終焉の聖騎士伝説~オメガモンとなった青年の物語~ 作:LAST ALLIANCE
これまでのバトルが終わり、最終決戦に入る重要な回になりますが、前回の続きから入ります。一真の”デジモン化”の進行具合と、カオスモンの素体となった人間の紹介です。
次回から最終章3部作(平成ウルトラマンよろしく)に入りますが、最後までお付き合いの方よろしくお願いします。
「ただいま戻りました」
「お帰り。……その人は?」
“電脳現象調査保安局”に戻って来た一真と優衣。彼らはつい先程まで“デジクオーツ”でカオスモンと、そしてカオスモンが超究極進化したアルティメットカオスモンとの激闘を繰り広げていた。一真はカオスモンとなった人間を背中におぶっている。
一真と優衣を出迎えたのは桐山鏡花。“電脳現象調査保安局”の主任であり、『七大魔王』の一角にして“色欲”を司るリリスモン。彼女は無事に帰って来た一真と優衣に笑顔を見せながら、一真の背中で眠っている男性に目を向ける。
「カオスモンだった人よ。名前とか全然分からないけど……」
「カオスモンだった人……という事はカオスモンを倒せたの!?」
「はい。アルティメットカオスモンになりましたけど、優衣さんと共闘して倒せました」
「良かったじゃない! 凄いわ一真君! 優衣さんもありがとうね!」
一真はカオスモンとの激闘について話し出す。最初は一騎打ちでカオスモンを倒したものの、復活したカオスモンがアルティメットカオスモンに超究極進化してアルファモンとの共闘に移行した。
アルティメットカオスモンの猛攻に進化を解除されるが、気合と根性で復活してアルティメットカオスモンを初期化し、カオスモンの素体に使われた人間を救出する事が出来た。
「でも……“デジモン化”は進みました。何か右目と右腕、右足……右半身の感覚がおかしくなって……見えるんですよ。動かせるんですよ。でも感覚が違って……」
「えっ!?……ちょっと待って!? 髪の毛も右半分が銀色になっているじゃない!? 直ぐに検査よ検査! その人も一緒に!」
『初期化(イニシャライズ)』と『Omega-Gain-Force(オメガ・イン・フォース)』を使用した為か、一真の“デジモン化”は進行した。右目と右腕と右足。右半身の感覚がオメガモンの物に近付いているという状況に陥ったのだから。
一真の勝利を喜んだのも束の間、彼の言葉を聞いただけで深刻さを理解した鏡花。彼女は一真を保健室に向かわせ、直ぐに一真の身体を検査させた。
「一真君は?」
「身体がもう能力や奥義を使う事に耐えられない。相当“デジモン化”が進んでいる……後2,、3回能力を使ったら完全にオメガモンとなるわ」
1時間後。カオスモンとの戦闘の疲労からか、ベッドで眠っている一真。既に検査は終了し、その結果用紙が出ている。一真の近くで優衣と鏡花は顔を見合わせながら、結果用紙を見ている。
“デジモン化”が相当進行している。身体自体が激化する戦闘や使用する能力や奥義に耐えられないからだ。後数回でも特殊能力や必殺奥義を使えば、一真は完全なオメガモンに成り果ててしまう。
「ところでもう1人の彼は?」
「異常は何も無かったわ。完全な無傷。心臓も、何もかもが普通の人間よ? 数日安静にしていれば普通に退院出来そう」
「良かった……一真君、グッジョブね。“デジクオーツ”の件が片付いたら休暇を与えようかしら」
「うっ、うぅ……」
カオスモンの素体となった人間。『初期化(イニシャライズ)』の影響のおかげか、完全な人間に戻る事が出来た。一真は“デジモン化”の進行を代償に、その人間を救った。
その事実に多少安心している優衣と鏡花の目の前で、その男性の意識が戻った。閉じていた目が開かれ、天井を見上げる。
「此処は……何処だ?」
「ここは“電脳現象調査保安局”。私は桐山鏡花。“電脳現象調査保安局”の主任」
「初めまして。私は工藤優衣。貴方は?」
鏡花と優衣は自己紹介をすると、2人の姿を見た男性は息を呑んだ。絶世の美女が目の前にいる。それだけで言葉が何も出ず、固まってしまった。
それでも男性は答える。相手が自分の事を知りたがっている。自己紹介して来たのだから、自分も自己紹介しなければならない。そう思って自己紹介をする。
「俺は櫻井竜也です」
「竜也君……貴方は自分がどうしてここにいるのか分かる?」
「分からないです……教えて下さい」
「(カオスモンだった記憶まで初期化されたのね……)分かったわ。全て話すわ」
眼鏡をかけ、ニキビだらけで肥満体型の男性―櫻井竜也。彼は鏡花から告げられた事実を全て聞き、顔を真っ青にさせながら現実を受け入れるしかなかった。
カオスモンという対オメガモン用デジモンとなり、オメガモンこと八神一真を抹殺しようとした事。その過程で他のデジモンを利用した事。最後の戦いでアルティメットカオスモンとなり、一真に救われた事。
