終焉の聖騎士伝説~オメガモンとなった青年の物語~ 作:LAST ALLIANCE
今年も残り僅かとなり、投稿出来るのも後2,3回になりそうです。
でも最後までよろしくお願いします。
“デジクオーツ”でのカオスモンとの初戦闘から数日後。一真ことオメガモンの戦いは何処か精彩を欠いた物となっていた。
まるで戦う事に戸惑っているように、相手を倒す事に戸惑っているような動きが多くなり、格下相手に苦戦する事が多くなった。
幸いパラティヌモンという最強の相棒がサポートしているから、今の所はどうにかなっているが、好ましくないとは言えない状況だ。
“電脳現象調査保安局”に戻って来たオメガモンは進化を解除せず、“寿司処 王竜剣”に向かった。お寿司を注文してそれが出されても、手を付けずに一人項垂れている。
(どうしたものかな……答えが出れば良いのだが)
表情を険しくさせる中、オメガモンはふと自虐的な笑みを浮かべている事に気付いた。自分は悩んでいる筈なのにどうして笑っているのか。
今まで何の悩みもなかった自分が転生して悩むようになった。自分は弱くなった。そう思っているだけなのかもしれない。
「お悩みの様ですね……」
「何か悩んでいるわね、オメガモン」
隣の席に座ったのはパラティヌモン。彼女はオメガモンが悩みを抱えている事を見抜いていた。見抜いてはいたが、それが一体何なのかが分からず、少し様子見をしていた。
そしてその悩みが分かり、パラティヌモンも動き出した。彼女だけではない。アルファモンこと工藤優衣も同じだ。
「悩んでいる……か」
「はい。ここ最近の戦いは貴方らしくありません。溜息が多いですし、上の空でいる事も多い。何かに悩んでいるとしか思えません」
「何かあったの? 私達で良ければ話して。皆オメガモンの力になりたいの」
隣で戦いを見て来たパラティヌモンも、“寿司処 王竜剣”を中心に見ている優衣もオメガモンの事を心配している。
それは盟友として、仲間として。或いは一人の女性として。何れにせよ、オメガモンは色々な人から大切に思われている事は事実だ。
2人の仲間、2人の女性を前にしてオメガモンはゆっくり話し始める。最近になって抱えているとある悩みを。本人にとってはつまらない悩みだったとしても、2人にとっては重要な悩みだった。
「成る程……」
「まぁ避けては通れぬ道よね……」
オメガモンの悩みは先日初めて戦ったカオスモンの事だった。自分と同じく、心臓が『電脳核(デジコア)』となっている人間。『電脳人間(エイリアス)』相手は今回が初めてであり、どのように戦えば良いのか正直分からなくなった。
ちなみに、カオスモンの事はパラティヌモンや優衣達は知っている。オメガモンが初めて戦ったその日に話を聞いたからだ。
カオスモンは倒さなければならない相手だが、カオスモンとなった人間は助けなければならない。その二律違反。その矛盾を両立しなければならない。そのプレッシャーと重圧に押し潰されそうになっている。
「どうして悩んでいるんですか? 答えは最初から分かっているのに……」
「今の私ではカオスモンとなった人間を救うどころか、カオスモンを倒せない……そう思ったからだ」
「確かオメガモンの戦闘データや戦い方をインプットしているのよね?」
「あぁ。強さも互角以上だから……参ったよ。今の私では撃退するのに手一杯だから」
完全にネガティブな状態となり、弱音を吐きながら項垂れている。生前からどんな強敵や逆境にも恐れず、勇猛果敢に立ち向かって来たオメガモン。
しかし、同時に八神一真という人間でもある為、繊細で壊れやすい人間の心を得た。自分は一体どうすれば良いのか。数多の死線を潜り抜けたオメガモンでも、答えを出す事が出来ないでいる。
「どうすれば良いのか? 誰も何も教えてくれない。誰か答えを教えてくれ……」
苦悩と焦りがオメガモンの心を苛んでいる。その言葉と様子にパラティヌモンと優衣はお互いに顔を見合わせ、どうすれば良いのかを考える。
叱咤激励すれば良いのか。それでも仮に叱咤激励した所で何になるのか。一真のメンタルをオメガモンが引き摺っている。“デジモン化”が内面的にも進行しているとは言えど、流石に見過ごす事は出来ない。
「オメガモン。私は貴方の思いが分かります。貴方にとって最大の困難かもしれませんが、それで立ち止まる程貴方は弱くないと信じています」
「そういう悩みを抱えているのは自分に力が足りていない事を自覚している証。つまり自信が足りていない事。自信を持って前に進めるよう、自分を信じてみて」
オメガモンを初めて盟友と認めたパラティヌモン。盟友として誰よりも強さを知っているからこそ、彼の強さを最後まで信じ抜く事を決めた。
