東方鞍馬録   作:Etsuki

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 ちょっと長くなりました。
 


射命丸文

 side 射命丸文

 

 

 今回、私は上司からある仕事を押し付けられてしまいました。

 天さんへの技術指南があるのに私に仕事を押し付けるとはなんたることでしょう。業務妨害ですよ、業務妨害。それに天さんへの技術指南はかなり重要な案件なはずなのに。

 まあ、最近私ばかり徳をしているような気がしないでもないので、渋々受けてあげますが。

 

とりあえず、天さんの家にご飯を食べに行きましょう。

 私はそう思い、自慢の翼を広げて飛ぼうとしましたが、珍しい人影を見つけたので、少しそちらと話してから行くことにします。最近は話せていないのでね。

 

「あややや、これは椛さん。お久しぶりですね。それにしてもここに居るのは椛さんにしては珍しいですね?今日は非番ですか?」

 

「ん、そうですよ文様。今日は久々の非番なんですよ。いろいろしたい事があってですね~。」

 

 と、嬉しそうに話すこの子は犬走椛という私達とはまた違う白狼天狗という種族の一人です。小柄であり、その頭とお尻についている獣耳と尻尾は彼女の可愛らしさを引き立てる、部下に欲しい白狼天狗番付で一位を取った子です。

 今日はいつもの盾と剣は持っておらず、同姓の私から見ても可愛いとしか評価できない格好です。

 なんでしょうか?こう撫で撫でしたいですね。小動物みたいに。

 

「それにしても、文様もここに居るのは珍しいですね。いつもはいきなり来ていつの間にかどこかに行ってしまわれるんですから。本当にびっくりして迷惑するのはこちらなんですよ?分かってますか?」

 

「あやや、申し訳ない。面白そうなネタがあると無視はできない性分でして。」

 

「はぁ、まぁ最近はいつもより真面目に働いているというのでいいですが、確か鞍馬天狗の方への技術指南でしたよね?」

 

「はい、そうですよ。鞍馬天鴎という方への技術指南ですよ。」

 

「へぇ~どんな天狗なんですか?やっぱり鞍馬天狗ほどの有名どころだから、大天狗様達位に立派で強いんでしょうか?」

 

 椛は目を輝かせながら鞍馬天狗という天狗への考察をのべていく。

 ん~、天さんの実力はたしか~?

 

「確か、天鴎さんの実力は天魔様よりお強いと聞いた事がありますが?」

 

「ええ~!!ほ、本当ですか!!それが本当なら、やっぱり鞍馬天狗は伝説に違わぬとても強い種族だったんだ!!」

 

 何でしょうかこの子、強い天狗への執着心が強いですね。まぁ、ただ天さんは伝説上の鞍馬天狗と比べると、随分と穏やかですけどね。

 

「そ、それでその鞍馬天鴎さんはど、どのような方で?!」

 

「とっても落ち着いていて穏やかで優しい方ですよ。」

 

「や、やっぱり強きを挫き、弱きを助けるというような立派な方でしょうかね?」

 

 まぁ、あながち間違っていないですかね。本人は否定すると思いますが。

 

「おっと、そろそろ時間です。私は行きますね?」

 

「また今度詳しくお話し聞かせて下さい!絶対ですよ!」

 

「ハイハイ」

 

 ここで、興奮しっぱなしの椛と別れ私は先を急ぎます。

 

 

 

 

 

 あれから、あまり時間をかけずに天さんの家につくことができた。

 

「天さ~ん、お邪魔しま~す。」

 

「はいは~い。いらしゃい文。まだ、飯はできていないぞ?」

 

「そうですか、それは残念ですね。あ、あと天さん私今日仕事が入ったので指南が終わったらおいとましますね。」

 

「はいはい、分かったよ。とりあえず、家事は終わってるし鍛錬もすましておいたから、さっそく指南頼むな。」

 

「は~い。わかりました。それじゃあさっそくはじめますよ?」

 

