終焉の聖騎士伝説~オメガモンとなった青年の物語~   作:LAST ALLIANCE

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どうも。やっぱり他の作者様の小説を読むと、モチベーションが上がるというか勉強になると改めて思ったLAST ALLIANCEです。
今回は『デジモンテイマーズ』のベルゼブモンが登場します。
ある意味デジモン版『ドリフターズ』みたいな感じになっていますが、敵も敵で豪華な面子にしたいです。色んな意味で。



第17話 因縁を断ち切れ! ベルゼブモンが行く!

「そうか。そっちは今そういう事になっているのか。成る程……こっちものんびりしていられないな。ありがとよ、それじゃあ」

 

 とある企業の建物の社長室。椅子に座りながら電話をしていた青年は受話器を戻し、溜息を吐いてから青空を見上げる。

 青年の名前は高橋誠。その正体は『七大魔王』の一角であり、“暴食”を司るベルゼブモン。リリスモンと同じく、デジタルワールドから人間に逃れて来たデジモン。

 彼も転生組の1体だが、彼の場合は少し事情が異なる。彼は『デジモンテイマーズ』の舞台となった世界の出身。ちなみに『デジモンテイマーズ』組は今の所彼1体だけという寂しいおまけ付きだ。

 

(前世じゃこういう充実した生活は出来なかったな……転生出来た事には感謝してもしきれねぇぜ)

 

 誠もといベルゼブモンは自分の前世を振り返る。今思えば悪くなかったが、心から充実していたとは言えないからだ。

 強大な力を求めてしまった為に過ちを犯した前世。その過ちとは自分に説得を試みたとあるデジモンを殺害してしまった事。その過ちは転生した今も彼を苦しめている程、心に刻まれている。

 しかし、その過ちを知って再び戦いに身を投じる決意を固めた。自分を信じてくれる人の為に。その思いを胸に抱いた事で正当な進化を経て、最後まで戦い抜いた。パートナーも得るという嬉しいおまけ付きもあった。

 デジタルワールドに戻ってからは『七大魔王』の一角に選ばれ、“暴食”を司るようになった。本人は大食いキャラではないのに。それからはベヒーモスに乗りながらデジタルワールドを放浪し、困っているデジモン達を助けたり、悪いデジモンを撃退したりした。

 『七大魔王』らしくない魔王型デジモン。そう言われる事が沢山あったが、悪ぶっているようで、根本はお人よしな性格から、様々なデジモンに慕われてきた。本人は極めて不本意だったのだが。

 しかし、彼にも死が訪れた。寿命が来た。この世界にはもういない1体のデジモンの事を想いながら。レオモンに謝罪したいと心から願いながら。

 

「社長、八神一真さんがお見えになりました」

 

「分かった。直ぐに向かう」

 

 誠が前世の事を振り返っていた時、社長室のドアをノックする音が聞こえて来た。前世の振り返りを終えると、社長室に社員が入って来る。

 社員は誠に一真がやって来た事を伝えた。誠の机にはメモ書きがあり、そこには今日一真が来る事が書いてある。それを見て頷き、社員の後に続く誠。この日も会社の社長として仕事に励んでいる。

 

 

 

「初めましてになるな、八神一真。いやオメガモンと呼ぶべきか」

 

「どっちでも良いです。好きなように呼んで下さい」

 

「まぁそう固くなるなよ。フランクに行こうぜ? 俺達は同じデジモンなんだから」

 

「私は人間です」

 

「そう言うなよ。リリスモンから紹介はあったけど、改めて自己紹介をするぜ。俺は高橋誠。ベルゼブモンだ。よろしく頼む」

 

「八神一真です。よろしくお願いします」

 

 応接室。そこに案内された一真は誠と会っている。『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』と『七大魔王』。本来であれば敵対しているのだが、こうして話をしている。イレギュラーとしか言いようがない。

 フランクな誠と真面目な一真。水と油。正反対な両者だが、ここはビジネス。お互いに割り切りながら握手を交わす。

 

