side 射命丸文
私が怨霊に襲われたあの日から、約1週間が経った。
私は全身のケガに加え、怨霊からの妖力吸収などで妖力を生み出す器官にも異常も見られ、療養を余儀なくされています。
そのせいで、外に出られない、簡単に言えば天さんに会えないというのは個人的にとても辛いので、自宅での療養を命じられていましたが、我が儘言って天さんの家にお世話になることにしました。
正直言って、自宅をはありますが、家には私一人しかいませんし、上司が私の手伝いとして出す部下を家に寄こすこともありますが、大体が私はよく知らない者なので、いろいろ理由をでっち上げて上司を納得させました。
まあ、本当に都合は良いのですけど。
それに、私には他に目的ができました。天さんへのアピールです。
何だかこんな事を考えるのは恥ずかしいけれど、私は今回の一件で自覚してしまいました、天さんへの恋心を。
仕方無いでしょう?
もともととても、とても彼は優しいですし隣にいてとても安心できる人です、今思えば今回の一件の前から彼に気があったのはとても明確なことだったのでしょう。
そうとなれば、彼を逃がす気は微塵も有りません。
私が思うに、彼は意外に天然であり鈍感です。
もしかしたら、どこかで女の子を惚れさせて帰ってきてしまうかもしれません。
なら、そうなる前に私が彼を自分の物にしてしまいまわなくてはなりません。
幸いにも天さんは私に甲斐甲斐しく世話を焼いてくれています。
私はこのチャンスと活かして、彼のハートを掴んでみせましょう!
side鞍馬天鴎
例の怨霊事件のあと、文が療養の為と転がり込んできた。正直言って、見た目少女がするようなことではないと思ったのだが、この鞍馬の妙な技術力を総動員して作った家は、文の家よりも居心地はいいのだろう。
文が今まで俺の家に来ていたペースを考えて多分一人暮らしだろうし、この妖怪の山の中でも俺の家の居心地の良さは一位二位を争う家だと思うので俺の家のが良いのは分かるがそこまでして居座るだろうか?
まあ、色々と言っても今更だろうし、転がりこんできてしまったものはしょうがない、文の怪我が治るまで責任を持って看病しよう。
今は丁度昼時であり、文の為にお粥を作っているところだ。
文は風邪をひいた訳ではないが、例の怨霊との戦闘の時、内臓や胃などをやられており、消化器官が著しく弱っているのだ。
人間と違っていろいろと頑丈な妖怪ならいつものようなご飯を出しても大丈夫なのかもしれないが、俺の気持ちの問題だ。
実際文もいつものようなご飯を出しても食べにくいだろうし、体にもいいだろう…多分。
とりあえず、完成したお粥を文のもとに持っていく事にする。
建てる時に他の鞍馬の連中も泊まるだろうと考えて建てたこの家は、部屋数にも余裕があり、文が今泊まっている部屋も客が来ることを想定して作っていたので、文が泊まれる環境にするのは容易だった。
しかし奴らは顔を出しには来たが泊まってはいかなかった。わざわざ多めに部屋を作って損したと思ってたが、文が泊まりに来てくれたおかげでこの家の設計が無駄にはならなかったようである。初めての利用者が怪我人というのもなんだが。
とりあえず文のいる部屋についたので入ることにする。
「文~、入るぞ~。」
そう言ってゆっくり入る。
「あ、天さ~ん、待ってました~。」
布団の上で体だけ起こしてこちらに体を向けている。
最初の方は体もなかなか起こせなかったが、今じゃ体を起こして話ができるほど元気になっている。
「もうなかなか元気になってきたな。まだまだ安静にしてなきゃいけないけど。」
「そうですねぇ、天さんの看病のおかげで私自身驚くほど元気ですね。いや~、本当にありがたいですよ。」
そうだろうか?そこまで特別な看病を行ってはいないんだけど?
「天さんもうお腹ペコペコですよ。いつも通りお願いしますね。ほら、あーん。」
「いや、もうお前ひとりで食べられる程元気だろう」
御覧のとおり文は最近俺にご飯を食べさせて貰おうとねだってくる。最初は腕も上手く動かせなかったのでご飯をたべさせてあげていたのだが、最近絶対一人で食べれるのに俺にご飯を食べさせようとしてくるのだ。
俺が食べさせてやらないと拗ねてなかなか食べないので食わせてあげているが。
ふーふーとお粥に息を吹きかけ熱を冷まし、文の口に運ぶ。
「ほら文、熱くないか?」
「はむはむ、大丈夫ですよ。丁度いい温度で食べやすいです。それにしても毎日味も違っていていいですね。」
そう、床での生活が飽きないようにお粥の味を少しづつ変えているのだ。
鞍馬での酷い食生活を経験した俺から言って、食に妥協はしたくない。
「本当に天さんは将来良い旦那さんになりそうですね。」
「それ俺が言うべきセリフじゃないかな?」
将来良いお嫁さんになるねとかさ、普通男が言うでしょう?
