終焉の聖騎士伝説~オメガモンとなった青年の物語~ 作:LAST ALLIANCE
第2章は始まったばかりですが、結構波乱というか怒涛の展開ばかりで果たして52話まで持つかどうか(内容的に)不安ですが、頑張ります。お茶を濁す事は絶対にしません。
以前言っていた『Fate/Grand Order』の外伝、もといコラボ小説はアンケートの結果、書く事を決定しました。
本編の合間(アイディアが浮かばない時)に書きますが、投稿し始めるのは第2章終了後になります。
時系列が第2章終了後になりますし、ネタバレを含んでいるのでその方が良いだろうと判断したからです。
主要メンバーが集った会議が終わった後、パラティヌモンは背中の翼から青色の光を放ちながら、目にも止まらぬ速さで飛行している。
外れデジモンや『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』の出現に備えてパトロールをしているのだが、太平洋の海上を飛行している最中、目の前の無人島からまるで突き刺すような殺気を感じた。パラティヌモンは飛行を止めて空中に浮遊する。
「ッ! 誰かが誘っているみたいですね……面白い」
―――私は此処にいる。この世界の聖騎士よ、私と戦う勇気はあるのか?
パラティヌモンには分かる。この『波動(コード)』は間違いなく『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』の物だと言う事が。その聖騎士の名前や顔は分からないが、パラティヌモンにはその聖騎士の言おうとしている事が理解出来た。
『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』の出現に備えてパトロールしているのだから、『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』の出現に対処しなければならない。
パラティヌモンは『波動(コード)』を感じた無人島に真っ直ぐに向かった。その島の中心には1体の聖騎士が立っている。
「お前がデジタルワールドから来た聖騎士だな?」
「如何にも。私は『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』の一員、クレニアムモン・フェルグス」
パラティヌモンの問いに答えたのは1体の聖騎士。禍々しい骸骨の意匠が刻まれた紫色の聖鎧。“ブラックデジゾイド”製の聖鎧に覆われたクレニアムモン・フェルグス。
彼はマキ・イグドラシルから特別任務を依頼された。それは“オメガモン・パラティヌモンのどちらかの足止め”だ。デジタルワールドから聖騎士が人間界に来れば、必ずどちらかがやって来る。どちらが来るかは分からないが、どちらかを足止めする事。
残りのもう片方は、強化して洗脳処置を施したアルファモンとマキが倒す。そうして一気に人間界の最強戦力となっている2体の聖騎士を仕留める作戦だ。
「私はパラティヌモン。お前の主君、マキ・イグドラシルが起こした『厄災大戦』を終わらせた」
「パラティヌモン……我々聖騎士の偉大なる始祖。この世界で最高の強敵に出会えた事。光栄の極み!」
「まさか後輩と戦う事になるとはな。敵なのが残念だがこれも戦争。仕方ない」
「同じ戦場を共に戦えなかったのが残念だが、まさかこのような形で私の願いが叶うとは……有り難い限りだ」
フェルグスは背中のウェポンラックに腕を伸ばし、マウントされた三角形状の刃の2本の大剣を連結させ、両柄に刃が付いた1本の巨大な刃を握り締める。
魔槍クラウ・ソラス。その刃をよく見ると、鋸のようなギザギザとなっている。マキ・イグドラシルによって施された改造なのだろう。
パラティヌモンは両腰の鞘込めの聖剣―パラティヌス・ソードを抜刀し、構えを取ると同時に背中の翼を広げ、青い光を放出させ始める。
お互いの武器を握り締めるパラティヌモンとフェルグス。その一騎打ちはパラティヌモンが突進を開始したと同時に始まった。