あまりにも非現実的な事が立て続けに起こり、それを理解するには時間がかかったものの、竜也は全てを受け入れた。何故なら数時間前までの自分だったからだ。
「そんな……俺がカオスモンに、デジモンに……化け物にされたなんて……」
「残念だけど事実よ? 今は元通り人間に戻れたわ。隣で寝ている八神一真君……オメガモンのおかげで。彼は自分の力を使って命がけで貴方を助けた。でも私達は知りたいの。貴方が一体どういう人間で、どうしてカオスモンになったのかを」
「分かりました。覚えている範囲内で話します」
櫻井竜也。23歳。元々はニキビも無ければ、スマートな体型の好青年だった。大学卒業後、とある株式会社で働いていたが、1年と少しで退職してしまう。
その理由は同じ職場の人間から受けた嫌がらせだった。何の理由もなく、理不尽な嫌がらせに耐え切れず、社長に言っても取り合ってくれなかった事から、彼は会社を辞めて再就職するしか無かった。
人間が悪の道に進む時、そこには必ず何かしらの外部的な要因がある。竜也は再就職活動を始めるが、両親との不仲や中々決まらない就職先もあり、次第に暴飲暴食となって今の体型となってしまった。
ひきこもりとなってしまい、両親に見捨てられた竜也。そこにやって来たのはカオスデュークモン。彼は竜也に1つの提案をした。それは悪魔の囁きであり、悪魔との契約だった。
―――このまま社会に、両親に見捨てられるくらいだったら見返してやれ。実は君にしか頼めないとある実験がある。その実験を受けて協力してくれれば、君の願いは何でも叶える。
引きこもりから抜け出したい、今の自分を変えたい。また前みたいに働きたいと願っていた竜也は、カオスデュークモンの頼みを二つ返事で了承した。
その結果、バンチョーレオモンとダークドラモンの『電脳核(デジコア)』を移植され、カオスモンとなってオメガモンと戦い続けた。
しかし、カオスモンとなってから人間の姿には戻れず、自分がカオスデュークモンに利用されていた事には薄々気が付いていた。
「俺はとんでもない事をしてしまいました……自分が情けないです」
「竜也君。確かに貴方がやった事は許されない事。でも貴方は誰も殺していないし、何かを傷付けた訳でもない。まだやり直せるわ」
「何を悩んでいるのかまでは分からない。でも貴方と同じような悩みを抱えた人は世の中には沢山いるわ。色んな人と話をして自分で考え、そして決めた答えを貫けるようになろう」
「私達は仕事があるからここで失礼するわ。何かあったら呼んで良いよ」
鏡花と優衣が病室から出ていくと、一人残された竜也は考える。自分はこれから何をどうすべきなのか。どのように生きていけば良いのか。
先ずは就職する事。そして元の体型に戻す事。でもその前にカオスモンになった事とどう向き合っていくのか。それらの事を考える。
「でも先ずは……八神一真さん。オメガモン……ありがとう」
それでも最初にする事がある。自分を助けてくれた八神一真ことオメガモンにお礼を伝える事。彼は隣で寝ているが、それでも伝えるしかない。
起きた時にまた改めて伝えよう。そう思って竜也はもう1度目を閉じた。人間として生きている事に感謝しながら。
それから数日後。オメガモンこと八神一真が検査入院で戦線離脱した為、パラティヌモンが“デジクオーツ”関連の事件に対応する事になったが、何の事件も起きずにこのまま平穏無事に終わると思われた。
しかし、そうは行かないのはこの世の中だ。ある日、とある山道を走っていた車がカードレールに衝突するという事故が起きた。車の運転席に乗っていた男性は、“黒い竜のような人間を見た”と目撃証言を残している。
「“黒い竜のような人間”……間違いなくブラックウォーグレイモンよね」
「鏡花もそう思うか。私もそうだと思う」
“電脳現象調査保安局”の本部長室。新聞を読みながら薩摩と鏡花が話している。話題は数日前に起きた出来事。“黒い竜のような人間”の正体は恐らくデジモン。その名前はブラックウォーグレイモン。
“漆黒の竜戦士”として恐れられる、ウィルス種のウォーグレイモン。ウォーグレイモンとは考え方や思想も全て正反対だが、自らの正義の為に生きている。卑怯や卑劣な事を心底嫌い、同じウィルス種でも低俗なデジモンは仲間だとは思っていない。どういった経緯でウィルス化してしまったのかは謎で、背中に装備している“ブレイブシールド”には勇気の紋章が刻まれていない。
しかし、謎が幾つか残る。そのブラックウォーグレイモンが“デジクオーツ”に迷い込んだとして、どうして人間界に干渉して来るのか。とても干渉してくるようなデジモンには思えないからだ。
「パラティヌモンに調査を依頼しよう。恐らく何かがあるな」
「えぇ。そうしましょう」
薩摩はパラティヌモンに“デジクオーツ”の調査を依頼した。それはブラックウォーグレイモンが絡んだ事件の調査の依頼に他ならない。
そして薩摩の予感は当たっていた。今回の事件は今までの事件と決定的に異なる所があるという事が。