とりあえずお粥を全部食べさせることにする。
「ふう、満足です。ご馳走さまでした。」
「はい、お粗末様でした。それじゃあ、食器持ってくから、ちょとまっててくれ」
とりあえず、食器を流しに持っていきササッと洗い、お茶を入れて持っていく。
「ふう~。」
「はあ~。」
二人でお茶を啜ってゆっくりとする。
……文、お茶は一人で飲めるんだな。
「いや~、お茶もおいしいですね~。」
「ああ、いつもどうり美味いな。」
そんな、会話をしながらゆっくりとした時間を過ごす。
「そういえば天さん、私どれぐらいの間安静にしていなきゃいけないんでしたっけ?」
「ん?たしか3週間ぐらいだったが、念のために4週間は安静にしてなきゃだめだっだはずだけど。」
「そうか、後3週間か…」
「ん、なんか言ったか?」
「いや、なんというか、この時間が至福だなあ~と。」
「はは、なんだそれ。」
「あれ、なにか可笑しかったですか?」
「い〜や、なにも」
まあ、文がこの時間を至福だと言ってくれるのなら俺としてもうれしいが。
丁度お茶を飲み終わったときに文がググッと伸びをする。
「ああ~、元気でてきました~、布団から出られないのが窮屈ですね~。」
「それじゃあ、文が一人でご飯を食べれるような元気はどうやったら出してくれるかな~。」
俺はいたずらっぽく言ってみる。
案の定、文は頬を膨らませ俺の方を睨みつける。だが、すぐに思案顔になり、どう答えるか考える。
瞬くして何と答えるのか決まったのか、イタズラを考え付いた子供のような笑みを浮かべる。
「そうですね~、例えば天さんが私にキスしてくれたら元気がでるかもしれませんね~。」
文はこちらを若干赤くなりながらもニヤニヤした顔で見てくる。
俺の慌てた反応をみたいのかな?だか…残念。
明鏡止水の心得を会得している俺はキスごときでは動揺しない。
ふっ、逆になんの動揺もせずにキスしてやって赤面してる面を拝めてやろう。
「いや~、はは冗談ですけどね。」
俺は文に近づく。
「え、天さんどうしたん…」
そして俺は文のその綺麗な顔に手を当てて、文の前髪をたくし上げる。
「これでさっさと元気だせよ。」
俺はそう言って文の
そして真っ赤になっている文の顔を見ながらイタズラをする子供のように俺は笑う。
「唇にすると思ったか?」
「あ、あや?」
文は赤面させた顔を頬けさせずっとフリーズさせている。
そして目をグルグル回し始めた。
「文?文?どした?」
俺は文の前で手を振ったり、叩いたりするが文はなにも反応しない。
そうしていると何分か後に文はやっと動きだした。
顔をうずくませ、体をぷるぷるさせながら何かを言っている。
「ん?文、どうした?」
俺は文の顔に自分の顔を近づけてきく。
俺はその時ちょとイタズラを思いつき、
「もしかして、今のキスがそんなに恥ずかしかったか?」
すると文は俯きながらもぷるぷるしていた動きを止める。
「あや……」
「あや?」
「あやっ、あややややっ!あやややややややややややっつ!!」
ボッフン!!
文はさっきより顔を赤くさせ頭から湯気を出しまた思考を停止させる。
俺も突然の出来事でしばらく唖然とする。動揺から立ち直った後、文を現実に戻そうといろいろ頑張ってみたが文は全く現実に戻ってこない。
「はは、だめだこりゃ。」
俺は文がもうなかなか動きださないと結論づけ、他の家事をさっさと終わらせることにする。
「ごめんくださーい。」
おっと、誰か来たようだ、なんだろう?文のお見舞いかな?とりあえずでないと。
俺はとっとと玄関に小走りではしりだす。
それにしても、赤くなって焦る文は…不覚にもかわいかった。俺の明鏡止水が揺らいでしまった。
自分でしたことだけど、一本取られたようだ。
それにしても、今の文で会話になるかな?
文と天さんのイチャイチャ。
糖分多め。多分次回も。
戦闘回が遠い
今日の天さんのダサTは『ポン酢』です。