女神転生・影【デスゲームサマナー】   作:どくいも

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6話目

あの後騒がしい人たちに連れられて、アキバを回ることいくつか。

無論、自分はごく普通の一般人。

TSしたって悪魔を何匹か狩ったって、斬られりゃ血が出て撃たれりゃ死ぬ。

ごくごく普通の人間である自覚はちゃんと持っている。

だからこそ、今回のオフ会で自分は慎重に事を進めるつもりであった。

できるだけ静かに且つ目立たず、最悪の場合は途中で脱走する事も視野に入れていた。

何せ相手は皆、自分と同じプレイヤー。

いきなりゲームに閉じ込められ、情緒不安定状態の可能性も高く、それなのに人外の力を持っている奴が大半。

そこにさらにメシアやガイアが絡むのだ、これでは危険でない可能性の方が低いというものだ。

 

「え?この格好?

 それはキャラメイクの時点で、沖田さんモチーフにしたからですよ。

 なら、このまま突っ走るしかないかなーって!」

 

「あ~わかるわそれ。

 俺も元々病弱気味だったからな。

 せっかく、フェニックスになったならちゃんとその名に恥じない行動を演じなきゃな。

 それにむしろ、おどおどしたマッチョとかそっちの方が違和感がひどいし。」

 

が、自分の予想は悪い意味で覆された。

幸い、オフ会の待ち合わせ場所にいた人はどれも理性的?な人であり、会話や行動にも余裕がみられ、少なくともいきなり街中で襲われるということはなさそうだ。

その上、ガイアーズやメシアンは今回のオフ会には参加させていないので、そっちの方向の心配も杞憂であった。

……しかし、それでも今回の面子は明らかに近寄り難い集団である事に違いはなかった。

 

「ねーねー!フェニックス!

 また肩車して、肩車~~♪」

 

「おいおい、それならまたお前の【なの】に頼めばいいだろ。

 …しょうがないな、乗れ」

 

「わ~~い♪フェニ太郎のそういうところ好き~~!!」

 

「いやぁ!相変わらずはかせさんとフェニックスさんは仲がいいですねぇ。

 本当に見ていてほほえましいです。」

 

電気街に降り立つ、身長190越えのマッチョマンとそれに肩車される白衣を着た幼女。

その横を歩く和服の美女(帯刀)+普通のジーパンTシャツ&パーカーのTS一般人の自分。

 

「浮いてる……すっごく自分浮いてるよ……!!」

 

「じゃけん、あなたも私達と同じくらい強いキャラづくりをしましょうね~~♪」

 

そうして、連れられるはコスプレショップ。

正確にはコスプレショップに偽装した、【デビルバスター用装備】を売る店らしい。

ここで買わされた防具が【サバイバルベスト】の延長であり、ちゃんとした防御力のあるのが不幸中の幸いである。

……まぁ、それでも浮くものは浮く。

少なくともこいつらと一緒に街中を歩くと、それだけで遠目から写真を撮られるという恥辱を受ける羽目になった。

そのため、隙あれば逃げ出そう、そんな風に考えていた。

そんな風に考えていたのだが……

 

「見てください!!これが私おススメの【ノッブなりきりセット!】

 かっこいい軍服をベースに種々のアクセサリーを含みながら改造!

 高い保温性と柔軟性をもち、いざ戦闘というときにも全く動きを阻害しません!

 私も半分だしますからね、ね♪」

 

「ねぇねぇ、あそこのゲーセンにも寄っていこうよぉ!

 あそこのゲーセンの景品はどれも裏業界でも人気みたいで、悪魔相手の交渉でも使えたりするよ!

 個人的におススメは1回1000円もするじゃんけんマシ~ンかな~。

 運のステータスに自信があるんなら、宝石を稼ぎたい放題だよ?」

 

「お前は酒を飲める口か?

 ならば、あそこの酒屋で売っている【純米カラジシ】は覚えておいた方がいいぞ。

 あれは辛めとはいえ悪魔にも美味いと評判の酒だからな、仲魔との飲みに最適だ。」

 

やだ、この人たち、愉快集団だけど……ガチだ!!

かくして自分は悪魔関連情報という名の餌+久々のまとも?な人間交流を続けてしまい、ずるずると一緒に行動&友好度が急上昇。

日が暮れる頃には、この面白集団になじんでしまい、そのまま一緒に食事をする羽目になっていた。

 

「いらっしゃいませだホ~~!

 5名様……いや6,7名様かホ?