とあるデジタルワールドに1体の漆黒の竜人がいた。彼は普通のデジモンではなく、ダークタワーという呪いの塔が百本集って生まれた。いわばダークタワーデジモンと呼ばれるデジモンだった。
存在するだけで世界のバランスを崩す呪われたデジモン。悪い事をした訳ではなく、ダークタワーから生まれてしまった事が彼の不幸だった。しかし、最大の不幸は普通のダークタワーデジモンにはない“心”を持っている事。
“心”を持った事で彼は苦しんだ。何故自分は生まれたのか。何故“心”を持ってしまったのか。その答えを探している最中、とあるデジモンから諭された。至った過程が何であれ、如何なる存在にも必ず意味があると。
自分の存在を許容出来る世界を探して様々な世界を放浪したが、そんな世界は存在しなかった。自身の生まれの決着を付けようと自分を生み出した者を抹殺しようとしたが、3体のパートナーデジモンとの戦いで心を動かされた。
殺す事ではなく、説得する事に考え方を変えたが、真の黒幕から人間を庇って致命傷を受けた。最後の力を振り絞り、ダークタワーで出来ていて、世界に悪影響を与えている自分の身体の性質を使って消滅した。デジタルワールドと光が丘とのゲートを封印する為の生贄となった。
ブラックウォーグレイモンの死後、デジタルワールドの封印を行った地にて、ブラックウォーグレイモンを模した文様が現れた。ブラックウォーグレイモンは自分の存在意義に対して何らかの答えを見つける事が出来たのだろうか。それは誰にも分からない。
「貴方がブラックウォーグレイモンですね?」
「そうだ。俺の名前を知っているお前は何者だ?」
“デジクオーツ”を低空飛行で移動しているパラティヌモン。彼女の目的はブラックウォーグレイモン。彼から人間界で起きている事件の聞き込み調査を行い、場合によっては戦闘を行ってデジタルワールドに戻さないといけない。
彼女の目の前に1体のデジモンが現れた。黒い漆黒の体に白色の髪を棚引かせ、鈍く光る銀色の頭部に胸当てを付け、全身を漆黒の鎧で覆い包み、背中に翼のような物を装備し、三本の鍵爪の様な刃を装備した肘まで覆う手甲を両腕に装備したデジモン。
「私はパラティヌモン。ここ最近人間界で起きている事件について調査をしています。最近人間界で貴方に似た姿をしたデジモンが目撃されていますが、何か心当たりはありますか?」
「あぁ、そのデジモンは俺だ。人間界で事件を起こしたみたいだな。それは謝ろう。済まなかった」
そのデジモンこそがパラティヌモンが探していたブラックウォーグレイモン。早速聞き込み調査を行うと、ブラックウォーグレイモンはあっさりと自白した上で謝罪した。
これはとても珍しいケースだ。大抵のデジモンは自分の罪を認めず、悪足掻きとして攻撃して来るが、ブラックウォーグレイモンは正反対の行動をした。
「……意外ですね。自白するなんて」
「隠した所でどうせバレるのが分かっているからな。俺だって事件を起こしたくて起こした訳じゃない。俺はただ逃げたいだけなんだ」
「逃げたいだけ? それはどういう事ですか?」
「俺が恐れているのはとあるデジモンが人間界とデジタルワールドを支配する事。俺は一度死んだが蘇った。だが蘇らせたデジモンの目的を知ってしまったから逃げている。俺の邪魔をするのなら……お前を倒す!」
まるで何かに追い詰められているようだ。そんな感じがするブラックウォーグレイモンは両腕に装備したドラモンキラーを構え、パラティヌモンに向けて駆け出す。パラティヌモンを倒して人間界に逃亡するつもりだ。
戦闘は避けられないと悟ったパラティヌモン。両腰に携えているパラティヌス・ソードを引き抜き、背中の翼から光を放出させながら突進を開始する。
『ウオォォォォォォォォーーーー!!!!!』
パラティヌモンとブラックウォーグレイモン。2体の究極体デジモンは相手との間合いを詰め、お得意の近距離戦に持ち込んだ。
パワーと突進の勢いを乗せながら、パラティヌモンはパラティヌス・ソードを振り下ろし、ブラックウォーグレイモンはドラモンキラーを突き出す。
お互いが繰り出した武器の一撃が激突した瞬間、甲高い金属音が鳴り響くと共に当たりに凄まじい衝撃波が撒き散らされ、周囲一帯を悉く薙ぎ払っていく。
その中でパラティヌモンとブラックウォーグレイモンは一度背後に飛び退き、両腕の武器を構え直しながら相手の様子を伺う。
―――このブラックウォーグレイモンは強い。普通のデジモンでもない。
パラティヌモンはブラックウォーグレイモンが普通のデジモンではない事を見抜き、その強さを剣を交えて直接感じていた。
このブラックウォーグレイモンはダークタワーデジモン。“心”を持ったダークタワーデジモン。しかもウォーグレイモンとインペリアルドラモン・ファイターモードの2体がかりでようやく引き分けに持ち込んだ程だった。
―――久し振りに強い相手に出会えた。最後に戦う相手としては悪くない。最高だ!
