天「鞍馬の里に行きますか」
文「天さんは普通じゃない」
門「.リア充滅びろ」
天「めんどくさ」
ドカッ
門「ヤラレター」
文「その不思議な力は?」
天「思念伝達って言うんだ」
謎の美少女「天鴎ー!!」
文「誰ですかその女は」怒り
天「俺は何もしてない」ガクブル
こうしてみると内容の薄さにビックリする。
「天さん、誰ですかその女は?」
「いやあ、あのー、ですねー」
「言い訳はいりません、誰なんですか?」
「ええっと、あのー、少し落ち着きませんか…」
文はハイライトのない目で天鴎を睨んでいる。
天鴎は必死に何にもしていないと説明しようと慌てふためくが、逆にその行動が文に不信感を抱かせている。
謎の美少女を覗いて、その周辺には男女の修羅場独特の嫉妬と殺気が詰まった空気が漂う。
しかし、その空気を壊したのは意外にも謎の美少女だった。
「ああー!!あなたが天鴎の婚約者だっていう射命丸文さんでしょー、こんな可愛い娘よく見つけてきたねー、お父さんみたいに女の子引っ掛けてくるようになったらダメだよー。それで文さん、本当にこんな奴でいいの?」
「え、ええ、(何ですかこの娘は)私は鞍馬天鴎、そこの天さんが良いんです」
謎の美少女は天鴎の上からさっと動いて文の前に動き気になる事を言いながらも質問をぶつけてくる。
文はそのノリに追いつけず、たじろきながらも答えを返す。
属性過多の美少女はそのノリでさらに文に詰め寄る。
「ええ、でも、この子、里では阿修羅とか呼ばれてて、女っ気なんて全く無かったし、女の子を誰も女の子扱いしないことで有名で誰も天鴎とは結婚しないだろうって推測が飛び交うぐらいなんだよー?」
「
天鴎は
「いたたた!痛い痛いよ天鴎!?降参降参です降参します!だからその頭にめり込まんばかりの指を離してください!!ぎ、ギブアップ!!もう無理!!?」
天鴎はその言葉を聞いてはぁというため息をついてからその指を離す。
「はあ、やっと離してくれたー、もう天鴎、妖力まで使ってかなり本気でアイアンクローかましてきたなー(怒)」
「当たり前だ。なんであんなに俺の悪い点を上げて攻めてくる。意味が分からん」
「昔からそうやって適当に扱ってくるからその腹いせだよーん」
「う、コイツ…」
「それに今言った事は本当だし、何も嘘なんて言ってないんだよー?それこそ今そんなにズタボロに言われるのも天鴎の自業自得なんだよ?」
「う、かなり正論だから何も言い返せない」
「ふん、自分がどれだけ人を蔑ろにしていたか思い知ったか〜〜!」
確かに、俺は里の連中との触れ合いを蔑ろにし過ぎたのかもしれない。
そこは認めるべき俺の非なのだろう。
しかしだ、それにしても俺の悪口を言う量が久しぶりの対面にしては多過ぎだししかもだ、海南からしたら初対面の人に自身の悪口を嬉々として吹き込むと言うのはやる事が陰湿すぎやしないだろうか?