優衣もその後に続いた。“寿司処 王竜剣”から戦いを見守り、同じ職場の仲間を信じている。お姉様として、そのポジションに君臨しているだけの事はある。
「まぁ頑張るしかないか……」
溜息を付きながら、オメガモンは微笑みを見せた。今の所は悩みが和らいだだけ。根本的な悩みの解決にまでは至っていない。
それに気付かないパラティヌモンと優衣ではなかった。彼女達はオメガモンの為に動き出そうと心に決めた。
かつてとある人間界に“生きる神話”と謳われている喧嘩番長がいた。その拳であらゆる神話や伝説を打ち立てて来たが、その拳で相手と語り合う事で様々な困難を真正面から粉砕し、多くの者達と分かり合って来た。
ブラックデジゾイド製の聖盾を破壊した。『七大魔王』を倒した。イグドラシルを殴り倒した。拳だけで何度も世界を救った救世主。その後も、彼は相棒と共に世界を回り、好きなように大暴れをしている。
彼に送られたのは『BAN-TYO』という称号。5体のデジモンにしか名乗る事を許されなかった伝説の称号。それをデジモン達から送られた。人間であるにも関わらず、喧嘩番長としてあらゆる争いや危機を解決して来た事に対する感謝の表れ。
―――傷付き合う事を恐れるんじゃねぇ。それを恐れたら分かり合う事なんて、出来る筈がねぇ。
―――力は借りたり、与えたりするもんじゃない。力は……合わせるもんだ。
数多くの名言や珍言を残している彼だが、言葉の1つ1つには打ち立てた神話や伝説といった人生の全てが凝縮されている。拳で語り、理解し合ってきた喧嘩番長、もとい漢の名前は大門大と言う。
“寿司処 王竜剣”での会話から数日後。大門大のいるデジタルワールドに降り立った優衣は、とある人物とデジモンと会っていた。
年齢が二十代ぐらいで赤いシャツを着た精悍な顔をした男性―大門大。それに並ぶようにいるのは、両手に赤い紐のようなものを付けた黄色いトカゲの姿をしたアグモン。
「久し振り~大君、アグモン君!」
「優衣姉さんも久し振りだぜ!」
「優衣~!」
久し振りの再会なのだろうか。お互いに再会を喜び合い、ハイタッチを交わす。優衣は異世界に行っては自分が握ったお寿司を配達している。
大門大&アグモンも常連客であり、毎回沢山注文して来る。その分の食費は別の所から落ちているが、そこから先は言わぬが花だろう。
「はい、これ。今月分のお寿司よ」
「おお~ありがとうな! いつ見ても、いつ食べても優衣姉さんの握るお寿司は天下一品だぜ!」
「兄貴、俺の分の大トロ、残してくれよ!?」
「もちろんだぜ!」
優衣は異世界へのお寿司を配達しているが、そのメインは情報収集。お寿司を売り回り、ネタとなるお魚を仕入れながら色んな世界を回っている。
その関係で異世界の友人が一番多く、彼らとは戦いを通じて分かり合って来た。大門大&アグモンも例外ではない。
「ねぇ、大君とアグモン君。いきなりで大変悪いけど、2人にしか頼めないお願いがあるの。頼んでも良いかな?」
「俺達にしか頼めないお願い?」
「聞いてみようぜ、兄貴」
「あぁ、先ず聞いてみる。それから考えるぜ」
優衣には普段から美味しいお寿司を食べさせてもらっているのか、大とアグモンは割とあっさりと了承してくれた。
とは言えど、先ず話を聞いてから自分達がやるかどうかを考える。以前はあっさり引き受けていたが、経験を積んできた事で落ち着いて来たのだろうか。
「実はこの前から来ているオメガモンなんだけど……」
優衣は一真ことオメガモンの事を大とアグモンに話した。カオスモンとの戦い以降、戦う事に対して迷いを抱え込んだのか、どうも調子を崩しているみたいだ。
自分達でどうにかするのが一番なのだが、こういう時には大とアグモンが適任。そう考えた上で、優衣は大とアグモンに依頼した。
「……分かった。要はオメガモンの悩みを吹き飛ばせば良いんだろ? 久し振りに強ぇ相手と喧嘩出来るぜ!」
「もちろん無料とは言わないわ。報酬も用意するわ。“王竜剣”での夕食費を無料にするってのはどう?」
「兄貴、これは受けようぜ!」
「あぁ! 人助けにもなるし、美味しいお寿司を食べれるし、一石二鳥だぜ!」
「決まりね。頼んだわよ」
報酬はその日の“寿司処 王竜剣”での無料の食べ放題。大とアグモンは二つ返事で了承し、優衣は満足気にニコリと微笑んだ。
彼らは具体的な場所と日時を決める。数日後の“デジクオーツ”。そこでオメガモンの悩みを聞いて答えた上で、拳で分かり合う。結局は平常運転だった。
それから数日後。“デジクオーツ”に来たオメガモンとパラティヌモン。彼らは事前に優衣からここに来るように言われていた。
何故自分達が呼び出されたのか。そもそもどうして自分達なのか。全く分からず、困った顔をしていると、そこに優衣が現れた。
「約束した通り来たわね」