 すぐにご案内するホ!」

 

なお、今晩夕飯を取るこの店はサマナー御用達の喫茶。

何人か明らかに堅気でないのが混ざっているし、そもそもウェイターが悪魔である。

やはりオフ会ガチ勢、よくこんな店を知っているな。

 

「ヒーホ―♪

 お客様のマント、とってもかっこいいホー!!

 ちょっと触ってみてもいいカホ?」

 

なお、この店で初めてヒーホー君こと【ジャックフロスト】に出会えたがいろいろと心境は複雑である。

理由はだいたいこの【ノッブなりきりセット】のせい。

フロスト+ほか子供系悪魔に絡まれつつ、椅子に座るころになってようやく一息を付けた。

悪魔交渉成功率が上がるからと勧められ買ったマントであるが、ここまで絡まれるのは寧ろ逆に問題があるかもしれん。

後で、買い替えよう。

 

「え~~!!なんてもったいない!

 そこまで悪魔に絡まれるのは、それほどまでにノッブにその衣装が似合ってるからです。

 だから、ノッブはノッブらしく堂々とそのマントを装着し続けた方がいいですよ♪」

 

「誰がノッブだ、誰が」

 

沖田さんがものすごくいい顔をしながらこちらにサムズアップしてくる。

なお、今回の自分の衣装のコーディネートは大体このコスプレ沖田さんの熱いプッシュのせい。

……くそう、内心ちょっとだけ、この衣装だと違和感なく男っぽい服を着れる安心感があるのが恨めしい。

運ばれてくる料理に舌鼓を打ちつつ、お互いの大まかな人柄がわかった頃に改めてその会合が始まった。

 

「さて、それじゃぁひと段落もしたから改めて自己紹介、と行きたいところだが、ここだと他の目もあるからお互いのCOMPでアナライズする感じでいいか?」

 

「ん、了解」

 

「あ!後、本名が他の人に知られると面倒なので偽名使って話していきましょう!

と言うわけで、今から私たちはノッブの事はノッブと呼びますのであしからず」

 

「まじですか」

 

「マジですよ♪」

 

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【氏名】筋肉 炎鳥

【クラス】人修羅 

【ステータス】 Lv15

【耐性】 物理耐性 バットステータス弱点

【スキル】ヒートウェイブ (物理 全体小ダメージ)

     気合い (次の物理攻撃の威力2.5倍。)

     心眼 (敵からの奇襲成功率を下げる)

     吸魔 (単体 MP吸収攻撃)

 

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【氏名】東雲 はかせ

【クラス】ハッカー

【ステータス】 Lv21

【耐性】 破魔無効 バッドステータスに強い

【スキル】ディア

     カードハント (戦闘後、確率で悪魔カードやスキルカードを入手)

 

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【氏名】沖田 総司

【クラス】ペルソナ使い

【ステータス】 Lv14

【耐性】 物理無効 

【スキル】ジャベリンレイン (銃属性 全体中ダメージ)

     チャージ (次ターンの攻撃威力2倍)

     タルカジャ (味方全体の物理系攻撃の威力を上げる)

     勝利のチャクラ(戦闘終了時にMPを微小回復)

 

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「シクシク、沖田さんが一番レベルが低いです」

 

「嫌味か貴様」

 

取り敢えず、色々言いたいことはある。

が、端的に言えば3人ともちょっと強すぎない?

 

「取り敢えず俺のマガタマは今飲み込んでるのとは別にもう一つある。

が、そっちはまだレベルが低くてな。

耐性がどうしても合わない時以外は使うつもりはない」

 

まずはマッスル系人修羅ことフェニックスさん。

只でさえ、物理耐性とか言う素晴らしい耐性を持っているのに全体攻撃持ち。

かつ奇襲対策もできて、奥の手にマガタマ変更による耐性&ステータス変更もできるらしい。

 

「はかせは基本は裏方担当だよ〜。

アプリ制作とか解析とかがメインだけど、レベルが高いからディア要員ぐらいはできるよ!

取り敢えず、お近づきの印にこの【百太郎】のアプリをあげよう‼︎

 奇襲だけではなく擬態悪魔とかもわかる優れものアプリなのだ!」

 

で、この自称裏方担当のはかせ。

裏方とか言いながらレベルが20を超えているし、その御付きの造魔もレベル20である。

しかもなんかCOMPを軽く見せてもらうと訳の分からないアプリがどっさりときたもんだ。

 

「あ、今丁度悪魔合体の研究中だから、近々人様に紹介できるくらいの達成率にするつもりだから!