ーーーーーーーーーー
パラティヌモンとフェルグスが戦闘を開始したのと同じ頃、一真はこの日が仕事が特にない為、人間界に逃亡して来たノルンの護衛も兼ねて自分が住んでいる街を案内している。
一真はフツメン。ノルンは美女。傍から見れば釣り合わないような感じだが、当の本人達は全く気にしていない。
「結局さ、またデジモン関連の事件が起きているんだろう?」
「だと思うけど詳しい事が全く分からねぇ。“デジクオーツ”事件だって終わってから、“実はこういう事件が起きました”みたいな感じで分かったからな……」
「マジ迷惑なんだけど……起きる事は仕方ないと思うけど、ちゃんとその度に報告して欲しいな」
「さっさと事件終わってくれねぇかな? でないと安心して寝る事だって出来ないからさ……」
一真とノルンは街中を歩いている。老若男女。色々な人々とすれ違う中、2人組の男性の会話に2人の足が止まる。彼らがデジモンの話をしていたからだ。
“デジクオーツ”事件の存在や詳細が明らかになったのは、事件の終結後。世間にデジモンがいると言う事実が明るみになった事で、世論は“電脳現象調査保安局”にもっとデジモンの情報を流すように促すようになった。
以前に比べてデジモンの情報を流すようにはしているが、やはり一般市民はもっと色々な事を知りたがっている。クオーツモンとの最終決戦の時の経験。データ化されてクオーツモンの一部となった。それを二度と味わいたくないからだ。
「この街も変わったんですよ、1年前に比べて」
「そうなんですか? 1年前って、確か“デジクオーツ”事件があったと言う……」
「はい。その時にこの街だけでなく、世界中が“デジクオーツ”となりました。人間も、建物、景色も、全てが“デジクオーツ”になりました」
「すみません。私達が招いた事で……」
街の風景を眺めながら、一真は1年前の事を思い出す。それは“デジクオーツ”事件。自分が“デジモン化”を受け入れ、オメガモンとなった瞬間。一真にとって忘れる事の出来ない事件だった。
一真からその話を聞いたノルンは謝る。“デジクオーツ”が発生した理由はデジタルワールドにあり、原因は自分達にあると思っているからだ。
「過ぎた事なので気にしてないですよ。あの時から、この街を地震等の自然災害や人災、デジモンのような天災に備えた街作りが始まりました。でも正直、僕は怖いんです。知らない間に色んな物を壊し続けていた事を。建物だけじゃなくて、人間や皆の生活。守っていると見せかけて、実は破壊している……その二律違反が怖いんです」
「一真さん。貴方が恐れている事は心の問題なのでは? 今の話を聞いていて分かりました。貴方はデジモンとなりましたが、まだ心の何処かで人間の部分が残っている。それを失う事を何より恐れていると私は思います」
「……分かっちゃいましたか。そうなんですよ……人間であると共に、デジモンでもある。どのどちらでもない存在が僕なんです。何と言えば良いのか……正直僕でも分からないんです。でもやる事は見えています。外れデジモンが来たら保護する。聖騎士が現れたら倒す。それだけの話です」
「もう外れデジモンが現れる事はないでしょう。彼らは『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』に粛清されているので……でも備えはした方が良いかと思います。『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』もまた現れるでしょう。マキは諦めが悪い性格なので……」
目の前にいるのはデジタルワールドの神様。自分より目上の存在。それだからか、一真は自分が抱えている事を正直に話し始めた。
ノルンは一真の話を聞いた上で答える。否定せず、ありのまま受け入れる。まるで一真の背中を押すように。慈愛の女神に見える。
