終焉の聖騎士伝説~オメガモンとなった青年の物語~ 作:LAST ALLIANCE
今回は一体何処で何が起きているのか・どういう理由で起きているのかについて説明していきます。
デジモンっぽいサブタイトルが多かった第1章に比べて、第2章はシリアスが強いからか、真面目なタイトルで行こうと考えています。
次回の投稿は設定集になりますので、よろしくお願いします。
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東京都内のとある高等学校。そこでデジモンに関する特別授業を終えた八神一真。営業車で“電脳現象調査保安局”の本部に戻っている最中、強大な『波動(コード)』を感じて1人の女性を助けた。
その女性の名前はノルン。デジタルワールドの神様であり、ホストコンピューターのイグドラシルの良心。その主要部分。彼女を連れ戻そうとデジタルワールドから2体の聖騎士が刺客として派遣された。
ロードナイトモン・ベイリンとデュナスモンX・シグムンド。八神一真ことオメガモン・アルビオンが彼らを退ける事に成功し、彼女は一真と共に“電脳現象調査保安局”の本部に向かった。その本部長室にいるのは一真、ノルン、薩摩本部長、クダモン、鏡花だけだ。
「初めまして。私はノルン・イグドラシルと言います。デジタルワールドの神であり、ホストコンピューターのイグドラシルです」
『イグドラシル!?』
薩摩本部長、クダモン、鏡花はノルンの自己紹介に驚くしかない。まさか目の前にいる美女がイグドラシルだとは信じられない。
ホメオスタシスと対立している筈なのに、どうして人間界に逃亡して来たのか。彼らは共通の疑問を抱いた。
「どうしてデジタルワールドの神様が人間界に!?」
「それは……私が追われているからです」
「追われている? 誰に? どうして?」
「もう1人のイグドラシル……マキに追われています。お願いです。彼女を止めて下さい。彼女は今、何者かと一体化しています」
ノルンは自分の事を正直に話し始める。元々、イグドラシルはデジタルワールドの創世期に建造されたホストコンピューター。人間とデジモンはどう関わるべきか。どう接するべきか。人間との関わり合いに悩みながらも前進している良き神様だった。
元々人間界とデジタルワールドの共存を心から望み、人間とデジモンは分かり合えると信じていた。ノルンとマキの姉妹のように仲の良い2人の人格による共同統治。しかし、ある日マキは1体のデジモンと出会って見てしまった。人間によって悪用され、命を弄ばれ、殺され続けるデジモン達の不幸を。デジタルワールドを荒らす人間達の横暴を。
デジモンの未来を守る為、デジタルワールドの為を想う強い心が、そのデジモンの考えを認めてしまったのだろう。マキはそのデジモンと一体化し、その時から過激で攻撃的な人格となってしまった。
ノルンが良心で、マキが良心の無い抜け殻。マキの行き過ぎた統治をノルンが止める事が出来ず、彼女のやり方に反発したデジモン達が武力蜂起を行い、『厄災大戦』が勃発した。これが『厄災大戦』の勃発の原因だった。
「元々イグドラシルは貴女とマキさんで共同統治していた。マキさんのやり方が悪すぎて『厄災大戦』が起きたと」
「はい。その時にパラティヌモンが誕生しました。アーサー王だった彼女をデジモンにしたのは私です」
「成る程……」
『厄災大戦』の最中、アヴァロンに向かっていたアーサー王が、時空の歪みに巻き込まれてデジタルワールドに流れ着いた。
異世界に迷い込んだ彼女を救い、パラティヌモンに転生させたのはノルンだった。その後、パラティヌモンは13体のデジモン達を率いて『厄災大戦』を終結させた。
「あの戦いが終わった後、大戦の反省を踏まえてホメオスタシスが建造されました。イグドラシル……私達は破棄される予定でした。でも原因は私達の共同統治にあるとされ、私達は破棄されませんでした」
「多分ホメオスタシスはノルンさんとマキさんを消したくなかったのでは?」
「それもあると思います。話を戻しますが、マキはイグドラシルの力の全てを没収され、ホメオスタシスと私の分割統治に移行しました」
『厄災大戦』の終結後、ホメオスタシスが建造された。それに伴ってマキはイグドラシルの力の全てを没収され、ホメオスタシスとノルンの分割統治になった。
しかし、これがデジタルワールドに負荷をかける結果となった。“デジクオーツ”を生み出す原因の1つにもなってしまったのだから。
―――デジタルワールドを統治する神は1体だけ。