 その時はよろしくね♪」

 

まさかの邪教の館主枠も兼任とは。

何この幼女、本当に同じプレイヤーなのか疑わしいレベルだ。

 

「それじゃぁ、沖田さんもさっそく自己紹介を……!!」

 

「いや、もう物理無効だけでお腹いっぱいです」

 

「そんな!!!」

 

最後のこのペルソナ使いに至っては【物理無効】である。

そのうえ弱点がないのに中威力全体攻撃持ちとかね。

もはや人間じゃねぇ、ネームドボスか何かに違いない。

 

「というかですね、我々からしてみたらノッブさんの方がいろいろ気になりますね」

 

「うんうん!それは言えてるね!

 というか、レベル10超えている【オールド系サマナー】とか初めて見たよ!

 ステは結構普通なんだね~~」

 

「やっぱり、武器は火縄銃なんですか?

 そうなんですか!?」

 

一人だけわけのわからない質問をするペルソナ使いを無視しつつ、お互いの能力や今までの経緯。

簡単な戦闘スタイルなどについて話し合っていた。

どうやら聞いたところ、このフェニックスとはかせは【オフ会】でのレベル上げのみ。

沖田さんは基本ソロでの異界攻略、数回だけオフ会に参加したことがある感じらしい。

 

「……ところで、少し掘り下げた質問いいですか?」

 

話の終盤、フェニックスさんから突然の真顔でそう質問された。

 

「あ~、今使ってる回復施設や初めて行った異界についてのこと?

 それはちょっと、会員制だからあんまり話せないというか……」

 

「いえ、それのことではありません。

 もっと以前、そう、初期でのレベル上げについて聞きたいのです」

 

自分としては、ゲンブから紹介されただけの【業魔殿】やそのことについて聞かれるとばかり思っていた。

が、どうやらそのことではないようだ。

 

「ノッブさんなら張本人ゆえに知っていると思います。

 が、改めて言いますと【サマナー】は【バスター】や【悪魔】と違って、【回復薬】で即時回復することができません。

 そのために、我々が知っている多くの【オールド】や【スタンダード】に属するサマナーたちでレベルを10を超えている人はほとんどいません」

 

フェニ太郎曰く、今まで何度かこのようにオフ会を開いているが、大抵の高レベル帯プレイヤーはほとんどが【バスター】ばかり。

時々【悪魔】や【ハイテク系サマナー】が参加することもあったが、自分のような10レベルを超えた【オールドサマナー】を見たのは自分が初めてだとのこと。

……確かに、自分もゲンブにさえ会っていなかったら今でもおそらくまだレベル10にぎりぎり到達していなかったかもしれん。

そう考えれば、あのゲンブからの依頼もある意味では幸運だったといえよう。

まぁ、文字通り死線をくぐらされたため、感謝なぞ絶対にするつもりはないが。

 

「基本、オールドとかスタンダードの人って回復手段がないせいで引きこもっちゃってる人ばっかりなんだよね~。

 【ハイテク系サマナー】なら無限マグのおかげで、マッカさえあれば無限回復&仲魔物量戦法があるんだけどね。

 それでもノッブは初期から何回も回復手段が確立しないまま、悪魔狩りをつづけたんでしょ?

 それなら、何か悪魔狩りの秘訣や裏技みたいなものがあるんでしょ!!

 その辺のこと、是非はかせも知りたいな~って」

 

「【バスター】の私たちなら寝て起きるだけで全回復できますけどね。

ノッブは普通のサマナーらしいですからねぇ。

 これはやっぱり宝具的なのがあったりするんですか?」

 

フェニックスに続きはかせも身を乗り出し質問を続けて、果てには沖田さんは無茶ぶりを言い出す始末。

だがしかし、そのように何かを期待する視線をされようとも、ないものはないのだ。

しいて言うなら……

 

「相手の攻撃に一度も当たらないように悪魔狩りを続ければ、回復薬は必要ない。

 それを続けていたことかなぁ。」

 

「「「え。」」」

 

3人から変なものを見る目で見られるが、こうとしか言いようがないのだ。

 

「いや、普通のサマナーだと怪我したら、傷薬だとなかなか治らないんでしょ?