俺は自然と手がアイアンクローの形にワナワナと震えながら変形していく。
海南はそれを目の端に捉え頬を引きずらせる。
「も、元はと言えば天鴎が悪いんだからね!?あんなにいけ好かない態度を取るから!」
「ああ、大丈夫さ、元々は俺が悪いんだからさ、そんな理不尽に暴力は振るわないさ」
「そ、それなら、そのだんだんと私の顔に近づくその手を放してくれませんか?」
「ああ、残念ながらこの手はもはや俺の手から制御を離れお前の顔に向かっているからな。もはや俺でも止められないな~」
「なになに!?一体その謎理論はなに!?絶対私に口論じゃ勝てないからって、暴力に走ろうとしてるでしょう?絶対そうでしょう?そんなの止めてよー!!男としてどうかと思うよ!」
「ふふふ、それはどうだろうね?ただ、俺はそんな細かい事は気にしていないけど」
「うわ、天鴎本気じゃないの!ダメだよ、手をだしちゃ!?不幸な事故で片付けられないよ!!」
二人は傍目からみて仲良く話しているような会話をするが、その内容は男の矜持と自身の命をかけたかなり攻撃的な会話である。天鴎と海南という少女の間で不穏な空気が漂う。
しかし、文からすればその会話などどうでも良かったし、それよりも海南という少女についての説明の方が欲しかった。
それに加え、文からすれば自身を放り出して天鴎が見知らぬ女との会話を楽しんでいるようであり気に入らなかった。そのせいで、声につい怒気が籠もってしまった。
「天さん?」
ビクッ「ひゃ、ひゃい、な、なんでしょう文様」
「そろそろその女の人を紹介してもらいましょうか?」
「イ、イエッサー、マム!!」
「マムではありませんが…」
「お、お許しをおおおお!!」
「早めに本題に入りましょうか、天さん?」
「は、はい、入らせていただきます!」
「最早尻に敷かれているのね、文さん、恐ろしい娘」
「海南さんも少しお口チャックしててくださいね?」
「ハイ、イエッサー!!」
謎の凄みを出している文。
その凄みに本能のレベルで服従してしまった天鴎と海南。
海南は内心ではなんでこんな事にと思っているが、天鴎は何の戸惑いもなくこの状況を受け入れている。
最早、その姿に犬と変わりはない。
海南も今の天鴎を見て飼い主に叱られしょんぼりとした犬の尻尾を幻視したという。
「ええっーと、この娘は倉田海南。屋敷で働いてる一人で、長刀の使い手だよ。後の性格は今までの会話で察して欲しいかな」
文はその説明を聞き、天鴎の隣で正座している海南を見る。
会って直ぐにテンションマックスになる性格。そこから元気という2文字がとても似合う少女だという印象が付いた。それに加え、この少女は文の中では注意すべき対象となった。なぜなら、この少女天鴎と自分の婚約に祝う言葉ではなく、どちらかと言うと自身と天鴎の婚約に反対するような言葉を掛けてきていたからだ。
それは、少なくとも天鴎に好意を寄せているかもしれない可能性を生む言動だ。
文からすれば相手は自分よりも天鴎との付き合いが長く、自分よりも天鴎の事を知っている相手。
もし予想があっていて、海南という少女も天鴎の事を狙っているのなら相当強い競争相手になることが予想される。
故に文は海南にジロリと視線を送りながら様子見に徹することにする。
とりあえず、天鴎が妖怪の山の来る前にこの少女に唾をつけていないことを祈りながら、ため息をつく。
「とりあえず、海南さん個人についてのことはいいとして、あなた一体何しに来たんですか?少しは理由があるんですよね?」
「んん?ああ!忘れてた忘れてた。そういえば一応案内役として屋敷を追い出されてきたんだった!」
「追い出されたって…」
文はその言葉に大丈夫なのかという顔をしている。
天鴎またかよという顔をしている。
「とりあえず、海南、仕事があるならとっとそれを遂行してくれないか?また、おばさんに叱られるぞ?」
「ほ、ほんと?最近おばさんに大目玉くらったばっかりなんだよ!次やっちゃたらしばかれたおされちゃう!?」
「お前、おばさんは確かに厳しいが…そこまで怒らせるのも相当だぞ…」
「だってー、おばさんが難しいことばかり教えるからぁ」
「はあ、俺の覚えてる限りおばさんは無茶をいう性格じゃあなかったはずなんだけど。文、さっさと行きますか」
「ちょっ、天鴎置いてかないで―!!」
すでに屋敷の場所を知っている天鴎は海南を無視してさっさと歩き始めるのだった。
■
「わあ、ここが本家ですか」
「そだね、ここがボス天狗の家だよ」
鞍馬の長が住む屋敷は貫禄のある何とも立派な長屋である。
天鴎はその家が実家のはずなのにボス猿の巣みたいにその自身の実家を紹介する。
「とりま中に入ろうか」