「驚いたか? 『七大魔王』が人間界にいて真っ当に暮らしていると聞いた時は」

 

「まぁ最初は。でも事情を聞いたら納得出来ました」

 

「だろう? 俺もデジタルワールドの情勢を見ていて嫌になってな……」

 

 誠は転生した後にデジタルワールドで何をしていたかを話した。転生後も生き方を変えなかった。ベヒーモスに乗りながら放浪し、困っているデジモン達を助けたり、悪いデジモンを撃退した。本人の意図とは裏腹に、色んなデジモンから慕われる結果となっても。

 しかし、自由な生き方を愛しているベルゼブモンには分割統治が耐えられなかった。ホメオスタシスは良い。過ごしやすいと思えたから。イグドラシルが問題だった。税金やら何やらで旅しにくいと感じたからだ。

 そんな時にリリスモンから人間界に一緒に行かないかと誘われた。最初はリリスモンの悪巧みを疑ったが、話を聞いてみたらそうでもなく、応じる事にした。

 

「その後に社長になった……と。でもどうして社長に?」

 

「まぁ色々あったんだよ……」

 

 人間界に来たデジモン達全員が直面する最大の壁。それはどうやって生きていくのかという事だった。それはリリスモン達も例外ではなかった。

 “電脳現象調査保安局”には入らず、自分自身の生き方を模索する事を決めたベルゼブモン。彼はとある株式会社に入社して働く事となったが、その実態に言葉を失った。

 社員の多くが生活難や就職難等の様々な事情を抱えながら入社している。もし何かしらのハンデを抱えていると、非正規社員として扱われる事が確定されている。当然の事ながら給与や福利厚生は悪い。

 例えどれだけ優秀でも、非正規社員というだけで正社員からは常に不当な差別やパワハラを受けていた。それに憤りを感じた誠は内部告発を行って正社員達と重役を追い出し、自分達で新しい会社を立ち上げた。

 その会社が今自分が社長を務めているベルゼ株式会社。生活難や就職難等の様々な事情を抱えた人達の受け皿となり、彼らがまともな生活を送れるようにしている。週休二日制で福利厚生もバッチリ。社員達も仲が良いホワイト企業だ。

 

「そうだったんですか……凄い行動派なんですね」

 

「まぁ俺と一緒に働いている奴らの話を聞いていたら、上の奴らを許せなくなってな……人の上に立つのは俺のキャラじゃねぇけど、俺がやらねぇと誰がやるんだって話になる。だから社長をやっている。まだ慣れねぇけどよ……」

 

 実はベルゼ株式会社の立ち上げは当時の新聞でビッグニュースになり、お昼のワイドショーでも一時期かなり取り上げられた程だ。

 それ以来、誠はマスコミを毛嫌いするようになった。質問が同じでしつこい、自分にしつこくまとわりついてくる等、あまり良い思い出が無かったみたいだ。

 ウニのように立たせた短髪の端正な顔立ちの青年は当時を振り返り、溜息を付いた。社長はまだ慣れない。自分が務めるようなポジションでも無ければ、やるような性格ではないと分かっているからだ。

 それでも社長を務めているのは社員達の信頼がある為。社員達を気遣う優しさと大らかさ、時には叱る厳しさを併せ持つ理想の上司。そんな誠と共に仕事をしたいから、毎年数多くの社員が入社して来る。流石は『七大魔王』。

 

「そっちはどうなんだ? “電脳現象調査保安局”の新人局員さん」

 

「最低でも週に1回は“デジクオーツ”で事件が起きているので、その解決に追われています」

 

「オメガモンは忙しいってか? それに書類仕事やら何やらあるから大変だな……」

 

 一真曰く、最低でも週に1度は“デジクオーツ”関連の事件が起こっているとの事。その解決に奔走している為、時折眠くなってコーヒーやエナジードリンクのお世話になっていると言っている。