「優衣殿。これは一体?」
「何故私まで呼ばれたのですか?」
「オメガモン。これから貴方の悩みを解決してくれる兄貴が来るわ。パラティヌモンは初対面になるから、失礼のないように」
自分の悩みを解決してくれる人物が来てくれる。それはオメガモンにとってとてもありがたい事なのだが、引っ掛かる所があった。“兄貴”という言葉。その言葉から導き出される答えは1つ。あの偉大なる喧嘩番長が来たと言う事だ。
緊張するオメガモンと、言葉の意味が分からずキョトンとしているパラティヌモンの目の前に、大門大とアグモンが姿を現した。
「大門大……兄貴!?」
「よぉ、オメガモン! 俺は大門大。日本一の喧嘩番長だ!」
「俺は兄貴の一の子分、アグモンだ!」
威勢よく名乗りを上げる大とアグモン。これがもし一真だったら大興奮のあまり泣きだし、サインを求めたり、写真を撮る等暴走していただろう。
しかし、オメガモンは違う。冷静を装っているが、内心では感激している。尊敬している英雄の1人に会う事が出来たからだ。
「オメガモン、この方はどちら様ですか?」
「パラティヌモン、聞いて驚くな。大殿は拳1つで数々の神話を打ち立てた喧嘩番長。究極体デジモンだけでなく、『七大魔王』に『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』、そしてイグドラシルを殴り倒した最強の喧嘩番長だ」
「はい!?」
オメガモンから告げられた事実。それは大門大の武勇伝。ただの人間が拳1つでここまでの神話を打ち立てられるのか。そう思いながらパラティヌモンは大とアグモンを見る。
大とアグモンはニコリと笑っている。どうやら本当の事らしい。パラティヌモンは呆然となるしかなかった。
「人間ですよね……?」
「失礼だな。何処からどう見ても俺は人間だぞ?」
「嘘です! 人間ではありません! 人間の皮を被ったデジモンです! 貴方は大門大ではありません! マサルダイモンです!」
「おいおい! 確かにそう言われる事は多いけど、よりによって真正面から言われると何か凹むぜ……」
パラティヌモンから人間ではなく、デジモン扱いされた大門大。本人はまんざらでもなさそうな様子だが、気持ちは分からなくもない。
『七大魔王』に『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』、イグドラシルを殴り倒す人間は普通なら有り得ない。目の前にいる例外中の例外、大門大を除いて。
「そう言えば自己紹介がまだだったな。オメガモンだ。よろしく」
「パラティヌモンです」
「おぅ、話は優衣姉さんから聞いているぜ」
大は優衣から全てを聞いていた。八神一真、もといオメガモンの事を。彼がデジモンになった経緯、これまでの戦いといった全てを。そしてカオスモンとの戦いを通じた今、超えなくて前に進めない壁に塞がれている事を。
ちなみにパラティヌモンの事も聞いている。厄災大戦を終わらせる為に造られた事や、正体がアーサー王である事。イグドラシルによって封印され、ホメオスタシスによって封印を解除された事も。
しかし、今回はオメガモンの悩みを解決する事が中心となっている。大とオメガモンが適当な所に腰掛けると、大はオメガモンに話し掛ける。
「オメガモン……俺はお前の悩みを聞いて殴り飛ばすつもりはねぇ。むしろ悩みを聞いて良かったと思ったぜ。“主君思いなんだな”と、“良いデジモンなんだな”と思えた」
「あぁ、兄貴が漢の中の漢なら、オメガモンは聖騎士の中の聖騎士だぜ!」
「ッ……!」
大の言葉を聞いたオメガモンは驚くと共に耳を疑き、大の顔を見る。大に幻滅されると思ったからだ。如何に聖騎士と言えども、実際の所はデジモンに変わりない。
しかし、大は幻滅しなかった。オメガモンの悩みは当たり前の物だったから。もっと難しい感じの悩みならまだしも、大やアグモンも共感できる内容だった。
「“デジモン化”の事も全部優衣姉さんから聞いた。オメガモン……お前は一真を戦わせたくないんだろ?」
「ッ!」
「図星のようだぜ、兄貴。思っていた通りだ」
喧嘩番長だけあって、喧嘩の事しか考えていないように見える大。勉強は正直出来ない方だが、決して馬鹿ではない。何しろデジモン研究の第一人者である超生物学者の大門英の息子だけあり、戦闘では時折鋭い勘を見せて危機を脱していた。
それに非常に家族・仲間想いで人情深い一面がある。アグモンが“兄貴”と呼んで慕っているのにも理由がある。
「本当は一真がお前になる事を望んでいなかったんだろう? 一真と一緒にいる内に、性格が自分にそっくりな事に気付いたから……」
オメガモンは一真を戦いに巻き込みたくなかった。一般人という事もそうだが、性格が似ているからこそ、余計に責任を感じてしまう。
