力は自分と同等以上。とんでもない強敵が出現した事に戦慄を覚えながらも、闘志を昂らせる。
オメガモンの心理状態に構わず、カオスモンは左腕のダークドラアームに装備したギガスティックキャノンを展開し、砲撃を撃ち出す。
「ッ!!(砲撃の威力、反応速度……どれを取っても私と同等か!)」
カオスモンが撃ち出す砲撃を左肩に装備しているブレイブシールドΩで防ぎ、オメガモンはグレイソードの剣先をカオスモンに向けた。
これは自分の敵と認識し、これから戦うという証。それを受けたカオスモンは全く動じない。両手に装備した武器を構える。
「例え逃げたり、抵抗したとしても無駄だ。私はお前の影だからな」
「影だと? どういう事だ」
「光と影。お前という光がある一方で、私と言う影が存在する」
「笑わせるな。お前の名前はカオスモン。混沌という名前を冠しておきながら、自分を影と言い切るのか。思い切りが良過ぎるぞ?」
カオスとは英語で“混沌”という意味がある。それにも関わらず、カオスモンは自分の事を影と言い切った。その意味が分からないながらも、オメガモンはカオスモンの言葉を皮肉交じりに言い返す。
「理由がどうあれ、お前が私の影なのは分かった。影は光でかき消すまで。我が剣と銃を以て、お前を削除する!」
「フフフッ、果たしてそれが出来るかな? ならば見せてもらおうかオメガモン……お前の力を」
お互いに剣先を相手に向けながら宣言した事で、戦う意思を示し合う。オメガモンの闘志が太陽の火炎の如く燃え上がる一方、カオスモンもまた静かに闘志を滾らせる。
大気が焼かれているような匂いがする。それは2体の究極体デジモンの闘志のせめぎ合いによる物だ。雄叫びや裂帛の気合もなく、静かに周囲一帯をお互いの闘志で染め上げていく。ここは今から戦場となる。それを“デジクオーツ”その物に告げているようだ。
お互いに突撃を開始した事で、オメガモンとカオスモンは戦闘を始めた。聖剣が大気を切り裂けば、大剣が雄叫びを上げる。2つの巨大で強大な力が真正面から激突し、せめぎ合いを行う。
「ウオオォォォォォォォォォーーーーーーーーー!!!!」
「ハアァァァァァァァァァァーーーーーーーーー!!!!」
オメガモンとカオスモン。2体の究極体デジモンはお互いに神速のスピードを以て、相手に向かって突進していく。その途中で空高く飛び上がり、同時に大剣を振り下ろす。
グレイソードとBAN-TYOブレイドが空中で激突したその瞬間、辺りに甲高い金属音が鳴り響くと共に、凄まじい衝撃波が撒き散らされていく。その衝撃波が“デジクオーツ”の大地を薙ぎ払う。
一瞬だけ交差し、先程まで先程まで相手が立っていた場所に背を向けながら着地した二体のデジモン。振り返ると同時に腕に装備されている大砲の照準を合わせ、砲身にエネルギーを集束させながら砲撃を撃ち込む。
(やはりか……カオスモンが放った『ダークプロミネンス』は普通ではない)
ガルルキャノンから撃ち込まれた青いエネルギー弾と、ギガスティックキャノンから撃ち出された暗黒エネルギー弾。2体のデジモンの中心で激突し、周囲一帯を呑み込む程の超爆発を引き起こしながら、そのまま広範囲を薙ぎ払う。
黒煙と爆炎が発生し、衝撃波が流れ込んでくる中、オメガモンは改めて確信する。このカオスモンはオリジナルより強く、またイレギュラーである事を。
『ダークプロミネンス』。それはカオスモンの必殺技の1つ。本来であれば、左腕のダークドラアームに装備されたギガスティックキャノンから、自身のデジタル細胞を撃ち出す危険極まりない必殺技なのだが、このカオスモンの場合は違う。
ダークドラモンの必殺技の1つ、『ダークロアー』。ダークマターをエネルギー弾として撃ち出す技の上位互換となっている。
「『ダブルトレント』!!!」
「『エンド・オブ・パラドックス』!!!」
2体のデジモンは次の攻撃を繰り出す為に、一度両手に装備している武器を戻した。オメガモンが右手に絶対零度の冷気を纏い、左手から灼熱の火炎を発する一方、カオスモンは右手から眩い光を放ち、左手から暗黒の闇を発生させる。
オメガモンが右手を地面に叩き付けて絶対零度の冷気を放てば、カオスモンも左手を地面に打ち付けて暗黒の闇を放つ。絶対零度の冷気と暗黒の闇はお互いの中心で激突し、お互いを呑み込まんと言わんばかりにせめぎ合う。
