東方鞍馬録   作:Etsuki

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 糖分は多め。
 結構悩みました。


文と天鴎

 side 射命丸文

 

 さっき天さんにオデコにキスされ事を理解して落ち着くのに随分と時間がかかってしまった。

 なんというか、私の予想していた反応とは全く違ったので、完璧な不意打ちになってしまい、私が思っていたよりずっと混乱してしまった。

 天さんを落とすという目標を建てたばっかりなのに、その天さんにここまであたふたさせられるとは、なんたる失態。

 やっぱり、天さんは天然の鈍感の女誑しだ。私にキスするときあまり緊張していなかったしすごく自然だった。

 あんまり女慣れしているようには思っていなかったから、あんな事をするとは夢にも思わなかった。

 

「ねえ、文?私の話きいてる?」

 

 いつの間にか天さんとすげ替わって私の前にいた、ライバル兼友達の姫海棠はたてが聞いてくる。

 

「あ、はたてごめん、ちょっと上の空でした。」

 

「も~本当に大丈夫?まだ怪我が深いんじゃないの?」

 

「いや~、天さんの看病のおかげでだいぶ治ってはきてるんですけどね~。まだ本調子じゃないってところですかね。」

 

「ふ~ん、そうなの?」

 

「はは、恥ずかしながら」

 

 本当に最近は天さんのおかげで上の空になることが多い。あ~、もう本当に、もやもやし過ぎて話には集中できませんし、天さんにはどうアタックすれば良いのか全く分かりませんし、堂々巡りです。

 

「だから文、私の話聞いてる?」

 

「すみません、上の空でした。」

 

「そんなに堂々と言わない。」

 

 パシシィィン!

 

「いたっ!!叩かなくたって良いじゃありませんか。」

 

「無性に腹が立ったからよ」

 

「なんでですか!?」

 

 本当に、はたてのチョップはかなりの威力なのであまり受けたくないのですが。 

 

「それでどうしたの?そんな上の空で。今までの会話で怪我が原因じゃ無いことが分かったけど、もしかして、男でもできたりしたの?」

 

 ビクッ!!

 

「あは、あははは、そ、そんなはずないじゃありませんか、もう冗談が下手ですね~、はたては~」

 

「…いるのね、男。」

 

「あはは、だからいないっていってるじゃありませんかぁ」

 

「文、あんた誤魔化しかたが下手なのよ。」

 

「ぐっつ!」

 

 ま、まあいいでしょう。相手が分からなければはたての興味もすぐそれるでしょう。

 

「で、相手は誰なの?まさか、ここの鞍馬天狗?」

 

「い、いやだな~。わ、私が天さんのことそんな風に思っているはずないじゃないですか~。」

 

「ふ~ん、本当?」

 

「ほ、本当ですよ~。」

 

「ねえ、文。」

 

「は、はい。」

 

「私聞いたのよ、文が無理やりここで泊まりたがったって。いつも、ここの鞍馬天狗にあ~んさせてもらってるって。」

 

「ちょ、はたて!!それどこできいたんですか!!あ~んしてもらっているってどこで聞いたんですかっ!!」

 

「あら、随分と食いつくわね。ここに泊まりたがったというのは状況からの推測だけど、まさか鎌かけででっち上げのあ~んにここまで反応するとは、まさかあんた、本当にして貰っていたわね。」

 

「ふ、ふん!!なんのことでしょう!!」

 

「今頃白を切ったて遅いわよ。それにしても文があの天狗にぞっこんと。なかなかイイネタね。」

 

「あああああ、もう‼煮るやり焼くなり好きにすればいいんです!」

 

「じゃあ好きにさせて貰うわよ。」

 

「あ、やっぱ今のなしで…」

 

「もう無理よ」

 

「そんなああああああああああ!」

 

「文、あなたもう随分と元気よね。」

 

 うう、まさかはたてにこんなにあっさりとばれるなんて。ああ、なんたることだろう。また顔が熱くなってきた。

 