天鴎はなんの感慨もなく久しぶりのはずの自身の実家に入っていく。
文もそれに続く。
海南は珍しく天鴎達に大人しくついていっている。
しばらく歩いて、天鴎はある部屋に入る。
「ちょっと待ってて、今誰か対応にでてくれるから」
天鴎は思念伝達で確認したのか、文にそう伝える。
対して文は大分緊張していた。
先程の海南の突入でいくらかは緊張が収まったとはいえ、自身の好きな人の親に挨拶するなどこの長い生の中でたったの一度も経験が無いのだ。
外見は変わらないとは言え妙に年だけは取っている文は変におろそ待ってしまい先程緊張が少し収まったはずなのに今更緊張感が更に高まって来てただただ混乱するしか無かった。
「ねえ、文さん」
ここに来て海南が話し掛けてくる。文からすれば先程自身の緊張を少し緩和してくれた実績を間接的とは言え持つ者だ。
文はこの緊張が和らぐ可能性が少しでもあるのならと悪い方向への思考は全くせずに海南の話しに応じる事にする。
「はい、何でしょうか?」
「お兄ちゃんは絶対に渡さないよ」
「へっ?お兄ちゃん?」
今しがた海南の言った言葉のせいで更に混乱の渦に飲み込まれる文。どうやら今回は自身の緊張を和らげてくれる事は期待できそうにない。
文はとりあえず天鴎の方を向くと、先程の発言に対してか呆れた顔をして天を、仰ぎながら目頭を揉んでいた。
天鴎は本気で呆れているらしい。
「海南、小さい頃にお前を良く世話をしてやってはいたが別に血は繋がっていないだろ?」
「嫌なの!家族だと思える人が遠くに行くのは嫌なの!天鴎は特に良くしてくれたから、離れて欲しく無いの!!」
「嫌、俺別に婿入りするわけじゃないし、そもそも俺達が妖怪の山に住んだって物理的な距離はそう無いんだからそんなに嫌々と言う事無いと思うけど?」
「ち-がーうー!そうゆうことじゃない!!どうして分からないの!?おにぃがいなくなることが不安なの!?」
「いや、いなくなる訳じゃないのになんで不安になるの」
「だーかーら!「海南さん」何!?」
「天さんはそういう所大分鈍感ですから今分かってもらおうとしても無駄だと思いますよ?」
「だから今分かってもらおうと!かいな?」
「海南さん、それより重要な事があります。少し耳を貸してください」
「え?一体なに…」
海南の言っている途中に文が海南の耳を引っ張り天鴎に聞こえないようで囁く。
「あなたは天さんに恋愛感情を抱いているんですか?」
「ひいっ、い、いや、抱いておりません」
「本当に家族としての愛情だけですか?」
「は、はい、そうです。天鴎とは家族同然に何年も過ごしてきたから、兄としての感情のほうが強いです、というか天鴎は距離が近すぎてそういう対象としては見れないです、はい」
「はあ、なら大丈夫ですよ。天さんも相当仲間を大事にする性格ですよ。例え私と結婚してもそれまでと変わらずにあなたと家族当然に接してくれますよ」
「本当に?ならあなたは私に厳しくしない?」
「天さんと家族同然なのなら、私が歓迎しない訳ないじゃないですか?何を不安がっているんですか?」
「いじめられちゃうんじゃないかと思って…」
「虐めるだなんて、そんな事するはずないですよ、だから安心してください」
「本当に、『お義姉ちゃん』?」
「はうっ!!?」
海南の言った言葉に文は何か感じたことのない感動が体を駆け巡る。
文からすれば今まで肉親といえる者がなかなかいなかったのだ。その文に向けられたお義姉ちゃんという言葉は妹属性の強くまた小柄であり、またとても可愛らしい海南の言葉は文のある部分にクリーンヒットしてしまったのだ。
「海南ちゃん、もう一度言って『お義姉ちゃん』って」
「お義姉ちゃん」
「はうぅぅ!?」
またもや、文に海南の言葉はクリーンヒットの様子。海南ちゃん、恐ろしい娘。
ちなみに、天鴎はそのやりとりを呆れた目で見ていた。
「大丈夫ですよ、海南ちゃん、あなたの不安な事は私が全身全霊を持って排除してあげますよ。私は海南ちゃんの味方です!!」
堕ちたな、天鴎はこのやり取りを見てそう思ったらしい。そして、妹キャラという有用性はかなりあるんだなと思ったらしい。
「あらあらまあ、もう随分と仲良くなっちゃって、おばさん嬉しいわ」
そう言いながら襖を開け、妙齢の美女が入ってくる。
文はその美女を見て、優しそうという第一印象を抱いた。
彼女の容姿は髪は黒髪に白髪が混ざってはいるが全体的艶のある髪で、顔は皺の少ない張りのある顔であり、目は潤いのある黒目、全体的THE・大和撫子という感じの人だった。
「ばあちゃん、久しぶりだね」
