終焉の聖騎士伝説~オメガモンとなった青年の物語~   作:LAST ALLIANCE

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お待たせしました。今回から第2章が始まります。
第2章はイグドラシル・『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』との戦いが中心で、舞台が途中からデジタルワールドになります。
その第1話は戦闘はなく、第1章の後何が起きたか等の説明になります。
では本編をお楽しみ下さい。



第2章 Chase the Light!
第27話 新たなる予兆


 “デジクオーツ”事件。それは“デジクオーツ”に関係した電脳現象の総称。犯人は地球を“デジクオーツ”にしようとしたクオーツモン。オメガモンがクオーツモンを倒した事で“デジクオーツ”は消滅し、世界は元通りとなった。

 これによって世界は少しずつではあるものの、確実に変わり始めた。これまで“デジタルモンスター”という概念は存在していたが、その存在が世の中に明るみとなった。

 “電脳現象調査保安局”は“デジクオーツ”事件で一躍名を上げ、ついに国家が立ち上げた特殊チームから、国家直属の独立行政法人へとランクアップした。それに伴い、本部・支部のパワーバランスを均等にする為、人員の異動が行われる事となった。

 “デジクオーツ”事件の終結に伴い、本部の人員整備が行われた。新参者のオメガモン・Alter-BはデュークモンX・クレニアムモンがいるオーストラリア支部へと異動となった。

 しかし、デジモン関連の事件が終わった訳ではない。未だに人間界の至る所には沢山の外れデジモンがいる。オメガモン達の戦いはまだまだ続く。

 

「この世界に帰って来るのは半年ぶりだな。先に本部に顔を出そう。話はそれからだ」

 

 “デジクオーツ”事件終結から1年が過ぎようとしていたある日。“電脳現象調査保安局”の本部を見上げる青年の姿があった。まだ年齢も若い。26歳になったばかりだ。銀色の短髪をウニのように立たせた青年。その瞳は空色。

 “電脳現象調査保安局”の本部にいる局長。彼にこの世界に帰還した事を報告する為に、その青年は歩き出す。彼の名前は八神一真。“終焉の聖騎士”オメガモンとなった人間であり、デジモンでもある『電脳人間(エイリアス)』。

 クオーツモンを倒し、“デジクオーツ”事件の解決に大きく貢献した一真は、“終焉の聖騎士”の二つ名を持ち、半年間の異世界を渡り歩く武者修行に出ていた。その武者修行を終え、出身世界に戻って来た。彼の背中でオメガモンが羽織っているマントが翻っている。

 

「久し振りだな、一真。どうだった? 半年間の異世界での武者修行は」

 

「とても勉強になりました。異なる世界の人々と触れ合い、語り合い、共に戦う事。異なる世界の言語や文化を知る事。全てが僕にとっての宝物です」

 

 “電脳現象調査保安局”の本部長室。本部長となっている薩摩廉太郎に報告をしている一真。彼は“デジクオーツ”事件の解決に大きく貢献したが、休暇と更なる自己研鑽も兼ねて半年間の武者修行の旅に出掛けていた。数々の異世界を渡りながら。

 一真に“終焉の聖騎士”と言う二つ名を授けたのは薩摩だった。それだけ一真の実力を認めていると言う事になる。彼曰く、“大門大とトーマ・H・ノルシュタインを足して2で割ったような青年”との事。

 あらゆる世界を渡り歩いた一真。“デジモン化”した事によって、オメガモンが保有する能力を使う事が出来るようになった。次元を越える能力を持ち、様々な世界を行き来する事や、世界に干渉する事だって出来る。

 それらの能力を使ってあらゆる犯罪組織や海賊等を壊滅させて来た。時には言葉で改心させて真っ当な組織に変えたり、時には武力を以て二度と機能しないようにさせた。もちろんオメガモンに超究極進化せずに。

 最後に訪れた世界では治安維持組織が世界を治めていた。しかし、長きに渡る平和の中で当初の理念を失って腐敗し、その余波は民衆にも差別や貧困という形で蔓延していった。それを見て憤りを覚えた一真は行動を起こした。

 組織の腐敗を全て調べ上げ、それを白日の下に晒しながら民衆による革命を起こし、民主的な組織として再編させた。その先導に立った一真はその世界の英雄となり、その世界の歴史を大きく動かした。