それはブラックウォーグレイモンも同じだった。前世では戦えなかった自分よりも強い相手、それがパラティヌモン。この戦いが自分にとって最後の戦いと決めているブラックウォーグレイモンにとって、最後の相手が強敵である事に歓喜を覚えた。
再開する両者の戦い。先に仕掛けたのはパラティヌモンだ。刀身にエネルギーを込めながら振り抜き、パラティヌス・ソードから黄金の光を伸ばす。
「何!?」
ブラックウォーグレイモンが両腕を交差し、ドラモンキラーで黄金の剣光を防いでいる隙に、パラティヌモンは背中の翼から光を放出させると共に一気に加速した。
一瞬で相手との距離を詰めた勢いを両腕に乗せながら、両手に握るパラティヌス・ソードを連続で突き出す。
両腕のドラモンキラーで連続刺突を防いでいく中、ブラックウォーグレイモンは右足を蹴り上げる。それをパラティヌモンは左手に握る聖剣で防ぎ、右手に握るパラティヌス・ソードから刺突を繰り出した。
それを左腕のドラモンキラーで防ぎつつ、ブラックウォーグレイモンは右腕のドラモンキラーを振り下ろす。
「『ドラモンキラー』!!!」
「ハァッ!!」
パラティヌモンは左手に握るパラティヌス・ソードで受け止め、その刀身から黄金の光を伸ばしながら一気に振り抜いた。
その一閃をブラックウォーグレイモンは咄嗟に頭を下げて躱し、左腕に装備しているドラモンキラーを突き出した。パラティヌモンは半歩下がって避けると、右手に握る聖剣を振り上げて右斬り上げを繰り出す。
「ウオオオォォォォーーーー!!!!!」
咄嗟に背後に飛び退き、パラティヌモンが右斬り上げを躱したブラックウォーグレイモン。構えを取り直して一瞬で距離を詰め、右腕のドラモンキラーを振り抜く。
パラティヌモンは左手のパラティヌス・ソードで受け止めると共に、右手に握る聖剣を下から振り上げて逆風斬りを繰り出す。
それに対してブラックウォーグレイモンは右膝に付けている膝当てで逆風斬りを受け止め、右足を蹴り抜いてパラティヌモンを後退させると、一歩踏み込んで右腕のドラモンキラーを振るう。
左手に握るパラティヌス・ソードを逆手に持ち替えて攻撃を防ぎ、パラティヌモンは右手に握る聖剣を振り下ろして唐竹斬りを繰り出すが、ブラックウォーグレイモンは両腕を瞬時に背中に回した。
「『ブラックシールド』!!!」
―――背中に付いている物は盾だったのか!
