内容も時間が空いてしまってブレブレですが、本編です。
「あら、今夜はどうやら騒がしくなりそうね」
八雲紫の屋敷で、屋敷の主人の紫が夜空を見ながら呟く。
「紫様、こちらは準備が整いました」
なんの前ぶれもなく紫の後ろに現れた、金色に輝く艶やかな九尾の尻尾を持つ狐の妖怪。
そして、妖怪の賢者である八雲紫の式神でもある。
「さすが藍、準備が早いわね」
紫は微笑を浮かべながら、八雲藍に答える。
「お褒めいただきありがとうございます。…しかし紫様、わざわざ軍勢を出す必要はあったのでしょうか?」
藍が紫に問う。
「あるわよ」
「具体的には?」
「まあ、今回の騒動の主を私達がコントロールする為のメンツを得ることと、実は私が計画している改革があってね、それを実現する為に後々必要になるのよ」
「しかし…」
「まあ、確かに、私達が動かなくても鞍馬の天狗に任せれば全てを解決してしまうかもしれない。けれどそれが正しいのかしら?ここは私達が作った幻想郷よ?こんなトラブル一つ私達が管理できなくてどうするってゆうのよ。まあ、流石に鞍馬の天狗は無理だけど」
「…そうですね。このような場合でも私達が解決することに意義がありますよね。すみません紫様、私の考えが甘かったです」
藍は自身の考えを改める。
「まあ確かに、あなたが考えているように鞍馬天狗に全てをまかせたらかなり楽そうではあるけれど、けれどより事の収集の方がはるかに大変になりそうね」
鞍馬の天狗を戦場なんかに送り込んだら何をしでかすか妖怪の賢者でも分からない。ゆえに、穏便にすませてくれる可能性もあるが、戦場をしっちゃかめっちゃかにかき回す可能性の方が大きい。
「まあ、それでも鞍馬の天狗は何人か参加させることになったけど」
今回はお祭りだと言って全員で参加しようとしてきたが、こちらの管轄だと言って抑え込むのには大変苦労した。
妥協案として鞍馬が若手の育成と言って引率役と若手何人かを送り込むことになったが。
「さてと、こちらは一体どれだけの戦果を残せるかしらねえ?鞍馬側は若手を送り込んでくるけど、あの鞍馬だし、博麗の巫女でも戦果で勝てるかどうか分からないわね」
紫達の手駒でもかなりの強さを持つ博麗の巫女。今代の巫女は他に前例のないような肉弾戦主体の戦闘スタイルを好む。
「かと言って、肉弾戦に関しては完全に鞍馬の方が完全に格上だしね」
そこまで考えて、紫はため息をつく。
鞍馬という自身の想像の範疇を超えてくる存在が関わってくる以上、彼らがどう動くかなど考えても意味はない。考えるだけ無駄だろう。
それよりも、今回の『異変』を起こした相手を考える方が重要だろう。
「吸血鬼ね…」
海の向こう側にあるという国々ではかなり有名な存在らしい。
どういう訳でこの幻想郷に来たのかはわからない、そこにさほど問題になることはない。この幻想郷は全てを受け入れるのだから。しかし、ここの秩序を乱すというのなら、こちらもしかるべき対応を取らなくてはいけない。
「どれほどの強さかは知らないけれど、こちら側が蹴散らせるわね」
「はい、紫様。敵はどうやら突如出現した館の周りにいたものを無理矢理味方につけたようで突けば簡単に崩れる烏合の衆です。それに、敵の中枢はかなりの強さを持つと思われますが、数自体は少なく、制圧は比較的容易だと思われます」
「まあ、当然ね…」
それに今回は藍も戦闘に参加するし、場合によっては紫自身が戦場に打って出るだろう。
「上手くいくことを祈るしかないわね」
本当に、全部鞍馬に持ってかれないように、祈るしかない…
紫の心配をよそに、太陽は地平線に沈みかけていた。
■
「さてと、着いたか」
俺は今、紅い館の前にいた。
今回は久しぶりに鞍馬側の方から仕事が回ってきたのだ。
なんでも、今回幻想郷に突如侵入してきた敵がいるらしいのだが、父さんが紫に掛け合って敵の幹部級を何人か譲って貰ったらしいのだ。
それで、せっかくの実戦だからということで、うちのチビ達を出すことにしたのだ。
そして今回、チビ達筆頭、俺の異母兄弟の亜蓮が参加してるので、それなりに親しくて暇だった俺が今回引率役として選ばれたので、着いてきているのだ。
「さてとお前ら、準備はいいか?」
「「「「「はい!」」」」」