 しかし、異世界出身の自分が干渉するのはここまでとある程度の線引きはしていた為、後の世界はその世界の人々に託して自分の世界に戻っていった。統治も上手く行くように様々なアドバイスをしたおかげで、その世界は今では以前よりも遥かに暮らしやすくなった。皆が前を向いて希望を抱けるように。

 現在も自分が訪れた異世界の面々と文通をしているという一真。暇を見て沢山書くようにしているが、仕事をしながらになるので中々上手く行かない。

 

「そうか。良い経験となったな……」

 

「そちらの方は順調ですか?」

 

「あぁ。おかげ様で。皆頑張っているよ。ただ……ここ最近外れデジモンの出現件数が多くなっている」

 

 薩摩が渡したのは一冊の報告書。そこには一真が異世界旅行に出掛けている間、人間界に出現した外れデジモンのデータと事件の顛末が事細かに記されている。一真はそれを手に取り、1ページ1ページを丁寧に読んでいく。

 人間界の至る所に出現している外れデジモン。“電脳現象調査保安局”の各支部でもどうにかしているが、中々減る予兆が見えない。その中で、パラティヌモンは“彼らは人間界で悪さをしたい訳ではなさそうです。ただ何かから逃げているだけに思えます”と独自の意見を述べている。

 

「原因はイグドラシルでしょう。この世界に来る前、デジタルワールドに行きました。ガンクゥモンとジエスモンに会って少し詳しい話を聞けました」

 

「おっ、そうか。詳しい話を聞こうか」

 

 一真は3日前の事を話し出す。場所はデジタルワールド。オメガモンに超究極進化していた彼は、デジタルワールド最南西部にいるガンクゥモンの住居に来ていた。

 クロンデジゾイド製のちゃぶ台。座布団に座っているオメガモンの所に来たのは2体の聖騎士。身体から“ヒヌカムイ”を浮き上がらせ、赤い髪をし、目の部分をバイザーで覆い、背中に白いマントを羽織り、底の高い下駄を履いたガンクゥモン。

 全身を白銀の聖鎧で覆い尽くし、背中に赤いマントを羽織り、両腕に鋭い聖なる刃を装備したジエスモン。

 

ーーーーーーーーーー

 

「済まない。待たせたな、オメガモン」

 

「初めまして。“終焉の聖騎士”。君の活躍は聞いているよ?」

 

「いや私もついさっき来たばかりだ。初めまして、ガンクゥモン。ジエスモン。私がオメガモン……八神一真だ」

 

 ガンクゥモンとジエスモンと初対面となるオメガモン。座布団から立ち上がって彼らと握手を交わし、再び座布団の上に座る。

 お互いに『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』の一員。オメガモンは“巡り会いの戦い(クロスウォーズ)”があったデジタルワールド、ガンクゥモンとジエスモンはこのデジタルワールドの出身だ。

 

「そちらの調子はどうだ?」

 

「う~む、そうだな……相変わらずだ。やっている事は変わらないが、今起きている事態が深刻だから何とも言えないな」

 

 ガンクゥモンはデジタルワールド最南西部に居を構えるとされているものの、同じ場所に留まることは極稀れと言われている。

 何故なら次代を担わせるハックモンを連れ、デジタルワールドの各地を旅しながら異変や混沌の兆候を潰して回っているからだ。

 存在を見せることが少ない他の『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』とは違い、現地に降り立って活動しており、気心知れたデジモンも数多くいる。その仲間とも言えるデジモン達から様々な情報を聞いている。

 それでも今回の事態はガンクゥモンにも余りにもイレギュラーであり、対応に困っている。後手に回っているのが実情だ。

 

「ジエスモンは?」

 

「俺もだよ。正直休みたいぐらい毎日働いている」

 

 ジエスモンはデジタルワールド各地に起こる異変や混沌の兆しを感知する能力を備え、どの『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』よりも素早く駆け付ける。

 単独で行動するよりも、近くのデジモン達やシスタモン達と連携して事態に対応している。『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』の中でも稀なチームでの活動を行うのは他者を信頼し、自分への過信を行わないからだ。

 

「何か異変の兆候とかを見付けたのか? 外れデジモンの出現理由とか……」

 