これが全てのデジタルワールドにおける鉄則。止むを得ないとは言えど、この鉄則に背いた事で、デジタルワールドから大量の“歪み”のエネルギーが生まれてしまった。それに伴い、人間界に迷い込むデジモンが発生し、外れデジモンの出現理由となった。
ここまではバグラモンの話の通りだ。彼はクオーツモンとの決戦直前、“デジクオーツ”と自分達が人間界に来た理由を話した。
しかし、矛盾している所もある。デジタルワールドの在り方や人間界との接し方を巡り、イグドラシルとホメオスタシスが対立していた。この部分は一体どういう事なのか。
「今から5年前……くらいでしょうか。『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』がクーデターを起こしました。首謀者はマキ。彼女は『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』を率いてイグドラシルを掌握し、私を抹殺しようとしました」
「何て事を! 力を没収された恨みでしょうか……」
「はい。そうだと思います。私はガンクゥモンとジエスモンに助けられ、ホメオスタシスに匿われました。確かその時からでしょうか。バグラモン達が転生したのは……」
「そういう事でしたか……やっぱりか」
今から5年前。マキは『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』を率いてクーデターを起こし、ノルンを抹殺しようとした。
ノルンは逃亡してガンクゥモンとジエスモンに運良く助けられ、そのままホメオスタシスに匿われた。ノルンの話を聞いた彼女は事態を重く見て、来たるべき決戦に備えて過去に活躍したデジモン達を転生させ始めた。
オメガモン達が転生した理由。それは彼らの推測通りだった。イグドラシルことマキの決戦に備える為。言わば戦力増強の為。
「一真君。暫くの間彼女を君の家に泊めてくれないか? もしもの事に備えておかないと」
「えっ!? わ、分かりました!」
「ありがとうございます!」
その後もノルンから詳しい話を聞いた一真達。薩摩本部長は一真にボディーガードも兼ねて、暫くの間彼女を自宅に泊める事を依頼した。本当ならば“電脳現象調査保安局”の寮に泊めたいが、もしもの事に備えてノルンを一真に託そうと言うつもりだ。
目の前にいるのはデジタルワールドの神様だが、絶世の美女でもある。その女性を暫くの間家に泊める。と言う事は一つ屋根の下同居する事になる。年齢は25歳で止まったが、年齢=彼女いない歴の一真にとって、この提案は雷に打たれたような衝撃だった。
とは言えど、上司からの命令には逆らえない。戸惑いながらも一真が了承すると、ノルンは感謝するように深々と頭を下げた。
一真にノルンを頼むと念押しをしてから下がらせた薩摩本部長とクダモン。彼らの表情は真剣だ。ついに事態が動き出したと気付いたからだ。
イグドラシルが2人いる事実。1人が善で、1人が悪。その善の人格が人間界に逃亡して来た。一気に事態が加速した。そう考えるしかない為、薩摩本部長とクダモンは真剣な表情をしながらこれからの対応策を考え始めた。
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「酷い……ここもなのね」
同じ頃。デジタルワールドのディレクトリ大陸。その北西部にある街に降り立った工藤優衣。その街は活気があって商売繁盛で有名なのだが、その活気が消え失せたのは目の前の惨状が告げていた。
何者かによって破壊され、完全に荒れ果てた街。生存者がいないかどうか。念の為に荒地を歩き回る優衣だったが、残念ながら生存者は誰一人としていなかった。
「皆殺されちゃったのね……しかも犯人は街を砲撃で破壊したと」
優衣はその場にしゃがみ込み、魔法陣を展開した。一体街で何が起きたのか。それを解析していると、犯人と思われるデジモンがこの街を砲撃で焦土に変えた事が明らかになった。
その証拠に街の至る所が破壊し尽くされている。これまで起きた事件は街を何らかの方法で破壊し、デジモン達を殺戮していった。ある事件は灼熱の火炎。別の事件は超低温のブリザード。今回の事件は強烈な砲撃。
「共通点は街が破壊され、デジモン達が殺戮されている事。まるでデジモン達を粛清しているみたいね……待って! 粛清って事はまさか!」
優衣の中に宿っているアルファモンが告げている。今回の事件は別世界で起きた出来事に極めて酷似していると言う事に。