続けてオメガモンは左手を地面に打ち付けて灼熱の火炎を放ち、カオスモンも右手を地面に打ち付けて眩い光を放つ。
激突し合う両者の必殺奥義。結果は引き分け。先程のように超爆発が発生する。黒煙と爆炎が巻き起こり、衝撃波が流れ込んでくると共に周囲一帯を薙ぎ払う。
「うぉおおおおおおっ!!!!」
「ハアァァァァァァァァッ!!!!!」
同時に黒煙と爆炎を切り裂き、相手に向けて突撃していくオメガモンとカオスモン。彼らはお互いに大剣を構えると、同時に振り抜いて剣戟を開始する。
『クロンデジゾイト』の超合金と闘志がぶつかり合い、火花を散らす。そこに相手への憎悪や同情はない。あるのはお互いを絶対に倒すという強い意志と、強者と戦う事への純粋な歓喜の2つだけだ。
十合目の激突の後、オメガモンが動き出す。グレイソードを振るうと見せかけて、突然右足からハイキックを放つ。斬撃だけでなく、体術による攻撃を繰り出し始めた。
「クッ!!」
それに対応出来たカオスモン。咄嗟に身を屈めて右ハイキックを躱すと、BAN-TYOブレイドを左横に薙ぎ払う。
繰り出された左薙の斬撃に対し、オメガモンは左肩を前に突き出した。左肩に装備しているブレイブシールドΩで防ぎ、そのまま突進して聖盾でカオスモンを殴り付ける。
聖盾で顔を殴られ、たたらを踏んで後退するカオスモン。追い打ちをかけるように、オメガモンはグレイソードを振り上げ、右斬り上げを繰り出す。
「ガァッ!!……おのれ!」
右斬り上げで胸部に斬り傷を刻まれたカオスモン。左手で胸部を抑えながら数歩後退するが、その表情は苦痛に耐えている様子が手に取るように分かる。
追撃に出ようと間合いを詰めるオメガモンを牽制するように、カオスモンは左足をオメガモンの胸部に向けて蹴り抜く。
「ムン!!」
咄嗟に立ち止まりながらも、オメガモンは左ミドルキックを左手で受け止める。ウォーグレイモンの頭部を象った籠手で防御したのを見て、カオスモンはオメガモンを一刀両断しようとBAN-TYOブレイドを振り下ろす。
右手となっているメタルガルルモンの頭部を象った籠手で受け止めたのを見て、カオスモンは不気味に笑いながら、至近距離にも関わらず、ギガスティックキャノンの照準をオメガモンに合わせる。
本当の狙いに気が付いたオメガモンの表情が険しくなるが、時既に遅し。オメガモンを嘲笑うように、カオスモンはギガスティックキャノンから暗黒エネルギー弾を撃ち出す。
「『ダークプロミネンス』!!!」
「しまっ……ガアァァァァァァーーーーーーーーー!!!!!」
至近距離で、しかも両腕が塞がっていた。その状態で『ダークプロミネンス』の直撃を喰らい、オメガモンは苦痛の声を上げながら吹き飛ばされる。
地面に叩き付けられ、立ち上がっている最中のオメガモンに追い打ちをかけようと、カオスモンはもう1度ギガスティックキャノンから暗黒エネルギー弾を撃ち込む。
「もう一度喰らえ!」
「フッ!!」
一度喰らった攻撃は二度も効かない。そう言いたげにオメガモンは暗黒エネルギー弾に向けてグレイソードを一閃し、暗黒エネルギー弾を四散させながら消滅させる。
胸部が傷付きながらも、純白の聖鎧にはそこまで傷が付いていない。その状態のオメガモンは立ち上がり、力強く構えを取り直す。
カオスモンはギガスティックキャノンの照準をオメガモンに合わせ、一瞬溜めを作った後、巨大な暗黒エネルギー弾を撃ち出す。
オメガモンに向けて進んでいく途中で、巨大な暗黒エネルギー弾は無数の小さな暗黒エネルギー弾に分裂し、あらゆる方向から襲い掛かる。
「クッ、“万象……」
「させるか!」
オメガモンは無数の小型暗黒エネルギー弾を見てグレイソードを下段に構え、左腕に込められているウォーグレイモンの力を解き放とうとするが、それに気付かないカオスモンではなかった。
何故なら“デジクオーツ”内で収集したオメガモンの戦闘データが埋め込まれた事で、グレイソードに込められている強大な力の事を知っているからだ。
グレイソードの刀身から太陽の火炎を発し、小型暗黒エネルギー弾の全てを消し去るつもりなのだろう。そう考えたカオスモンはギガスティックキャノンの砲口をオメガモンの足元に向け、暗黒エネルギー弾を撃ち込む。