「見付けていたら我々でどうにかしている。どうにも出来ないから悩んでいるんだ。外れデジモンの件は。誰が・何時・何処で・どうやって・何故人間界に行くのかが分からないんだ。予測不能なんだよ」

 

「そうか……済まないな」

 

「いや良いよ。ただその代わり、こっちはある意味ビッグニュースを手に入れた」

 

 そう言ってジエスモンがオメガモンに何かを見せた。それは昨日の新聞。デジタルワールドにも新聞が存在しており、全てデジモン文字で書かれている。オメガモンとなった一真はもちろん読む事が出来る。

 その一面記事を読んでいるオメガモンの表情が険しくなる。写真に大きく出ているのはロードナイトモン。自分と同じ『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』の一員。このデジタルワールドを守護する聖騎士だ。

 

「ロードナイトモンがデジモンを撃退した!?」

 

「正直私もどうかと思ったのだよ。だがな、オメガモン。最近は各地のデジモン達が突如として自我を失い、凶暴化するという現象が起きている。様々なデジモンが被害を受けていて、我々はその対処に追われている。戦わずに正気に戻せれば良いが、それが中々難しくてな……私もまだまだ修行不足のようだ」

 

「イグドラシルもようやく重い腰を上げたんだ。他の『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』に凶暴化したデジモンを撃退し、最悪倒して良いと指令を下した。正直助かると言えば助かるけど、かなりやり方が強引過ぎるから俺達はその後始末に追われていてね……困ったもんだよ」

 

 オメガモンが読んだ新聞の一面記事。そこにはマグナモンが自我を失い、凶暴化したデジモンを撃退したと書かれている。

 ガンクゥモンとジエスモンは溜息を付きながら、その裏話を話し始める。今までは彼らとその仲間達で事態に対処していたが、イグドラシルが重い腰を上げて他の『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』に凶暴化したデジモンを撃退し、最悪倒すように命令を下した。

 それはそれで非常に助かるのだが、ガンクゥモンとジエスモンはその後始末に追われている為、余計な仕事が増えたと言いながら困ったような笑みを浮かべている。

 

「今人間界に外れデジモンが現れているのも、デジモンの凶暴化が関係しているかもしれない。“この世界にいると凶暴化してしまう。だったら人間界に逃げよう”と。もし凶暴化したデジモンが人間界に現れてもみろ。そうしたら大変な事になるぞ?」

 

「気を付けて。今起きているこの事態には何か裏がありそうだから」

 

「分かった。ありがとう」

 

 ガンクゥモンは現在ホメオスタシスが治める地域に住居を構えている。ホメオスタシス側はガンクゥモン、イグドラシル側はジエスモンという分担制となっている。

 2体の聖騎士からデジタルワールドの現状と、外れデジモンの増加に関する裏話とヒントを得たオメガモン。ガンクゥモンの住居から出ると、そこには3体のデジモンがいた。

 赤色の装甲に全身を包み、右腕にドリルのような爪を、左腕に三本爪を装備し、背中に2門のキャノン砲を装備しているカオスドラモン。背中に4枚の白色と青色の翼を生やし、腰に2体の生体砲を装備したパイルドラモン。『GAKU-RAN(ガク-ラン)』を肩に羽織り、二足歩行の獅子のような姿をしたバンチョーレオモン。

 

「? 君達は……」

 

「久し振りだな、オメガモン。俺はカオスドラモン。元ムゲンドラモンだ」

 

「俺はパイルドラモン。ヤシャモンが進化した」

 

「俺はバンチョーレオモン。まぁ……曰く付きだ」

 

 カオスドラモン、パイルドラモン、バンチョーレオモン。彼らは“デジクオーツ”事件でオメガモンと関りがあったデジモン達の進化体だ。

 ブレイクドラモンを人間達に作らせたムゲンドラモン。彼はカオスドラモンに進化する事が出来た。今は『鋼の帝国(メタルエンパイア)』で重役を担っている。

 剣道部員に剣の道を教えたヤシャモン。彼はパイルドラモンに進化し、今はジエスモンの片腕として大活躍をしている。

 ベルゼブモンの前に姿を現したレオモン。彼は『デジモンテイマーズ』に登場した個体と同一個体なのだが、ホメオスタシスによって転生した。『デジモンセイバーズ』に登場したバンチョーレオモンと融合する形で。