「あれ、文、もしかして、例の天狗への思いがバレて顔を赤くするほど恥ずかしいの?文は意外と初心よね。」

 

「それはあなたも同じでしょう、はたて。まだ色気だっている私のほうがマシです。」

 

「へえ~、言ってくれるわね、文。じゃああなたの想い試してみる?」

 

「どんときなさい、私の天さんへの愛は本物ですから。」

 

「もう愛称で呼んでるのね」

 

 もうそれなりの関係にはなっているということですよ、はたて。

 それに、私は随分と天さんと一緒にいるのだ。どんなことでも答えてみせましょう。

 

「じゃあまず、彼のどんな所が好きになったの?」

 

「ふ、そんな簡単な質問ですか、いいですよ、何個でも答えてあげましょう。まずですね、彼の雰囲気が好きですね。彼の雰囲気はとっても落ち着いていて、一緒にいてとてもほっこりとできるんですよ。それに勿論天さん自体の性格もとても優しくて、いつも私が我儘言ってもなんだかんだ言って聞いてくれますし、そのうちの何個かは実際にしてくれますし、私の呟いたこととか聞いてたりして、配慮してくれたり、ここにいる時も私をきずかっていることをひしひしと感じますし、お粥の味とか一日中寝てる私のためにいろんな味の作ってくれるし、私が暇しないようになるべく部屋にいてくれるし、顔とかもとっても好きで、顔は言わずもがなとても整っていますし、特に目元が優しい所がとても好きで、でも前に頼んでバンダナを巻いてもらった時にその目元がキリッとしてっとてもカッコイイですしね……」

 

「ちょ、ストーーーップ!!ストップ、ストップ、あんた長いわよ。まさかここまでぞっこんだなんて私も想像していなかったわ。ホントに、本気で惚れたのね」

 

「そうですけど?それに天さんのことならあと一時間は語れますよ?」

 

「私はそこまで知らなくてもいいわよ。というか、なんでそんなに惚れたのかしら?何か切っ掛けがあったんでしょう?」

 

「ああ、それはですね、今回の事件でかくかくしかじかでして。」

 

「へえ~、そんなことがあったのね。なんか、とっても劇的なお話ね。」

 

「ふふん、私と天さんの出会いは簡単には語れないのです。」

 

「今随分と簡単に語ったけどね。」

 

「はあ、それにしてもどうすれば良いんでしょう?はあ。」

 

「ちょっと、文。上の空状態に入らないで。本当に何でそんなに悩んでいるのよ。聞いた限りではとても順調に仲が良くなっているようにきこえるけど?。」

 

「はたて、それで私はとても心配なんです。天さんは天然の女誑しの可能性が有ります、私の知らないうちに誰か他の女の人を作ったら私はどうすればいいんでしょうか?」

 

「ふーん、じゃあさ、告白はしないの?そんなに好きなんでしょう?愛の言葉の一つや二つは有っても良いと思うけど、いえ、あんなに想いを語ったのだから百や二百有ってもおかしく無いわね。」

 

「そうですね、確かに愛の言葉は何個でも想いつくのですがなんて言ったら言いかわからず、それに加えそのまま素直に言う自信も無く、どうすれば良いのか分からなくて。」

 

「はあ、文あんたね、そんなのどうすれば良いのかなんて決まっているでしょ。」

 

「ええーと、兎に角ロマンチックな場面をセッティングするこのでしょうか?」

 

「文、それは男の方がやることよ。それにね、あなた想いを素直に伝えるのが怖いって言っていたけど、私はその想いを素直に伝えた方がいいと思うわよ。意外とそうゆうのは嬉しいモノだし、あなたの想いは本物よ。なら、真っ直ぐぶつけてやれば想いは絶対に伝わるわよ。」

 

「……そんなモノでしょうか?」

 

「ええ、意外とそうゆう物だと想うわよ。」

 

「素直に素直に素直に、天さんには私の想いを素直に…………」

 

