終焉の聖騎士伝説~オメガモンとなった青年の物語~   作:LAST ALLIANCE

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今回は『デジモンアドベンチャー tri.』第1章で実現した対戦カードです。
文字数は少ないですが、その分中身を凝縮しました。
それ以外に書く事が無かったり、区切りが良かったりするんですけどね……

設定集はオリキャラや強化された聖騎士の設定を一通り見せたら投稿します。


第32話 オメガモンVSアルファモン

 東京湾。そこは2体の聖騎士が戦っている場所。片方は所々が丸くて重厚な漆黒の聖鎧に全身を身に包んだ聖騎士。武器は巨大としか言えない黄金と漆黒の大剣。彼の名前はアルファモン・王竜剣。

 もう片方は所々が角ばり、細身で流麗な純白の聖鎧に全身を覆い包んだ聖騎士。武器は左手の竜頭から出現している聖剣。彼の名前はオメガモン。

 王竜剣とグレイソードが激突する度に、2体の聖騎士の間で火花が散る。アルファモン・王竜剣の中にあるのは目の前の相手を倒すと言う意思と、ノルン・イグドラシルを抹殺すると言う使命感。

 一方のオメガモンの中にあるのは、目の前の聖騎士を元に戻すと言う強い意志。アルファモン・王竜剣はオメガモンの仲間だが、マキ・イグドラシルに連れされてしまった。強化手術が行われ、洗脳処置が施された後、人間界に任務を遂行しに来た。

 

「ウオオオオォォォォォォーーーーー!!!!!」

 

「クッ、ウゥッ!」

 

 圧しているのはアルファモン・王竜剣であり、圧されているのはオメガモン。その理由は幾つかある。1つ目は戦いへの思い。洗脳されているアルファモン・王竜剣は敵を倒すまで、任務を完遂するまで止まらない戦闘マシーンとなっている。

 一方のオメガモンはその戦闘マシーンを撃退し、元に戻そうとしている。難易度はオメガモンの方が高い。それに加えて施された強化手術によって、アルファモン・王竜剣は以前より総合性能が遥かに上がっている。

 神の手によって人間とデジモンの完全なる一体化、もとい超高度な“デジモン化”を施された為、同じ“デジモン化”を受け入れたオメガモンを圧倒出来ている。

 王竜剣の薙ぎ払いをグレイソードで防御したものの、力負けして弾き飛ばされたオメガモン。空中で体勢を立て直しながら右手を前に突き出し、メタルガルルモンの頭部を象った手甲からガルルキャノンを展開する。

 

「『デジタライズ・オブ・ソウル』!!!」

 

 そこから青色のエネルギー弾が連射されるが、アルファモン・王竜剣は左手を前に突き出し、デジモン文字を刻んで緑色の魔法陣を描いた。

 緑色の魔法陣から放たれたのは緑色の光弾。青色のエネルギー弾と同じ数の攻撃は、オメガモンの砲撃と激突し、至る所で大爆発を引き起こしながら相殺していく。

 

「『永世竜王刃(えいせいりゅうおうじん)』!!!」

 

「グァッ!!」

 

 その隙にアルファモン・王竜剣は両手に王竜剣を握り直し、構えを取りながら刀身にエネルギーを注ぎ込んでいく。刀身から伸びていくのは黄金の光。それは両手に刀を握る武者龍のように見える。

 振り下ろされた王竜剣から黄金の光が放たれた。両手に刀を握る武者龍が雄叫びを上げながらオメガモンに襲い掛かるが、オメガモンは咄嗟に背中に羽織っているマントで全身を覆い包んで防御の構えを取った。

 聖騎士が背中に羽織っているマント。それは防御と飛行を両立している兵装。それにより、オメガモンは攻撃を受け止める事には成功した。しかし、衝撃を無効化する事は出来ず、吹き飛ばされてしまう。