 

「久し振りだな、皆」

 

「あぁ、元気そうで何よりだよ」

 

「クオーツモンを倒したんだって? 凄いよ。ホメオスタシス様が言っていたよ」

 

「人間界に戻るのだろう? 気を付けて」

 

「ありがとう。皆も元気で。また会おう」

 

 3体のデジモンと軽い立ち話をしたオメガモン。彼らは新しい道を歩みながら、ガンクゥモンとジエスモンに協力している。

 彼らとまた会える日は近い。そして共に戦う日も何時か来るだろう。そう思いながら、オメガモンはデジタルワールドを後にした。

 

ーーーーーーーーーー

 

 それから1週間後。“電脳現象調査保安局”の本部の会議室。そこでは1ヶ月に1度、各支部の代表を集めて定例会議が行われている。そういう決まりになっている。

 今回はアメリカ支部からアルフォースブイドラモン、イギリス支部からロードナイトモン、オーストラリア支部からデュークモンX、そしてデジタルワールドからジエスモンが来ている。本部からは薩摩&クダモンが参加している。

 ジエスモンの口からデジタルワールドの現状とデジモン達の凶暴化、外れデジモンの増加について一通り話が行われた。その話の後、最初にアルフォースブイドラモンが口を開いて話し合いが始まった。

 

「お疲れ様、ジエスモン。それで……デジタルワールドは実際の所どうなんだ?」

 

「今日の定例会議の為に3日間デジタルワールドを旅して、色んなデジモン達から聞き込み調査をした。やっぱり凶暴化は1日に何十件も起きている。デジモン達でどうにか出来る物や、俺達『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』で解決する物もある。良い修行にはなるけど、流石にな……」

 

「大変なんだね、そっちも。こっちは外れデジモンが出たら出動しないとだし……しかも毎日のように」

 

「お互い色々と大変な事ばかりだな……こっちも凶暴化の件が片付いていない。向こうの『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』も一部を除いて動く気配が全くない。恐らくは……」

 

「あぁ、ジエスモン。このデュークモンも同じ事を考えた」

 

 ジエスモンとデュークモンXが内心で考えた事。それはイグドラシルが『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』の面々を何らかの方法で強化し、ホメオスタシスとの戦いに備えていると言う事だ。

 イグドラシルはこのデジタルワールドの神。過激で攻撃的な性質を問題視されてホメオスタシスが建造された。ホメオスタシスとは対立関係にあり、これを切っ掛けに全面戦争を行おうとしているのではないか。それがジエスモンとデュークモンXの考えだった。

 デジモンと人間の共存を拒んでいるどころか、デジタルワールドの為に人間界を消し去ろうとしているのではないか。その為に人間界を崩壊させ、デジタルワールドに取り込もうとしているのかもしれない。

 

「でもイグドラシルは直ぐには動けない筈だ。『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』の強化には時間が掛かる筈だ。全員を動かさないのはそういう事情があると俺は考えている」

 

「ジエスモン。デジタルワールドの動きは君とガンクゥモンに一任する。何かあったら私に連絡を入れて欲しい。一真君……オメガモンもこの事を知っている」

 

「はい。デジタルワールドには俺達の仲間達が各地にいるので、動きがあったら直ぐに分かります。お任せ下さい」

 

 『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』の中では、まだ年齢的・経験的に若いジエスモン。仲間に対しては聖騎士とは思えないフランクな口調だが、“電脳現象調査保安局”の本部長たる薩摩には丁寧口調だ。

 “デジクオーツ”事件が終結して1年。再び人間界でデジモンが関係した戦いが始まろうとしている。誰もがそれを感じている。

 

「今回の事を知っているのはここにいる皆と一真君……オメガモンだけだ。他の皆にはまだ言わなくて良い。何時か必ず言わなくてはいけない時が来る事は分かっているが……あまり局員皆の不安を煽らせたくないんだ」

 

「分かりました。俺はデジタルワールドに戻ります」

 

「頼んだぞ、ジエスモン」

 