「はあ、また自分の世界に入って…興ざめしたわ、今日のところはあなたも元気だと分かったから帰る事にするわね。文、そんな怪我すぐに治しなさいよ、って聞いてないか。それじゃあ、文を宜しく頼んでから帰る事にしましょうか」

 

「素直に素直に、後はそれを言う自信が……、あれはたては?」

 

 はやては、どうやら、今の状態の私にウンザリして帰って行ったらしい。いや、話しを振ったのははやてですから、最後までちゃんと話しを聞いて下さいよ。

 

 

 

 

 

 ■  一週間後

 

 

 

 

 結局、あれからはたてが来てから一週間、怨霊事件から二週間たち、このころには天さんの家をなんとか歩けるようになっており、療養期間も折り返しだというのに何もできずに終わってしまうんじゃないかと思う今日この頃。

 

 私は結局天さんに告白する勇気もなく、ずるずると引きずってしまっている。

 はあ、この気持ちどうすればいいのだろう。

 私は、一人縁側で夕陽を見ながらため息をつく。

 

「どうした?一人でため息なんてついちゃって、なんかあったの」

 

「そうですね、ちょと伝えたい思いがあるんですけど…」

 

「へえ、それってどんな気持ち?」

 

「ええ、それはですね…って!天さんっ!!ちょ、しれっと入り込まないでください!!」

 

「あはは、はいはい次からはしませんよ。」

 

「むううう」

 

 どうやら天さんはお茶を持ってきてくれたらしい。それ自体は別にいいのだが、今みたいにしれっと入ってくるようなお茶目をかましてくるのは勘弁して欲しい。私のドキドキが止まらなくなる。

 

「それで、何を伝えたくて悩んでいるんだい?俺でよければ相談に乗るよ?」

 

「いや、それはですね…他人には相談しにくいというか…」

 

「そうか?俺と文はあんまり他人といえるような親しさじゃないと思うが?」

 

  天さん…その言葉は嬉しいのですが、その気遣いは検討違いです。そもそも、天さんに伝えられずに悩んでいるのですから。

 でも、そうですね、このままじゃダメですよね。少し勇気をだしてみることにしましょうか。

 

「そうですね、相手に伝えたいけど、どうしても伝えにくい事があったらどうしますか?」

 

「ううん、そうだな。俺ならその伝えたいことを多少マイルドにするかもしれないが素直に伝えるんな。」

 

「ええと、それはなんでですか?」

 

「それはだな、伝えられずにもやもやするのは嫌だし、そんな事を相手に伝えられずにいたら相手とのシコリを作ってしまうかもしれない。それなら、素直に伝えて相手も自分もスッキリして前を向いた方がずっといい。」

 

 伝えられないでいたら、相手とのシコリを作ってしまうか…私がこの気持ちを伝えられずにいたら私と天さんの仲は離れてしまうのでしょうか?

 それだけは嫌です。

 よくよく考えれば私には指南という名目があったからこそ遠慮なく天さんの家にくることができていたのだけど、この指南も永遠に続くはずがない。

 私がその名目をなくしても天さんの家に今の様に来れるだろうか?以前の私になら来れるだろうが、今の恋心に気づいてしまった私には多分無理だと思う。今の私はいろいろ悩んでしまう。

 本当にどうすればいいのか。

 

「まあ、そんなに悩みすぎるな。悩み過ぎなくても伝えたいことは意外と伝わるもんだ。それよりも、悩みすぎて自分らしく振舞えないことが一番だめだと思うからよ。ほら、元気だせよ。」

 

 でも、そうだと分かっていても私がそれを伝える勇気があるのだろうか。 

 

「文ならあるよ伝える勇気ぐらい。いつも元気よく笑ってあんな風に空を飛んでいるんだ、悩みなんて気にせず吹っ飛ばせるさ。いつも通りにしていれば大丈夫だよ」

 

 天さんはそう言って私の頭を撫ででくれる。

 その手が優しくて、今の私に掛けて欲しい言葉を言ってくれて、不覚にも泣きそうになってしまう。

 

「本当に…あるんでしょうか。私にそれを言うだけの勇気が?」

 

「ああ、文なら大丈夫さ。」

 

 なら、なら、私も言えるんだろうか。

 思い人に言われてまで、戸惑ってしまう私が。

 

「なあ、文。自然に言えばいいさ、でできた言葉をそのままに出せばいいさ。」

 

 自然に、自然に、私の言葉で…そのまま、つたえるんだっ!!わたしっ!!