 それに“電脳現象調査保安局”では日常業務等で書類を書いたり、提出しなければならない。高給取りな仕事程大変で、同時に責任が付いて回る。世の中とはそういう物だ。

 

「それで……今日はこういう話をしに来たんじゃねぇんだろ?」

 

「あぁ、失礼しました。初対面だったのでつい話が長くなりましたね……」

 

「別に良いぜ。こういう機会だから普段はこうして話せねぇからな……」

 

 このままでは話が長くなってしまい、一真が来た用件を忘れそうだ。そう思った誠が話を切り出すと、一真は申し訳なさそうに頭を下げる。

 それでも誠は気にせず、優しく微笑む。普段は話す事が出来ない立場にいる為か、デジモンなのかは分からない。それでも一真との話を楽しんでいるのは確かだった。

 

「今日来たのはリリスモンさんから頼まれたんです。この“デジクオーツ”の報告書を渡しに来ました」

 

「おっ、ありがとう!」

 

 一真がベルゼ株式会社に来て、誠に会った理由。それはリリスモンから託された“デジクオーツ”の報告書を渡す為。彼女以外の『七大魔王』が“デジクオーツ”についてあまり知らない為、有事に備えて勉強してもらおうと作成していた。

 それを最初に渡したのがベルゼブモン。一企業の社長である為、直ぐに目を通し、内容を大まかに理解すると、一真に頼み事をして来た。

 

「一真。俺を“デジクオーツ”に連れてってくれ。リリスモンがこういう事をしてきたって事は、戦いが近いって事だろう? 俺も腹を括らねぇといけねぇな……」

 

「でも社長なんですよね? 大丈夫なんですか?」

 

「そうだな……休日にしてくれ」

 

「そうしましょう」

 

 その頼み事は自分を“デジクオーツ”に連れていく事。誠は“デジクオーツ”の存在を知っているが、入った事はない。一真に案内人を依頼するという事になる。

 流石に社長を務めている為、平日は良くない。休日に“デジクオーツ”に入る事を決めると、用事はここで終わりとなった。

 

 

 

 数日後の休日。“デジクオーツ”に入ったベルゼブモンと一真は、“デジクオーツ”の中を歩きながら辺りを見渡し、風景を見ている。

 

―――何だか嫌な所だな。『デ・リーパー』の中を思い出してしまう。

 

 ベルゼブモンはそう独り言を呟く。荒廃した人間界のような世界。それは前世での人間界にいた時に戦った『デ・リーパー』を思い出させてしまう。今でもトラウマになっているのだが、それを思い出してしまうのが耐えられない。

 その証拠に“デジクオーツ”に入ってからずっと顔をしかめている。それに気付いた一真は話を振る事で、ベルゼブモンの気持ちを紛らわそうとする。

 

「どうやら気に入らないみたいだね」

 

「ああ。前世でも来た事があるんだが、どうにも駄目だ。俺にはこの場所が耐えられねぇ。居づらいじゃなくて景色が嫌いだ」

 

「確かに……ん? デジモンがいる」

 

 仕事の場所ではないから、一真はベルゼブモンに対して普通に接している。それからもう少し歩いていた時、一真がデジモンの姿に気が付いた。

 自分達の方に歩いて来るデジモンが1体。この『波動(コード)』は究極体級。一体どのデジモンが近付いているのか。そう思いながら注意深く前を見ていると、『波動(コード)』の主が現れた。

 

「お前は……!」

 

「レオモン……」

 

 ベルゼブモンが驚き、一真が感心するように目を細めたデジモン。それはベルゼブモンと因縁のある相手。黄金の長髪を棚引かせ、逞しい上半身の筋肉を覗かせ、下半身に黒色のズボンを履き、左手に黒いベルトを巻き、腰の一振りの刀を携えた獣人型デジモン。

 百獣の王、気高き勇者と呼ばれているレオモン。まさかの再会にベルゼブモンは驚きのあまり固まってしまい、身動きを取る事が出来なくなった。

 