「よろしく。」

 

「前回おしえたことはこうですからねぇ~……」

 

 最近の天さんは、妖術のコツも分かってきたらしくすいすいと知識を吸収するので、こちらとしては教えがいがあります。

 今では相当妖術の扱いが上手くなってきましたが、私もまだまだ負けていません。ただ、このままいくとそのうち負けてしまうかもしれません。

 これはうかうかしていられませんね。私も天さんに教える時は基本の復習のような感覚でしています。

 そうやって集中しながら鍛練をしていれば、すっかりとお昼時で、妖術指南は一度切り上げて、お昼をいただきます。

 

「はむはむ、天さんこれ美味しいですね。」

 

「まぁな、今朝取れたての物で作ったんだ、不味いはずないだろ?」

 

「それもそうですね。新鮮な食材と天さんの腕があれば大抵は美味しいですしね。」

 

「ん?そうか?まぁ、誉め言葉だし受け取っておくよ。」

 

 そうやって、穏やかなお昼を終えたら、直ぐに妖術指南に入ります。

 今回は早めに始めたので、終わるのも早く思っていたより早く上がる事ができました。

 

「文、今からの仕事は時間がかかるのか?」

 

「いえ?それほどかかりませんが、どうしたんですか?」

 

「いや、今日の晩御飯どれくらい作るのかは文次第だからな、早く終わるのなら作っといてやるよ、晩御飯。」

 

「やや、本当ですか!それはありがとうございます。いや~今日は天さんの晩御飯食べられないと思っていたので有難いですよ。」

 

「あぁ、こっちもそんなに喜んでもらえて嬉しいよ。」

 

 天さんは微笑みながらいいます。

 いや、もう本当に優しくて格好よくていい人ですね。これはさっさと終わらせて晩御飯食べにきましょう。

 

 私は晩御飯への期待を膨らましながら飛びたちました。

 ついでに、今日の天さんのダサTは『豚キムチ』でした。

 

 

 

 

 

 

 さてと、ここですね。今私が居るのは妖怪の山から少し離れた場所で、ここで正体不明の妖怪が目撃されており、白狼天狗の何人かが被害にあっているそうだ。

 正体不明、どんな妖怪かも情報が圧倒的に足りないので、せめて概要を掴む為に妖怪の山でも随一の速さを誇るこの私が派遣されました。

 まぁ、感じる気配からして雑魚妖怪でしょうし、さっさと終わらせて天さんのもとにいきましょうか。

 

 私は葉団扇を振るいながら敵を倒すことにしました。

 

 

 それからは一時間位で片付きました。敵は人や動物の怨念からできた怨霊で、小規模ではありましたが数が多く白狼天狗達が負けるような相手ではないような気がしますがそいつらしか居なかったので、数で圧倒されたりしてそいつらにやられたのでしょう。

 

 私は報告の為にここを飛び去ろうと思い妖力を巡らしたその時、視界に何かが映り私はとっさに避けようとしましたが、間に合わずに吹っ飛んでしまい、岩にぶつかってやっとその勢いが止まりました。

 

 私は霞む視界の中、私を吹っ飛ばした敵を探します。

 

 ーーー何、あれーーー

 

 

 何とか戻ってきたらしい思考の中で、敵の異常さを理解します

 どろどろとした、黒のような紫のような固形の物体がそこにいました。

 その気持ち悪く吐き気を催すような体からはなん本もの触手が延びており、体にはおぞましい穴が空いているだけの目と口があり、まるでここら辺の重力が重くなったように錯覚させる程の怨念。

 先程まで倒していたあいつらはコイツのたった一部なんだと理解させられました。

 しかし、敵がいくら強大でも私は誇りある天狗。怨霊ごときに負けられる筈がないんです。

 

 私は葉団扇を構え戦闘体制に入ります。体のスイッチを入れていき、妖力を体に巡らせます。

 さっきの攻撃だけで倒れるような私ではありません。さっさと倒しますよ!