ブラックウォーグレイモンは背中に翼のように装備されている2つの物を両腕に装着して前に突き出し、盾のように合わせながら唐竹斬りを防ぐ。
背中に装備されていたのが盾になるアイテムだと気付いたパラティヌモン。その隙にブラックウォーグレイモンはブラックシールドを背中に戻し、空高く飛び上がって両腕のドラモンキラーを頭上で合わせて高速回転しながら自身の体を漆黒の竜巻に変え、パラティヌモンに向かって突撃を開始する。
「ウオオオォォォォーーーー!!!!! 『ブラックトルネード』!!!」
「『ロイヤルストレートスラッシュ』!!!」
それを見たパラティヌモンはパラティヌス・ソードの1本を両手に握り締め、刀身から黄金の光を放ちながら全力で振るう。
漆黒の竜巻は空中で凄まじい速度で回転しながら、黄金の光は眩い輝きを放ちながら真正面から激突する。周囲一帯に凄まじい衝撃波が撒き散らされる中、2体の究極体デジモンはお互いを負かそうと更に力を込める。
竜巻の速度は上がり、大きさも巨大になる一方、黄金の光の輝きも増していき、その太さも巨大になっていく中、2つの巨大な力が反発し合った結果、超爆発が巻き起こる。
「グワッ!!」
「ガァッ!!」
パラティヌモンとブラックウォーグレイモン。両者の力は拮抗していたようだ。轟音を辺りに響かせながら漆黒の竜巻と黄金の光が消滅し、2体の究極体デジモンはお互いに吹き飛ばされた。
地面に叩き付けながらも先に立ち上がったのはブラックウォーグレイモン。両手の間に赤いエネルギー球を作り上げ、パラティヌモンに向けて投げ付ける。
立ち上がったパラティヌモンが左手に握るパラティヌス・ソードを振るい、赤いエネルギー球をかき消している隙に、ブラックウォーグレイモンはパラティヌモンとの間合いを詰めて右腕のドラモンキラーを振り抜く。
「『ドラモンキラー』!!!」
「チィ!!」
右手に握るパラティヌス・ソードで受け止めながら振り抜き、ブラックウォーグレイモンを弾き飛ばすが、ブラックウォーグレイモンは空中で体勢を立て直して着地すると共に、両手の間に赤いエネルギー球を作り上げて投げ付ける。
―――また先程と同じ攻撃か。そう思いながらパラティヌモンが聖剣を振るって赤いエネルギー球をかき消している間に、ブラックウォーグレイモンはパラティヌモンとの間合いを詰めて右腕のドラモンギラーを突き出した。
左手に握るパラティヌス・ソードで受け止めながら、パラティヌモンは右手に握る聖剣をブラックウォーグレイモンの胸部目掛けて薙ぎ払う。たたらを踏んで後退するブラックウォーグレイモンを右足で蹴り飛ばすおまけ付きだ。
「『ウォーブラスター』!!!」
蹴り飛ばされながらも立ち上がったブラックウォーグレイモン。更なる追い打ちをかけるようとパラティヌモンは背中の翼から光を放出するが、ブラックウォーグレイモンは両手の間にエネルギー弾を作り上げ、連続でパラティヌモンに向けて撃ち出す。
背中の翼から光を放出しながら超神速移動を開始し、『ウォーブラスター』を一瞬で掻い潜ったパラティヌモンが目にした物。それは大気中に存在している負の力を両手の間に集中させているブラックウォーグレイモンだった。
「『ガイアフォース』!!!」
「『ロイヤルストレートスラッシュ』!!!」
ブラックウォーグレイモンは赤く光る巨大なエネルギー球を投擲する一方、パラティヌモンは全身を黄金の光で覆い包んで突進していく。
『ガイアフォース』を真正面から打ち破るつもりだ。2つの必殺奥義はお互いを撃ち破ろうと鬩ぎ合うが、若干の拮抗を打ち破って黄金の光が突き進み、ブラックウォーグレイモンと激突した。
「……俺の負けか」
激戦を制したのはパラティヌモン。敗者のブラックウォーグレイモンは地面に倒れ伏せている。立ち上がる力が残されていないようだ。
真っ向勝負で敗北したのは何気にこれが2回目。数少ない敗北経験となったが、何処か寂しそうにしている。
「さぁ俺を殺せ。敗者である俺をお前は好きに出来る」
「殺す? それは出来ません。敗者を殺すのは私の流儀ではありません。敗者を丁重にするのが私の流儀です」
「フッ、変わった奴だなお前は」
「貴方には言われたくないです」
ブラックウォーグレイモンは敗者である自分を殺すようパラティヌモンは頼むが、パラティヌモンは自分の正義に反すると言って即座に却下した。
それどころかブラックウォーグレイモンの手を取って立ち上がらせた。しかし、ここで異常事態が起きた。本来であればここでブラックウォーグレイモンはデジタルワールドに強制送還されるのだが、何時まで経ってもその兆候が見れない。
「何故です? 何故デジタルワールドに戻らないのですか?」
「俺はデジタルワールドに戻れない。いや……そもそも戻る世界なんて存在しない。パラティヌモン、俺は普通のデジモンではない。ダークタワーという黒い塔が集まって生まれたダークタワーデジモンなんだ」