かつての因縁。『プロジェクト・アーク(箱舟計画)』。またそれがこの世界で実行されようとしている。
「同じような事が多発的に起きている。襲われた街や島はバラバラ。同一犯ではない……黒幕は一緒だけど。これはデジモン達を粛清しつつ、私達を誘っているような物ね。と言う事は……!」
「よくぞ気付いたな工藤優衣。いや……こう呼ぶべきかアルファモン」
突如として優衣の目の前に姿を現したのは3体の聖騎士。所々に金色の装飾が施された“ブルーデジゾイド“の聖鎧に身を包み、胸部にV字型アーマーを備え、背中に青い翼を生やし、両腕にVブレスレットを装備したアルフォースブイドラモンX・ローラン。
六本の脚を持ち、赤いレッドデジゾイド製の聖鎧で身を包み、左腕に聖弩ムスペルヘイムを握り締め、右腕に聖盾ニフルヘイムを装備したスレイプモン・グラーネ。
“ブラックデジゾイド”製の聖鎧に身を包み、見るからに悪そうな顔をしているクレニアムモン・フェルグス。彼らは優衣を取り囲むようにして姿を現した。
「その依頼状は確かに事実を告げている。だが、依頼主は依頼状に書いてあるデジモンではない。我々だ。工藤優衣……貴女を誘き出す為の罠だったのだ」
「やっぱりそういう事だったか……私達は貴方達の作戦にまんまと引っ掛かったと言う事ね」
「その通り。ガンクゥモンとジエスモンの裏切りはイグドラシル様……もといマキ様は全てお見通しだ。無論、お前がこの世界に来ている事もな」
「それも見抜かれていたか……やっぱりとは思っていたけど、改めて言われると流石にきついわね」
優衣が右手に握っている依頼状。それは『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』の罠。工藤優衣を誘き寄せる為の罠だった。
イグドラシル、もといマキは全て分かっていた。ガンクゥモンとジエスモンの裏切りと、この世界に工藤優衣が来ている事に。
「我々がここに来た目的は1つ。お前を生け捕りにする事。人間界にはロードナイトモン・ベイリンと、デュナスモンX・シグムンドが向かった。大事な任務があってな」
「私1人を捕らえる為に大勢のデジモンを殺戮するなんて……堕ちた物ね、『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』も」
「何とでも言え。マキ様は人間界を消滅させる決定を下した。そしてホメオスタシスと奴に味方するデジモンを排除し、新たなるデジタルワールドを作る計画を立てられた。それが『NEOプロジェクト・アーク』だ」
アルフォースブイドラモンX・ローラン、スレイプモン・グラーネ、クレニアムモン・フェルグス。3体の聖騎士が来た理由は1つ。優衣を生け捕りにする為。
そしてイグドラシルことマキは人間界を消滅させる決定を下し、『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』にデジモン達を殺戮するよう命じた。
ホメオスタシスと彼女に味方するデジモン達を抹殺し、その上で自分を中心とした新たなるデジタルワールドを作る。『NEOプロジェクト・アーク』が始まっていた。
「ふざけた事言わないで! 私達人間が一体何をしたの!? デジタルワールドの危機を招いた事はしていない! “デジクオーツ”だって、元はと言えばこの世界の歪みが原因じゃない! なのに人間を消すなんておかしいわ!」
「確かにお前の言う通りだ。そして今から説明を始めよう。マキ様、説明をお願いします」
「ありがとう、フェルグス。下がって良いわ」
「貴女は……!」
「初めまして。私はイグドラシルのマキ。私から事情を説明させてもらうわ」
優衣の目の前に現れたのはイグドラシルのもう1つの人格。銀色のショートヘアーに黄金の瞳をした美女。攻撃的で過激派の考えを持ったマキ。
彼女は優衣に話し出す。自分がどういった存在なのかを。そして『NEOプロジェクト・アーク』の詳細を。
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その頃。人間界。一真は自家用車の助手席にノルンを乗せて自宅へと戻った。玄関に入った一真を出迎えた両親はノルンを見て、ついに一真に春が来たのかと勘違いをした為、一真はその勘違いの訂正にアタフタする場面が見られた。
それから夕食の時間となり、一真はノルンに食卓の椅子に座って待つように伝えると、夕食のお手伝いを始めた。この日の夕食はカレーライス。直ぐに一真がノルンの目の前にお皿とスプーンを置いた。