 

 私は高速で動き出します。相手も触手を放ってきますが、私の速さの方が触手より速いです。

 触手を避けながら、風の刃を飛ばしていきます。

 どうやら、利いてはいるようです。

 私は触手を切り飛ばし、本体にダメージを入れ、相手が目に見えて分かる程に弱らせていきます。

 

 私はそろそろ決着をつけようと相手に急接近します。全ての触手をかいくぐり、怨霊の近くまでくると、一気に妖力を解放します。

 そして、全力の風の衝撃波を叩き込みます。

 

 相手は爆散して、どう見ても死んだとしか思えない状態になります。

 私は痛む体を気遣いながらもやっと終わったと一息着いた時、周りの景色が歪みました。

 

 ギィ◎€●▼シャ○○ァァァ◇%◎▼●▼£▼!!!

 

 

 あり得ないほどの殺気、あり得ない程の生きるものへの執念。

 私が勝ったと思っていた相手はまだ生きていました。

 怨霊はどうやら、今の今まで受けてきた攻撃を怨みに変えて、より威力のました攻撃を繰り出してきます。

 

「がふ」

 

 私は攻撃を避けれずに腹に三本の触手が突き刺さります。

 

 怨霊はそのまま触手を振り回し私を地面に叩き付けます。

 

「ぐうぅっう」

 

 触手は私を縛り上げてきます。

 私の体は持ち上げられ、怨霊の目の前までもってこさせられます。

 私は妖術を使おうとしましたが、

 

 ーーー妖力が吸いとられているっ!!ーーー

 

 妖力を吸い取られるせいで妖力が上手くまとめれず、散っていくばかりです。

 

 どんどんきつく縛り上げられる中、妖力まで抜かれて私の体に力がだんだんと入らなくなってきます。

 

 その状態でどれくらいたったでしょう。私はそこから脱け出せず、永遠にも思える拘束から、岩に投げつけられるという形で解放されました。

 

 もはや妖力は残り少なく、無理矢理抜かれたせいでロクに操ることもできません。

 体はもはやボロボロ。指一本動かせません。

 

 次に攻撃を喰らえば私は最悪死ぬでしょう。

 

 あぁ、意外と生は呆気なく終わる物なんですね。

 私はこんなしに方はしないと思っていたのに、怨霊に無惨に殺され一生を終えるのでしょうか?

 

 やり残した事はたくさん有ります。まだまだ新聞を書いていたかったし、幻想郷も見ていたかった。まだまだいろいろ有るのに…

 

 あぁ、そう言えば天さんが晩御飯を作って私を待ってくれていますね。

 天さんはとても優しくて隣にいてとても暖かい気持ちになれる人でした。

 いつも、優しく接してくれて、面倒くさそうにしていたり、叱ったりしてくるけど、結局最後は笑って隣に居てくれる人。

 

 なんでだろう、こんな事を考えていたら、むしょうに天さんに会いたくなってきた。

 天さんの作ったご飯が食べたくなってきた。

 天さんと一緒にどうでもいいことを話して笑いたくなってきた。

 

 だからこそ私は悔しい。天さんのご飯を食べられ無いことが、天さんの笑顔をもう見れない事が、天さんの隣にいれない事が、どうしようもなく悔しい。

 

 今の私にはこの状況を覆す程の力はもう残っていない。

 葉団扇はもう随分前に落としてどこにいったかも分からない。

 目の前の怨霊を睨みつけることしかできない。

 目の前の怨霊にありったけの殺意を送る。

 なんとか生にかじりつこうと、残っている妖力で仲間に助けを求められないか模索する。

 

 けれども、無慈悲にもそれらの手段はなく、次の瞬間には死神の鎌は降り下ろされていた。

 

 天さんとの短いけど幸せな日々がフラッシュバッグする。

 天さんとの話した思い出がフラッシュバッグする。

 天さんの笑顔をどんどん思い出す。

 