 圧倒的としか言えない戦いを見て誰もが絶望感を抱く中、オメガモンは空中で体勢を立て直し、ガルルキャノンから砲撃を連射する。それを王竜剣を盾にするように構え、連射砲撃を防ぐアルファモン・王竜剣。

 

「『黄鎧(おうがい)』!!!」

 

「グアアァァァァッ!!!!!」

 

 アルファモン・王竜剣が王竜剣を天高く掲げると、彼の全身を両手に刀を握る武者龍が纏っていく。それと同時に突進を開始するアルファモン・王竜剣。

 まるで大河の土砂流のごとく荒れ狂い、全てを切り裂きながら突き進む龍の如し。その王竜となった聖騎士の必殺奥義を喰らい、オメガモンはまたしても吹き飛ばされてしまう。

 やはり戦う事が出来ないのか。目の前にいるのは確かに敵だ。でも昨日まで自分の仲間だった聖騎士と戦う事がオメガモンには出来ない。何故なら転生してから初めての経験となるからだ。頭では分かっていても、身体が追い付かない。

 

―――私はアルファモンに勝てるのか? 何故仲間と戦っているんだ?

 

 海中に沈んでいく中、オメガモンは自問自答をする。何の為に仲間と戦っているのか。そもそも仲間とは何なのか。様々な問いが脳裏に過ぎっていく。

 何をするべきなのかは分かっている。答えは最初から出ている。それにも関わらず、解き方が浮かんでこない。これまで考える事を放棄していたツケが回って来たのか。それはオメガモンにも分からない。

 

―――私は仲間と一緒に居たい。一緒に仕事をしたい。一緒に馬鹿笑いをしたい。あぁ、そうか。私は仲間を傷付ける事を恐れていたのか。昨日までの仲間と言う幻想に捕らわれていたようだな。

 

 仲間を助けたいと思って戦うオメガモンだが、仲間を傷付ける事を恐れて本気を戦う事が出来ないでいた。

 仲間を助けたいと思うばかりで、仲間を傷付ける事を恐れる自分に対して、迷いを捨てられずに戦えない自分の愚かさに気付いた。

 

―――傷つく事を恐れていたら……分かり合う事なんて、出来る筈無いだろ!

 

―――そうだよなぁ、大兄貴。傷付け合う事を恐れてたら、前に進めない。何も変わらない。僕は大切な事を見失いそうになったよ。こんな所でまだ終われないよな……!

 

 オメガモンの空色の円らな瞳が輝いた瞬間、突然海面の一部が盛り上がった。一体何が起きたのか。そう思った誰もが海面を見つめていると、至る所に少なからずダメージを受けながらも聖騎士が立ち上がった。

 満身創痍に近い状態になりながらも、戦闘を続行させようとしているオメガモン。その姿に誰もが目を見開く中、オメガモンはアルファモン・王竜剣を救う為に自らの秘奥義を発動させる。

 

 

 

「コード・オメガ……『Omega-Gain-Force(オメガ・イン・フォース)』、発動!」

 

 胸部の紅い宝玉を輝かせ、自身が誇る秘奥義を発動させたオメガモン。先程まで抱いていた迷いは捨てた。あるのは覚悟と決意のみ。目の前の敵を、洗脳された仲間を絶対に助けると言う強い意志だ。

 覚悟を決めれば誰だって前に進める事が出来る。自分が変われば、周りを変える事も出来る。オメガモンはまた1つ壁を乗り越えた。後はアルファモン・王竜剣に勝利するだけだ。

 グレイソードを構えると共に視認はおろか、気配を察知する事すら出来ない程の超速度で間合いを詰め、オメガモンはグレイソードを横薙ぎに振るう。

 王竜剣で受け止めたアルファモン・王竜剣。先程のように強化されたパワーを以てオメガモンを吹き飛ばそうとするが、それよりも先にオメガモンが動いた。

 

「“万象一切灰塵と為せ”! ハアアァァァァァァァァーーーーー!!!!!」

 