チビ達は俺の問いに元気よく挨拶する。
子供というだけで元気いっぱいなのに、今回は元気いっぱいな子供が五人もいる。挨拶の声もかなりでかくなる。やっぱり子供はこれぐらいが一番だろう。
うむ、それにしても文はどうしているだろう。妖怪の山も一応警戒態勢をとっているらしいので、夜間も仕事が入ってしまったと愚痴を言っていた。なので今回は弁当を作ったのだが、食べているだろうか?心配だ。
嗚呼、なんだかこういう事を考えていたら文の顔を見たくなってきてしまった。
まあ、でも久しぶりに鞍馬の皆とも接するのもいいだろう。それに、チビ達と触れ合うのも久しぶりだ。今夜は夜更かしになるかもしれないが、思いっきり遊ばせてやろう。
そんな事を思いながら、周りを囲む敵を見る。
紫の式の藍から聞いた話によると、周りを囲む有象無象は幻想郷にもともといた妖怪で、外からきたのは門の前で仁王立ちしている中華風の服を着ている少女だと思われる。
つまりあの少女がこの館の門番であり、幹部なのであろう。
そして彼女が幹部だということは、チビ達と闘う相手ということだろう。
なんというか、ちょうど良さそうな相手じゃないか。パワー重視というような相手には見えないし、チャイナドレスが混ざったような服からしてスピード重視という訳でもなそさうだ。
中華風な見た目通りに太極拳なんかを使うのだろうし、俺たち鞍馬と同じように武術を得意としそうだ。こんな相手の方が戦い方を考えなければいけない分、経験が確実に積みやすい。
「さてと、今回の縛りの内容を覚えているな?」
「うん、覚えているよ」
俺の問いに亜蓮が答える。
そしてこの実戦演習ではなんと、縛りがある。俺も縛りをつけるということを聞いた時はビックリしたが、よくよく考えればいつもこいつらの武術を鍛えているのは
ここの敵より、贅力も速さも圧倒的に高い奴等が多い。
常に全開で暴れさせても実戦の意味が無いと判断し、縛りをつけたのだろう。
ちなみに、縛り内容としては…
「再確認としてもう一度言うぞ?この戦いは妖力五割までの制限付きだ。妖力を五割以上使ってはダメだし、更に
「「「「「OK」」」」」
さてと、こいつらもやる気満々らしい。
しかし、ボス戦をするには先に周りの雑魚共を片付けなくてはいけない。その雑魚を倒すのもチビ達の役目だ。
「さてと、お前ら、ウオーミングアップと行こうぜ。殺さない程度に、楽しんで来い」
残念ながら、今回は俺は手を出せないから、こいつらがどれだけ強くなっているのかを見る。
チビ達は一斉に構えて、勢いよくとびだす。
流石に縛りの限界の五割を出しているわけではないようだが、それでもかなりの勢いで周りの妖怪をなぎ倒していく。
これなら、五分とかからずあの門番と戦えるだろう。
おっと、最早この場にいた妖怪たちの中に逃げ出している者がいる。多分あいつは俺たちが鞍馬天狗だって気づいたんだろうな。だって、こんな小さな奴等が派手な妖術も使わずに素手で敵をバッタバッタなぎ倒しているんだもの。
それ以外は、逆上して、チビ達に襲い掛かっている。今回、五人いるがそれぞれに個性が…(あれ?でも全員ステゴロだぞ?)……ゴリ押しで面白い。
この敵だったら防御とか考えずに先手必勝でいけば相手は倒せるから、ゴリ押しが一番早く片付くのだろう。
おや、けれど門番はあんまり驚いていないな。
海外遠征はしたことはあるが、吸血鬼とはあったことないからこのチビ達を見て驚くと思っていたんだが。
どうやらそれなりに肝が据わっているらしい。
とりあえずなんだ、意味はないが、前世で見たオラオラとか無駄無駄の人達の真似でもしてチビ達のウォーミングアップが終わるまで、凄みでも出しておくか。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
■ 少年少女 駆逐中
五分とかからずにチビ達は周りの敵を駆逐した。
これは俺が思っているよりも強くなっていそうだ。
さてと、残っているのはあの門番だけだ。
正直言って突っ立ているだけじゃ暇で暇でしょうがない。こんなことより文とイチャイチャしたい。
けれど、これも大事に仕事だ。頑張らなければ。
「さて、お前ら、本番はこれからだぞ。あいつは今闘った敵とは格別の強さを持っている。気を引き締めて闘え」