 “電脳現象調査保安局”の定例会議が終わり、各支部から集まった聖騎士達は戻っていく中、薩摩とクダモンは真剣な表情をしながら考え事をしている。

 ジエスモンとガンクゥモン。共にこのデジタルワールドの『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』なのだが、イグドラシルには仕えていない。人間界に対する考え方や統治に付いていけず、ホメオスタシス側に付いた。貴重な戦力である。

 

ーーーーーーーーーー

 

「ウオオオオオォォォォォーーーーーー!!!!!」

 

「『風の守護壁(ウィンド・ウォール)』!!!」

 

 同じ頃。“電脳現象調査保安局”の本部。会議室から少し離れた訓練室では、模擬戦が繰り広げられている。対戦カードはパラティヌモンと、ウィザーモンが究極進化したメディーバルデュークモン。

 パラティヌモンは右手に握るパラティヌス・ソードを薙ぎ払いながら、刀身から黄金の剣光を伸ばして攻撃するのに対し、メディーバルデュークモンは目の前に風の防御壁を展開して防御する。

 そして右手に握る究極魔槍―デュナスに突風を纏わせて振るう事で、破壊力を伴った暴風としてパラティヌモンに向けて撃ち出す。

 

「ハァッ!!」

 

「やっぱり迎撃されるか……パラティヌモン!」

 

「攻撃からの構え直しが遅い!」

 

 パラティヌモンに向けて襲い掛かる凄まじい暴風。それに対し、“聖騎士王”は左手に握るパラティヌス・ソードを振るい、剣圧を放って打ち消す。

 右手に握る聖剣の剣先を突き付けながら言い放ち、背中の翼から光を放出させて突進を開始する。お得意の近接戦闘・超速機動戦に持ち込むつもりだ。

 それをさせてはいけない。メディーバルデュークモンは何度もパラティヌモンと模擬戦を行っている為、彼女の戦い方を一通り学習している。

 デュナスの戦斧部分に突風を纏わせて振り下ろし、無数の風の刃を放つ事でパラティヌモンの全身を斬り刻もうとする。

 

「なっ!?」

 

 しかし、パラティヌモンは迫り来る無数の風の刃を見た。その隙間をどう掻い潜るかを一瞬で判断すると、背中の翼から放出している光の量を爆発的に増やすと同時に加速。

 無数の風の刃を掻い潜り、一瞬でメディーバルデュークモンの前に姿を現すパラティヌモン。驚きの表情を浮かべるメディーバルデュークモン目掛け、右手に握るパラティヌス・ソードを振り下ろす。

 相手に何もさせない超神速のスピードと剣技。これがパラティヌモンの最大の武器。相手の攻撃を躱し、攻撃態勢から戻ろうとしている間に仕留める。これが基本戦術。

 攻撃を防御する事はあるが、全くと言って良い程攻撃が当たらない。それは卓越した反射神経、反応速度、剣技があるからこそ。必要最小限の動きで攻撃を躱し、相手の急所を攻撃して仕留める。

 剣技その物はかつてアーサー王だった頃に培ってきた。身体に染み付いた技術は今でも生きている。ガウェイン卿やランスロット卿の強さには及ばないが、それでも“デジクオーツ”事件の終結に貢献しただけの事はある。

 

「ハアアアァァァァァァァァッ!!!」

 

「クッ!!」

 

 振り下ろされたパラティヌス・ソードをデュナスの戦斧部分で受け止めて弾き返し、返す刀でデュナスを突き出すが、パラティヌモンは身体を回転させながら躱し、メディーバルデュークモンの喉元に聖剣の剣先を向けた。

 勝負あり。チェックメイト。メディーバルデュークモンは観念した様子で降参の意を示し、模擬戦を終わらせた。

 

ーーーーーーーーーー

 

 “電脳現象調査保安局”の社内食堂。模擬戦を終えたパラティヌモンとウィザーモンはテイルモンと共に、昼食を取っている。

 パラティヌモンが食べているのは日替わり定食。この日は白飯・味噌汁・生姜焼き・サラダ・漬物のセット。パラティヌモンは白飯を大盛りにしている。ウィザーモンはカレーライスを食べ、テイルモンはかけうどんを食べている。

 

「相変わらずパラティヌモンは容赦ないわね……」

 

「何言っているんですか? これでも手を抜いている方ですよ?」

 

「とてもそうには思えないんだけど……」

 