 左手のウォーグレイモンの頭部を象った手甲。その目の部分が輝いた瞬間、刀身がギリギリと唸りながら震え、灼熱の火炎が刀身から噴き出し始める。

 裂帛の気合と共にグレイソードを振り切り、オメガモンはアルファモン・王竜剣を吹き飛ばす。聖剣から発せられる太陽の火炎。それがグレイソードを灼熱の聖剣に変えていく。

 アルファモン・王竜剣は空中で体勢を立て直し、自然落下の勢いと共に王竜剣を振り下ろす。それに対し、オメガモンは右手の手甲を翳して唐竹斬りを受け止めた。

 

「ハァッ!!」

 

「グッ!!」

 

 両手で握り締めた状態で振り下ろされた王竜剣。それを片腕で受け止め、残る片腕に聖剣を装備しているオメガモン。聖騎士はグレイソードを横薙ぎに一閃し、アルファモンの胸部を斬り付けた。

 たたらを踏んで後退するアルファモン・王竜剣。一度背後に飛び退き、王竜剣を構え直しながら仕切り直しを行っていると、それを見逃さないと言わんばかりにオメガモンが追撃に出た。敵は倒せる時に倒す。それがオメガモンのやり方だ。

 

「『デジタライズ・オブ・ソウル』!!!」

 

 しかし、アルファモン・王竜剣も負けてはいない。先程と同じように左手の平を前に突き出し、緑色の魔法陣から光弾を連射する。

 オメガモンは一気に加速して緑色の光弾を掻い潜り、アルファモン・王竜剣の目の前に姿を現した。そのままの勢いを使って刀身から発する太陽の火炎を増大させ、グレイソードを大上段から振り下ろす。

 

「グゥッ……オウリュウモン!」

 

「ッ! チィ!!」

 

 太陽の火炎剣に斬り下ろされると共に、全身を焼かれたアルファモン・王竜剣。彼が叫ぶと共に背後にオウリュウモンが浮かび上がり、両手に握る巨大な刀で斬り掛かろうとする。

 咄嗟に背後に飛び退いて躱そうとしたオメガモンだったが、その隙をアルファモン・王竜剣は見逃さない。左手の平を前に突き出し、デジモン文字を刻んで黄色の魔法陣を描いた。

 

「“光弾けろ”! 『エクスプロージョン』!!!」

 

「グアァァッ!!!」

 

 オメガモンの胸部で大爆発が起こった。大爆発に怯んで仰け反りながら、たたらを踏んで後退するオメガモン。その聖騎士にオウリュウモンは斬りかかる。

 右手に握る“鎧龍右大刃(がいりゅううだいじん)”と、左手に握る“鎧龍左大刃(がいりゅうさだいじん)”で交互に斬り付け、最後にアルファモン・王竜剣が王竜剣を薙ぎ払い、オメガモンを吹き飛ばす。

 空中で体勢を立て直し、海面に浮かぶオメガモン。ここまでの戦闘でアルファモン・王竜剣がマキ・イグドラシルによって何処をどのように強化されたのかが分かった。

 

―――オウリュウモンの必殺奥義は前から使えていたけど、今度はスタンドじみた事も出来るようになったのか。

 

 全体的なスペックだけでなく、繰り出す魔法の威力も上がっている。一番はオウリュウモンに酷似した、或いはその物と言える武者龍を召喚する事が出来るようになった事。

 中々厄介な能力だが、オメガモンは恐れない。もう1度突進を開始しながら、ガルルキャノンから砲撃を撃ち出す。王竜剣を盾にするように構え、砲撃を防ぐアルファモンだったが、王竜剣の一部が突如として瞬間凍結した。

 驚愕を見せるアルファモン・王竜剣。オメガモンが撃ち出したのはエネルギー弾ではなく、絶対零度の冷気弾だった。直撃を喰らった対象を瞬時に凍結させ、分子レベルに分解して消滅させる。