このブラックウォーグレイモンはダークタワーデジモン。どういう訳か復活して何者かから逃げていた。これは完全なイレギュラーな事態だ。
一体誰が何の為にブラックウォーグレイモンを蘇らせたのか。そのヒントを得ようと、パラティヌモンはブラックウォーグレイモンに質問を始める。
「ダークタワーデジモン……そういうデジモンなのですね、貴方は」
「あぁ。それに……俺を蘇らせた奴から逃げている最中、俺は正常なデータを失った。元々正常なデータなどないがな……今の俺はデータの抜け殻、デジモンの出来損ないに等しい」
「そんな事はありません! 貴方はデジモンです! 例え普通のデジモンでないとしても、ダークタワーデジモンだとしても、貴方はブラックウォーグレイモンと言う名前の立派なデジモンです!」
本来であれば、今のブラックウォーグレイモンは生きているだけでもやっとな状態。それでもパラティヌモンと互角以上に渡り合えた。
その理由は“生きたいという意思”にある。例え今はデータの抜け殻だったとしても、元々がダークタワーデジモンだとしても、生きたいという強い願いを否定する事は誰にも出来はしない。
「優しいんだな……パラティヌモンは。俺を蘇らせた奴は恐ろしいデジモンだ。俺を生贄に捧げ、邪悪なるデジモンを蘇らせようとしている」
「邪悪なるデジモン……?」
「奴は俺の全てを奪う為に、俺のデータを吸収しようとした。だから俺は隙を見て逃げて来た。奴に見つかったら取り込まれてしまう。そいつの名前は……」
「ッ! どうやら口封じをしに来たようですね……」
「邪魔ナデジモンヨ……消エ失セロ!」
パラティヌモンとブラックウォーグレイモンの目の前に現れた者。それは山のように巨大で得体の知れぬ何かだった。デジモンの命を吸収する邪悪なる存在。
上半身が山で、下半身が岩石、胴体がデータ粒子で出来たデジモンなのかよく分からない化け物。赤い瞳を輝かせ、赤い閃光をブラックウォーグレイモンに向けて放つが、パラティヌモンは右手に握る聖剣を振るってかき消す。
それを見ても化け物は怯まない。どうやらパラティヌモンとブラックウォーグレイモンの戦いを見ていたようだ。今度は超音波を放って来た。
「グアアアアァァァァァッ!!!!!」
「頭が痛い……!」
脳に凄まじい苦痛が伝わって来たのか、パラティヌモンとブラックウォーグレイモンは片膝を付きながら苦しみに満ちた声を上げる。
その隙を見逃す化け物ではない。全身から触手を伸ばし、パラティヌモンとブラックウォーグレイモンを捕らえようとする。
パラティヌス・ソードを振るって触手を弾き返すパラティヌモンだったが、先程の戦いのダメージで動けなくなったブラックウォーグレイモンを庇い、触手に捕らわれてしまった。
「クッ、しまった!」
「パラティヌモン!」
「私の事は気にせず逃げて下さい……人間界には沢山のデジモンがいるので、彼らに助けを求めればどうにかなります! また会う時は……良き仲間として共に戦いましょう!」
万物を一刀両断するパラティヌス・ソードですら、弾き返すのがやっとの強度を持つ化け物の触手。しかも神速の速さで放たれる。更には頑丈に出来ている。
そのまま化け物に取り込まれそうになるパラティヌモン。彼女を助けようと動こうとするブラックウォーグレイモンだが、身体は動かない。片膝を再び付いてしまった。
(俺は失うのか? 折角出来た仲間を……あの時と同じじゃないか!)
ブラックウォーグレイモンが思い出したのは前世の死に際。選ばれし子供達の家族を守る為に致命傷を負い、最後の力を振り絞って“人柱”になった時の事。
あの時はウォーグレイモンや八神ヒカリといった誰もが悲しみ、涙を流していた。きっと今の自分も彼らと同じなのだろう。
(俺を救おうと、助けようとしているデジモンがいる……そのデジモンは今にも死にそうなんだ! 動け! 動いてくれ俺の身体! 助けたいと思ったデジモンが出来たんだ!)
―――僕達、友達になれると思う。いや、きっとその為に君は心を持ったんだ!
―――そこへ至るまでの過程がいかなる物であったとしても、その存在には必ず意味があるのだ。
―――生きるってそういう事だもん! 何でも上手く行くとは限らない……みっともない……もう皆の前に顔を出せないと思ったって、それでも我慢して生きていかなきゃならないんだ!
(俺は決めたんだ。無様でも生きると。俺にも守りたい物がある! 誰でも良い。もう1度俺に戦う力を与えてくれ!)
ブラックウォーグレイモンが強く願ったその瞬間、全身を覆い尽くすかのように膨大な光の奔流が発生した。
一体何が起きたのか。化け物は触手を一度停止させた。パラティヌモンも見つめる中、周囲一帯に渦巻く光の中でブラックウォーグレイモンは叫んだ。
(これは……進化の光!? ありがとう……もう大丈夫だ。俺はこれからも生きる。これからも戦う。生きる意味を与えた皆の為に!)
「ウオオオオォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーー!!!!!! ブラックウォーグレイモン!!! 超究極進化!!!」
「馬鹿ナ!?」
「超究極進化!?」
ブラックウォーグレイモンが上げた雄叫びの意味。“超究極進化”という単語に耳を疑った化け物とパラティヌモンが信じられないという顔をしている中、ブラックウォーグレイモンは光に包まれていく。そして光が消失した後に新しいデジモンが姿を現した。
全身を漆黒の聖鎧で身を包み、背中に内側が青色で、外側が漆黒のマントを羽織り、右腕に漆黒の肩当てを付け、右手がブラッククーレスガルルモンの頭部を象った籠手となっている。左肩に漆黒の盾―『エレックシールドΩ』を装備し、左手がブラックブリッツグレイモンの頭部を象った籠手となっている。
「オメガモン・Alter-B!!!」
『ッ!?』
ブラックウォーグレイモンが進化した聖騎士の名前はオメガモン・Alter-B。オメガモンの亜種であり、新たなる可能性。オメガモンとは別個体だが、2体のデジモンの特性を併せ持ち、マルチタイプな性能は変わず、強さも同等な聖騎士型デジモン。
超究極進化を終えたオメガモン・Alter-Bの姿を見て、その進化体にパラティヌモンは目を見開き、化け物は驚愕の声を上げるしかない。
「有リ得ナイ……オ前ハ進化出来ナイ筈ダ!」
「確かに今までの俺なら進化する事が出来なかった。だがお前達がデータの大半を吸収してくれたから、俺は進化する事が出来た。これだけは礼を言うよ」
「オノレ……!」
ブラックウォーグレイモンは強くなれるとは言えど、本来であれば進化どころか成長もする事が出来ないダークタワーデジモン。
しかし、“心”を持ったダークタワーデジモンであり、データの大半の吸収された事で進化する事が出来た。ダークタワーデジモンではなく、1体のデジモンに新生する事が出来た。これは何気に凄い事だ。
「パラティヌモン、今助けるぞ!」
「グオオオオッ!!!!」
オメガモン・Alter-Bは左腕を軽く振るい、ブラックブリッツグレイモンの頭部を象った籠手から巨大な砲塔を展開した。パラティヌモンを捕らえている触手に照準を合わせ、プラズマ弾を撃ち込む。
プラズマ弾は触手に直撃してパラティヌモンを解放した。化け物が苦しみの声を上げる中、パラティヌモンは空中で体勢を立て直して着地する。
「ブラックウォーグレイモン……なんですね」
「心配をかけたな。でももう大丈夫だ。2人で奴を倒そう!」
オメガモン・Alter-Bの言葉に力強く頷いたパラティヌモン。彼女の右手には鍵の形をした一振りの剣が握られている。それを空間に差し込み、捻る事で“何か”の鍵を開けた。
その鍵剣が消えた代わりに、1本の剣を取り出した。螺旋を描いたような刀身が特徴の聖剣。聖剣の名前はカラドボルグ。アルスター伝説の名剣。
カラドボルグを握った途端、パラティヌモンが放つ『波動(コード)』がより強大さを増していく。それは隣にいるオメガモン・Alter-Bですら圧倒し、化け物が震え上がる程。これが本来のパラティヌモンの力なのかもしれない。
厄介なパラティヌモンを先に潰そうと思ったのだろう。化け物が赤い瞳から光線を放って来ると、パラティヌモンは右手に握るカラドボルグを一閃した。
「“轟け”! 『カラドボルグ』!!!」
「グオオオオッ!!!!」
同時にカラドボルグの刀身から虹の如き剣光が伸びていく。“振り抜いた剣光によって丘を三つ切り裂いた”という伝承がある聖剣。その一閃が赤色の光線を消し去り、化け物の胴体を薙ぎ払う。
そこに追い打ちをかけるのはオメガモン・Alter-B。空高く飛び上がり、自由自在に移動しながらグレイキャノンからプラズマ弾を連射していく。集中的に狙うのは化け物の弱点と思われる胴体部分。
カラドボルグの剣閃とプラズマ弾。2体の聖騎士型デジモンの連続攻撃を胴体部分に喰らっていくが、化け物は持ち直して口部分から赤色の巨大な閃光を放つ。
「ウオオオオッ!!!!」
「良し! 決めるぞ!」
オメガモン・Alter-Bは右腕から黄金の聖剣を出現させた。その聖剣の名前はガルルソード。それを薙ぎ払って化け物に向けて赤色の巨大な閃光を跳ね返す。
顔面に強烈な一撃を受けて動きを止めた化け物。それを見た2体の聖騎士型デジモンは止めを刺そうとお互いの武器を構え、エネルギーを注ぎ込む。
「『虹霓轟く螺旋の聖剣(カラドボルグ)!!!』」
「『グレイキャノン』!!!」
「ギャアァァァァァァァァァーーー!!!!!」