本心を言い当てられた事に驚きながらも、俯いて静かに話を聞くオメガモン。それを優衣とパラティヌモンは静かに見守る。
「前世で秘奥義をクラッキング……だっけか? されたのに一真の力でまた使えるようになった。一真が新しい力をくれた。でもお前は成長していく自分の力を抑えようとしている。何故か?……一真を戦いから遠ざけて、傷付いて苦しませないように。“デジモン化”でいずれ殺す事になるから……違うか」
「……そうだ。全部当たりだ」
「けどよ、そんなんじゃお前は何時まで経っても前に進めねぇ」
大はオメガモンの心を理解しながらも、その上でバッサリ切り捨てた。ここが本番。ここからが大門大の真骨頂。
それを理解しているオメガモンと優衣は真剣な表情となり、パラティヌモンも静かに見守る。その顔はアーサー王その物だった。
「俺にはお前の悩みが分からねぇ。でも悩んでいる理由は分かる。きっと父さんも同じ悩みを持っていたと思う」
大門大の父親、大門英。誰よりもデジタルワールドを愛した男。とある事情でデジタルワールドを旅している途中、数々の伝説を打ち立てた。この親にして子供あり。
旅の途中でバンチョーレオモンと拳で語り合い、意気投合した事でパートナーになり、数年後にイグドラシルと対面したが、この時期に倉田明宏によるデジモン虐殺事件が発生してしまった。
それから倉田による横暴によってイグドラシルに処刑されるが、バンチョーレオモンの策略で自分の命をバンチョーレオモンに託し、パートナーと一心同体となって行動していた。それを知っている為、大はオメガモンの悩みに理解を示していた。
「でも、父さんは俺に色んな事を教えてくれた。バーストモードの事も、力の事も……それはやっぱり、父さんはバンチョーレオモンの事を認めていたからだと今になって思うぜ。オメガモン。お前は一真の事を信じているよな? 一真が新しい力を教えてくれるのに、お前はそれを嫌がるのか?」
「それは……」
「本当に一真の事を気遣うなら一真を信じろ。パートナーとデジモン。信じ合う事で力を合わせ、それが物凄ぇ力を生むんじゃねぇのか?」
これまでの戦い、これまでの喧嘩の中で培った大の考え方。物凄く説得力があり、オメガモンでなくても納得せざるを得ない。
オメガモンは一真を傷付けたくないあまり、自分一人で無理をしていた。それがカオスモンとの戦いで一気に表面化されただけの話だ。
―――オメガモン。僕の事は気にしないで、好きなようにしてくれ。
「だが君を巻き込むわけには行かない!」
―――何言っているんだ? 僕は本当ならあの時死んでいる筈だった。でもオメガモン、君に助けられて今こうして生きていられる。僕の命はオメガモンから貰ったも同然。だから僕はオメガモンの為に全てを捧げる。
一真の戦う理由はかなり歪な物であり、それは本人も自覚している。“デジモンの襲撃に遭い、デジモンとなった”自分は戦わなければならないという使命感。しかし、人間を、デジモンを誰よりも愛しているからこそ、一真はオメガモンとして戦っている。
デジモンの中で小さい頃から憧れて来たオメガモン。彼の背中を追いかけて聖騎士を目指し、世界を守る為に戦うその生き方は、“オメガモンになろうとしている人間”その物だった。彼はデジモンの襲撃によって人生を狂わされた被害者でもある。
だからこそ、自分のような人が二度と生まれないように戦っている。それにも関わらず、カオスモンという被害者が生まれた。しかも対オメガモン用に造られたデジモンとして。それが一真に耐え切れず、その思いにオメガモンが同調してしまった。
―――オメガモン。僕達は人間を、デジモンを、世界を守る為に戦っている。僕達がすべき事は何だ? 前に進みながら戦い続ける事だ。何を迷う事がある? カオスモンを、カオスモンになった人を救おうよ。
「分かっている……だが!」
―――僕も一緒に戦う。君だけを戦わせはしない。僕がそばにいる。僕が付いているから、使ってくれよ僕の力を。“デジモン化”を阻止したいんだろ? 僕を殺したくないんだろ?だったら僕の力を使ってくれ。君の力と合わせれば、大抵の敵はどうにかなるんだから。
オメガモンの事を信頼している為、オメガモンの姿になった後は一真の意識は眠ったままだった。しかし、今回は例外だ。オメガモンを叱咤激励する為に、より信頼を強固な物にする為、普段の鬱憤を晴らすようにかなり喋る。
主君とも言える人物からの叱咤激励を受け、立ち止まるオメガモンではない。涙を流しながら感謝を示し、もう1度戦おうと決意を新たにする。
「一真……ありがとう。やっと迷いを断ち切る事が出来た」
―――礼を言うのは僕の方だよ。ありがとう、オメガモン。
