終焉の聖騎士伝説~オメガモンとなった青年の物語~ 作:LAST ALLIANCE
文字数は短いですが、ちょうど良い所まで書けたので切りました。
「クッ!!」
マキ・イグドラシルは2体のデジモンが同時に繰り出した攻撃を防御したものの、完全には受け止めきれず、吹き飛ばされた。
オメガモンが薙ぎ払ったグレイソード。レクスフェンリスモンが振り下ろしたバスターソード。呼吸を合わせ、繰り出した上段下段への同時攻撃。
それを防御したものの、吹き飛ばされたマキに追い打ちをかけるように、レクスフェンリスモンは海面を素早く駆け始める。
彼女は両手に握る2丁拳銃―アストリアを構えて弾幕を展開する一方、狼の王はバルンストックを盾にするように構え、銃弾を防いでいく。
「ハアアアァァァァッ!!!!!」
「ッ!!」
―――これがパラティヌモンと共に、『厄災大戦』を駆け抜けた英雄の力なのか!
バルンストックを握りながら振りかぶり、思い切りマキに向けて叩き付ける。アストリアを交差させて受け止めたものの、レクスフェンリスモンのパワーに押され、マキは再び吹き飛ばされた。
レクスフェンリスモンの圧倒的なパワーとスピード。パラティヌモンと同等クラスの実力を感じ、オメガモンが戦慄を覚えると共に味方として心強さを感じる中、レクスフェンリスモンは更にマキに攻撃を仕掛ける。
黄金の爪で貫かんと巨大な左腕を突き出すが、マキはアストリアの銃剣部分で防ぎ、もう1丁のアストリアを構えて銃弾を撃ち込もうとする。
それに気付いて右足で蹴り付けて体勢を崩させ、バルンストックを突き出して追い打ちをかけるレクスフェンリスモン。完全に“狼の王”のペースだ。
「おのれ……!」
「私を忘れてもらっては困るな!」
「そういう事だ!」
アストリアを交差して防御したものの、吹き飛ばされたマキ。彼女に向けてオメガモンはガルルキャノンを構え、青い波動弾を連射する。
レクスフェンリスモンも左腕を前に突き出し、両手首に内臓されている砲身―レクスキャノンを展開し、黄色の波動弾を撃ち出す。
オメガモンが砲撃を連射し続けるのを見て、レクスフェンリスモンは上空から奇襲を仕掛ける。バルンストックを振り下ろし、力負けして吹き飛ぶマキを回し蹴りで追い打ちをかける。前衛のレクスフェンリスモン、後衛のオメガモンの陣形。
「良いわ。こっちもギア上げていくわよ!」
マキは上空に向けて一発の銃弾を撃ち出した。銃弾は上空で放射状に放たれ、オメガモンとレクスフェンリスモン目掛けて降り注ぐ。
狼の王はバルンストックを盾にするように構えながら防ぎ、聖騎士は太陽の火炎を発するグレイソードを振るい、太陽の火炎で銃弾を相殺した。
その隙にマキは突進を開始する。厄介なレクスフェンリスモンから先に潰そうと、アストリアを薙ぎ払って銃剣部分から伸びる剣光で攻撃する。
「チィ!!」
咄嗟に跳躍して躱す狼の王にマキが襲い掛かった。右手に握るアストリアの銃剣を突き出す一方、バルンストックを振り下ろして迎撃する。
左手に握るアストリアを構えて銃弾を撃ち込もうとするが、その隙に背後に回り込んだオメガモンがグレイソードを振り下ろす。
それに気付いたマキが左手のアストリアで受け止めるのを見て、レクスフェンリスモンは両手に握るバルンストックを最後まで振り下ろす。更にオメガモンは右足蹴りで追い打ちをかけ、マキを吹き飛ばした。
「何故私の邪魔をする!」
「貴女のしている事が間違えているからだ。私は自分の正義を貫く為に戦う。現在も、そしてこれからも!」
「そうだ。オメガモンがこの世界を守ろうと言うのなら、俺はこの世界を守るオメガモンを守る。そういう事だ!」
オメガモンはガルルキャノンから青い波動弾を撃ち出し、レクスフェンリスモンはレクスキャノンから黄色の波動弾を撃ち込む。
迫り来る2体のデジモンによる砲撃。それをマキは瞬間移動を行う事で躱すと共に、レクスフェンリスモンの背後に姿を現した。
「『テールブレード』!!!」
「チィ!!」
それに気付いたレクスフェンリスモンが叫ぶと、彼の背中から一本のアンカーが自動で伸びてマキに向かって襲い掛かる。
マキが『テールブレード』を防いでいる隙に、狼の王は彼女の間合いを詰めてバルンストックを振るうが、彼女は咄嗟に背後に飛び退き、仕切り直しを計った。
「流石ね……『厄災大戦』を駆け抜けた英雄だけあるわ」
「貴女こと大した強さだ。デジタルワールドの神様だけあるよ」
「イグドラシル! もう一度考え直してくれ! 今ならまだ間に合う!」
「もう遅いわ。私の計画はもう行われている最中。今更止まる訳には行かない」
マキが2丁拳銃を構え直す一方、レクスフェンリスモンは両手に握るバルンストックを構え直し、オメガモンもグレイソードを構える。
完全に議論は平行線となっている。マキは止まれない。自分の計画を遂行する為に。彼らが対立しているのは自分達が掲げる正義。