「1年前の僕は……今思うと色々と未熟だったなと思います。人間的にも、デジモン的にも。色んな世界を渡り歩き、人々と触れ合い、言語や文化を学んだり、色んな食べ物を食べたり、危機や戦争を乗り越えて……1年前より色んな事が見えたり、分かるようになりました。もちろん今でもまだまだ未熟ですが、時々分からなくなるんです。僕達のしている事は本当に正しい事なのか。それとも間違った事なのか」
「私も同じ事を考える時があります。何が正しくて何が間違えているのか……時々分からなくなる時があります。でも守りたい物の為に、信じる正義の為に戦う事が貴方と言う聖騎士の在り方だと思います」
「お~い、一真さん!」
一真とノルンが良い感じで話をしていると、そこに何者かが駆け寄って来た。一真の名前を知っているその男性の名前は櫻井竜也。“デジクオーツ”事件でカオスモンとなり、一真に助けられた青年。
前に見た時は眼鏡をかけ、ニキビだらけで肥満体型だったが、今では以前の姿が嘘だったかのような変貌を遂げていた。眼鏡は相変わらずかけているが、顔中にあったニキビは無くなり、スマートな体型となった。
「竜也君!? 何か前見た時より相当変わったね……」
「そりゃ変わりますよ! 一真さんだって“デジモン化”の影響で色々変わったみたいですし……ところで隣のお美しい方は?」
「初めまして。私はノルン・イグドラシル。デジタルワールドの……神様です」
「えっ? えぇ~!?」
その後、近くのたこ焼き屋でたこ焼きを買い、近くの公園のベンチに座って食べ始める一真、竜也、ノルンの3人。
ノルンが自分の口から自己紹介をする。今デジタルワールドで何が起きているのか。何故人間界に逃亡したのか。その全てが話された。
「成る程……そういう事なんですか。1年前は“デジクオーツ”、今度は悪いイグドラシル。何だか色々な事が起きるんですね……しかもかなりの強敵じゃないですか」
「そうなんだよ……ところで竜也君は?」
「俺ですか? 俺は……」
竜也は“デジクオーツ”事件後の事を話し出す。デジモン関係の出来事が落ち着いてから就労支援を受け始めた。それと共にダイエットと運動に励み、体重や体質改善に努めた。ちなみに今でも運動は続けている。
現在はアルバイトをしながら就職活動をしているが、ベルゼブモンが経営しているベルゼ株式会社の内定を勝ち取った。この日はアルバイトがなく、運動をする為にフィットネスクラブに向かっている最中だった。
「そっか。良かったね。就職先が見つかって……もう僕は二度とそういう生活には戻れないから、大切にするんだよ?」
「何でしょう……凄く重みがあり過ぎて何にも言えないんですけど」
「アハハハ……」
―――お台場の皆さん、現在お台場の上空に原因不明の異常気象が発生しております。重大な災害に繋がる恐れがあるので、避難警報が発令されました。周囲にいる皆さんは直ちに避難して下さい。くれぐれも安全を確認してから行動して下さい。非常時には速やかに避難して下さい。
突如として響き渡るアナウンス。何事かと思って空を見上げると、東京湾の上空に巨大なワームホールが出現している。
慌てて一真達は駆け出す。ワームホールの近くに着いた時には、地上の公園や橋の上には沢山の人々が集まっていた。一体何事なのか。これから何が起きるのか。それを見に来た野次馬と言う奴だろう。
空に浮かんでいるワームホールから1体のデジモンが出現した。そのデジモンは海面に向かって落下するが、危なげなく海面に浮かび上がる。
『ッ!?』
「アルファモン……優衣さん!?」
「嘘だろう!? どうして優衣さんが!?」
「最悪な展開になりましたね……」
そのデジモンの姿を見ようと、東京湾に集まって来た誰もがデジモンに目を向けた瞬間、息を呑むと共に衝撃を受けた。そのデジモンの正体はアルファモンだったからだ。
アルファモンの『波動(コード)』を探った一真は膝から崩れ落ち、竜也は唖然となり、ノルンの表情は険しくなる。
マキ・イグドラシルはアルファモンを捕らえて強化すると共に洗脳処置を施し、自分を連れ戻しに派遣させたようだ。やはり考えていた筋書き通りとなってしまった。
目の前にいるアルファモン。その内側と外見からは、“静”の感情と虚無感しか感じられない。もしこれが本来のアルファモンだったら、内側には“動”の感情を秘め、外見から静かな雰囲気を放っているだろう。