「ベルゼブモン、お前の悪しき魂を浄化する! 樹莉の為にも!」

 

『ッ!』

 

 ベルゼブモンと一真にとって嫌な予感が当たった。目の前にいるレオモンは『デジモンテイマーズ』に登場したレオモンと同一個体。

 確かにレオモンらしい言葉を言っているが、彼らの知るレオモンだったら言わない事を言っている。強さと優しさを兼ね備えたデジモンで、ベルゼブモンと対峙した時も、戦いよりも対話の道を取った。

 それを知っているからこそ、一真とベルゼブモンは戸惑っている。目の前にいるレオモンは果たしてあのレオモンなのか。確かに姿は本物だが、心は本物なのか。

 その答えを確かめる暇など与えないと言わんばかりに、レオモンはベルゼブモンに向かって駆け出す。ベルゼブモンと一真に言った事は事実だった。その証拠に、ベルゼブモンに殴り掛かって来たのだから。

 

「クッ!!」

 

 右腕を翳して攻撃を防御するが、その威力と重さに後退りしてしまう。ベルゼブモンの表情が右腕から伝わる苦痛と衝撃によって歪んでいく。

 成熟期である筈なのに、今の一撃は究極体デジモンの攻撃に近いレベルの攻撃だった。何らかの理由でレオモンの力が上がっている。“デジクオーツ”の影響なのか。或いは別の理由があるのか。そこまではベルゼブモンにも、一真にも分からない。

 究極体デジモンの攻撃を片腕で受け止めた。流石のベルゼブモンも無傷だとしても、衝撃までは無効化出来ない。

 

「『破砕蹴り』!!!」

 

「ガハッ!!」

 

 ベルゼブモンが体勢を立て直すよりも前に、レオモンの追撃が入る。腹部に強烈な蹴りを受け、苦痛に満ちた声を上げながらベルゼブモンが吹き飛ばされる。

 それでも危なげなく着地し、両足のホルスターから銃口が2つあるショットガン―ベレンヘーナを抜き、レオモンに照準を合わせながら連射して弾幕を張る。

 これならレオモンは接近しにくいだろう。必殺奥義を使おうとしても、タイムラグがあるから確実に銃弾を受ける事となる。普通のデジモンであれば、無数の銃弾を迎撃する方を優先させる。

 しかし、レオモンはそれを正面から迎え撃つ。腰に帯びている意思を持った妖刀―獅子王丸を抜刀し、弾丸を斬り払いながらベルゼブモンとの間合いを詰めていく。

 

「何だと!?」

 

 驚愕の表情を受け止めたベルゼブモンはベレンヘーナからの連射を中断し、右手に握るショットガンを足のホルスターに素早く戻す。

 レオモンは勇気あるデジモンだと知っていたが、パワーだけでなく、反応速度まで究極体デジモンと同等にまでなっているとは。益々目の前のレオモンが本物かどうか疑わしくなって来た。

 

「『ダークネスクロウ』!!!」

 

 胸の中に抱く疑念を消し去ろうと、ベルゼブモンは右手の鋭い鉤爪を振り上げてから一気に振り下ろす。それは前世でレオモンを殺害した時に使用した必殺奥義。トラウマになっているかもしれないが、今はそれどころではない。

 それをレオモンは迎え撃つ。振り下ろされる鋭い鉤爪を左手に握る獅子王丸で受け止めながら、空いている右拳を突き出す。

 咄嗟に背後に飛び退きながら、ベルゼブモンは左手に握るベレンヘーナから銃弾を撃ち込むが、レオモンは高く跳躍する事で回避する。自然落下の勢いと共に獅子王丸を振り下ろして来た。

 

「グァッ!?」

 

「ベルゼブモン!」

 

 胸部から腹部にかけて縦一文字の斬り傷を刻まれたベルゼブモン。右手で斬り傷を抑えながら、背後に飛び退いて構えを取り直す。

 どういう理由かは分からないが、究極体級の強さになっているレオモン。ベルゼブモンはトラウマ関係で全力を出せない。この2つの要因で、ベルゼブモンは格下の相手に追い詰められている。

