ご注意ください
【渋谷地下水道迷宮】
そこは一見すればただの地下水道。
周りに流れる汚水にじめじめした雰囲気、かび臭い匂い、薄暗くもところどころ輝く電灯。
しかし、それでもここが異界であるのはあきらかであり、例えばただの地下水道のはずなのにここが車が通れるほど広かったり、ありえないほど複雑かつ膨大に道が広がっていたり。
そして何より、目の前にいる無数の悪魔達がここが尋常ならざる場所だということを示しているのであった。
「ゲッゲッゲ!イツマデ、イツマデ!!」
「ヒッヒッヒ!フケイ、フケイィィィ!!」
「くっそ!また出やがったな!
さっきからキリがない!」
そこにいたのは、2匹の鳥の姿をした化け物。
片方は、立派な髭の生えた壮年男性の人の顔とがった耳、雄鶏の体。
もう片方は、人の頭蓋骨を模した頭に鋸のような歯が並び、剣のような鋭い爪を持つ巨鳥。
どちらも鳥型のいわゆる【凶鳥】といわれる悪魔のカテゴリー。
戦乱や疫病を招くとされる不吉の象徴。
人面鶏体の悪魔【フケイ】は中国では凶事の先触れ、戦乱を呼び寄せる鳥として、骨頭鳥体の悪魔【イツマデ】は疫病の流行や飢饉の死者の怨霊が鳥に化けたものとして知られている。
なお、女神転生においてこれら【凶鳥】の悪魔の特徴として有名なのがある。
別にそれは、こいつらの鳴き声が某国民的黄色鼠のように自分の名前を叫ぶことではない、それはたまたまこの2種類がそういう悪魔だというだけだ。
そう、悪魔カテゴリー【凶鳥】、それに共通する特徴とは……
「羽の生えた雑魚どもが!!こっちは急いでるんだ!!
さっさとおとなしく成仏しろ、【毒針】!!」
「イツマ……いぎゃ、ぐあああぁぁぁぁぁ!!!」
「わ、わしが、人間如きに……ぐああぁぁぁぁ!!!」
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【NAME】≪凶鳥≫フケイ Lv6
HP ??
MP ??
【相性】 銃・電撃弱点
【スキル】・ザン (衝撃属性 単体攻撃)
・シバブー (敵単体に麻痺付着)
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【NAME】≪凶鳥≫イツマデ Lv7
HP ??
MP ??
【相性】 火耐性 銃・氷結・破魔弱点
【スキル】・アギ (火属性 単体攻撃)
・ひっかき
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「あ、またレベル上がった」
「オイラもにゃ~~!
お!サマニャー、おいらも新しい特技をおぼえたきがするにゃ!」
そう、この【凶鳥】の特徴、それはどいつもこいつも【銃】属性の攻撃に弱いということだ。
おそらく、【鳥は銃で撃たれて死ぬ】という概念が【悪魔】レベルでも浸透しているこの世界ゆえの出来事なのであろう。
ここに来る直前に【毒針(銃属性攻撃+毒付加)】を覚えていたおかげで、ここについてから出会う【凶鳥】の悪魔群れ相手でも危なげなく戦えている。
そして、バシバシと悪魔を倒せているおかげでレベルがどんどん上がり、今では【毒針】を使わずとも手裏剣による攻撃(銃属性)だけで一撃で倒せるほどだ。
どうやら、あのゲンブの言うこと自体は基本間違っていなかったようだ。
ここで出てくる悪魔はどいつもこいつも【凶鳥】系ばかりであり、どいつもこちらの手裏剣で一方的に駆ることができる。
文字通り【自分一人でも攻略できる異界】の発言に偽りなしだ。
おかげで走り回るだけで、マグネタイトもマッカに経験値、時々ドロップ品まで手に入る。
もし時間さえあれば、手にもつ手裏剣すべて使い切るまで戦い続けたであろう。
「ブオオォォォォォ!!マテ!シンニュウシャ!!