 パラティヌモンは相変わらずだ。2振りのパラティヌス・ソードのみを使用し、日本各地に出現している外れデジモンを撃退している。

 その合間にテイルモンとウィザーモンと模擬戦を繰り広げている。“デジクオーツ”事件の功績が認められ、パラティヌモンは“聖騎士王”という称号を授けられた。

 ウィザーモンは“電脳現象調査保安局”の研究部長となり、テイルモンは彼を支える研究副部長となった。人事異動で昇格したのだ。

 

「“デジクオーツ”事件が終わって1年。相変わらず外れデジモンは出現しています。何時何処に現れても大丈夫なように日頃から鍛錬を行わなければなりません」

 

「そうね……優衣さんもデジタルワールドに出張しているし」

 

 工藤優衣ことアルファモン。彼女は“創世の聖騎士”という称号を授かったが、今は“電脳現象調査保安局”にはいない。

 彼女は今デジタルワールドにいる。薩摩本部長の命令を受け、ガンクゥモンとジエスモンのお手伝いをしている。それと共に“寿司処 王竜剣”に必要な新年なお魚を仕入れている為、“寿司処 王竜剣”は只今休業中だ。

 何故優衣がデジタルワールドにいるのかは一般局員には明かされていない。知っているのは各支部の代表とガンクゥモンとジエスモン、そして薩摩本部長と鏡花主任と一真。極一部の面々しか分からない。

 

「優衣さんがデジタルワールドに出張したのには何かありますね。恐らくデジタルワールドで何かが起きているのでしょう」

 

「或いは僕達の知らない何かが進んでいるか……こればかりは分からないね」

 

 この機密事項はパラティヌモンにも分からない。まだ入局して日が浅いからだ。テイルモンとウィザーモンも同様だ。まだ機密事項は明かされていない。

 しかし、彼らは感じている。優衣が今現在いるデジタルワールドで何かが起きていると言う事に。そして戦いが近付いている事も。

 

ーーーーーーーーーー

 

「この車に乗るのも久し振りだな……」

 

 次の日。人間界に帰還して早々に一真は仕事に出ている。今彼が乗っているのは自家用車ではなく、“電脳現象調査保安局”の営業車。

 政治家や官僚、一般市民にデジモンの事を教えながら交流を深めると言う仕事が新たに増えた。これも“電脳現象調査保安局”が名を上げたからだ。

 今は就職活動に勤しむ学生やその両親達から圧倒的な支持を受けている為、厳しい就職前線を潜り抜けた学生達が沢山入って来る。何時かは“電脳現象調査保安局”の名前が無くなり、異なる組織となるだろう。

 一真やパラティヌモン達がデジモン達と戦っている為、彼らが戦場に立つ事はない。しかし、“デジクオーツ”事件のような事があれば、前線に立たなければならない。その事を理解している学生が果たしてどれだけいるのだろうか。

 

―――物の上っ面だけしか見れない人が世の中まだまだ多いと言う事か。僕はそうなりたくないし、そうならないようにこれからも気を付けて行こう。

 

 彼らはネームバリューや給料や福利厚生だけを見たに違いない。仕事内容は決して楽ではない。人の命を守る仕事。外れデジモンを撃退したり、巻き込まれた人間の救助。肉体労働が中心となる。

 その為、入局してからは基礎体力を付ける意味も兼ねて、新人教育が1ヶ月間行われている。人間界で言う自衛隊のような役割を担っている。対デジモン用自衛隊。

 一真はオメガモンとなった。しかも『僕らのウォーゲーム!』に登場したオメガモンに憧れている為、誰かを守る仕事は適職だったと言える。

 

―――まぁ僕も人の事を言えないんだけどね。今は充実した毎日を過ごせているけど、それが出来るのは一握りの人間だけだし。

 

 1ヶ月間の新人教育の後、薩摩本部長の立ち合いの下でテストが行われる。本当に“電脳現象調査保安局”の局員として務められるかどうか。技能や心構えを確かめるテストだ。

 デジモンと人間の命を守る仕事だ。守る側も命を賭ける覚悟を持たなければならない。生半可な覚悟ではこの先やっていく事は出来ない。

 そして一番必要になるのは力だ。助けた人間達と共に生還する事が出来る実力。仕事が出来るかどうか。力と言うよりも本人の実力となる。

 1ヶ月間の新人教育で意欲を確かめ、その後の確認テストで才能と実力を確かめる。やる気・才能のない人間より、やる気・才能のある人間の方が必要になる。例えどちらかが欠けていても、本人の努力と周囲の教育次第では伸びる事が出来る。