 それを誰よりも分かっているからこそ、一真は歯がゆい思いをしている。これが“デジクオーツ”の戦い。相手は格下だが、何らかの理由で強化されている。今回もまた例外ではなかった。

 

「『獣王拳』!!!」

 

「『ハートブレイクショット』!!!」

 

 レオモンが右拳を突き出すと共に、右拳から黄金の獅子の形をしたオーラが放たれる。それをベルゼブモンは左手に握るベレンヘーナから銃弾を撃ち込み、かき消しながらレオモンとの距離を詰める。

 そのまま右手の鉤爪を振り下ろすが、獅子王丸に受け止められながら懐に入られてしまう。更には至近距離から『破砕蹴り』を受け、続けて無数の黄金の獅子のオーラを喰らい、吹き飛ばされる。

 

「『百獣拳』!!!」

 

「ガアアアァァァァァァァァッ!!!」

 

「ベルゼブモン!」

 

 もしこの状況を見ている者がいるとしたら驚くだろう。究極体デジモンのトップクラスで、『七大魔王』の一角が成熟期デジモンに圧倒されているのだから。

 吹き飛ばされて地面に叩き付けられたベルゼブモン。見ていられなくなり、一真が助太刀しようと駆け寄るが、ベルゼブモンは立ち上がりながらそれを制止する。

 

「一真……これは俺の戦いだ。手を出すんじゃねぇ。俺は力と言う目先の物を追い求め、一度全てを失った……俺を救おうとしたデジモンも、傍にいるべき仲間も、一緒に居るパートナーも……だから今度こそ失いたくない! 今ある大切な物全てを! それを失うくらいだったら……全てを奪おうとする奴らと俺は戦う!」

 

 ベルゼブモンの言葉。それは前世でのトラウマを乗り越えようとする漢の決意。それを裏付けるように、ベルゼブモンの身体に変化が訪れる。

 赤い眼が緑色となり、背中から漆黒の4枚の翼を生やし、右腕に巨大なブラスターを装備したベルゼブモン。力と精神を極限にまで高めた究極魔王。その名前はベルゼブモン・ブラストモード。

 

「ベルゼブモン・ブラストモード!!!」

 

「すげぇ……!」

 

 一真が思わず感嘆の声を漏らす程、ベルゼブモン・ブラストモードはかっこ良く、圧倒される物があった。

 『デジモンテイマーズ』を放映当時に見ていた一真は、今でも大好きなデジモンの1体にベルゼブモンを挙げている。そのベルゼブモンに会えただけでなく、ブラストモードを見る事が出来た。生粋のデジモンファンとして狂喜乱舞してもおかしくない。

 

「行くぜ、レオモン! これが俺が得た本当の力だ! 『デススリンガー』!!!」

 

 ベルゼブモン・ブラストモードの反撃開始。それを告げたのは右腕のブラスター砲から撃ち込まれた砲撃。破壊の波動砲―『デススリンガー』。

 それを左手に握る獅子王丸を振るってかき消すが、レオモンの視界に入っていた筈のベルゼブモン・ブラストモードの姿が何時の間にか消えていた。

 一体何処にいるのか。周囲をキョロキョロと見渡すレオモンの背後に、ベルゼブモン・ブラストモードは現れると共に、左手の鉤爪を振り下ろす。

 

「『ダークネスクロウ』!!!」

 

「クッ!!」

 

 獅子王丸で受け止めるレオモンと鍔迫り合いを行う。先程までならば一方的に推し負けていたが、今は精神状態が安定している為、本来の力を発揮する事が出来る。

 鍔迫り合いを制し、レオモンの胸部に斬り傷を刻ませると、左足で蹴飛ばして距離を空ける。次の必殺奥義で確実に仕留める為に。

 