 オメガモンはアルファモン・王竜剣との間合いを詰めながら、更にガルルキャノンから砲撃を撃ち込む。今度は青色のエネルギー弾だが、直進している途中で爆裂。無数の小型エネルギー弾に分裂し、あらゆる方向からアルファモン・王竜剣に襲い掛かった。

 

「グゥッ!!……ハァッ!!!」

 

 背中に羽織っているマントで全身を覆い包み、オメガモンの砲撃に耐えるアルファモン・王竜剣。ダメージは最小限に軽減したものの、衝撃に耐えられずに苦痛の声を上げた。

 砲撃が一通り止んだのを確認してマントを背中に戻そうとすると、オメガモンが目の前に姿を現し、太陽の火炎を発するグレイソードを振り下ろす。

 アルファモン・王竜剣に当たると思われたその時、目の前に魔法陣が出現してグレイソードを受け止めた。その魔法陣を見たオメガモンは表情を変え、“縮地”を発動して後退してから構えを取り直す。

 今の魔法陣は『フォトン・グレネイド』の物。相手の攻撃を吸収して増幅・集束して撃ち返すカウンター奥義。厄介なその奥義を何度も目にしている為、オメガモンは魔法陣だけで直ぐに回避行動を取った。

 

「『メテオ・ダイブ』!!!」

 

 それを見たアルファモン・王竜剣が攻勢に出た。デジモン文字を刻んで赤色の魔法陣を描き、上空から無数の流星群を降らす。

 アルファモン・王竜剣との距離を詰めようと突進を開始したオメガモン。流星群を躱しながら間合いを詰めていると、アルファモン・王竜剣が異なるデジモン文字を刻み、紅色の魔法陣を描いた。

 

「“全てを燃やす炎”、『メテオスプレッド』!!!」

 

「“蒼天に坐せ”!」

 

 オメガモンの周囲に灼熱の炎壁が出現し、聖騎士を拘束すると共に焼き尽くそうとするが、オメガモンはガルルキャノンを構える。メタルガルルモンの頭部を象った手甲。その目の部分が光り輝くと共に、灼熱の炎壁の内部で絶対零度の冷気が放たれた。

 瞬く間に“ニヴルヘイム”と化した灼熱の炎壁は、先程の輝きが嘘だと言わんばかりに消えていった。発生した水蒸気をグレイソードの一閃でかき消し、オメガモンは再びアルファモン・王竜剣との間合いを詰める。

 

「行くぞアルファモン! 私の全てを以てお前を取り戻す! 私は1人ではない!」

 

 激突する太陽の聖剣と王竜剣。『Omega-Gain-Force(オメガ・イン・フォース)』のバックアップもあり、確実にアルファモン・王竜剣を防戦一方に追い込むと、オメガモンはガルルキャノンから青い光の波動弾を2発撃ち出す。

 狙いはアルファモン・王竜剣の下半身と両腕。直撃した事で、アルファモン・王竜剣は動けなくなり、反撃する事も出来なくなった。

 

「これで終わりだ! 届け! 『グレイソード』!!!」

 

 オメガモンはグレイソードから発する太陽の火炎を集束して巨大な火炎の刃にすると、右足を一歩踏み込み、大上段から振り下ろした。

 炸裂したオメガモンの必殺奥義。アルファモン・王竜剣はゆっくりと倒れ始めると共に、全身から眩い光を放って優衣の姿へと戻った。海中に沈む寸前でオメガモンは受け止め、陸地へと向かって飛んでいった。

 

ーーーーーーーーーー

 

 深い闇。全てが真っ黒に染まった虚無な世界。デジモンとなった人間が、心に抱えている内面世界。そこにやって来たのは工藤優衣。まるで墜落したようにゆっくりと落ちながらやって来た。

 何処を見渡しても光どころか、何も見えない暗闇に染まっている世界。その世界にいるのは優衣だけだ。まるで彼女の為にあるような世界なのだから。

 

「此処は……?」

 