聖騎士と狼の王が目指す物。それは人間界とデジタルワールドの平和を守る事。その平和を乱し、厄災をもたらす者は例え神様だろうと消し去る。それだけの話だ。
レクスフェンリスモンは目にも止まらぬ速さでマキとの間合いを詰め、バルンストックを大上段から振り下ろし、それを迎撃するようにマキも両手に握るアストリアを振るう。
激突するバスターソードと銃剣。2体の周囲一帯に向けて拡散される衝撃波。狼の王は両腕に力と体重を乗せながら、バルンストックで押し込もうとする。
「援護するぞ!」
「ありがとう! 行くぜ……『レクスインパクト』!!!」
横から援護するのはオメガモン。ガルルキャノンを構えて青色の波動弾を撃ち出し、マキの体勢を崩していく。砲撃を喰らって体勢を崩したマキを見て、レクスフェンリスモンはバルンストックを背中に戻した。
両手首から展開していたレクスキャノンを一度戻し、右手たるレクスネイルでマキの頭を鷲掴みにする。そして奥義名を叫ぶと同時に両手首内部のレクスキャノンを連動させ、マキに強烈な一撃を叩き込んだ。
『レクスインパクト』。相手を片手で掴み取ってゼロ距離でレクスキャノンを連動させ、強烈な一撃を叩き込む必殺奥義。それを喰らったマキを投げ付ける。
「貴女はデジモン達の為に、デジタルワールドの為に計画を遂行しているのではない。ただ自分が世界を治めたいだけの一心で動いているに過ぎない。そんな奴に世界が治められる筈がない!」
「……良いわ。今日の所は撤退してあげる。でも次は必ず倒して見せるから」
零距離で必殺奥義を喰らった為か、マキは多少ふらつきながらも立ち上がった。そしてこれ以上の戦闘は無意味で、自分にとって不利だと言う事を認め、その場から飛び去った。
その途中でパラティヌモンと戦っていたクレニアムモン・フェルグスに連絡を入れ、撤退するように命令したのは言うまでもない。
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東京湾での戦闘終了後。“電脳現象調査保安局”に戻った一真達。マキに洗脳され、オメガモンの活躍で解除された優衣。彼女は念の為に検査入院する事となった。
今回は東京湾で戦闘が行われた為、被害や死傷者は一切出なかった。これは嬉しい情報だが、何より一番嬉しいのはレクスフェンリスモンが加わった事。薩摩本部長はレクスフェンリスモンと会い、彼から話を聞く事を決めた。
同じ頃にパラティヌモンも帰還したが、二振りの聖剣―パラティヌス・ソードを折られ、現代化した聖騎士達との性能差を思い知らされたのか、表情が険しかった。
「俺は元々フェンリスモンと言うデジモンだった。『厄災大戦』の終盤で力尽き、寝てしまった所までは覚えている。目を覚ました時に櫻井竜也と言う人間が死にかけているのを見過ごせず、彼と一体化して転生した」
「それでレクスフェンリスモンと名乗った……狼の王か。かっこ良い名前だな」
「ありがとう。『厄災大戦』の時はイグドラシルの命令を聞き、武力蜂起したデジモン達と戦っていた。でも今回は違う。立場が真逆だ。まさかあの時戦ったデジモン達側に立つ事になるとは思ってもみなかったよ……」
レクスフェンリスモンは櫻井竜也の人格が反映されているのか、オメガモンに比べてかなりフランクで話しやすい所がある。
かつてフェンリスモンとして『厄災大戦』を駆け抜けた時、彼はイグドラシル側だったが、今回はその真逆。これは何という偶然なのか本人も苦笑いを浮かべている。
「竜也君も今回の事態の事はあまり分かっていないから、私から直接話すとしよう。今マキ・イグドラシルが遂行しているのが『NEOプロジェクト・アーク』だ。人間界とデジタルワールドを統合させ、新しい世界を創る。その為にデジモン達を消し去り、人間界を崩壊させている」
「……『厄災大戦』の頃から何も変わっていない。いやむしろ悪化している。一体イグドラシルに何があったんだ?」
「それは私には分からない。だが、『聖騎士団(ロイヤルナイツ)』にもこちらに寝返ったデジモンもいる。ホメオスタシス側、つまり我々に味方している聖騎士もいるんだ」
「パラティヌモンもいるって聞いたよ。彼女は俺達とは違うけど、色々と頼りになる。もうなっているとは思うけど、改めてよろしく伝えるよ」
レクスフェンリスモンは人間とデジモンの融合で転生し、フェンリスモンが新たなる姿と力を得た姿。一方、パラティヌモンはアーサー王が転生して聖騎士王となった姿。総合力を見ると、どうしてもレクスフェンリスモンの方が上となっている。
その総合性能を引っ繰り返す力をパラティヌモンは持っているのだが、それを知っている薩摩も同意するように頷く。
「ところで今の状況はどうなっている?」
「デジモン達を消し去り、人間界を崩壊させようとしている所だ。我々はその対処に追われている」