「やっぱりお前は本物じゃねぇ……俺が本気を出した途端、急にやられ始めた。俺の知っているレオモンはそんな弱いデジモンじゃねぇ! 強いし、憧れる……そんなデジモンなんだ! 『カオスフレア』!!!」

 

 ベルゼブモン・ブラストモードは右腕のブラスター砲で円を描きながら前方に魔法陣を描き、その中心に向けて破壊の波動砲を撃ち出す。

 中心を通過した破壊の波動砲は巨大な波動砲となり、レオモンを呑み込んでいく。データ粒子に変わりながら消滅していくレオモンだったが、その表情は何処か優しそうだった。

 

―――ありがとう、ベルゼブモン。もう大丈夫そうだな。

 

「レオモン!」

 

―――この世界のオメガモンよ。皆を、世界を頼む。

 

「はい!」

 

 どうやらレオモンは心配していたようだ。自分のパートナーだった少女は勿論だが、自分が最後まで説得し続けた相手を。

 戦いを通じて理解した。ベルゼブモンはもう大丈夫だと。前世でのトラウマを乗り越え、本当の力と共に前に進んでいける。それが分かった以上、もう戦う理由はなかった。

 一真にも激励の言葉を贈る所が、レオモンの性格を表している。直立不動で力強く一真が答えると、レオモンは完全に消滅していった。

 

 

 

「まさか呆気なくやられるとはな……」

 

 ベルゼブモン・ブラストモードと一真の耳に聞こえて来たのは、心底から不愉快そうな声だった。その内容と声に苛立ちを覚えながら背後を振り向くと、そこには1体のデジモンが立っていた。

 そのデジモンはオメガモンこと一真の宿敵。対オメガモン用にカオスデュークモンが造ったカオスモン。一真は宿敵の登場に、ベルゼブモン・ブラストモードは大切なデジモンを侮辱された事に表情を険しくさせる。

 

「私の予想だと倒せないまでも、ベルゼブモンにかなりのダメージを与えると思っていたが、予想は大外れ。何とも使えないデジモンだな……」

 

「お前……俺の弱みに付け込むとは良い度胸してんじゃねぇか!」

 

 予想が外れた事に落胆しつつ、レオモンの事を侮辱したカオスモン。それに怒りを見せるベルゼブモン・ブラストモードと、それに同調するように一真はカオスモンを睨む。

 しかし、彼らの様子に構う事なくカオスモンは話を続ける。何という図太い神経の持ち主なのだろう。素体となった人間の影響か、或いはカオスデュークモンによる物なのか。

 

「気付いていたか。そう。このレオモンはかつてお前が殺した個体。そのデータの残滓を利用して再構築させ、私の方でブーストさせた。だが結果は御覧の通りだ」

 

「自分達の都合で命を弄ぶ外道が……僕は絶対に許さない!!」

 

 誰かの心の傷を利用しただけでなく、死者を弄ぶ外道な行い。それを見せ付けられ、知らされた一真の怒りは凄まじかった。

 まるでオメガモンが乗り移っているみたいに両目が空色に輝く。オメガモンと“一体化”が進行していると言わんばかりに言い放つと、一真の全身を眩い黄金の光が包み込み、巨大な光の繭を形成していく。

 暫くして光の繭が自動で消滅していくと、その中からオメガモンが姿を現した。その眼光には全てを威圧し、殺意だけで相手を戦闘不能に追い込むレベルの怒りが込められている。

 

「この前のようには行かないぞ?」

 

「今度こそ抹殺してやろう!」

 

 オメガモンが左腕からグレイソードを出現させて構えるのに合わせて、カオスモンも右腕のバンチョーアームからBAN-TYOブレイドを装備して構える。

 お互いの剣を装備して構えた2体のデジモン。暫しの間、睨み合いを行う。機は熟したと判断した瞬間、同時に大剣を振るって青白い刃の形をしたエネルギー波を飛ばす。

 カオスモンはこれまでの戦闘データによって造られた為、当然の事ながら前回の戦闘データを持ち帰っている。データによればオメガモンと自分のデータは互角。このまま行けば相殺間違いなし。そう思い込んでいたが、数秒後にはそれが自分の思い込みだった事を教えられた。