しかし、今のアルファモンは本来の聖騎士ではない。邪神の手によって強化され、洗脳された事でたただの操り人形と成り果てた。自分の意志を持たず、必要以外の会話をしない。最早本来のアルファモンとかけ離れていると認識する事しか出来ないでいる。
それでも一真はアルファモンに話しかけないという選択肢を取れずにいた。頭では分かっている。目の前にいるアルファモンは、本来のアルファモンではない事を。しかし、身体がそれを認識する事が出来ない。感情では理解出来ない原理と同じだ。
「優衣さん! アルファモン! 僕だよ! 八神一真だよ! 無事だったんだね!」
「――――――――」
膝から崩れ落ちた一真は立ち上がり、アルファモンにニコリと微笑んだ。何時ものように話しかけるが、アルファモンは無言のままだ。
一真を見下ろしてはいるが、その瞳からは何も感じられない。自分の意志や本来の人格さえも感じられない。まるで機械のようだ。
「一緒に帰ろうよ! 帰ってお寿司握って欲しいな! 久し振りに優衣さんの握るお寿司が食べたかったんだよ!」
「――――――――」
「……喋ってくれよ。何時ものように」
それでも一真はアルファモンに向かって声を張り上げる。一真が人間界に戻って来た時、優衣は既にデジタルワールドにいた。その為、彼女が握るお寿司を食べていない。久し振りに食べたいと思うのは当然の事だ。
その言葉もアルファモンには届かない。相変わらず無機質で感情の無い瞳で一真を見下ろしている。その様子に耐え切れなくなかったのか、一真は悲しそうな目でアルファモンを見上げる。
「……頼むよ優衣さん。いつもみたいに笑ってよ!」
「――――――――」
自分でも気付かない間に、一真は涙を流していた。目の前にいるアルファモンは本来のアルファモンではない。しかし、それでも一真には本物と重なって見えてしまった。
アルファモンは無言のまま右手でデジモン文字を刻み、魔法陣を描く。背中の黒い翼のから黄金の翼が生え、右手に巨大としか言えない聖剣―王竜剣を召喚した。
それを見た誰もが息を呑んだ。味方だった筈のアルファモンが敵になった。先程の一真とのやり取りが全てを物語っている。
アルファモン・王竜剣の狙いはノルン・イグドラシルの確保。赤色の瞳はノルンを見ている。一真の言葉は最初から届かなかった。何故なら最初からノルンを取り戻す事しか頭になかったのだから。
―――やっぱり全ては奴のシナリオ通りだったのか! 何もしないのは……結局逃げている事と同じじゃないか!
ゆっくりとノルンがいる場所に向かって歩み寄るアルファモン・王竜剣。瞳から零れている涙を拭き、拳を握り締める一真。
全てはマキ・イグドラシルが思い描いているシナリオ通りに進んでいる。デジモン達が粛清され、人間界に聖騎士達の刺客が送り込まれている。次は人間界を崩壊させる為に何かしらの動きを見せて来る筈だ。
―――このままだと全てが無くなってしまう。街だけではない。世界その物が。僕達の手でどうにかしないと!
―――何が正しくて何が間違えているのか……時々分からなくなる時があります。でも守りたい物の為に、信じる正義の為に戦う事が貴方と言う聖騎士の在り方だと思います。
一真の脳裏に過ぎるのはノルンの言葉。笑顔と共に言われたその言葉を思い出した時、一真の中で何かが変わる音が聞こえた。
今までいたのは八神一真と言う人間。人間の心を持ち、人間の皮を被ったデジモン。しかし、今立っているのは違う存在。同じ八神一真だが、中身は違う。人間の心を持ったデジモン。人間の姿をした聖騎士。
「アルファモン・王竜剣。工藤優衣……いやマキ・イグドラシル! 八神一真……この“終焉の聖騎士”オメガモンがお前達に一言物申す!」
一真が声を張り上げた瞬間、アルファモン・王竜剣の動きが止まった。視線がノルンから一真へと移り変わる。一真から巨大な『波動(コード)』を探知したからだ。