オレ、オマエ、ニガサナイ!!コロス、コロス、コロォォォス!!」
……ただし、当然ながら世の中そんなに甘くない。
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【NAME】≪龍王≫〈威風堂々〉ノズチ Lv17
HP ??
MP ??
【相性】 物理・氷結・電撃・火炎耐性 衝撃・呪殺弱点
【スキル】 ??
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「ニャ―!!なんて奴にゃ!!
鈍いくせにもう追いついてきたにゃ!」
「あ~もう!物理耐性って、序盤のボスの耐性じゃねぇぞ!」
そう、この異界で出会ったなかで唯一【凶鳥】でない悪魔。
誇大な体に眼も耳も頭すらない一頭身。
しかし、まるで象のような長い鼻とマルタのように太い脚。
この異界の現在の主にして、今回の異界監禁元凶〈龍王〉ノズチ。
それが地面を砕き、障害物を吹き飛ばしながら突撃してきたのであった。
「グオオォォォォォ!!!!!」
「あぶないっ!」
「ブニャばらっ!!」
ノズチがその巨体と象のように長い鼻を使って、強大な物理範囲攻撃【会心波】を放ってくる。
幸い自分はその見え見えの大振りな攻撃などかわせるが、カブソにとってはそうではないようだ。
ノズチのその激しい一撃を食らい、まるでゴムマリのように吹っ飛んでしまう。
「くっそ、よくも
追加の【毒針】くらえ!」
「ブブゥ!!」
自分の放つ手裏剣に魔力的な何かがこもり、それが【毒針】となってノズチのその巨大な毛皮の中へ突き刺さる。
一応【銃】属性の手裏剣は【物理】属性ではないため、多少となりダメージを食らっているはずではある。
なおこの〈毒針〉というスキルを実際使ってみたところ、これは自分の〈銃属性〉攻撃をオーラとか魔法的何かで強化するスキルであり、髪の毛を飛ばしたり、針を具現化させる能力ではないのであしからず。
「グブブッ!!グブブッ!!〈ディア〉!!」
「なんでボスが、しかも物理タイプのくせに回復技使ってんだよ!
殺すぞ!!(殺せない)」
その言葉とともにノズチの体の傷がみるみる回復していく。
この悪魔、一見脳筋に見えて普通に回復魔法が使えるようだ。
おかげで、先ほどから何度も何度も毒針を打ち込んでいるのにまるで衰えた様子を見せない。
「グブオオォォォ!!!〈マハジオ〉」
「くっそ!手元に
そして〈ノズチ〉から放たれる強大な雷の波。
それは広範囲で実態を持たない。
当然目視すらまともにできない【範囲魔法】なぞただの人の身でまともにかわせるわけもない。
先ほどまではカブソを盾にすることで何とか防いでいたが、とうとうまともに直撃をしてしまった。
全身に焼けるようなしびれる激痛が走る。
意識が飛ばないように、特に武器やCOMPを手ばさないよう奥歯を食い占めるが痛いものは痛い。
え?これの盾にしていたカブソをへ罪悪感?
サマナーだからね、ちかたないね。
「クッソ……クッソ……!!」
「グブ!グブブブブブブ!」
……が、どうやら〈運〉が悪かったのか、根性が足りなかったのか。
いくら踏ん張っても、体に、足に力が入らない。
これがいわゆる麻痺状態〈PALYZE〉になってしまったというやつなのだろう。
自分が麻痺してしまったことを理解しているのか、〈ノズチ〉が薄汚い笑い声をあげて、ゆっくりこちらへと近づいてきた。
おそらくこのノズチはもうすでに勝った気でいるのだろう。
そりゃそうだ、こちとら身動きすら取れないただの人間で、向こうは強大な力を持つ悪魔。
それはもう一見すれば、すでに勝負は決まっているように見えるであろう。
……しかし、こちとらサマナーだ、ただただおとなしくやられるほどやわな人間ではない。
「隙ありぃ!くらえにゃ!!!〈麻痺ひっかき〉」
「グバァ!?グバ、ゴババババババ…!!」
やられたように見せておいたカブソの奇襲が無事に成功させることはできたようだ。
そのうえ、ちゃんとこちらの狙い通り向こうも麻痺ってくれた。
実にざまぁみろ&スカッとさわやかでる。
「よ、よし!今の隙にさっさと逃げるぞ!」
「あ!ちゃんとさっきの凶鳥どもが落としたドロップはきっちり回収済みにゃ!安心して離脱するにゃ!」
「でかしたといいたいところだが、そんなことしてるならさっさと戦線に戻れ馬鹿!