 

「何だと!?」

 

 2体のデジモンが同時に放った攻撃は中心でぶつかり合い、超爆発を引き起こす。ここまではカオスモンは予測する事が出来た。しかし、予測の範囲内を超えた出来事が起きたのはここからだった。

 超爆発で発生した破壊を撒き散らす衝撃波。それが全てカオスモンの方に襲い掛かって来た。慌ててBAN-TYOブレイドを振るってかき消すが、その表情には驚愕と困惑がはっきりと刻まれている。

 

―――命ある者は常に前に進み続ける。昨日までのデータを書き換える勢いで。

 

 オメガモンとカオスモンの差。確かに彼らは同じ存在。人間に『電脳核(デジコア)』を埋め込んだ『電脳人間(エイリアス)』。しかし、何が彼らを分けているのは。

 それは“『電脳核(デジコア)』を埋め込んだ人間をどう扱っているのか”という事。オメガモンの場合は一真との確かな信頼関係があり、人間とデジモンを“融合”させたような動きを見せている。

 一方、カオスモンは存在自体が不安定という理由もあるが、存在を安定させる為に人間というパーツが必要という考え方となっている。幾らカオスモンが強くても、人間とデジモンが融合してもたらされる新しい力に勝てる筈がない。

 

(そんな馬鹿な事があって良い筈がない! 私はオメガモンを倒す為に造られた……倒さなければならない相手に、オメガモンに負ける筈がない!)

 

 カオスモンは黒煙と爆炎を突き破り、突進して来たオメガモンに向けてBAN-TYOブレイドを振り下ろす。

 それを左肩のブレイブシールドΩで受け止めた事で、オメガモンとカオスモンはお互いの剣をぶつけ合う凄まじい剣戟を開始した。

 2本の剣が激突する度に発生する衝撃波で周囲一帯に凄まじい破壊をもたらすが、剣戟でもオメガモンが圧している。相手を吹き飛ばす程の凄まじい威力の斬撃を以て、カオスモンを確実に押し込んでいく。

 

(以前戦った時よりオメガモンの力が上がっている……!)

 

 カオスモンは剣戟の中で以前の戦闘の時より、オメガモンの力が上がっている事に気付いたが、正確に言うと、オメガモンの力が前世の頃に戻ってきている事となる。

 バグラモンとタクティモンの2体で、しかも秘奥義を封じての辛勝。前世では相当な強さを誇っていたみたいだ。アルフォースブイドラモンが“最強の聖騎士”と言っていただけの実力者だけある。

 斬り合っている途中で、カオスモンは自分の劣勢を受け入れた。しかし、それは剣戟に限っての話。それ以外の攻撃方法を織り交ぜれば、まだ自分にも勝機がある。そう考えた上で体術を織り交ぜた攻撃を繰り出す。

 

「ハァッ!!」

 

「フッ!」

 

 十合程斬り合った所で、カオスモンがオメガモンに向けて右足を蹴り抜いて来るが、オメガモンは全く動じずに迎撃する。右足蹴りを左手で防ぎ、そのまま左腕を振り抜いてカオスモンの右足を弾く。

 オメガモンの左手はウォーグレイモンの頭部を象った籠手となっている。左肩にはブレイブシールドΩが、口部分にはグレイソードが装備されている。正に攻防一体。

 不意打ちに動じなかった聖騎士を見て、表情を歪めるカオスモンに追い打ちをかけようと、オメガモンはグレイソードを振るう。繰り出された袈裟斬りを背後に飛び退いて躱しながら、カオスモンは左腕のダークドラアームからギガスティックキャノンを展開した。

 照準をオメガモンに合わせて暗黒エネルギー弾を撃ち出すが、オメガモンはグレイソードを一閃して砲撃をかき消し、横に移動を開始しながらガルルキャノンを展開する。

 