大門大と一真の叱咤激励を受け、立ち直れたオメガモン。前に進もうと心に決めれば、誰だって前に進む事が出来る。
これから挑むのは一つの戦いであり、一つの決闘でもある。相手は大門大&アグモン。日本一の喧嘩番長。
「そんじゃあ、やるか」
「あぁ、始めよう」
大門大とアグモンは立ち上がり、オメガモンと向き合う。これはオメガモンが悩みと言う名の試練を乗り越えたかどうかを試すテスト。
オメガモンは聖騎士としてではなく、1体のデジモンとして戦いに挑む。その目は真剣その物。相手は今まで戦って来た中でもトップクラスに強い。気を抜けば負ける事が目に見えているから、必死になるしかない。
先に動いたのは大とアグモン。彼らは拳を振り上げながら飛び掛かって来た。その行動の意図を見抜き、オメガモンは両手を構える。
『ウオォォォォォォォッ!!!!!』
「クッ!!(何という一撃! これが最強の喧嘩番長とその相棒の力の一端なのか!?)」
大の右拳が凄まじい衝撃と共に放たれた。それをウォーグレイモンの頭部を象った左手で受け止めるが、オメガモンの表情は険しく、同時に苦しそうに見えた。
ただの拳の一撃だが、実際には究極体デジモンを一撃で戦闘不能に追いやる程の威力と重さを兼ね揃えている。続けてアグモンの拳をメタルガルルモンの頭部を象った右手で受け止めるが、こちらも成長期デジモンの範疇を超えた凄まじい一撃だった。
防御したものの、それでも衝撃で後退してしまう程の威力と重さだった。それにオメガモンが驚いていると、大とアグモンは殴られた衝撃から立ち直っている最中のオメガモンに追撃するように、左拳を叩き込む。
『ハアァァァァァァァァァッ!!!!』
「ッ!!」
大とアグモンの拳を左肩のブレイブシールドΩで防いだオメガモンは、そのまま聖盾で殴りかかるが、その直前に大とアグモンが後方に飛び退いて地面に着地した。
オメガモンが構えを取り直している間に、大はシャツのポケットからオレンジ色と黒色の細長い形をした小さな機械―デジヴァイスバーストを取り出すと、アグモンに向ける。
「行くぞ、アグモン!!!」
「応! 兄貴!!!」
アグモンが力強い言葉で答えると、大はオメガモンを殴った時からオレンジ色の輝きを発する右手を機械の上部分に押し当てる。
それと同時に、デジヴァイスバーストの液晶部分に“ULTIMATE EVOLUTION”の文字が浮かび上がった。大はその状態のデジヴァイスバーストをアグモンに向け、オレンジ色の光を放つ。
「デジソウルチャージ!!! オーバードライブ!!!」
「アグモン進化ァァァァーーーーーーー!!!」
デジヴァイスバーストから放たれたデジソウルを全身に浴びたアグモンが叫ぶと、その体はデータ粒子へと一時変換され、巨大化を始める。
現れたのはシャイングレイモン。背中に赤い十二枚の機械のような翼があり、胴体に赤い鎧を身に纏い、その中心には青い宝玉が付けられている。両腕には黄色い籠手を付け、巨大な尻尾の先に刃のような形をした光輪を付けた光竜型デジモン。
「シャイングレイモン!!!」
(来たか……シャイングレイモン!)
オメガモンが左手にグレイソードを装備して構えを取る一方、大はシャイングレイモンの肩に飛び乗り、シャイングレイモンは両拳を握り締めながら構えを取る。大も戦う構えを取っている。
対するオメガモンは『聖突』の構えを取った。お互いにゆっくりと間合いを取りながら、攻撃のタイミングを計り始める。
「ウオオォォォォォーーーー!!!!!」
優衣とパラティヌモンが見守る中、オメガモンとシャイングレイモン&大のバトルが始まった。先に仕掛けたのはシャイングレイモン&大。
シャイングレイモンは背中の翼を広げながら突進を開始して来た。その突進の勢いを乗せつつ、オメガモンに向けて右拳を放つ。
オメガモンは僅かに身体を動かして躱し、グレイソードをシャイングレイモンに向けて突き出そうとするが、そうはさせないと言わんばかりに、シャイングレイモンの肩に乗っていた大がオメガモンに飛び掛かる。
「そうはさせねぇ!」
「ッ!」
大が飛び掛かって来たのはオメガモンを攻撃するだけでなく、シャイングレイモンを攻撃しようとする事を牽制する為。その意図に気付いたオメガモンは表情を険しくさせながら、シャイングレイモンとの間合いを空けようとする。
しかし、今度はシャイングレイモンが身体を回転させながら尻尾を振り抜いて来た。目にも止まらぬ速度で迫り来るのは、先端に刃のような形をした光輪が付いた巨大な尻尾。
グレイソードを振るってその一撃を弾き、その勢いを以てガルルキャノンの照準を合わせて砲撃を撃ち込もうとするが、その直前に前方から強大なエネルギーの集束反応に気が付いた。