「「「「「はい!」」」」」
さてと、これでやっと、チビ達の本気がみれそうだ。
■ side 亜蓮
ふう、やっと骨のあるやつと闘えそうだぜ。
ウォーミングアップで闘ったやつらは単純に弱かった。
力も技術も工夫もない。父ちゃんや爺ちゃんと組手してる時の方がよっぽど為になる。
予想外の攻撃に加え、意識外の攻撃もしてくるから、ずっと頭を働かせて攻撃に備えなければいけない。しかし、ここの敵はそんなこと考えなくても倒せるから、面白くない。俺のダチの助けもいらない。
けど、目の前のチャイナドレスみたいなのを着たネエーちゃんは天鴎兄ちゃんの言い方やその雰囲気からしてかなり強そうだ。
俺は
「義真、砕華、一番槍は誰が行く?」
俺はワクワクしながら打ち合わせを始める。すると、義真と砕華の顔がすこし曇った気がした。
「亜蓮、お前がそんな事を言い出したら、絶対に一番槍は譲らないだろ?」
「そうよ、あなたがそんな事言い出して譲ったことないじゃない」
おっと、義真達には俺の考えていていたことは見透かされていたらしい。
「兄ちゃん、なんで俺達には相談しないの?」
「弟は兄に順番を譲るもんなんだよ」
「横暴だ!」
「そうよ、横暴よ!」
俺の腹違いの弟と妹が抗議の声をあげる。
「
「「ぶーぶー」」
「あなた達、もうあきらめなさい」
砕華が眉間を押さえながら言う。
このまま妹達に好き放題言わせても収集がつかないから黙らせたのだろう。
俺は暴れる弟妹と宥める砕華、呆れる義真を横目で見ながら、目の前の姉ちゃんと向き合う。
「名乗らせて貰うぜ、チャイナ服の姉ちゃん、俺は鞍馬亜蓮、子供だからって舐めてもらっちゃ困るぜ」
目の前の姉ちゃんはこちらを値踏みするように睨み付けながら口を開く。
「子供が名乗ったのなら、こちらも名乗らなければいけませんね、私は
ふーん、この姉ちゃん紅美鈴っていうんだ。なんか難しい名前だな。めーりんでいいや。
「よっしゃ!いくぜ、めーりん!」
「は?なんで呼び捨てでよんで……」
なんかめーりんが言ってたような気がするが、そんなこと気にせずに一割程に制限していた妖力を三割程に解放し、ついでに今まで抑えていた殺気も解放する。
それに反応したのか、めーりんも反射的に構えている。俺も相手に攻撃する為に構えをとる。
片腕を体の前に持ってきて、もう片腕を折りたたむように引いた。コンパクトな構えだ。
俺は完全に体の力を抜いていく。リラックス状態を作る。より速く踏み込むためだ。
深呼吸をする、体に新たな空気をいれて、より強い力を出すためだ。深呼吸を終え、空気を吸い込み終わった瞬間、俺は一歩踏み込む。
トッ
俺は今できる実力の中でも一番小さな音で相手の懐に潜り込む。たった一回の踏み込みでめーりんとの間に空いていた数十メートルの距離を一瞬で詰める。
踏み込んだ勢いそのままに、めーりんに正拳突きを放つ。
「へえ」
俺は予想外の結果に口の端を吊り上げ笑ってしまう。
完全に入ったと思った俺の拳は、完全に受け切れていないとはいえ、めーりんに受け止められていたのだ。
めーりんの顔は笑っていない、門番としての務めと誇りからくる使命で動いているのだろう。
俺は拳を引き抜くと、ラッシュを放つ。
しかし、それも全て合わせられ、弾かれ、相殺される。
そして最後に顔面に向けて蹴りを放つ。
しかし、それも正確にめーりんの放った蹴りが俺の蹴りと合わせられる。
ああ、いいね、めーりんは出来る人だ。これは楽しくなる。
「あら、亜蓮、あなただけたのしんで羨ましいわね」
「そうだね砕華、亜蓮の一番槍も終わったんだし、僕たちもやっていいよね」
俺の後ろから砕華と義真の声が聞こえたと思ったら、二人の鋭い蹴りがめーりんに放たれる。
めーりんはその蹴りを腕でガードし、ダメージを減滅させたが、かなり威力があったのか後ろにさがって衝撃を逃がしている。
めーりんが二人を静かに見据える。
二人はそんなこと関係なしに自己紹介を始める。
「私は舘岡砕華よ、紅美鈴さんよろしくね」
「僕は倉田義真、よろしくお願いするよ、紅美鈴さん」
なんか妙にカッコイイというかスタイリッシュなポーズを決めて二人は立っている。いや、なに?そんなに見せ場を作りたいの?