「『覇王両断剣』!!!」

 

 ガルルキャノンから撃ち込まれた三発の青いエネルギー弾。その全てをBAN-TYOブレイドの一閃で消し去り、カオスモンはオメガモンとの距離を詰める。

 右腕の大砲から砲撃を撃ち出すのを中断し、オメガモンはグレイソードを構える。間合いに入り込んだカオスモンがBAN-TYOブレイドを振り上げれば、オメガモンはグレイソードを振り下ろして迎撃する。

 グレイソードによって地面に叩き付けられたBAN-TYOブレイド。それを見て表情を歪めたカオスモンだったが、次の瞬間には勝ち誇るような笑みを浮かべる。その笑みに怪訝そうな顔をオメガモンがすると、カオスモンは空高く跳躍した。

 自然落下の勢いと共に、BAN-TYOブレイドが振り下ろされる。オメガモンは跳躍の時点でグレイソードを横薙ぎに構えていたが、その瞬間に左足を一歩踏み込んでグレイソードを薙ぎ払う。

 

「クッ!!」

 

 僅かな時間の間、激突するグレイソードとBAN-TYOブレイド。制したのはグレイソード。聖剣の薙ぎ払いが大剣を弾くと共に、カオスモンを吹き飛ばす。

 空中で体勢を立て直しながらギガスティックキャノンの砲口をオメガモンに向け、カオスモンはギガスティックキャノンから暗黒の波動砲を撃ち出すが、オメガモンは砲撃と正対して平然としている。

 グレイソードを反対方向から一閃し、暗黒の波動砲を四散させるが、その間にカオスモンは体勢を立て直して再びオメガモンとの間合いを詰める。近接戦闘に持ち込むつもりなのだろう。オメガモンはガルルキャノンから青いエネルギー弾を撃ち込んで牽制する。

 

「ハァッ!!」

 

 砲撃を躱しながら、突進の勢いと共にBAN-TYOブレイドを突き出すカオスモン。対するオメガモンは右手を突き出して刺突を受け止めながら、一歩踏み込んでグレイソードをカオスモンの頭上から振り下ろす。

 背後に飛び退いてオメガモンが繰り出した唐竹斬りを避けながら、カオスモンはBAN-TYOブレイドを振り下ろすも、その直前にオメガモンの右足に蹴り飛ばされた。

 蹴り飛ばされたものの、後方に跳躍したカオスモンはBAN-TYOブレイドを振り抜いて斬撃を飛ばすも、振り上げられたグレイソードによって一刀両断されて四散された。

 

「フフフ……前よりも力を増したようだな。 今日はここまでにしておくが、まだまだ私を楽しませてもらおう」

 

「待て!」

 

 そろそろ頃合いだと判断したようだ。カオスモンは負け惜しみにも聞こえる言葉を残し、“デジクオーツ”に溶け込むようにして姿を消した。

 カオスモン相手に終始優勢に立ち、圧倒的な力を見せたオメガモン。今回は相手に逃げられてしまったが、収穫や手応えもあった事も事実。ベルゼブモンと共に“デジクオーツ”から去っていった。

 




他の小説を読んでいると、しっかりした原作に基づいて書いているから書きやすいんだろうなと思う所があります。こっちは話を全て作らないとなので……本当に大変です。
その中で骨太な話を書ける作者様が凄いと思いますし、そうなりたいと思っています。

皆さん、よろしければ感想・評価の方よろしくお願いします。
あたたかい感想とか前向きなコメントや応援メッセージ、高評価を頂くと、作者のやる気が超進化します。

では次回をお楽しみに。LAST ALLIANCEでした!

次回予告

来たるべき決戦に備えて模擬戦をするオメガモン達。
果たしてどのような模擬戦をしているのか?
そして現れるかつての盟友。その正体とは?

第18話 盟友との再会 アルフォースブイドラモン
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