目の前にいるのはシャイングレイモン。地面にしっかりと両足を付け、背中の翼を大きく広げながら胸元に凄まじいエネルギーを集中させている。その構えは必殺技の構えだと知っているオメガモンは、ガルルキャノンの照準をシャイングレイモンに合わせる。
「グロリアスバーーースト!!!」
シャイングレイモンは極限にまで集めたエネルギーを球状に圧縮・凝縮させた上でオメガモンに向けて放つ一方、オメガモンもガルルキャノンから青いエネルギー弾を撃ち込む。
2つの攻撃は両者の中心でぶつかり合うと、周囲一帯を呑み込む程の超爆発を引き起こしていく。巻き起こる黒煙と爆炎がオメガモン達を包み込み、拡散する衝撃波が優衣とパラティヌモンに襲い掛かるが、彼女達は平然としながら目の前の戦いを見守る。
暫く流れる静寂を切り裂いたのはオメガモン。『聖突』の構えを取りながら黒煙と爆炎を突き破り、シャイングレイモン目掛けてグレイソードを突き出す。
「『聖突・壱式』!!!」
「ハアァァァァァッ!!!」
シャイングレイモンは『聖突・壱式』を横に躱して左腕を振り下ろそうとするが、オメガモンはその直前にグレイソードを薙ぎ払う。
『聖突』は例え相手が横に躱して反撃しようとしても、横薙ぎの斬撃に移行出来る。その強みがある為、オメガモンは『聖突』を多用している。
『聖突』の派生攻撃に気が付いたシャイングレイモンは直ぐに攻撃を中断し、左腕に付けている籠手で防御しつつ、右拳による一撃を放つ。
メタルガルルモンの頭部を象った籠手となっている右手で受け止めながら、オメガモンは左手にエネルギーを込める。ウォーグレイモンの頭部を象った籠手の目の部分が光を放ち、グレイソードの刀身から太陽の火炎が発せられる。
「……ハァッ!!」
「クッ!!」
オメガモンはグレイソードを横薙ぎに降り抜き、多少強引な形ではあったが、シャイングレイモンを弾き飛ばす。
空中で危なげなく体勢を立て直し、地面に着地したシャイングレイモンが大に呼び掛けると、大はデジヴァイスバーストを懐から取り出し、横に付いているセンサー部分に右手を当てる。
「兄貴!!」
「応、任せろ!」
長い間共に戦い続けた事で、大とシャイングレイモンは阿吽の呼吸でお互いの考えを読み合う事が出来るようになった。
シャイングレイモンは右腕を地面に叩き付けると、そのまま地面の中に右手を入れて“何か”を掴み取り、大地から引き摺り出した。
「ウオオォォォォーーーー!!!! ジオグレイソーーード!!!!!」
シャイングレイモンが雄叫びを上げながら地面から引き摺り出した武器。それはジオグレイソード。中心に柄が存在して、その両端から刃が左右に伸びている双刃の大剣。大地の力が込められた金色のダブルセイバー。
自分の武器を召喚し終えたシャイングレイモンは、ジオグレイソードの剣先をオメガモンに向けると、オメガモンは弓を引き絞るような参の型の構えを取り、お互いに相手に向けて全速力で飛び掛かる。
「ウオオオオォォォォォォーーーーーーーー!!!!」
シャイングレイモンがジオグレイソードで何度も斬り掛かるが、オメガモンはその連続斬撃を悉く弾いていく。グレイソードの最小限の操作だけで。
攻撃が通用しないどころか、見切られている。どんなに強力な攻撃でも、相手に当たらなければ意味は無い。
とは言えど、シャイングレイモンは『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』の一員との戦闘経験はある。相手はデュークモンとクレニアムモン。しかし、今戦っているオメガモンは彼らよりも強い。大とシャイングレイモンはそう感じている。
「これが本来のオメガモンの力……?」
「えぇ。貴女も知っているバグラモンとタクティモン。あの2人が全力を出しても倒せなかった程の強さがあった。秘奥義をクラッキングされてようやく倒す事が出来た程……多分本来の強さなら貴女と互角以上に渡り合えるんじゃないかしら?」
「そこまで強かったのですか……」
本来であれば、パラティヌモン級の強さを誇るオメガモンだったが、秘奥義が失われたまま転生した事、全力を出さなくても勝てる相手との戦いが中心な事等から、真の実力を発揮する機会に恵まれなかった。
しかし、アルファモンやパラティヌモンにタクティモン、自分と同等以上の敵―カオスモンとの戦いを通じ、次第に実力を発揮する機会が増えて来た。そして今回の大&シャイングレイモン戦でかつての感覚を取り戻しつつある。
パラティヌモンはバグラモンとタクティモンと会った事があり、タクティモンと剣を交えてお互いを認め合う仲となっている。その一目置いているタクティモンですら勝てなかった全盛期に、少しずつ立ち戻ってきている。
(優衣の言った通りだ! これが一真の、オメガモンの真の力なのか!?)