全身を覆い尽くす程の膨大な光の奔流が発生し、一真の周囲に眩い光が渦巻いている。一体何が起きているのか。アルファモン・王竜剣やノルンや竜也だけでなく、東京湾に集まった大勢の人々が見守る中、一真はデジタルワールドの神様相手に啖呵を切る。
「お前は僕の仲間を、僕の大切な人を愚弄して侮辱した! 本物は偽物のような空虚さや無機質さにも満ちていない! 彼女は正真正銘の聖騎士だ! 同一視していた僕もいるけど、このアルファモンは本物じゃない! これは紛い物だ! 僕ら聖騎士を愚弄し、侮辱した罪は重いぞ!」
一真が両目を空色に輝かせながら大声を上げる中、更に純白の光が輝きを増し、強烈な音圧が周囲一帯に響き渡る。
それを見ている誰もが感じた。幻としか言えないが、まるでこの場所にいるかのような気がする。半透明の姿のオメガモンが一真の背後に浮かび上がり、彼らに寄り添うようにアルファモンが立っている。
―――オメガモン、俺を元に戻してくれ。機械のような奴になりたくないんだ。
―――クオーツモンを倒した貴方は勝てる。出来る。大丈夫。私は信じているわ。
「アルファモン……優衣さん……ありがとう。僕が必ず元に戻して見せる!」
オメガモン・アルファモン・優衣が一真を守護するように寄り添う中、一真は目の前にいるアルファモン・王竜剣を睨みながら言い放つ。
これは只の言葉ではない。マキ・イグドラシルへの宣戦布告。いやマキの身体と人格を乗っ取った黒幕への宣言だ。
「イグドラシル! 僕はお前を許さない! お前は一番してはいけない事をした! 僕の仲間を、大切な仲間を愚弄して侮辱した! これは人間に対して、デジモンに対して、聖騎士に対しての冒涜だ! 僕はここに宣言する。イグドラシル、僕はお前を必ず倒す!」
「一真さん……」
「そこまでアルファモン……優衣さんを大切にしているんですね。彼女を侮辱された事に怒っているのは、仲間で盟友だからなんですね」
マキ・イグドラシルは最も敵に回してはいけない聖騎士を敵にしてしまった。“終焉の聖騎士”と謳われ、クオーツモンを倒した最強の聖騎士。人間界における最強戦力の一角。それが八神一真ことオメガモン。
竜也は一真を唖然とした様子で見ている。オメガモンになる所を初めて見るからではない。一真がここまで感情を爆発させるのを初めて見たからだ。あまり一真とは付き合いが多い方ではないが、優衣や鏡花から物静かで穏やかな性格と聞いていた。だからこそ、目の前の一真の啖呵に驚いている。
ノルンも同じだが、彼女は一真が仲間想いな性格だと気付いた。仲間を大切にしているから、仲間の為に怒ったり、戦う事が出来る。内心ではエールを送っている。
「僕は1人のデジモンとして、1体のデジモンとして、1体の聖騎士として、お前を絶対に許さない! お前のような醜い髪が僕の仲間を、同じ聖騎士を蹂躙する事は断じて認めない! 僕はお前と『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』に勝つ! お前の計画を否定してやる!」
言葉を言い放つと共に一真の超究極進化が始まる。膨れ上がる光と共に、一真の身体が変貌する。姿を変えながらより巨大となっていく中、オメガモンの情報が読み込まれる。それと同時に身体情報が書き換わり、戦闘経験が蓄積され、保有能力と武器が具現化される。
純白に光り輝く聖光は消失した後に姿を現したオメガモン。背中に羽織っているマントを翻し、東京湾の海面に浮かび上がる。
ウォーグレイモンの頭部を象った左手の手甲。その口部分からグレイソードを出現させたオメガモンと、王竜剣を両手に握り締めるアルファモン・王竜剣。2体の聖騎士は同時に突撃を開始し、戦いを開始させた。
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背中の翼を広げ、青い光を放出させながら突進するパラティヌモン。それとは対照的に、フェルグスは両手に握るクラウ・ソラスの矛先を天に掲げる。
そこから魔槍を回し始めると、周囲一帯の大気が狂い出す。周囲一帯で荒れ狂う暴風がやがて竜巻となり、暴風で足止めを受けている“聖騎士王”に向かって襲い掛かる。