「グワアァァァァァァァァァァーーーーー!!!!!(まさか私の戦闘データまで持っていたのか!?)」
暗黒エネルギー弾が足元に着弾した事で、超爆発が巻き起こると共に爆炎と黒煙が発生する。衝撃波が流れ込む中、オメガモンの動きは無理やり止められ、一瞬の行動を封じられる事となった。
その場に立ち尽くす事しか出来ないオメガモンに向かって小型暗黒エネルギー弾は容赦なく直撃し、周囲一帯に超爆発を引き起こしていく。
全身に小型暗黒エネルギー弾の直撃を次々と喰らい、苦痛の叫び声を周囲に響かせるオメガモン。超爆発で発生した黒煙と爆炎の中に姿を消していった。
当然の話だが、小型暗黒エネルギー弾の一発一発の威力は『ダークプロミネンス』には及ばない。しかし、それが無数かつあらゆる方向から襲い掛かれば、『ダークプロミネンス』に勝るとも及ばない脅威となる。
「クッ……」
「脆すぎる……これがお前の力なのか? 正直期待外れだ……我が混沌の力で息絶え、消え去るが良い。お前が守ろうとしている世界と共に……」
「……!」
黒煙と爆炎が消え去った後、無数の小型暗黒エネルギー弾の直撃を全身に喰らい、純白の聖鎧の至る所が傷付いているオメガモンが姿を現した。
全身にダメージと物凄い衝撃を立て続けに受けた為、項垂れながら片膝を付いている。その状態のオメガモンにゆっくりと歩み寄り、カオスモンはBAN-TYOブレイドを突き付けながら言い放つ。
しかし、カオスモンの言葉がオメガモンという炎に油を注ぐ結果となった。グレイソードを振り上げてBAN-TYOブレイドを跳ね除け、ガルルキャノンから砲撃を撃ち込んだ。
「馬鹿な!? グアアアァァァァァァァァッ!!!!!」
予測出来なかったオメガモンの反撃。胸部に青いエネルギー弾の直撃を喰らい、苦痛の叫び声を上げながらカオスモンは吹き飛ばされる。
立ち上がったオメガモンが力強く構えを取り直す中、カオスモンは立ち上がってBAN-TYOブレイドを構えた。
「ハァアアアアアアアアアアアーーーーー!!!!!」
「ウオオオオオオオオオーーーーー!!!!!」
お互いに武器を構えながら同時に突撃を開始すると、オメガモンとカオスモンは大剣を鋭く降り抜き、先程と同様に剣戟に移行する。
既にエネルギーをそれなりに消費しているが、まだまだ戦闘続行と言わんばかりに大剣を振るう中、カオスモンが突然オメガモンの胸部に向けて右回し蹴りを繰り出して来た。
両者の実力が互角である以上、剣戟では決着を付けられない。それを理解しているからこそ、両者は斬撃以外の攻撃を織り交ぜている。
オメガモンが半歩下がって右回し蹴りを躱すと、カオスモンは素早く間合いを詰めながらBAN-TYOブレイドを突き出して来る。
グレイソードを一閃してBAN-TYOブレイドを弾き、返す刀でオメガモンはカオスモンの胸部に向けて聖剣を薙ぎ払う。
「グァァッ!!」
グレイソードによる右薙によって、胸部に横一文字の斬り傷を刻まれたカオスモン。斬り傷を刻まれて表情を歪めながらも、オメガモンの更なる追撃に備えて後方に飛び退き、一度構えを取り直した。
カオスモンはBAN-TYOを振り上げ、青白い刃の形をしたエネルギー波を放つが、オメガモンはグレイソードを一閃して両断し、そのままの勢いに乗る形でカオスモンとの間合いを詰める。
オメガモンが攻撃を仕掛けるよりも前に、カオスモンはオメガモンに向けて左ハイキックを繰り出す。
素早く身を屈めて躱しながらグレイソードを下段に構え、オメガモンは左斬り上げでカオスモンを上空高く打ち上げる。
「グァッ!?」
「『アルティメットアッパーカット』!!!」
上空高く打ち上げたカオスモンに、オメガモンはガルルキャノンから砲撃を撃ち込む事で追い打ちをかける。
空中で体勢を立て直したカオスモンが、目の前から迫りくる青いエネルギー弾をBAN-TYOブレイドを振り下ろして一刀両断していると、その真上にオメガモンが姿を現し、グレイソードを振り下ろして来る。
「何!?」
「“万象一切灰塵と為せ”」
咄嗟にBAN-TYOブレイドで受け止めるカオスモン。お互いの大剣は砕け散る事なく、身体も吹き飛ぶ事なく、芸術的とも言える均衡を見せた。そのまま鍔迫り合いに移行する。