 優衣が思い出したのはマキ・イグドラシルに捕らえられてからの事。彼女によって意識を刈り取られたアルファモンは、マキが造ったカプセルの中に入れられて強化手術と洗脳処置を施された。

 先ずは強化手術。完全に“デジモン化”していなかった優衣を、マキの手によって“デジモン化”させた。これで完全に人間とデジモンの一体化が完了し、結果的にアルファモンの総合スペックの上昇に繋がった。

 そしてマキはこれまでのアルファモンの戦闘データを分析し、『電脳核(デジコア)』を操作して彼に合った強化を施した。オウリュウモンの召喚もそれによる影響だ。

 更に自分に対して忠誠を誓う聖騎士にする為、洗脳処置を施した。かなり強力な物を施した事で、結果的に優衣の意志を殺し、相手を倒す・任務を遂行すると言う必要最小限の事を考え、それに特化した戦闘マシーンとなった。

 

―――私はオメガモンと、一真君を傷付けてしまった……皆のお姉さんでいようとしたこの私が……“デジモン化”しちゃったし、もうこれまでのようにはいられないよ……

 

(そんな事はないよ、優衣さん!)

 

「誰、なの……?」

 

 突如として響き渡ったのは若い男性のような声。何処から聞こえて来たのか。それを確認しようと優衣は周囲を見渡すが、見渡す限りの暗闇で何も見えない。

 まして何者かの気配を探る事も出来ない。しかし、ここは自分の内面世界。干渉出来るとしたらこく限られた存在になる。

 

(君は1人じゃない、仲間がいるじゃないか!)

 

―――アルファモン……?

 

 優衣の目の前に現れたのは1体の聖騎士。漆黒に光り輝く聖鎧に身を包み、背中に内側が青く、外側が白いマントを羽織り、背中に翼のような物を備えたアルファモン。

 優衣と一体化し、彼女を支え続けている聖騎士。時には彼女の支えとなり、時には彼女の父親代わりとなっている。

 

(確かに俺達はマキによって洗脳された。君は“デジモン化”された……でも俺達には支えてくれる仲間がいる。共に戦う盟友がいる。自分をそこまで責めなくて良いんだよ)

 

―――仲間……盟友……

 

 優衣は自分を支えてくれる仲間や共に戦う盟友の事を思い出す。自分が“デジモン化”したとしても、彼らは受け入れてくれる。帰る場所が、戻る場所がそこにはある。

 クオーツモンとの最終決戦で自ら“デジモン化”を受け入れた八神一真がいる。自分の握るお寿司を心待ちにしているパラティヌモンがいる。優衣は独りじゃない。沢山の仲間に囲まれ、時には助けたり、助けてもらいながらここまで来た。

 

(大丈夫だ。皆は例え“デジモン化”しても、君を受け入れる。同じ“デジモン化”した先輩の一真君がいる。君は俺、アルファモンだから心配する事はないさ)

 

―――ありがとう、アルファモン。これからもよろしくね?

 

(あぁ、俺の方こそよろしく頼むよ)

 

 優衣とアルファモンは握手を交わすと、暗闇だった彼女の内面世界に光が灯り、瞬く間に光が広がっていく。お互いに笑顔となる優衣とアルファモン。

 これで彼女も自らの“デジモン化”を受け入れる事が出来た。前に進む事が出来るようになり、後は一真達仲間に会うだけとなった。

 

ーーーーーーーーーー

 

「ここは……」

 

「気が付いたみたいだね、優衣さん」

 

 優衣が目を覚ました場所。そこは東京湾の陸地。仰向けで寝ていた彼女に気付いたのはオメガモンだった。

 彼は人間であり、デジモンでもある聖騎士。今は人間よりの優しくて穏やかな人格。その証拠に声が爽やかで、優しい感じがする。

 

「大丈夫? 何処か怪我していない?」

 

「平気よ。私はジエスモンやガンクゥモンの手伝いをしながら、お寿司のネタを仕入れていたの。でもデジモン達が殺戮されている事件の調査をしていたら、その依頼状が『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』の罠だった……」