「これなら近付けまい! 『エンドレス・ワルツ』!!!」
クレニアムモンの秘奥義の1つ、『エンド・ワルツ』。超音速の衝撃波を放ち、全てのデータが粉砕されるまで、相手は踊り続けなければならない。
フェルグスはそれを応用させ、新たなる秘奥義を編み出した。『エンドレス・ワルツ』。超音速の衝撃波を以て渦や竜巻を巻き起こし、その中に標的を捉えて全身が粉砕されるまで強制的に踊らせる。
相手は空中に舞い上がっている為、全身が粉砕されるまで大地に倒れ伏せる事はない。正に“終わりなき舞踏”と言える。
自分に向かって迫り来る激しい竜巻。それを見たパラティヌモンは2本のパラティヌス・ソードを構え、素早く迎撃態勢に入った。
「ハアアアアァァァァァァァァァーーーーーー!!!!!」
パラティヌス・ソードの刀身が黄金に輝き始める。刀身にエネルギーが注ぎ込まれている事で、黄金の剣光が放たれているからだ。
黄金に輝く聖剣が一閃された瞬間、三日月形の刃の巨大な斬撃が放たれた。標的はフェルグスに在らず。自分に向かって迫り来る竜巻だった。
三日月形の刃の巨大な斬撃が竜巻に激突した瞬間、内包された膨大な量のエネルギーが解放された。凄まじい速度と共に黄金のエネルギーが突風と共に、巨大な竜巻目掛けて一直線に襲い掛かる。黄金のエネルギーと巨大な竜巻がせめぎ合い、そのせめぎ合いの結果に相殺された。
「何……!?」
パラティヌモンの狙いはフェルグスに攻撃する事にあらず。自分に迫り来る『エンドレス・ワルツ』を迎撃し、この一騎打ちの突破口を見出す事だ。攻撃は二の次だ。
黄金のエネルギーが『エンドレス・ワルツ』をかき消した。衝撃の余波が空気を震わせ、その場に吹いた一陣の風がパラティヌモンに味方する。
―――やはり一筋縄では行かないか。
「『アルビオン・ブレイズ』!!!」
フェルグスが独り言ちたその数秒間。ほんの僅かな瞬間だが、パラティヌモンが反撃に出るには十分な時間だった。間髪入れずにパラティヌモンが追撃に出た。
背中の翼から放出している青い光。光の翼からエネルギーの刃を連射する。先程のように迎撃するには数が多過ぎる。
一発一発がエネルギーを刃の形に集束させて貫通力に特化させた青い刃。回避・迎撃を一切許さない速度と数。威力と速度、数から考えるに直撃を喰らえば、即死とまでは行かないが、大ダメージを喰らう事は目に見えている。
「ならば……マキ様から賜ったこの力を以て、真正面から迎え撃つ! 『ゴッド・ブレス』!!!」
答えは最初から分かっていた。迎撃する事も、回避する事も出来ないのなら、防御すれば良いだけの話だ。フェルグスは左手の平を前に突き出し、鎧のデータにアクセスして魔楯アヴァロンを召喚する。
魔盾から眩い輝きが放たれた瞬間、フェルグスの目の前に光り輝く防御壁が展開され、無数の青いエネルギーの刃を防いでいく。
『ゴッド・ブレス』は本来であれば、3秒間だけどんな攻撃も無効化する事が出来る。しかし、3秒経過したにも関わらず、聖騎士の目の前に展開された防御壁が消える気配が 一向に見えない。
やがて防御壁は無数の青いエネルギーの刃を防ぎ切った。それと同時に役目を終えた防御壁は瞬時に消滅していく。
「解せないな。本来ならば『ゴッド・ブレス』は3秒しか使えない筈だ。だが、今のはどう数えても3秒を経過していた」
「あぁ。貴方の言葉は正解だ。間違えていない。マキ様のお力によって、私は更なる極みに至った。『電脳人間(エイリアス)』……人間とデジモンが一体化して生まれる新たなる力、それを発見出来たのは『厄災大戦』の英雄達のデータが残っていたから。13体のデジモンのデータを基に我々『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』に反映させた事で、我々は更に強くなった。八神一真や工藤優衣に勝るとも劣らない力を得た……」
「成る程。だから『ゴッド・ブレス』の展開時間が伸びたと?」