オメガモンはグレイソードに込められている力を解き放ち、刀身から太陽の火炎を発しながら振り切り、カオスモンを吹き飛ばす。
たまらないと言わんばかりに吹き飛ばされたカオスモンだったが、そこはやはり究極体デジモンだった。地上に危なげなく着地した。膝を付く事もなく、表情を全く変えずにBAN-TYOブレイドを構え直した。
オメガモンも地上に降り立つと共に『聖突』の構えを取り、地面に降り立った時の衝撃を瞬発力に使いながら、カオスモンに向けて突進していく。
「『聖突・壱式』!!!」
突き出されたグレイソードを前方に飛び上がって躱しながら、カオスモンはBAN-TYOブレイドを振り下ろす。
しかし、その直前にオメガモンは突き出した左腕を直ぐに戻し、真上にいるカオスモン目掛けてグレイソードを突き上げる。
「それで避けたつもりか! 『聖突・参式』!!!」
「グハァッ!!」
『聖突・参式』を胸部に喰らったカオスモンは苦痛の声を上げながら、地面に落下すると共に倒れ伏せた。
対空迎撃用の『聖突・参式』。上空にいる相手に向けて跳躍しながら、突き上げを繰り出す型。跳躍で避けられた場合に追撃される時に用いられる。
カオスモンに止めを刺そうとグレイソードを大上段に掲げ、そのまま振り下ろすオメガモン。自分に向けて振り下ろされた聖剣を間一髪で躱し、カオスモンは背後に大きく飛び退いて間合いを空けた。
BAN-TYOブレイドを振り上げて青白い三日月形の剣圧を飛ばすが、オメガモンはグレイソードを振り上げ、青白い三日月形の剣圧を両断しながら消し去る。
それと同時にカオスモンとの間合いを一瞬で詰め、グレイソードを大上段から振り下ろし、相手に構え直すタイミングを与えない素早い唐竹斬りを繰り出す。
「ガァァッ!!!」
「まだまだ!」
胸部に縦一文字の斬り傷を刻まれたカオスモンは数歩後退するが、その隙を見逃すオメガモンではない。直ぐにグレイソードを下段に構え直し、左斬り上げを繰り出してカオスモンに追い打ちをかけ、左足でカオスモンを蹴り飛ばす。
カオスモンが立ち上がるよりも前に、オメガモンはガルルキャノンの照準を合わせながら砲身の内部に青色のエネルギーを集束していく。
そして集束したエネルギーを解放しながら一方向に押し出す事で、青い光の波動砲としてカオスモン目掛けて撃ち出した。
「ガアァァァァァァァァァァーーーーーー!!!!!」
青い光の波動砲は直進し、カオスモンを呑み込んでいく。通常ならばこれでカオスモンを倒す事が出来るだろう。しかし、オメガモンはそこまで考えていない。
今の一撃は決定打にならなかった。その証拠に、全身の至る所にダメージを受けたカオスモンが姿を現した。
「ハハハハハハハ……大したものだな、オメガモン。最後まで諦めずに戦い続けた勇気と闘志。 それでこそ戦う意味がある……今日はここまでだ。また楽しませてもらおう……」
「待て!!」
オメガモンの制止を振り切るように、カオスモンは周囲一帯の風景と同化するように消えて、“デジクオーツ”から去っていった。
それを見守る事しか出来なかったオメガモンは両手に装備した武器を戻し、カオスモンが立っていた場所を見つめながら呟いた。
「カオスモン……奴を造った黒幕と、利用されている人間は一体誰なんだ?」
カオスモンを造ったのは誰か。そして利用されている人間は誰なのか。カオスモンを倒しながら、人間を救わなければならない。
そんな二律違反とも言える使命を果たすのがオメガモン。新たなる敵の出現に心が重くなるのを感じながら、オメガモンはパラティヌモンの所へと戻っていった。
第1章の後半戦が今回からスタートしました。
前半は”デジクオーツ”での事件が中心でしたが、後半は『七大魔王』の話とか色々な事を書いていくので、”デジクオーツ”はあくまで舞台としての扱いになります。
皆さん、よろしければ感想・評価の方よろしくお願いします。
あたたかい感想とか前向きなコメントや応援メッセージ、高評価を頂くと、作者のやる気が超進化します。
では次回をお楽しみに。LAST ALLIANCEでした!
次回予告
カオスモンとの戦いの後、スランプに陥ったオメガモン。
彼を救う為に優衣はとある人物に依頼する。
果たして誰なのか。そして熱き拳はオメガモンに届くのか。
第15話 日本一の喧嘩番長参戦!