「『聖突』!!!」
「ガァッ!!」
「シャイングレイモン!!」
今度は伍の型に移行し、オメガモンはジオグレイソードを弾く程の力強い連続斬撃を繰り出しながら、シャイングレイモンを押し込んでいく。
オメガモンの圧倒的なまでの強さにシャイングレイモンが驚いている一瞬の隙を突き、オメガモンはシャイングレイモンの胴体目掛けて『聖突』を繰り出す。
『聖突』を咄嗟にジオグレイソードで受け止めたシャイングレイモンだったが、その威力と衝撃に耐え切れず、吹き飛ばされて地面に倒れ込んだ。大が助けに入ろうと駆け出すが、オメガモンはガルルキャノンの砲口を向けて大を牽制する。
「『シャイニングブラスト』!!!」
「フッ!!」
兄貴たる大の危機に何もしないシャイングレイモンではない。慌てて立ち上がり、背中の赤い十二枚の翼を光り輝かせながら突進を開始した。
シャイングレイモンが立ち上がった事に気付いたオメガモンがグレイソードを構え直していると、シャイングレイモンの光り輝く翼が襲い掛かって来る。
オメガモンがそれをグレイソードで受け止めると、今度はシャイングレイモンがジオグレイソードを突き下ろす。その突き下ろしを右手たるメタルガルルモンの頭部を象った籠手で受け止めた。
「兄貴! 今だ!」
「応、任せろ!」
しかし、これでオメガモンの両腕を封じた事になる。シャイングレイモンの声に答えた大はオメガモンに向けて駆け出し、跳躍しながら飛び掛かった。
大の右拳がオメガモンの胸部目掛けて叩き込まれ、直撃する形となった。目の動きだけでしか表情が分からない顔が歪む。
「オラアァァァァァァァァァッ!!!!!」
「グァァァッ!!!!」
子分・舎弟・相棒。様々な言い方はあるが、シャイングレイモンが作ってくれたチャンスを無意味にする大ではない。このチャンスを活かし、更に左拳を叩き込んでオメガモンを吹き飛ばした。
その様子に優衣は苦笑いを浮かべ、パラティヌモンは呆然となる。ただの人間がデジモンを、しかもオメガモンを殴り飛ばした。その事実がパラティヌモンには信じられず、オメガモンの話が事実だと改めて告げる結果となった。
(これが大門大の実力……神をも殴り倒したのは本当だったみたいですね)
「シャイングレイモン!! 行くぞ!!」
「あぁっ! 頼むぜ、兄貴!」
大が左手に構えるデジヴァイスバーストの液晶画面。そこには“ULTIMATE EVOLUTION”という文字が映し出されていたが、今は“BURST EVOLUTION”という文字へと変化した。
それと同時にデジヴァイスバーストの左側のセンサーに、大はゆっくりと右手を滑らせながら大声で叫ぶ。
「チャージ!!! デジソウル……バーースト!!!!」
その瞬間、大のデジヴァイスバーストから凄まじい量のデジソウルが溢れ出し、シャイングレイモンに降り注いでいく。
デジソウルの中でシャイングレイモンの姿が変化していく。全身が赤色と白色に染まっていくと共に、背中の機械的な翼は凄まじい炎が吹き上がる火炎の翼へと変わる。
同時にシャイングレイモンの頭上に太陽を思わせる火炎球が出現すると、シャイングレイモンは右手で炎で出来た剣を、左手で円形の炎の盾を引き抜いた。
「シャイングレイモン!!! バーストモーード!!!」
(来たか……バーストモード!)
「あれは……一体!?」
「バーストモード……究極を超えた力よ」
一目見ただけで分かる強大な力。それを全身から放つシャイングレイモン・バーストモード。それを目にしたオメガモンは獰猛な笑みを浮かべ、初見のパラティヌモンは驚く。
共通しているのは一時的に自身の限界を突破しており、何かしらのエネルギーをオーラとして纏っていると言う事。厳しい経験から得られるその姿を維持出来る時間は僅かだが、爆発的な力を操ることができる。
ありとあらゆるデジモンに当てはまる共通の進化であり、デジモンの新たな可能性とも言える。これが大とアグモンが手にした究極を超える力。バーストモード。
「“万象一切灰塵と為せ”!」
オメガモンの闘志に応じるように、グレイソードが軋みを上げながら灼熱の火炎が噴き出していると、抜刀する動きと共に刀身から太陽の火炎から発せられた。
同時に“デジクオーツ”が“ムスペルヘイム”に書き換えられ、周囲一帯が太陽の火炎に覆い包まれていく。
「バーストモードは人間とデジモンの絆によってもたらされた究極の力。ならば、私は人間と一体化した事でもたらされた超越の力で迎え撃つ!」
「行くぜオメガモン!」
「こっからが本当の漢の喧嘩だ!」
大を肩に乗せたシャイングレイモン・バーストモードと、オメガモンは同時に突撃を開始し、お互いの武器を同時に振るう。究極を超えたデジモンと超究極体デジモン。その決闘、もとい一騎打ちが今ここに始まった。
「ハアァァァァァァァッ!!!」
「『怒涛たる勝利の聖剣(グレイソード)』!!!」
シャイングレイモン・バーストモードは瞬時にオメガモンとの間合いを詰め、火炎で出来た大剣を振り下ろす。
唐竹斬りをグレイソードで受け止めながら刀身から灼熱の波濤を生み出し、グレイソードを振るってシャイングレイモン・バーストモードを弾き飛ばす。
尽かさずガルルキャノンの照準を合わせ、右腕に宿っている絶対零度の冷気を圧縮させ、砲弾形に凝縮させた冷気弾を撃ち込む。
しかし、太陽級の高エネルギー火炎オーラを纏ったシャイングレイモン・バーストモードには通用しなかったようだ。左手の火炎盾で防がれただけでなく、一瞬で溶かされた。
(どうやら解放状態じゃないと駄目みたいだな……だがバーストモードは短期決戦用。決して長続きしない。一気に決着を付ける!)