「正解。流石は“聖騎士王”殿、良き洞察力を持っている。しかし、貴方は『電脳人間(エイリアス)』ではない。アーサー王がデジモンに転生しただけに過ぎない。今の貴方には勝てないまでも、互角にまでは持っていける自信がある」
フェルグスは人間界に派遣される直前、マキによる強化手術を受けていた。『厄災大戦』の英雄達のデータを反映させたおかげで、『ゴッド・ブレス』の最大展開時間が3秒から30秒に延長する事が出来た。
圧倒的な力の前には如何なる策など無意味だ。神から授かった武器や力は、例え相手が誰でも打ち破る事が出来ない。パラティヌモンはアーサー王がノルンの力で転生したに過ぎない。装備面では他の聖騎士に劣っていると言われても仕方ない。
パラティヌモンは目を細めながら冷静に状況を分析する。『アルビオン・ブレイズ』で大ダメージとまでは行かなくても、出来ればこの奇襲戦術でダメージを与えて優位に立ちたかった。出鼻を挫かれた感じだ。
―――そう上手くは行かないか。お互いに。
フェルグスは人間界に派遣される直前、マキによる改造手術を受けながらパラティヌモンの戦闘データを一通り読んでいた。二刀流の聖騎士。背中の翼による超神速の機動力。卓越した剣技と翼から放つ砲撃。それが“聖騎士王”の武器。
彼が目を付けたのは背中の翼による超神速の機動力。どの道近接戦闘で渡り合うと言う選択肢を捨てている。敵に攻撃・反撃を許さない電光石火の速力と機動力を以て、戦いを制する。相手と真正面から戦いながら、その全てを否定して破壊する。
速力と機動力から繰り出される攻撃もともかく、回避技能もまた高い。攻撃が全く当たらない。それは反射神経や経験、先読み等の様々な知識があって初めて成り立つ。必要最小限の動きで攻撃を躱しながら、相手との間合いを詰めて仕留める。これがパラティヌモンの戦い方だ。
―――お互いに手詰まりだが、先に動かせてもらおう!
「『ゴッド・ブレス』!!!」
再びパラティヌモンが動き出す。背中の翼から青い光を放出させ、先程と同じように青いエネルギーの刃を連射しながらフェルグスとの間合いを詰めていく。
それに合わせ、フェルグスは魔楯アヴァロンを構えて『ゴッド・ブレス』を発動する。一発毎に防御壁に命中しては、虚しく青い光を放ちながら掻き消える。
しかし、その程度ではパラティヌモンの猛攻は止まらない。出し惜しみを一切せず、一発でも多くの攻撃を放ちながらフェルグスとの間合いを詰めていく。
「ハアアアアァァァァァァァァッ!!!!!」
パラティヌモンは突進の勢いを上乗せしながら空高く跳躍し、刀身から黄金の剣光を伸ばしながらパラティヌス・ソードを振り下ろす。
フェルグスは『ゴッド・ブレス』の発動を解除し、クラウ・ソラスの穂先を掲げる。両端の刃を振動させながら黄金の剣閃を受け止め、思い切り振り切った。
凄まじいとしか言えない超速度で振動する魔槍の刃。それが黄金の剣光に触れた瞬間、黄金の剣光が四散され、聖剣の刀身を粉々に破壊していく。
魔槍クラウ・ソラス。穂の外側が鋸みたいにギザギザしている。チェーンソーみたいに振動させる事で、物質のデータや構造を破壊しながら対象を破壊する事が可能となった。これもマキが施した強化手術によってもたらされた。
刀身が粉々に破壊され、途中で折れた状態となったパラティヌス・ソード。パラティヌモンはそれを意に介さず、もう片方の手に握る聖剣を振り下ろすが、それも魔槍の一閃によって破壊されてしまった。
「貰った!!」
「クッ……!」
パラティヌモンの努力を嘲笑う事なく、破壊された聖剣を見ても勝ち誇る事なく、フェルグスは返す刀で魔槍クラウ・ソラスを薙ぎ払う。
咄嗟に背中の翼から青い光を放出させ、空中で身体を回転させて攻撃を躱し、パラティヌモンはフェルグスとの間合いを取って着地する。
両手に握る聖剣は刀身が途中で折れているが、武器としてはまだ使える。しかし、先程の攻撃を見ると、果たして戦えるかどうか怪しくなって来た。“聖騎士王”は一度パラティヌス・ソードを両腰の鞘に収め、更なる武器を召喚しようとする。
―――フェルグス。そっちは今どうなっているの?