「これは……?」
「カレーライスです。熱いので気を付けて食べて下さい」
八神一家とノルンは頂きますを言ってから、夕食を食べ始めた。初めて食べる人間界の食事。いや食事と言う物はノルンにとって初めてなのかもしれない。興味津々といった様子で、ノルンはスプーンで白飯にカレーをかけて口に運んだ。
その直後、ノルンの目に涙が溜まった。初めての食事で美味しい物を食べた。この感激、この喜びはデジタルワールドでは決して体験する事は出来なかった。生まれて初めて体験する事が出来た。
彼女はあっという間にカレーを食べ終えると、一真にお代わりを要求した。その様子を見た一真は唖然となりながら、彼女のお皿にカレーと白飯をよそって来た。
「凄い食べっぷりですね……」
「はい! この世界にはこんなに美味しい食べ物があるなんて知りませんでした……申し訳ありません」
「いやいや、もっと食べて良いんですよ?」
胃袋が満たされていくに連れて、思考に力が回せるようになったのだろう。ノルンは顔を真っ赤に染めながら、深々と頭を下げる。
それを見た一真の父親たる総司がノルンの前にお皿を差し出すと、彼女はその好意に甘える事にした。その後は合計5杯お代わりし、一真を終始唖然とさせた。
その後は食後のコーヒーまでご馳走された。八神家全員がブラックで飲む中、ノルンは大量のミルクとお砂糖を入れ、胸やけがしそうな程甘くなったコーヒーを飲んでいた。
「ノルンさん……と言ったね? 一体何者なんだ? 一真が連れて来たって事はデジモン関係だと思うけど……」
「はい。私は……」
ノルンは総司の質問に答え始める。自分がデジタルワールドの神、イグドラシルだと言う事。とある事情で監禁されていたが、味方に助けられた事。デジタルワールドで起きている事を伝えようと、人間界に来た事。
その答えに心底から驚いた一真の両親。まさか目の前にいるのは、別世界の神様だとは思わなかった。暫くして納得したように何度も頷いたが。
「一真さんには本当に助けられました。この前の“デジクオーツ”も彼の力が無ければ、今頃地球は“デジクオーツ”となっていたでしょう。本当にありがとうございます」
「一真はデジモンに襲われそうになったのを助けられました。そして世界を救った事は本当に誇りに思いますが……人間でなくなった事を聞いた時は本当に悲しかったです。人間である事を捨てて、私達と世界を守ったとは言え」
「親が死に、子が死に、孫が死ぬ。息子はその自然法則から逸脱し、超越した存在になってしまいました。確かに一真自身が選んだ道ですが、そう選ぶしかなかったように思えます。だから私達はデジモンの事を好きになれません。息子を人間でなくした化け物を、息子から大切な物を奪った者を私達は許せません」
「貴女にこんな事を言っても、何にもならない事は分かっています。でも私達は少なくともそう思っています。大切な息子をここまで変えてしまったデジモンの存在を、受け入れる事は出来ません。確かに良いデジモンもいるのも事実でしょう。それでも親にとって大切な子供をここまで変えた事を私達は許せません」
一真の両親はオメガモンとなった息子の事は誇りに思っている。デクスドルグレモン達に襲われそうになった所を助けられ、世界の危機を救った英雄となったのだから。
しかし、デジモンの事は好きになれないし、許せないでいる。息子から大切な物を奪い、人間を止める事を迫ったからだ。親として子供の幸せを願うのは当然の話だ。
一真は止めようとしたが、両親の鋭い眼光の前に引き下がるしかなかった。ノルンは両親の思いを真摯に受け止めているのか、俯いたまま一言も言わなかった。謝罪の言葉も。反論する意見も。彼女なりに責任を感じているようだ。
その後、一真がお風呂に入っていた所、ノルンが全裸で入って来ると言うハプニングがあり、まさかのスタイル抜群の美女と一緒にお風呂に入ると言う羨まけしからんな体験をしたが、一真は終始たまったものではなかった。
ノルンは常に一真の身体に密着していた為、一真は理性と感情の狭間で戦っていた。そのせいか、途中でのぼせてしまった。ノルンが慌てて助けなければ、一真は間違いなく死にかけていただろう。
そして一真の自室で寝る事になったのだが、ここでも問題が発生した。一真のベッドは1人用のベッド。シングルベッド。如何にも狭苦しい。人間1人だったら寝れるレベルだが、流石に2人はきつい。もしも2人が寝るとしたら、相思相愛の恋人のように密着するしかないだろう。
「私が床で寝ます」