 

―――オメガモンになってからは色々と苦労したな。人間とデジモンの狭間で悩んだけど、完全なオメガモンになった今はそうでもないし……

 

 人間として、デジモンとしてしっかり生きている一真。ただ、やはり人間としての生活が身体に染み付いている為、日常生活は人間の姿で、戦闘の時だけオメガモンの姿でいる事が多い。やはりその所には拘りがあるのだろう。

 皆が毎日生きていく中で何かと戦っているが、それは目に見えない何かと戦っている事が多い。仕事や勉強等の目に見えない・触れない何かと。普段から戦っているのはスポーツ選手や軍人。

 デジモンは普段から戦いをしているが、一真も“デジクオーツ”事件で戦い続けた。その結果、力が強大となり、“デジモン化”してしまった。このような経験は二度と誰にもさせたくない。その一心で異世界旅行をしながら、己を鍛え続けて来た。

 

―――でも先ずは僕に出来る事をしよう。さぁ仕事だ。仕事。

 

 一真が営業車を走らせて向かっている場所。そこはとある高等学校。これから体育館に集まった全校生徒の目の前で、デジモンに関する特別授業を行う。

 気持ちを入れ替えて目的地に向かう一真。彼の新たなる仕事が始まったと同時に、新しい戦いもまた始まろうとしていた。

 

 




LAST ALLIANCEです。
今回も後書きとして、本編に出たデジモンや内容の裏話を話していきます。

・第2章の時間軸
第1章の1年後です。

・第1章の後の“電脳現象調査保安局”の動き

国家が立ち上げた特殊チームから、国家直属の独立行政法人へとランクアップ。
→これによって局員の地位や給料、福利厚生が良くなりました(前も良かったけど)
→でもやる仕事や責任感が増えました。それに加え、新卒採用も行う様になりました。
→要は国家機密の精鋭部隊だったのが、開かれた組織になったと言う事です。

・人員異動
→オメガモン・Alter-Bはオーストラリア支部に異動。第2章に出ますよ?

・一真の帰還
”終焉の聖騎士”という称号を授かり、半年間異世界を渡り歩く武者修行に出ていました。これは外伝ネタ・コラボとして使えるかな?と思って入れました。
→外伝をするとしたら『インフィニット・ストラトス』や、『Fate/Grand Order』になります。
→特に『Fate/Grand Order』だとオメガモンの姿で大暴れ(神霊クラスの実力者)しちゃうので、活躍は程々に抑えようと考えています。

・外れデジモンの出現&イグドラシルの動き
第2章の序盤のメインとなります。
→ガンクゥモンとジエスモンは第2章で初登場しましたが、彼らは味方です。転生組ではありませんが、ちゃんとした味方です。
→第2章のラスボスですが、クオーツモンと違って積極的に動いています。『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』を”とある方法”を使って強化している時点で。

・カオスドラモン・パイルドラモン・バンチョーレオモン
第1章で登場したデジモン達の進化体です。
→彼らは皆ガンクゥモン・ジエスモンの仲間で、特にバンチョーレオモンは強大な戦力となっています。

・一真の苦悩(?)
元々は人間だった一真。今も人間の姿にはなれますけど。
デジモンとなった自分と、人間だった自分の狭間の葛藤を書いてみました。


裏話はこんな感じになります。今回は説明回だけあって話自体は動いていません。
次回も話自体はそこまで動かない予定です。

皆さん。よろしければ感想・評価の方よろしくお願いします。
あたたかい感想とか前向きなコメント、アドバイスやモチベーションが上がるような応援メッセージや高評価を頂くと、作者のやる気が超進化します。

それでは次回をお楽しみに。LAST ALLIANCEでした!

次回予告

外れデジモンと戦う一真だが、刻まれた破壊の爪痕は大きかった。
そんな一真達の前にとある人物が現れ、今起きている現象について話し始める。
その頃、デジタルワールドには新たなる動きが見られようとしていた。

第28話 動き出す事態の中で
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