 

「て、天さんっ!!実は私、てっ、天さんに伝えたいことがっ!!」

 

「ん、なんだ?」

 

「わ、私は…て、天さんのことが、天さんのことが…」

 

 私はその先が言えず、どうしても口籠ってしまう。

 分かっている、私が今の関係を崩してしまうことが怖いことが、とても恐れていることを。

 

「私は、私は、天さん、天さん、天さんの事がす、すっ…」

 

なんでこんな時にスラスラ言い出せない!いつもハキハキと喋っているのに!

 

「すっ、すっ!」

 

「ス、ストップ、お願いだ、それを言うのは止めてくれ」

 

「へ?」

 

 私はその言葉に目の前が真っ暗になる。

 なんにも考えられなくなってしまう。

 天さんは私の事が嫌いなんだろうかと?

 天さんはこの先の言うことを察して、突き放したんじゃないのだろうか?

 

「本当に、俺が最初に言おうと思っていたのに、文が言おうとするんだもんなぁ〜」

 

「は、はい。」

 

 私は、今が言葉のショックで気の抜けた言葉しか返せない。嫌な思いが渦巻いて天さんの言葉が理解できない。

 

「俺、文が好きだ」

 

「は、はあ、そうなんですか……へっ?ええっ!!

 

 まったく、予想していなかった言葉に私の嫌な思いは吹っ飛び、変な声を上げてしまう。

 

「ええっと、それは女性として好きってことですか?」

 

「そうだよ」

 

「本当の本当に好きなんですよねっ!!」

 

「本当の本当に好きだよ」

 

「ふ、ふわああああ、よ、よかったああ。」

 

私は安心して大きなため息を零す。

天さんはそれを隣から見て笑っている。

 

「はは、随分大きなため息だな、それで、返事はどう?」

 

 まさか、天さんから好きだと言ってくれるなんて、完全に予想外だったけど、ここまでお膳立てしてくれて、思いを伝えられないはずがない。

 

「あのですね、天さん。私もですね、本当に会った時から、話した時から、天さんに引き込まれてしまって、ずっと、ずっと前から大好きでした。

 私からもお願いします。ずっと、これから先ずっと、あなたの隣に居させてください。」

 

 私は心からの笑顔を浮かべその言葉を言い切る。

 天さんは、一瞬呆けた顔をさせたが、すぐに笑顔になる。

 

「俺からもお願いするよ、文。俺も文が大好きだから、ずっと一緒に居させてくれ。」

 

「はい、天さん!」

 

 本当に天さんには、全部持って行かれてしまった。

 なかなか勇気が出せなかったところを、掠め取られてしまった。

 本当に天さんには敵わない。これからも私は天さんには敵わないだろう。

 だから、私はここでささやかな仕返しをしよう。

 

「天さん、次は唇にしてくれますよね、キス?」

 

 天さんは驚いた顔をした後、可笑しそうに顔に手をあて笑う。

 

「あははは、今回は負けたよ。」

 

 私は唇を前に出し、天さんにこの場を預ける。

 

「それじゃあ、いくよ?」

 

「ええ、来てください。」

 

 そして私と天さんは唇をゆっくりと重ねあわせる。

 

 本当に、本当にこんな結末を迎えられて良かった。

 

 

 

 ほんのちょぴりする、涙の味とともに、静かに鳴く虫の鳴き声だけが、その場に響いた。




 天鴎ダサTシリーズは今回はお休み。
 二人をくっつけたから、次回からは戦闘も入れられるかも。
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