「いやいやいや! 神様を床で寝かせる訳には行きません!」
「でも貴方は明日お仕事があるので、休んだ方がよろしいかと」
「そうですけど、貴女も逃亡の疲れがあるので寝た方が……」
「では一緒に寝ませんか?」
その言葉に一真は一瞬固まった。頬を赤くしながら目を逸らすと、ノルンに強制的にベッドに連れられ、一緒にベッドの中に入る。
ノルンは一真を抱き枕にするように抱き締めながら、一真の頭を自分の豊満な胸に埋めさせる。一真は顔を真っ赤にさせ、理性と感情の間で再び戦う。目の前にはノルンの豊満な胸があるのだから。
「お休みなさい、一真さん」
「お休みなさい、ノルンさん」
目の前でノルンに優しい声で囁かれ、慈母のような微笑みを見ながら瞼を閉じた瞬間、一真の意識は断絶した。夢を見る余裕もなく、奈落の底に墜落していく気分で深い眠りに付いた一真。
その寝顔を見ながらノルンも深い眠りに付く。一真の頭を撫でながら、彼の幸せを心から願う様に子守唄を歌いながら。
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―――昨日の夕方、再び外れデジモンが出現しました。お台場周辺に2体出現しましたが、“電脳現象調査保安局”の活躍によって撃退されました。怪我人は一切出ておりませんが、羽田空港の全便欠航を中心とした交通機関への影響は甚大で、素早い対応策が求められています。
翌日。“電脳現象調査保安局”の本部では、誰もが朝のニュースを見ている。昨日出現した外れデジモン。それに伴って発生した膨大な被害。アナウンサーが淡々と読んでいる。
映し出されている映像には暫く使い物にならなくなり、夥しい破壊の爪痕が刻まれた羽田空港の滑走路があった。
“電脳現象調査保安局”の局員達は誰しもが心を痛めていた。被害を拡大させないように食い止めたものの、それでも被害が出てしまった。それも目に見える形で。
―――それに加え、昨日は都内の運動場に2体のデジモンが現れ、そこでも“電脳現象調査保安局”の活躍によって撃退されました。怪我人は一切出ておりませんが、当分の間運動場は使用出来なくなりました。デジモンは私達人間の想像を遥かに超えた存在。その強大な力を改めて思い知る事となりました。
―――これじゃあ僕らも外れデジモンと同じ扱いとなる。僕らは外れデジモンと戦ってデジタルワールドを追い返しているのに。仕事をしているだけなのに。
一真と2体の聖騎士達の激闘によって、当分の間使用不可能となった運動場。一真はニュース映像を見ているが、改めて自分達の戦いがもたらした破壊の凄まじさを見せ付けられ、溜息を付いていた。
自分は既に人間ではなくなった。デジタルモンスターと言う人間を遥かに超えた存在となった。もし人間界でデジモンに関する事件が起きなくなったらどうするのか。その問いが一瞬脳裏を過ぎった。
―――ここ最近またデジモンが現れるようになったんですよね? また現れると思うと……不安で仕方ないです。
―――子供が怖がるので二度と出て来て欲しくないです。“電脳現象調査保安局”の皆さんも大変でしょうが、頑張って下さい。
―――大河原内閣は朝から臨時閣議を開き、“電脳現象調査保安局”だけでなく、警察や自衛隊と連携し、今後の対応を協議する事となっています。
街の人々の声を流した後、アナウンサーは政府の今後の対応を話した。それを聞いた一真はその場から立ち去り、本部の廊下を歩き始める。
その隣にはアルトリウスがいる。彼女も昨日外れデジモンと戦っていたが、羽田空港を当分の間使用不能に追い込んだ犯人と言える。
お台場の上空に出現したディノビーモンと戦っている最中、間違えて羽田空港に墜落させてしまった。そのまま戦闘に突入してデジタルワールドに追い返す事には成功した。
アルトリウスは今日のニュースを沈痛そうな様子で見ていた。それには理由がある。“電脳現象調査保安局”の新人局員。その父親が羽田空港にいた為、怪我をして今は入院中と本人から聞かされていたからだ。
人間の中にはデジモンの存在を迷惑に思ったり、人間界からいなくなって欲しいと思っている者もいる。死んで欲しいと思っている心無き者もいる。彼らは果たして守られるべきなのか。守って良い人間なのか。それは一真にも、アルトリウスさえも分からない。
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「初めまして。私はノルンと言います。デジタルワールドのホストコンピューター、イグドラシルです。これからお伝えするのは現段階で分かっている事の考察。そしてもう1人のイグドラシル……マキがこれからやろうとしている事です」