いいからさっさと逃げるぞ!」
しびれる手足に四苦八苦しつつも、カブソの補助を受けながら、何とか戦線を離脱するのであった
「……というかこれ、ムリゲーだろ」
「だにゃ」
エネミーソナーで安全を確保した異界の片隅で、身を休めながらそう口から漏らす。
「そもそもさ、こっちももうすでにレベルがアホほど上がったよ?初めての集団戦も難なく達成できたよ?
でもねぇ、物理型に物理耐性のボスは無理なの、範囲魔法も無理なの。
しかも、ボスのくせに最初からずっと追尾してくるとかなんだよあれ、お前はダンテか」
「サマニャー、おいら難しいことわかんないからとりあえず、ちくわプリーズ」
「……いつ異界から出れるかわからないから、半分な」
「わーい」
半分になったちくわを食べながら、色々今ある手で何とかしようと考える。
が、結論はどれも無理ということになった。
レベルが完全に上がるまで異界潜り?無理、あのノズチが途中乱入しているのに満足にレベル上げ専念などできるわけがないし、帰れないせいで食事睡眠がとれない。
この異界の中でノズチから逃げ切り?無理、あのノズチは常にこちらの位置をある程度は正確にとらえてくる。
あの象のように長い鼻による嗅覚によるものか、異界の主の特性によるものなのだろう。
ヒット&アウェイの逃げ切り?向こうは回復魔法もちなのにそれをするほどこちらは無謀ではない。
そもそも、もうこっちはアイテムが付きかけているのだ、それなのに持久戦とか自殺行為にしか見えない。
つまりはどこかで最終決戦を仕掛けて、倒しきるしかないのである。
「……というか残りの手裏剣もう20もないのは真剣にまずいな。
このままじゃ凶鳥相手にもツム、マジツム」
「オイラ一人だと、この辺の野良悪魔もつらいんですがニャ。
それと、ちくわのお替りは?」
「これはだめ、いざというときの非常食。
帰ったら、笹かま買ってやるから我慢しろ」
「言ったにゃ?その言葉言ったにゃ!!!
アクマ、ケイヤク、ミノガサナイ!帰ったら笹かまゲットにゃ!!」
こいつは能天気そうでいいな……。
こちらはもうすでに、事前に買っていた悪魔には効く〈傷薬〉は使い切り、この異界に入ってから拾えた数少ない〈魔石〉も使い切ってしまった。
残りは時価ネットで買った【ワケアリン】だけだ、なめてるのか。
手裏剣だって、凶鳥相手だけなら使った後再回収できるが、〈ノズチ〉相手に使ったり、ノズチから逃げるたびにどんどん手裏剣のストックが減っていき、すでに当初の5分の1にも満たない量しか残ってない。
本決戦で使えるのはあと2、いや1回分がいいところであろう。
つまり、あのノズチに特攻しかけることができるのはあと1回だけだ。
それまでに何とかしなければならなく、かつ今できる方法でノズチへの勝率をできるだけ上げる方法は……。
「よし、体のしびれも取れたし動くぞ。
そして、あいつに追いつかれる前に新しい仲魔を勧誘する。」
「え?サマニャー残り1体しか仲魔にできないのにいいのかにゃ?