「オラアァァァァァァァーーーーーーー!!!」
オメガモンが考え事をしていると、シャイングレイモン・バーストモードの肩から大が飛び掛かり、オメガモンに殴りかかりに来た。
グレイソードを振るって目の前に灼熱の炎壁を展開し、大が接近できないようにしながら『聖突』の構えを取り、オメガモンは飛び上がる。
「『聖突・弐式』!!!」
上空から放たれる刺突、もとい突き下ろし。“正真正銘の牙突”を灼熱の火炎剣を振るって弾き、返す刀で突き上げた。
上半身を捻って躱すオメガモンに、大の追撃が入る。先程は灼熱の炎壁で接近出来なかったが、今度はオメガモンの間合いまで接近し、飛び上がって殴りかかる。
シャイングレイモン・バーストモードは灼熱の火炎剣を横薙ぎに振るい、大の右拳をブレイブシールドΩで防御するオメガモンに斬りかかる。
完全に注意を大の方に向けられたオメガモンは胸部を灼熱の火炎剣で焼き払われ、吹き飛ばされていくが、吹き飛ばされている途中で体勢を立て直し、危なげなく着地する。
「『トリッドヴァイス』!!!」
シャイングレイモン・バーストモードが火炎弾を連射すれば、オメガモンはグレイソードを一閃して灼熱の波濤で消し去る。
その間に距離を詰めたシャイングレイモン・バーストモードが灼熱の火炎剣を突き出すのに対し、オメガモンはグレイソードを振り上げて刺突を弾き、返す刀で聖剣を振り下ろすが、シャイングレイモン・バーストモードは左手の灼熱の火炎盾で防ごうとする。
しかし、それを予測していないオメガモンではなかった。左手に力を込めて太陽の火炎を伸ばし、灼熱の刃として防御の上から直撃させた。
「グアアァァッ!!!!」
「オオォォォォォォォォーーーーーー!!!!」
太陽の火炎で焼き払われた相棒の危機を見逃す喧嘩番長ではない。大はもう1度オメガモンに接近してから跳躍し、右拳を叩き込もうとするが、それに気付いたオメガモンはその場所から離れる。
大の拳による一撃は当たれば強烈だ。しかし、当たらなければどうという事はない。それに加え、大は単独での飛行は出来ない。攻撃してからまた攻撃するまでのタイムラグがどうしても発生してしまう。それを突かれた形となった。
後退して構えを取り直すシャイングレイモン・バーストモード。オメガモンはグレイソードを下段に構えて一瞬で間合いを詰め、グレイソードで斬り掛かろうとするが、先手を打つようにシャイングレイモン・バーストモードが灼熱の火炎剣を突き出す。
その一撃をグレイソードの一閃で弾きながら間合いを詰めると、オメガモンはグレイソードを振るい、灼熱の波濤でシャイングレイモン・バーストモードを焼き払う。
「グアアァァァァァァァァァァァァーーーー!!!!!」
灼熱の剣閃。それを受けたシャイングレイモン・バーストモードは地面に倒れ込み、アグモンに退化した。
しかし、まだ戦いは終わっていない。大門大が残っているのだから。刀身から発している太陽の火炎を内部に凝縮させ、大門大との喧嘩に応じようと構える。
大がオメガモンに向けて駆け出し、その勢いのまま高く跳躍して全力で殴り掛かるのに対し、オメガモンもグレイソードを横薙ぎに一閃する。
「ウオォォォォォォッ!!!!!」
大は全力を込めた右拳を繰り出した。その一撃には必ず相手を殴り飛ばすと言う強い意志が込められている。今までどんな相手を殴り飛ばして来た拳を、オメガモンはグレイソードを以て迎え撃つ。
やがて眩い光が満ち溢れ、周囲一帯を呑み込む程の超爆発を引き起こした。爆炎と黒煙が次第に和らぎ、消え去った後には片膝を付いたオメガモンと、地面に大の字になって倒れ伏せている大がいた。
この決闘、もとい喧嘩はオメガモンの辛勝に終わった。にも関わらず、大は満足気な笑顔で立ち上がり、アグモンの状態を確認してからオメガモンの所に歩み寄る。
「悩みは吹っ切れたか?」
「あぁ、おかげ様で。ありがとう……大殿、アグモン」
「俺は優衣姉さんの頼みを受けただけだ。何もしてねぇよ」
「また拳を交えようぜ!」
「フッ。その時までに強くなるよ」
オメガモンは大とアグモンと拳を合わせ、再戦の約束を果たした。新しい一歩を刻むと共に、全盛期の頃の状態にまた一歩近付いた。
『Omega-Gain-Force(オメガ・イン・フォース)』を使わなくても、大門大とアグモンに勝てた。この事実はオメガモンにとって大きな自信となり、それが彼をまた前に進める大きな切っ掛けを与えてくれた。
LAST ALLIANCEです。最新話如何でしたか?
今回で文字数が最多記録を更新しました。
いつもは1万字を超えるのがやっとなので、珍しい事で驚いています。
皆さん、よろしければ感想・評価の方よろしくお願いします。
あたたかい感想とか前向きなコメントや応援メッセージ、高評価を頂くと、作者のやる気が超進化します。
では次回をお楽しみに。LAST ALLIANCEでした!
次回予告
”電脳現象調査保安局”に来たタイキ&タギル。
彼らの口から語られるのはクオーツモンのデジタマが奪われた真相。
果たして誰が盗んだのか。そしてオメガモン達とのバトルは一体!?
第16話 時を駆ける出会いと戦い