女神転生・影【デスゲームサマナー】   作:どくいも

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2話目

草木も眠る丑三つ時。

眠らない魔都東京の一角にうごめく影あり。

百鬼夜行の魑魅魍魎。

かつての大戦で壊された国防霊装に、無数の犠牲者の怨念。

宗教思想のガラパゴス化に数多もの特異点がここ東京を魔都たらしめ、今日も無数の悪魔を輩出しているのであった。

だが、生まれるのならば消えるのも世の理。

そして、その悪魔に死を与えるものが今ここに存在するのであった。

 

「おい!貴様、ディア使えるか?ディア使えるか?使えないだろうなぁ!!!!!

 ならば死ねぇぇ!!!」

 

「ぐあああぁぁぁぁぁぁぁ」

 

というわけで今日も今日とて楽しく悪魔狩りである。

なお、件の標的の悪魔はここ数日で随分と見慣れた悪魔であった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

【NAME】≪屍鬼≫ゾンビ Lv3

HP ??

MP ??

【相性】 呪殺・精神無効 火炎・破魔弱点

【スキル】・毒ひっかき (物理属性 小ダメージ+毒)

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ほぼオバタリアンと同等のスキルと耐性構成である。

さらに言えば、ステータスの関係か実際に戦闘してみると、この〈ゾンビ〉はオバタリアンのそれよりも少し鈍い、つまりは楽勝だということだ。

 

「手裏剣術4段の腕前をくらえ!!」

 

「……グギ、オゴゴゴゴゴ!!!」

 

【バック】から手裏剣を取り出し、それを素早く件のゾンビに向けて放つ。

こちらの投げた棒手裏剣は流れるように相手の足部分にあたり、もし相手が人間ならば今の一撃だけでその場で倒れこむこと間違いなしだ。

 

「ガァァァァァ!!!」

 

しかし、それだけで止まるほどゾンビは、悪魔は甘くはないようだ。

人間ならば腱が切れて動けないはずのその足を、無理やり超常の力で動かし、近づいてくる。

が、すでにこちらが先制できている時点で勝ちは決まったも同然であり、あとは仲間と自分の追加攻撃であっさりと沈むのであった。

 

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●〈中島 凪〉のレベルが上がった!レベルが8になった!

新しく〈毒針〉を覚えた!

 

●〈いたずら下手な〉カブソのレベルが上がった!レベルが5になった!

新しく〈麻痺ひっかき〉を覚えた!

 

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「ひゃっは~~!!新しく強い技を覚えた気がするにゃ!」

 

「……相変わらず、どっちも物理寄りだけどな」

 

新しくレベルが上がったのはいいが、相変わらずパーティバランスが悪すぎである。

〈毒針〉も〈麻痺ひっかき〉も物理属性一辺倒。

さらに自分が覚えたとされる〈毒針〉意味不明すぎる。

どこから毒針を放つのか、髪か?指か?それとも口なのか?不安しか出てこない。

 

さて、結局あの日初討伐の夜に、自分のまともな回復手段がバックに残っている残り4つの【傷薬】以外何もないことに気が付いた。

そのため、何とか自分でも使える回復手段である【ディア系】回復魔法を使える仲魔探しを続けてるのであった。

が、当然探しただけで現れてくれるほど、そう都合のいい話はない。

そもそも、この町中で【悪魔】に出会うことすらそこそこ貴重であるのに、出会えたとしてもそいつはたいてい【屍鬼】やスライムである。

もちろん、そんな悪魔がディア系の回復魔法が使えるわけも、まともに会話ができるわけもなく、結局は経験値の足しにしているのがここしばらくのライフスタイルである。

 

「……あー畜生、やっぱり街中だとピクシーがポンポン出たりしないのかねぇ?」

 

「さすがに妖精とか、地霊とかはそういう場所じゃないと出ないと思うにゃ。

 でもサマニャーもオイラもどんどん強くなってるから問題にゃいのでは?」

 

「お前は1つ5000円のお薬で全快出来るから関係ないんだろうけど、こちとらそうはいかないんだぞ?

 いつも綱渡りの戦闘でひやひやしてるんだ。

 せめて、毎回の戦闘ごとにゾンビ共が確実に魔石を落としさえしてくれればなぁ……」

 

「ひやひやしてるって言ってる割に、いっつもサマニャーは敵に突っ込んでるにゃ。」

 

「うっせ、おとなしくちくわでも食ってろ」

 

そんな風にカブソにちくわを投げ与えながら愚痴っているときに、それは突然現れた。

COMPから突然なるアラーム、無色から黄色へと変わるエネミーソナー。

即ち、次の悪魔の反応である。

 

「……!!連続で出てくるとは珍しいな。

 おいクソ猫、ちくわ食ってないで次の悪魔が来るぞ!さっさと構えろ」

 

ご褒美のちくわに夢中で気の抜けていたカブソのケツを蹴り上げ、有無を言わさず戦闘の準備をする。

カブソが何か言いたげな顔でこちらを見ている気がするが無視。

エネミーソナーが真っ赤になるころには、悪魔そのものの気配は見えずともマンホールがごぽごぽと水音を立てているせいでどこから来るのかまるわかりであった。

そしてそれは凄まじい威圧感と悪寒と共に現れた。

 

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【NAME】≪龍王≫〈分け身の〉ゲンブ Lv6

HP ??

MP ??

【相性】 氷結耐性 電撃弱点

【スキル】 ??