 もう、すがる相手は天さんしかいない、死の恐怖をまぎらわせるのは天さんしかいない。

 本当の本当に自分勝手だけど、一つだけ天さんに頼めるのなら…

 

 

 

 

 

「天さん……もう一度会いたいです」

 

 

 

 

 

 

 私は涙が滲む視界の中、目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーー何諦めてんだ文、家族同然のヤツをこんなところで殺させる訳ないだろーー

 

 

 

 私は死ぬ直前にそんな幻聴を聴いた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 ザシュッ

 

 肉がたちきられる音がする。

 

 あれ?だけどおかしいな?音が前の方から鳴ったような??

 

 それに何かがおかしい、いつまでも経っても痛みがこない

 

「おい文。いつまで目をつぶっているんだ?」

 

 あれ、おかしいな、また幻聴が聴こえたような。

 

 パシィンィィン

 

「あいったぁぁぁぁあ!!」

 

 次に私の頭が叩かれる。

 なんだろう、この痛いけどいつもされてて慣れている感じは?

 

 私が目を開けると、そこには天さんがいた。

 私は目を擦りながら

 

「あれ、可笑しいな。ここにいない筈の天さんが見えるな。なんで今になって天さんが見えるんだろう?」

 

「いや、それは俺がここにいるからなんだけどな。」

 

「え、いやだって天さんは今家にいる筈じゃあ!!」

 

「ああもう!」

 

 目の前の天さんは頭をかき、私に近づいてきて、次の瞬間には私を抱き締めていた。

 

「ほら、温かいだろう、感じてるだろ?俺はちゃんとここにいるよ。」

 

 肌から伝わってくる暖かさと、天さんの言葉を少しずつ理解していって、やっと目の前の天さんが、幻覚でも幻でもなんでもなく本当の天さんだと分かる。

 

 それが分かると私は涙が押さえられなくなり、みっともなく泣き声を上げて泣き出した。

 

「天さん、天さん、痛かったよ、辛かったよ、会いたかったよ、うぅぅ、天…さん」

 

「ああ~ハイハイ文泣くな泣くな。綺麗な顔が台無しだぞ。」

 

 私は天さんの腕の中でなき続ける。

 しかし、完全にこの時失念していた、怨霊の事を。

 

 私が異常を感じ顔を上げた時数えきれない程の触手が迫っていた。

 

「天さんっ!!」

 

 私が叫んだ次の瞬間、数えきれない程の触手が全て切り伏せられた。

 いつの間にか、天さんの手には木刀が握られていた。

 

「すまんな文、まずはあれを片付けなきゃいけない、ちょっとだけ待っててくれ。」

 

 天さんはそう言うと私を抱いていた手を離し立ち上がる。

 完全な脱力した体制を作るとおもむろに一歩を踏み出す。

 すると、周りの触手全てを無視して次の瞬間には怨霊の目の前に抜刀術を放つ直前の状態で立っていた。

 

 そして、天さんの刀が振るわれる。

 縦一閃。まるで見えないたち筋。

 だが、怨霊が絶命したことは、怨霊から黒い粒子が出ている事から簡単に分かった。

 そして完全に怨霊が消滅する。

 

「天さん……」

 

 私は天さんの圧倒的な強さに、驚愕とそれを上回る圧倒的な安心感を抱いていた。

 

 天さんはこちらを振り向いて微笑んでいた。

 

「ほら、文、帰ろうか。晩御飯がさめちまうぞ。」

 

 私はそんな天さんのいつものような暖かい言葉とまた私を抱き締めてくれた安心からか緊張の糸がきれて、だんだんと暗闇に意識を落としていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 




 最後は少し適当になってしまった。
 一気に夜遅くまで書き上げているのでごようしゃください。
 文は恋心が芽生えそうだね。(というより芽生えた)

 後戦っている天さんの格好はダサTです。

 誤字脱字があったら教えてください。
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