「マキ様。こちらはパラティヌモンと交戦中です。言われた通り、足止めをしています」
―――分かったわ。一度退却しましょう。アルファモンの洗脳が解けたし、『厄災大戦』の英雄が蘇った。
「な、何ですと!?」
―――私もオメガモンからそれなりにダメージを受けたわ。ここは一度退却よ!
「分かりました!」
フェルグスが更なる追い打ちをかけようと魔槍クラウ・ソラスを構えた瞬間、マキ・イグドラシルからの念話が届いた。
マキからの命令通り、パラティヌモンを足止めしているフェルグス。東京湾にいるであろう彼女は聖騎士に退却を命令した。彼女曰く、“アルファモンの洗脳が解け、『厄災大戦』の英雄が蘇った”との事。
「済まない、パラティヌモン。マキ様から退却命令が出た。勝負は次に預けておく」
「分かった。次は必ず決着を付けよう」
「あぁ、約束する」
フェルグスはパラティヌモンと再戦の約束をすると、その場から飛び立っていった。後に残ったパラティヌモン。彼女は悔し気にパラティヌス・ソードを引き抜いて見つめる。
刀身が折れて武器として使い物にならない聖剣。勝てない相手ではなかった。しかし、確実に自分に匹敵する相手だった。その相手に武器を破壊され、半ば勝ち逃げされたような物だった。これで終わるパラティヌモンではない。
次に待ち受けるであろうフェルグスとの再戦。それに向けて“とある事”をしなければならない。胸にそう誓い、パラティヌモンはその場から飛び去った。
LAST ALLIANCEです。
今回も後書きとして、本編に出たデジモンや内容の裏話を話していきます。
・一真の見た目
このサイトの小説の殆どがイケメンだったり、端正な顔立ちが多いですが、一真君は普通の顔立ちです。そのせいかモテません。
・デジモンに関する情報
デジモンという概念が存在しているので、ニュース等のメディアでも分かりやすく取り上げています。おかげでデジモン関係の書籍が大人気に!
・一真の悩み
”デジモン化”ではなく、皆を守っているようで大切な物を破壊している事に恐怖を感じているんです。建物や日常生活、或いは大切な人。
”デジクオーツ”事件が良くも悪くも一真を、人間界を変えてしまいました。
・元カオスモンの櫻井竜也
久し振りの本編に登場。オタクな見た目から好青年な見た目にチェンジしてます。
しかも引きこもりから社会人として再スタートを始めようとしている所まで来ました。
彼はカオスデュークモンによってカオスモンになりましたが、オメガモンに助けられました。それからは前を向いて生きています。
・戻れなくなった日常生活
この作品のメッセージがあるとしたら、今生きている日常を大切にして欲しいと言う事です。嫌な事も辛い事も沢山ありますが、その分楽しい事や嬉しい事が待っています。
自分の人生を大切にしながら生きて欲しい。それが僕が伝えたい事です。
・アルファモンが敵に!?
前回を読んだ人は薄々感じたはずですが、一応書きました。
マキによって洗脳されたマシーンになっちゃいました。
・強化されたフェルグス
先ず『ゴッド・ブレス』の展開時間が延長されました。
3秒から30秒に。流石に3秒は短すぎるでしょう……
魔槍クラウ・ソラスの刃がチェーンソーみたいになり、対象のデータを分解しながら破壊する事が可能となりました。
・折れたパラティヌス・ソード
これでパラティヌモン強化フラグが立ちました。
ガンダム・バエルから何になるのでしょうか?
・マキとフェルグスの撤退
これの詳細は次回以降明かします。
裏話はここまでになります。
皆さん。よろしければ感想・評価・お気に入り登録の方よろしくお願いします。
あたたかい感想とか前向きなコメント、アドバイスやモチベーションが上がるような応援メッセージや高評価を頂くと、作者のやる気が究極進化します。
それでは次回をお楽しみに。LAST ALLIANCEでした!
次回予告
アルファモンと戦うオメガモンだが、心の迷いとアルファモンの強さに圧倒されるばかりだった。しかし、仲間を救う為に迷いを断ち切り、全力で立ち向かう。
果たして仲間を救えるのか?
第32話 オメガモンVSアルファモン