“電脳現象調査保安局”の本部にある会議室。そこに集まったのは“電脳現象調査保安局”の主要メンバー。ノルン、鏡花、ウィザーモン、テイルモン、一真、アルトリウス。
薩摩本部長とクダモンがいないのだが、彼らは政府に召集されて臨時閣議に参加しているからだ。臨時閣議に向かう直前にノルンの方から薩摩本部長とクダモンには説明したものの、その他の面々にはまだ説明をしていない。
ノルン本人が説明しようとしているのは主に3つ。外れデジモンの出現理由。デジタルワールドで何が起きているのか。マキがこれから何をしようとしているのか。
「先ず最初に外れデジモンが現れている件について説明しています。調べた所、主に東京都を中心に出現していますね。そしてその影響でお台場を中心とした電波障害が発生していて、電波障害が起きた直後に原因不明の停電が起きているそうです」
「電波障害? 停電? 一体いつから?」
「一真君が戻って来る1ヶ月前くらいからよ。ちょうどその時から外れデジモンが出現される頻度と、もたらされる被害が比例するようになった」
現時点で分かっている事が幾つかある。1つ目はお台場を中心に電波障害が発生している事。それに加え、電波障害が発生した直後に原因不明の停電が起きている。
発生し始めたのはここ最近から。一真が人間界に戻って来る1ヶ月程前。その時から外れデジモンが出現される頻度が増え、それに伴って被害が拡大していった。
「この電波障害は有線以外のネットワークで大きな不具合を起こしています。携帯電話、スマートフォン、テレビ放送の受信障害。それらが発生しています」
「電波障害は外れデジモンの出現と関りがある……そう言いたいのですね?」
「はい。その通りです。“デジクオーツ”事件終了後、外れデジモンが出現したケースを一通り見させて頂きました。それらには何の共通点がないように見えますが、実は外れデジモンの出現には一つの共通点があります。彼らは皆、デジタルワールドの歪みに巻き込まれて人間界に来ています」
「“デジクオーツ”と何か関係はありますか?」
「ありません。そもそも“デジクオーツ”は消滅しています。 この歪みは“デジクオーツ”とは違う形でデジタルワールドと繋がっている。だから人間界にデジモンが現れているんです」
電波障害は日常生活において重要な部分にダメージを与えている。スマートフォンやテレビ放送。それらに影響を及ぼしている為、一般市民にとってかなり迷惑となっている。既に生活に必要不可欠なアイテムとなっているからだ。
そして外れデジモンにも共通点があった。彼らは何らかの理由で発生した空間の歪みを通り、人間界に来ている事だ。ちなみに“デジクオーツ”は既に消滅している為、今回の事態とは何の関係もない。
「歪みは言わばもう1つのデジタルゲートみたいな所ですね……」
「そうです。歪みを通じて人間界に来たデジモン。彼らは皆凶暴化していて、戦闘力も一世代上になっています。アルトリウスさんは一番分かっていますよね?」
ノルンの質問にアルトリウスは頷いた。一真が異世界に武者修行に出掛けている間、彼女が外れデジモンと戦い続けていたのだから。
これまで戦って来た外れデジモン。全員が皆凶暴化していて、戦闘力も一世代上に強化されていた。アルトリウスは苦戦こそしなかったが、周囲一帯に被害を出さないよう苦労していた。今回のような事が起こらないように。
「この歪みは“デジクオーツ”事件が終結した後に生まれた物です。その歪みを通ってデジモンが人間界で暴れています。ここ最近頻度と被害が大きくなり始めていますが、これはデジタルワールドで起きている事態が関係しています。『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』がデジモン達を殺戮しているからです」
『ッ!?』
ノルンが告げたデジタルワールドの現実。外れデジモンの出現頻度と被害の拡大。それはデジタルワールドで起きている事態と関係していた。
『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』によるデジモン達の殺戮。予想外の答えに一真達の表情が固まった。それを見たノルンは話を続ける。
「『プロジェクト・アーク』はご存知ですか?」
「はい。でもそれが何か関係があるのですか?」