パラティヌモンはカラドボルグを薙ぎ払い、触れた物を空間切断する虹色の剣光を放ち、オメガモン・Alter-Bは左腕のグレイキャノンからプラズマ砲を撃ち出す。
胴体を一刀両断されながら空間切断され、プラズマ砲に呑み込まれた化け物は苦痛に満ちた雄叫びを上げながら、超爆発の中に消えていった。その後にデータ粒子が周囲一帯に拡散されていく。
「これからはどうしますか?」
「分からない。俺は別のデジモンとなり、追っていた奴を倒した。行く場所も帰る場所もない」
「でしたら私のいる所に来ませんか? そこは人間とデジモンが共に仕事をしているので」
「人間界にそんな場所があるとは……ありがとう。少しは生きる道が見えて来た」
戦いを終えた後、パラティヌモンとオメガモン・Alter-Bは話をしていた。問題はオメガモン・Alter-Bの今後。行く場所もない。帰る場所もない。そんな彼はこれからどうすれば良いのか。悩むしかない。
そこでパラティヌモンが提案したのは“電脳現象調査保安局”に来る事。そこから仕事も出来るし、社宅もあるから人間界で暮らしていける。彼女も普段は社宅暮らし。
その提案に目を細め、了承したオメガモン・Alter-Bと共にパラティヌモンは“デジクオーツ”を後にする。共に歩きながらパラティヌモンは考える。
―――決戦の日が近付いている。戻ったら薩摩さん達に報告しなければ。
パラティヌモンの考えは当たっている。今回の事件はこれまでのようなバトルの終焉を告げ、最終決戦に向けた戦いの激化を意味していた。
ブラックウォーグレイモンは特に悪い事はしていない。結果的には邪悪なるデジモンの存在を示唆した功労者だからだ。しかもオメガモン・Alter-Bとなり、自分達の味方になってくれた聖騎士。
疑問があるとしたら1つだけ。何故あのような事をしたのか。リスクを承知の上で逃げ続けたかったのか。その答えも1つだけだ。邪悪なるデジモンの存在を一人でも多くの者に伝えようと考えた為。
とにかく今回のような事態は十二分に有り得る。自分に隠されている特殊能力を使えるようにしなければ。そう思って自分を奮い立たせるパラティヌモンだった。
LAST ALLIANCEです。最新話読んでいただいてありがとうございました。
今回はブラックウォーグレイモンが登場し、まさかの進化を行ったサプライズな回となりました。個人的に大好きなんですよ、ブラックウォーグレイモン。
なのでこの小説でも出したいと思っていて、でもどうせ出すなら進化させてあげたいと思っていました。ファンサービスなのかエゴなのか分かりませんが。
デジモン図鑑を見ながらガイオウモンにしようかなとか、やっぱりX進化かなとか思っていたら、気が付いたらオメガモン・Alter-Bに決まってました。
公式設定とはかなり違う設定となり、後で設定集で紹介しますが、単純に言えば”黒くなっただけのオメガモン・Alter-S”となりました。
オメガモン・Alter-Sも第2章で出ます。出します。それは確定しています。
そしてパラティヌモンの真の力の一部が明かされましたが、以前『Pixiv』でも似たようなデジモンを出していました。知っている人は分かるでしょうけど。
でもかなり強過ぎたので設定を変えたり、制約を付けたりしました。
下手なチートキャラはあんまり良くないです。はい。
それと今回”デジモン化”について触れましたが、相当ヤバい状態です。
普段から戦っていたら嫌でもああなります。仕方ないです。
第1章が終わる頃には完全にオメガモンになってます。
この作品では、”デジモンとなる事・力を得る事=人間を捨てる事・日常生活を捨てる事”という事になってます。序盤の一真がそうでしたけど。
等価交換の法則というか、デジモンとの契約となります。
今回本格的に登場したカオスモンの中の人=櫻井竜也。彼も第2章で再登場します。
久し振りに長い後書きとなりました。
普段からこれくらい書きたいですし、本編の方ももう少し頑張れると思いました。
皆さん。よろしければ感想・評価の方よろしくお願いします。
あたたかい感想とか前向きなコメント、アドバイスやモチベーションが上がるような応援メッセージや高評価を頂くと、作者のやる気が超進化します。
最近はちょっと寂しいので本当に頂ければかなり頑張れます。
それでは次回をお楽しみに。LAST ALLIANCEでした!
次回予告
人間界が”デジクオーツ”に書き換わる現象が発生。その犯人はデクスドルグレモン。
”デジクオーツ”からの宣戦布告に、オメガモン達が立ち向かう!
初戦の相手はデクスモン。果たしてどう戦うのか!?
第24話 最終決戦開始! 聖騎士連合VSデクスモン