「……そうか。俺はこのまま朽ち果て、やがてはイグドラシルに利用される運命だっただろう。でも竜也君の意志に応えて転生した。彼の事は知っている。オメガモンに助けられ、繋いだ命。今度は俺が繋いだ。だから命に代えてでも彼を助けてみせる」
「君は本当に良いデジモンだよ。ありがとう。これからよろしく頼む」
「あぁ、こちらこそ」
薩摩本部長とレクスフェンリスモンは握手を交わした。櫻井竜也ことレクスフェンリスモン。『厄災大戦』の頃に誕生した神造デジモンを制御する為、竜也は最初から“デジモン化”した状態となっている。
そのおかげで最初から十全の力を発揮する事ができ、オメガモンと共にマキ・イグドラシルを追い払う事に成功した。“電脳現象調査保安局”は強大な戦力を手に入れた事となる。
同じ頃。ノルン・イグドラシルは自分が転生させたアーサー王、もといパラティヌモンと会っていた。彼女は自らの聖剣を折られ、心までは折れていないものの、何やら思う事があるのか、遠くを見ている。
「浮かない顔をしていますね、パラティヌモン」
「ノルン様……」
「クレニアムモン・フェルグスに負けたのですか? 聖剣を折られたのは分かりますが、無傷なので気になりました」
「はい。負けました。幸い敵が撤退したのでどうにかなりましたが、あの戦いは私の負けでした」
パラティヌモンはフェルグスとの戦いに負けた事よりも、自らの聖剣が折られた事に衝撃を覚えている。経年劣化ではない。ずっと手入れはしていた。
単純に相手の武器に破壊された。これによってパラティヌモンは今の自分は時代遅れになっているのではないかと考えるようになった。
「今の私ではまたフェルグスに負けるでしょう。『厄災大戦』の頃は自分の力と技術で戦って来ました。しかし、この時代はそれだけでは勝ちにくくなっています。もっと強くならないといけないと私は気付かされました」
「この時代で戦ったり、色々な経験を積んで成長していますね」
「はい。今の力がどれくらいなのかを理解しないと、前には進めません。現実を認めるのは大変ですが、でも現実と向き合わないと前には進めません」
パラティヌモンは弱くない。強いと言える。だが時代遅れな所もある。確かに剣術の技量と性能は高いが、それだけで勝てる相手ばかりではなくなった。
彼女はフェルグスとの敗戦を通じて、自分も現代の聖騎士達に後れを取らないように強くなりたいと願うようになった。
「現実を受け入れている貴女は弱くありません。強いです。強くなれます。確かに昔の貴女は強かったですが、今の時代は昔より電子機器の発展もあってデジモンのパワーや質も上がっています。私が施した手術も未熟でした。一緒に強くなりましょう、パラティヌモン。次のフェルグスとの一騎打ちに向けて、貴方に現代化の強化手術を施します」
「えっ!? あ、ありがとうございます!」
「ただしこの手術は時間がかかります。貴女をこの世界ではアーサー王。かつての力を存分に振るえるよう、貴女のデータ等を色々と調整します。暫く戦う事は出来ませんが、それでも良いですか?」
「はい! 今度はアーサー・ペンドラゴンとしてかつての聖剣や聖槍を振るえるよう、精進していきます!」
「ちなみに名前はアーサーパラティヌモンで決まっています」
「早いですね!?」
ノルンが計画している強化手術。それはパラティヌモンを本来のアーサー王としての力を存分に振るえるよう、現代技術で改修を施す事を意味している。
従来は超機動の双剣士だったが、今回は超機動を維持しながら聖騎士王として強化手術を施し、聖剣や聖槍を使えるようにする事をコンセプトとしている。
LAST ALLIANCEです。
今回も後書きとして、本編に出たデジモンや内容の裏話を話していきます。
・レクスフェンリスモンの強さ
『厄災大戦』を駆け抜けたと言う事で、パラティヌモン級の強さを持ってます。
破砕剣を駆使した豪快でパワフルなパワーファイターです。
・コンビネーションの良さ
初めて一緒に戦うのに連携が良いのは、オメガモンがアシストに徹しているからです。
前線で華々しく戦う事だけが戦争ではありません。
・竜也の行動原理
オメガモンに救われた命をフェンリスモンに繋いでもらった。
だから戦う。命を繋ぐ為に。主人公っぽいですね。
・パラティヌモンの強化フラグ
ガンダム・バエルから何になるのか……取り敢えず次回からログアウトします。
復帰はいつになるかは分かりません。
裏話はここまでになります。
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それでは次回をお楽しみに。LAST ALLIANCEでした!
次回予告
デジタルワールドで現実を目の当たりにする一真と竜也。
竜也に襲い掛かるスレイプモン・グラーネ。
戦いの最中、レクスフェンリスモンのもう1つの姿が明らかに……!?
第35話 神殺しの狼