 

「『NEOプロジェクト・アーク』を調査してたんだ……と言う事はある程度は知っているんだ」

 

「えぇ。イグドラシルの事も、『NEOプロジェクト・アーク』の事も全部。ノルンさんが来ている事までは分かるわ」

 

「そこまで分かれば十分だよ」

 

 今のオメガモンは八神一真っぽい人格となっている。一真の姿でいる時は一真の人格だが、オメガモンの時には人間とデジモンの人格のどちらかを選ぶ事が出来る。

 完全に仕事の話をしているオメガモンと優衣。彼女は今は動く事も、戦う事も出来ないが、会話する事なら出来る。

 

「私は『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』に誘き出された。3体の聖騎士……戦ったのは2体だけど、優勢には立っていた。でもイグドラシルにやられて……私が覚えているのはここまで。奴に強化手術と洗脳を施されてノルンさんを連れ戻し、オメガモンかパラティヌモンを倒せと命令されたの」

 

「それで今に至るか……随分と思い切った策に出たね、イグドラシルも」

 

「確かに前よりは強くなれた。でも“デジモン化”しちゃった……」

 

「ッ!」

 

 今の優衣はアルファモンの瞳と同じ色をしている。黄金色の瞳。オメガモンは優衣の言葉が真実だと認めるしか無かった。

 マキ・イグドラシルの手によって、優衣は“デジモン化”してしまった。これで“デジモン化”してしまった人間は2人目となった。

 

「優衣さん。“デジモン化”した以上はどうにも出来ないけど、僕は優衣さんの事をずっと信じているよ。仲間だから……これまでもそうだったように、これからもずっと優衣さんと一緒に居たいし、一緒に戦いたい。それに……優衣さんの握るお寿司は天下一品だから、ずっと食べていたいんだ」

 

「それは……アルファモンとなった私が、いつまでも変わらないでいて欲しいって事?」

 

「そうだよ。世の中は変わり続けている。僕らも変わり続けないと生きていけない。でも世界には変わっていけない物も沢山あるんだ。だから優衣さん。君は変わらないで欲しい」

 

「オメガモンこそ変わっちゃ駄目よ?」

 

 オメガモンと優衣はお互いに笑い合う。それに釣られてノルンと竜也も笑顔になり、彼らの笑顔が東京湾にいる全ての人々に伝わっていく。

 激戦の末にオメガモンはアルファモン・王竜剣を下し、大切な仲間を取り戻す事に成功した。しかし、まだ戦いは終わった訳ではなかった。

 




LAST ALLIANCEです。
今回も後書きとして、本編に出たデジモンや内容の裏話を話していきます。

・強化されたアルファモン

イグドラシルによって改造手術を施されたデジモンは例外なく強いです。
今の所は敵だけですが、何れは味方も……?
アルファモンの場合、オウリュウモン(ジョジョで言うスタンド扱い)を召喚して使役する能力を会得しました。

・迷うオメガモン

仲間と戦わなければいけないと分かっていても、やっぱり戦えないオメガモン。
彼の弱さであり、強さと言えます。それでもやる時はやるんですけどね!

・大兄貴

Q:オメガモン=八神一真が尊敬している人は?
A:大門大です。

・”デジモン化”した優衣さん

これで”デジモン化”した人間が2人目。
自分からなったのではなく、神によってされてしまった。
これでまたイグドラシルは敵を増やしちゃいました。


裏話はここまでになります。
皆さん。よろしければ感想・評価・お気に入り登録の方よろしくお願いします。
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それでは次回をお楽しみに。LAST ALLIANCEでした!

次回予告

アルファモンを元に戻したのも束の間、マキ・イグドラシルが出現した。
神相手に奮戦するが、オメガモンは追い詰められてしまう。
そんな時に蘇る『厄災大戦』の英雄。果たしてその正体は!?

第33話 狼の王




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