「そうね天鴎、久しぶりね。以前から大事な事があっても家を出てて帰ってこない事が多かったけれど、今回はちゃんと帰って来たし改心したと思うと嬉しいわ」
「う、ばあちゃんあん時は悪かったよ。だからあんまりイジワル言わないでくれよ」
どうやら天鴎はなかなか家に帰らなかった不良少年だったらしい。天鴎の祖母に次はないよう思いっきり釘を刺されている。
「それで、今日は婚約者を紹介してくれるんじゃなかったけ?」
天鴎の祖母がさっそく話を切り出す。
「そうだよ、ばあちゃん、こちらが俺の婚約者の射命丸文だ」
「射命丸文です。よろしくお願いいたします」
天鴎に紹介された文は自身でも名前を言う。
「あら、射命丸文さんというのね。いい子そうで良かったわ。私は
天鴎の祖母、名前を鞍馬天詠という名前らしい。
「でも、本当に天鴎とくっついてくれる人ができて良かったわ。こんな不良少年と一緒になってくれる娘がいるなんて思いもしなかったから」
天鴎は祖母からこの言われようである。
しかし、文からすればいくら祖母だからと言っても自身の婚約者を悪く言われるのは気分のいいものではなかった。故に少し言葉尻が強くなってしまう。
「いや、皆さんが考えてる天さんがどのような事をしていたのかは知りませんが、少なくとも私と接している時はとても私に優しく接して支えてくれました。私は天さんの容姿や強さに憧れた訳じゃないんです、その内面に惚れたんです。だから、そんなに天さんを悪く言わないでください」
文がそう言い切った。天鴎は隣で嬉し驚きで固まっているし、海南は本当に天鴎に惚れいるんだと思って感心しているし、天詠はただ微笑ましそうに見ている。
「文さん、私は嬉しいわ。こんなにいい娘が孫に嫁いでくれて。それでいて本当に心から天鴎の事を思える娘で。私からもお願いするわ、どうぞこの孫と末永く幸せにお願いしますね、文さん」
どうやら、文は天詠のお眼鏡には適ったらしい。
天詠から文を託されてしまっている。
「天鴎!」
「は、はいっ!」
天詠の凜とした声が響き、それに天鴎が慌てて返事をする。
「絶対に、この娘を幸せにするんですよ」
「!、ああ、もとよりそのつもりだよ」
天鴎は天詠の言葉に力強く答える。
天詠はその返事に満足したのか頷き席をたった。
「さてと、こんな老人はさっさと退いて、若いのだけで話させた方がいいわね。あなたたち、家の人たちが帰って来るのは仕事が終わってからになりますから、文さん、みんなに紹介したいから今夜ここに泊まっていきなさい。夕食の席で皆に紹介するわ、それまではここの者と親睦を深めておけばいいわね。天鴎、ちゃんと案内してあげるのよ」
天詠はそう言い、最後に文の方を振り向向いた。
「文さん、私たちはあなたを歓迎するわ、ゆっくりしていってね」
「あ、ありがとうございます!」
文の言葉を聞いた天詠は満足したのか、その顔に微笑みを浮かべながら、部屋を後にした。
そして、部屋には少しの間静かな時が続いた。
「認められたんですかね、天さん…」
文は静かに天鴎に問う。
「ああ、バッチリさ、これ以上ない程に認められたし、気に入られただろうね」
天鴎も微笑みながら言う。
「はあああああ、良かったぁぁぁあ」
文は一気に吐き出す。
あまり、表には出ていなかったが、文は天詠の前ではかなり緊張していたようだ。
「私も文さんが天詠さんにかなり気に入られたと思いますよ」
次に海南が天鴎の意見に、賛成する。
「それに私は思いましたし、文さんは天鴎ととってもお似合いの夫婦になるだろうなって、多分これ以上天鴎の事を思ってくれる人はいないだろうって私も思います」
海南はそう言って文の方を向く。
「さっきは認めないみたいな事言ってごめんなさい。天鴎に必要なのは文さんみたいな人なんだなって思いましたし、私も文さんはとてもいい人だなって思ったし、天鴎との結婚は大賛成だから、これからもよろしくね?」
「海南ちゃん、ありがとう。こちらこそこれから宜しくお願いしますね」
文は海南の言葉に感動するように少し涙声でいう。
「まあ、私的にもおばあちゃん的にも、あんなに天鴎を愛してる宣言されたら認めない訳にはいかないからね」
海南は少し困ったように苦笑いしながら認めた理由の1つを言う。
その言葉に文は天詠の前で何を言ったのか思い出し、天鴎は何を言われたのか思い出して、二人して赤くなったのだった。
「なんか二人共凄く初々しいね」
海南からすれば二人がここまで初々しいのは予想外だった。
今回の天鴎は正装でした。ダサTではありません。
正装の方は挿絵が目次にあるのでそちらを参照してください。
次回は内容的に鞍馬の里後編だけで終わりきらない可能性があるので幕間を入れます。
最後に、遅くなってすいませんシッターー!!