 だから、先手必勝で敵を奇襲して、相手の攻撃が1度でもあたる前に殺しきっただけ。

 どうしてもやばいときは、仲魔(カブソ)を肉盾にできるし、回避率上昇スキルもあった。

 だから、都内の雑魚悪魔狩り程度なら意外と何とかなったよ」

 

正直にこうとしか言いようがない。そもそも自分がゲンブに会うまでに狩った敵はどれも【ゾンビ】系であり、どいつもこいつも戦いやすいやつばかりだった。

それ故、いざ戦闘になった時も普通に動きや気配を察知すれば十分に回避できるやつらばかりだったし、最悪カブソがいなくても何とかなる悪魔だけであった。

それゆえに、ここまで自分が問題なくレベルを上げれたのはこの都内の野良悪魔が弱いだけで自分が強いとか秘訣があったわけではないのである。

 

「そ、それは俗にいう初期武装が強すぎて、相手を一撃で倒せたから余裕的な?」

 

「いや、初期装備は≪模造刀≫だけど、あれはいろいろ酷かった。

 おかげでただのゾンビ相手に、殺すまで何度もたたきつける必要があった。

 反撃をされかける前にその腕を何度もたたき折ったから、反撃も回避も余裕だったけど」

 

「え~っと、相手悪魔からの魔法攻撃とかそういうのは……」

 

「都内の異界外の野良悪魔にそんなもの使うやつがいるとでも?」

 

「そ、それでも、あ!

 も、もしや、防具が、防具がわりかし良品ぞろいだったんですか?」

 

「防具とかないから、家にあった一番動きやすい服を装備していたよ。

 防御力はないけど、当たったらどのみち終わりだし、軽い方がいいかなって」

 

「……具体的に?」

 

「ジャージ」

 

「……悪魔狩りなのに?」

 

「うん、ジャージ(防御力+0)」

 

「傷薬が使えないのに自分から、一人で、普通に戦闘を?」

 

「うん、まぁいずれ嫌でも戦うことになりそうだし、なら準備できる今のうちにね?」

 

卓上に嫌な沈黙が蔓延する。

……何か自分、おかしなことを言っただろうか?

いやいや、サマナーであるならこれぐらい普通のはず、普通のはず……だよな?

 

「え、えっと一応自分集団で戦うときはちゃんと隊列とかも考えられるから!

 だから、安心して一緒に「とりあえず、明日の異界探索でノッブさんは前線に出るの禁止で」そげな!!」

 

なぜかフェニックスさんから、謎の近接戦禁止令を言い渡される。

確かにこの面子であると、自分の近接力が下から数えた方が速いのはなんとなくわかる。

が、自分から近接攻撃を取ったら、手裏剣とかわいい召喚と肉盾(カブソ)バリアーしかなくなってしまうではないか!

 

「それと、明日の探索には絶対にまともな防御力のある防具で来てください。

 これは探索前の絶対条件です」

 

「えっと、そんなこと言われても……。

 今自分の持っている防具でまともな防御力のあるのなんて、さっき買ったこのノッブコスプレの【御洒落軍服】だけなんだけど……」

 

「じゃぁ、それで」

 

「これ、コスプレで恥ずかしいんだけど。

 ……ジャージじゃダメ?いろいろ着慣れてるから邪魔にはならないと思うよ?」

 

「命と恥辱どっちが大事だと思ってるんですか!!!

 とりあえず明日マジでジャージできたら、無理にでもまともな防具に変えてもらいます。

 そうですね……具体的には今我々が持っている中で最も防御力の高いやつに無理矢理着替えさせます」

 

「あ!フェニちゃん!

 なら、はかせ一番高性能な防具として、この【ハイレグアーマー(ロリには着れない)】があるんだけど!」

 

「じゃぁ、それで」

 

はかせがそう言って取り出したのは、もしアクロバティックな行動一つでもしたら即ポロリしそうなヘソ出し紐水着鎧であった。

TSの元男として、ガチ回避系サマナーとしてあれはいろんな意味であれは着たくない。

そのため、土下座+明日以降このコスプレ軍服装備で探索すると約束することで何とか許してもらった。

 

「あの人いろんな意味でやばいですね……

 逆のパターンは想定していましたけど、こういうのは予想外というか……

 ちょっと、怪我されても責任取れなさ過ぎて辛いというか……」

 

「だ、大丈夫だよフェニちゃん!

 いざというときは私のディアがあるし、それに実力派なのは本当みたいだから!

 ……でも絶対生き急いでるやつだよ、私たちと別ベクトルのヒャッハー組だよ……

 とりあえずこれが終わったらマジでいろんな安全なサポートを受けさせなきゃ……」

 

「大丈夫です!!あれほどノッブが似合うノッブは初めて見ましたから!

 ノッブはこの沖田さんがちゃんと守りますから!」

 

なぜか別れ際まで、ほか3人の謎のひそひそ話が一気に増えたことをここに記載しておこう。

むむむ、もしかして自分の実力が疑われているのか?

ならば仕方ない、明日の探索はババっと邪魔にならない程度に前線に出て、戦えるところを見せなければならないかな!

そう決意して、一旦こっちのわが家へと帰還するのであった。

 




※なお、フェニ太郎さんの初期マガタマは【カムド】です

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