今回の依頼終わったら新しい仲魔を紹介してもらうって言ってたのに。」
「いいのいいの。
終わったら開放する、キャッチ&リリースすれば。
今回一回だけの付き合いで仲魔にするの、大丈夫、もし別れるときに文句言ってもしょせんは凶鳥。
手裏剣の攻撃で一発よ」
「うっわ~~、サマニャー、すっごい悪い顔してるにゃ……」
こうして、地味に自分にとって初めてのまともな仲魔勧誘が始まったのであった。
「チュッエチュエ、チュッエチュエ!!」
「キヒッ、キヒヒッ!イツマデ……イツマデ、生きあがくつもりだ?
ヒキッ、キヒヒヒヒヒヒ!」
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【NAME】≪凶鳥≫チョンチョン Lv9
HP ??
MP ??
【相性】 衝撃無効 火炎弱点
【スキル】・マカカジャ (味方全体の魔法攻撃力を上昇させる)
・メパトラ (味方全体の精神系状態異常回復)
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「はい、不採用~~残念でした~~」
「「グギャアァァァァァァァ!!!!」」
こうしてまた1つ、新しい悪魔の群れを魔界へと還してしまった。
悪魔勧誘?何のことかね?
「サマニャー、さっきから勧誘するって言って、一匹も勧誘成功してないみたいにゃんだけど……」
「い、いや、しょうがないじゃん。
まともな悪魔がいないんだもん。」
冗談はさておき、カブソの微妙に攻めるような視線に思わず目を泳がせてしまった。
いや、これは本当に仕方ないのだ。
こちらとしては対ノズチとなる悪魔を仲魔にしたいのだ。
そのための理想は〈物理〉以外の攻撃手段を持つ〈呪殺〉か〈衝撃〉の魔法が使え、かつ〈電撃〉属性に強い悪魔だということである。
それなのに、出る悪魔出る悪魔、どいつもこいつも何かが足りない。
〈フケイ〉はザン(衝撃属性単体魔法)が使えるが、電気弱点でそもそもレベルが低すぎる。
〈イツマデ〉は電気耐性を持たないうえ、メインウェポンのアギ(火属性単体魔法)はノズチは耐性を持っている。
〈チョンチョン〉?攻撃魔法なしだから〈物理〉攻撃しか使えないし、使える補助魔法も対ノズチ戦にはまったく意味をなさない。
そのうえ、ビジュアルはフライング羽付き生首である、ひどいったらありゃしない。
「そんにゃこと言っても、さっきからもう嫌な気配がビンビンしてるにゃ~
これはもうすぐ、ノズチに追いつかれるんじゃないかにゃ?」
「要するに次かその次で決定しなきゃいけないわけかぁ……
あ~~、もう、こうなったら、フケイを仲間にしてかばいつつ戦うか?
イツマデは論外だし、レベル的にはチョンチョンだけど、今私たちの中に魔法攻撃を使えるやつがいないのがなぁ……」
そう愚痴をこぼしながら、ラストの仲魔勧誘のチャンスへとエネミーソナーを見ながら向かうのであった
「あら?こんなところに人間?
でも運がよかったねお姉ちゃん、今はおなかがすいてないから見逃してあげてもいいよ?」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
【NAME】≪凶鳥≫〈おませな〉モーショボー Lv14
HP ??
MP ??
【相性】 銃・火炎弱点 衝撃無効 電撃吸収
【スキル】 ??
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「はい!確保~~!!!確保~~!!
絶対に逃がすなカブソ!!!囲え!!!」
「合点招致にゃ!!
暴れんニャよ……暴れんニャよ……!!(麻痺ひっかきしながら)」
「きゃ、キャ~~~!助けて!!!
暴漢よ暴漢~~!!!!」
※ライドウ式仲魔勧誘
まぁ、TSしてるから多少見た目はセーフ()