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「……よし!格下だ!殺せ!じゃなかった、捕らえろ!」

 

「くらえにゃ!<麻痺ひっかき>!」

 

「グワーッ!!!!!」

 

 

この間、実に0.1秒。

先手必勝が常勝の理とはいえこれはやりすぎである。

もし相手が物理反射なら、今頃ミンチなのはこちらだったのはいうまでもないがきちんとアナライズしてから襲ったからセーフだともいえよう。

 

「ままま、まてまて人の子よ!今宵は戦いに来たのではない!

まずは話を聞け‼︎

うむうむ、わかってくれて嬉しい‥‥いや、刀を下ろさないのかよ」

 

当然である。

悪魔相手に油断出来るほど自分が強くないのは充分に理解してるつもりである。

ゲームでは序盤の悪魔交渉に失敗=奇襲からの死は女神転生のお約束ともいえよう。

そのため、絶対に油断だけはせず、背後に退路は常に意識して……。

 

「はぁ~~!よかったにゃ~~!!

 サマニャー!どうやらこの人は敵じゃないみたいだにゃ~~。

 これなら一安心にゃ!あ、おじさんもちくわいる?なかなかおいしいにゃよ?」

 

「ほう、魚介の練り物か。

 嫌いではない、頂こう。」

 

対してカブソは実にお気楽、殺意すら湧くほどだ。

とりあえず、後でカブソを絞めると心のデスノートに記入しつつ、バックから追加のちくわを取り出してゲンブとカブソに与えた。

しばらくチクワ批評会で盛り上がった後、このゲンブはこんな事を言い放った。

 

「なに、実はな、最近我の守護下の<異界>が厄介な侵略者に乗っ取られてしまってな。

 先日別の人間に奪還を依頼したのだが、結局まだ解決できてないようなのである。

 というわけで、そ奴にかわっておぬしが我の領地を取り戻してくれんかのう?

早くしないと、異界が暴走して、この辺一帯が水没するだけでなく、悪魔が溢れてしまうが故、この地の守護を任された我の立場としてもおぬしらここに住むものとしても非常にまずいことになると思うのだが。」

 

ちょっと、色々言いたいことがあるが、とりあえずは、それは自分には荷が重すぎる問題では?

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

※ なお、この間の異界に行くか行かないかの葛藤は

【ボスけて】初めての異界攻略【なお、ほぼソロ】 参照

 

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というわけで、色々悩んだり、DDSーNET(S)で相談したりして数日。

結局自分は再び同じ路地裏に来ていた。

 

「おお!また会ったな若き人の子よ!

して、我の頼みを聞いてくれるのだな?」

 

「取り敢えず、軽くね軽く。

前報酬ももらえるらしいし。

一旦下見していけそうなら、依頼を受けたい。」

 

虎穴に入らずんば虎子を得ず。

色々考えた結果結局自分はこの依頼を一旦は引き受けてみることにした。

勿論これが罠の可能性や他の人にたらいまわしにする事、掲示板で他の人とパーティを組んでなど色々考えた。

が、まずは依頼された先がの異界がどの程度の難易度が下調べするのが一番初めにやることだという結論に至った。

 

「出来ることなら、ばっぱっとその異界をクリアしてやりたいんだけどね?

本当にその異界が自分でクリアできる程度なのか分からないからな。

それで構わないか?」

 

「ふむ、我の見立てでは、お主一人で十分倒せそうだと思ったから依頼したのだが‥‥

まあ、不安になる気持ちがわからないわけではない。

良かろう、なれば今ここに入り口を作ろう、暫し待つが良い」

 

すると、現場の足元にあった下水への入り口が淡く輝き出す。

そしてCOMPも【マッパー】もそれに呼応するかのように更新され、マップ上でそこが【渋谷地下水道迷宮・入り口】と表示される。

どうやら、このゲンブの発言が1から10まで完全に嘘だったと言う最悪のシナリオでは避けられたようだ。

 

「ここをくぐれば元我の支配する異界に行けよう。

帰るときはまたこの門をくぐれば戻れるであろう。」

 

ちょっと棒や指を突っ込んでみた感じ、特に罠という感じでもなかった。

顔を突っ込んでも問題なく、別世界っぽい地下水道という不思議な光景が見えるだけだ。

ちょっとだけ、自分が本当に女神転生でファンタジーな世界に来たことへの感動が心に宿った。

 

「さて、では頼んだぞ!

 我の守護地を荒らすあの憎き悪魔を倒しさえしてくれれば、然るべき礼と口利きはしてやろう。」

 

そういいながら、ゲンブが心持ちうれしそうな顔で、自分に向かってそう言ってきた。

なお、この依頼の報酬として、この依頼の後に回復とエナジードレインどちらも使える悪魔を紹介してくれるように約束してもらった。

前報酬として、模擬刀でない本物の【刀】も貰えたし、できる限りの下準備はしたつもりだ。

 

「今回はあくまで下見下見、深追いは禁物。」

 

そう自分に言い聞かせるように呟きながら、異界の入り口へどんな困難が来てもいいように覚悟を決めながら乗り込むのであった。

 

 

……が、一番初めにそこで待ち受けていた困難はこちらの想像の上をいく物であった。

 

 

 

 

 

『ウオォン!!コノトチ、スデニオレサマノモノ!!

シンニュウシャ、ユルサナイ!!ニドモ、オナジテヲクワナイ!!』

 

「え?」

 

「あ。」

 

「にゃ」

 

異界の門を完全にくぐった瞬間、変色する異界の入り口、弾かれる体。

そして、思わずCOMPを確認すると、そこにはこのような通知が来ていたのであった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

▼貴方は、異界の中に閉じ込められてしまった!!

 

▼異界の主の悪魔を倒すまで、あなたはここから脱出することができない!!

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 




セーブポイントと回復ポイントと現実に会ったらよかったのにね


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