「不意打ちとは言えなかなかいい蹴りをしますね。それと、もう自己紹介は必要ないみたいですね」
それに対してめーりんの方も構えてこちらに注意を向けている。
「あーー!また兄ちゃん達に先越されたー!!」
「ほんとー!また最後に回されたーー!!」
また聖山と燕璃が抗議の声を挙げる。
二人でぷんすかぷんすかと頬を膨らませ顔を真っ赤にしてぶーぶー言っている。
「だからカッコイイ名乗りをあげるんだもんねーー!」
「そうだもんねーー!」
そう言って二人は手を斜めにし、ヒーローみたいなポーズをとる。
「鞍馬聖山アアアアアアアん!参・上!!」
「鞍馬燕璃!ただいま参上!!」
「「いくぞ!幻想郷の平和を乱す悪の手先よっ!我ら鞍馬の天狗が相手だあああっ!!」」
バーーーーーン
そんな音と共に二人の後ろでなにかが爆発したような気がした。
めーりんは構えはそのまあまだが、顔が茫然としていた。
「ま、俺が先だけどね」
「「あーー!」」
弟妹が恰好つけてる間にさっさと攻撃を仕掛ける。
次は四割程だ、いや、五割いくかもしれないが、スピードもパワーも上がってるぞ?
さっきの踏み込みよりも速い速度で相手に詰め寄る。そして先程よりも速く、読みにくく、確実に当たるような一撃を繰り出す。
しかし、めーりんは拳を受け止め、受け止めた腕ごと体を逸らし、前に出すことで威力を殺しつつも逆の拳でカウンターを狙ってくる。
俺はそのカウンターを掴む。体重と速さが乗り切っていなかったから掴むのは容易だった。
俺はそのまま手首を捻り上げようとしたが、そこはめーりんも踏ん張って力が拮抗する。すぐさまもう片方の拳を振りぬくがめーりんの拳と打ち合うことになる。
俺とめーりんはそのまま押し合いになる。
しばらく押し問答は続いたが唐突にめーりんは蹴りを放ってくる。しかし、それは俺を狙ってのものではない、俺の後ろを狙ってのものだ。
「ちっ、意外とやるわね」
「おい、横槍いれんなよ、砕華」
「やってることがまどろっこしすぎるのよ、もっとスピーディーにしなさい」
砕華はそのままめーりんの足を使って後ろに跳ぶ、刹那
「後方注意ですよ、美鈴さん」
「!!」
砕華の方に一瞬注意が向いた瞬間を利用して義真がめーりんの後ろに回り込む。
めーりんは俺に連続蹴りを放って距離をとり、義真の拳を受け止める。
「すばしっこいですね」
「そうでもないですよ」
めーりんは回し蹴りを放つ、義真はそれをしゃがんで避ける。
「でも僕がメインじゃないんだよなー」
「は?」
義真が何を言ったのか分からなかったが、次の瞬間理解させられることになる。
「今日の!」
「主役は!」
「「僕たちだもんねーー!!」」
聖山と燕璃がただ愚直にめーりんに突っ込んでいく。
「「最☆強ロケットパンーーーーーチ!!」」
二人のパンチがめーりんに突き刺さる。めーりんはガードしているが、二人分のパンチは重くめーりんのガードを剥がし、仰け反らせながら後退させる。
すごいな、あいつら。
あんなに大きな隙を作れるなんて。
「いくぞっ!!聖山!燕璃!」
「「オッケーー!!兄ちゃん!」」
今回も俺が最初だが、最後はこいつらに譲ることにする。
一足にめーりんの前まできて、最上の一発を入れるために、地面がひび割れんほどに踏み込む。
喰らえっ、俺の正拳突きっ!
俺の正拳突きはめーりんの腹に突き刺さる。めーりんの体は後ろに吹っ飛ぶが、そこに聖山と燕璃がすかさず追撃をかける。
「いっくよーー!!」
「私達の必殺!!」
「「悪☆霊☆滅☆殺!!ドロップキック!!」」
「ぐふううっっっツウウ!!」
二人のドロップキックがめーりんを吹っ飛ばす!
めーりんはそのまま門に打ち付けられ、だらんと体から力が抜ける。
どうやら、最初の有効打は俺達がとったようだ。
さあ!!もっと俺達を楽しませてくれよっ!!!
とりあえず、参加させたかっただけ。