後、かなり短いです。
花畑での激闘の後、天鴎は幽香を連れて家に戻っていた。
そして、戻ってきた時にはもう夕方であった。更に夕方にはもう文が家に帰っているころだ。
ついでに、幽香はずっと泣いていたので目の周りが真っ赤に腫れていた。
文はこの状況を見て何かを察し、修羅の如きオーラを纏った。
「…天さん?」
「ま、待って文、違う、違うんだってば」
「違うもどうもありません!!どうして女の子を泣かしてるんですか!!」
いつの間にか握られていた新聞紙でまるでゴキブリでも潰すかのように、天鴎の頭ははたかれたのであった。
■
「なるほど、そんなことがあったんですね」
天鴎の頭をはたいた後、とりあえず天鴎が文に事情を説明していた。
「はあ、状況は分かりましたけど、なんでそうなるんですかね?」
「面目ない」
「誰かを救うというのは天さんなりの一歩なのかもしれませんけど、でももっとやり方とかあったはずですよ」
そういい、文は眉間を押さえる。
「仕方がありませんか、なっちゃたものは覆せません」
「本当にすいません」
「いえ、まだ許していませんから。後からまたこってりと絞らせてもらいますね」
その言葉を聞いて、天鴎は笑顔のまま固まった。
「まずは幽香さんからです」
その言葉に縁側で座っていた幽香が振り向く。
「少し話しましょう」
「え?どうし「天さんは黙っててください」は、はい」
天鴎は文の一喝によってまた固まってしまう。
本当に文にはとことん弱い。
「私の認識が間違ってなければ、私達も一度話す必要があると思うんです。場所を移しましょう、着いてきてください」
文はそう言って客間へ歩き出す。幽香もそれに大人しくついていく。
天鴎はここでハウスである。
「それで、私に話って何かしら天狗さん?」
「射命丸文ですよ、風見幽香さん」
文は幽香の問いになんの冗談もなしに答える。
「先ほども言ったように、私の認識が間違っていなければあなたと私は話し合う必要があると思ったからです」
その言葉に幽香は分かっているような表情を浮かべるものの、首を傾げてみせる。
「はあ、ハッキリと申します、幽香さんは天さんとどのような関係になりたいのですか?」
「どのような関係って?」
「天さんと悪友になりたいのか、戦友になりたいのか、それとも…夫婦になりたいのか」
言葉尻を弱くしながらも文は言い切る。
「へえ、夫婦ねえ…」
幽香はその言葉が以外だったのか、夫婦という言葉を何度か呟いている。
「にしても、なんで夫婦なのかしら?」
幽香は当然の疑問を聞いてくる。
その言葉に文は寄った皺を解すように眉間に手をあてる。
「天さんの言葉がまんま、愛の言葉に聞こえるからですよ…」
先ほど、文は大体の状況とは別に天鴎の吐いたセリフも聞き出していた。
そのセリフがなんというか、青クサイというか、小っ恥ずかしいというか、ただの他人にも、友達にも、悪友にも吐くセリフからは逸脱しているというか、まるで物語の主人公が悪のヒロインに囁きかけるような言葉なのだ。
「ええ、私もまんまそういう風に言われたと思ったわ」
「え!!」
「でも彼自身にそんな気があるようには思えないんだけどね」
「はあ…」
どうやら天鴎が天然で言ったことは分かっていたようだ。
「で、愛しの旦那様が他の女を引っ掛けてきたように見えたから注意しにきたと?」
「いいえ、違いま…確かに一部そうなんですが、私が言いたいことはそうじゃないです」
「そういうことじゃないってどういう事かしら?」
「こういう人が現れることは承知していました、鞍馬の里で彼のお父様に会った時からそうなるんじゃないかって薄々思っていましたから」
文は天鴎の父親、天正をみた時から薄々天性の女難の相が受け継がれているんじゃないかと思っていたのだ。
「それにそもそも重婚がダメな訳もありませんし…」
そういいながら文は幽香の方を向いた。
「何より貴方が天さんの側にいてくれた方が都合がよさそうじゃないですか?」
「ふーん、利用する気満々ってことね」
「ええ、私はずる賢い天狗ですからね」
そう言って文は笑ってみせる。
「まあ、そもそもアレは私の物だから、可愛い天狗さんに言われなくとも好き勝手にしていたわ」
「へえ?天さんは貴女の物、違います、アレは私の物です」
文がそういうと幽香がギロリと文を睨んだ。
「へぇ、よく言うわね。私はアレに勝ったのよ?アイツをどうこうするのも当然の権利だと思うわ」
幽香がそういうと文も幽香をギロリと睨んだ。
「こちらこそ結婚という契約を結んでいるんです、天さんをどうこうする正当な権利は私が持っているんです」
双方睨み合いが続きその場をとてつもない緊張感が支配していた。
「フッ」
「フフッ」
「ウフフフフッ!!」
「ウフハハハハッ!!」
両者唐突に笑いだし、屋敷に笑い声が響く。
二人の口角は上がっていたが目がヤバイ事になっていた。
「まあ、良いです。これから長い付き合いになるでしょうから、よろしくお願いします」
「ええ、こちらこそ、よろしく」
二人してギラギラした目のままとんでもない握力で握手をした。
天鴎は殺気とも邪気ともとれないとてつもない重圧にブルブルと震えていた。
ここに、鴉天狗と花妖怪の両者に対する宣戦布告が為されたのであった。
…けれども、寝ぼけた天鴎により二人とも恥ずかしい姿を晒されてしまい結局このギスギスした空間はすぐに無くなってしまい、すぐに仲良くなったそうな。
これにて幽香も天鴎のヒロインの一員に追加されましたが、あまりイチャイチャは書くことないかな。