「実はデジタルワールドでもデジモン達の凶暴化が起きているのです。その原因は歪みではありません。Dプログラム。マキが放ったプログラムにあります。感染したデジモンを凶暴化させ、その周囲にいたデジモンも凶暴化させる効果があります」
「ガンクゥモンやジエスモンが言っていた件ですか。自作自演じゃないですかそれ!」
デジタルワールドで発生しているデジモン達の凶暴化。その原因はDプログラムにあった。デジモン達を凶暴化させる為にマキが放ったプログラム。
感染したデジモンを凶暴化させるだけでなく、感染者の近く・周囲にいるデジモンも凶暴化させる効果を持っている。
ガンクゥモンとジエスモンが対処しているデジモンの凶暴化。その黒幕はマキ。イグドラシルによる自作自演だった。
「デジモン達を凶暴化させた理由は1つだけ。デジモン達の抹殺の大義名分が欲しいからなんです。『NEOプロジェクト・アーク』。これをマキが推し進めています。デジタルワールドをリセットし、人間界を崩壊させて新たなるデジタルワールドを作る計画。今は第2段階に移行しているでしょう。全てのデジモンを凶暴化させ、『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』に抹殺されている頃です」
「もしかして外れデジモン達はこれから逃れようと……」
「恐らくそうだと思います。私は『NEOプロジェクト・アーク』の全てを知っており、イグドラシルの主要部分でもあります。だからマキは私を捕らえようとしました。口封じと、完全なイグドラシルの掌握も兼ねて」
『NEOプロジェクト・アーク』。セキュリティの要となる『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』と、その他の選ばれたデジモン達以外の全てのデジモンを抹殺し、人間界を崩壊させて新たなるデジタルワールドを作り上げる計画。
『プロジェクト・アーク(箱舟計画)』と違うのは人間界を崩壊させる事。ただし、人間は全員抹殺する訳ではなさそうだ。
「と言う事は外れデジモンが出現する回数も増えてきますね……デジタルワールドに追い返さず、保護しなければ」
「はい。マキはまたこの世界に聖騎士を派遣すると思います」
「既に戦いは始まっていると言う事ですね……」
ここにいる誰もが気付いている。マキ陣営との戦いは既に始まっている事を。外れデジモンが出現すると共に、聖騎士の刺客達がやって来る事を。
出来る事はある。各支部と連携を取りながら対処する事。外れデジモンや聖騎士達と戦う事。負けないように抗う事。早速それぞれが出来る事をしに向かっていった。
LAST ALLIANCEです。
今回も後書きとして、本編に出たデジモンや内容の裏話を話していきます。
・デジモンと一体化したイグドラシル
元ネタは『デジモンネクスト』ですが、あの時は『七大魔王』のバルバモンが一体化していた。果たして今回は……?
・真逆なイグドラシル
マキ=『厄災大戦』の勃発の原因を作る ノルン=パラティヌモンを造った
同じ創造ですが、意味合いが全然違います。
・『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』の罠
今回の黒幕、マキがやろうとしているのは『NEOプロジェクト・アーク』。
デジモン達を粛清し、人間界を崩壊させて統合して新世界を創る事。
『プロジェクト・アーク(箱舟計画)』のパワーアップ版です。
・一真とノルン
終始ノルンに振り回されていますが、一真は年齢=彼女いない歴で、ノルンが絶世の美女なので対応に困っているだけなんです。ノルンは大食いで甘党、慈愛の女神様です。
・一真の両親
親として人間として生きて欲しかった。息子が幸せになって欲しい。
そう思うからこそ、デジモンになってしまった事を誰よりも悲しみ、デジモンにさせた事を誰よりも怒っているのです。
裏話はここまでになります。今回は少なめでした。
まだ話自体も始まったばかりなので、多い時と少ない時の波がありますが、引き続きよろしくお願いします。
皆さん。よろしければ感想・評価・お気に入り登録の方よろしくお願いします。
あたたかい感想とか前向きなコメント、アドバイスやモチベーションが上がるような応援メッセージや高評価を頂くと、作者のやる気が究極進化します。
それでは次回をお楽しみに。LAST ALLIANCEでした!
次回予告
マキの口から語られる計画に憤慨する優衣。
アルファモンに究極進化して戦闘に突入するが、果たして……!?
第30話 堕ちた聖騎士