やはり、寄せ集めの青春ラブコメは間違っている 作:苦土重焼燐
最近、どうも調子が悪いと思ったら風邪を引いていたなんて、八幡一生の不覚。
それを口実に学校を休めたのに、登校途中にそんな事を考える。
色々、読みたい物とかやりたい事があったのに悔やんでも悔やみきれない。
かといって、サボり・仮病は平塚女史からのメール・着信・インターホンが鳴り止まないから出来ない。怖くて。
あの人の結婚出来ない理由はそこじゃないか。
「我、真理をみた者なり」
「やっはろー↑ヒッキー」
一人呟いた途端、後ろから騒がしい――もとい、五月蝿くビッチ臭い挨拶が聞こえて来た。
恐らく、処女ビッチの二番煎じこと由比ヶ浜だろう。
どうでもいいけど、独り言聞かれてなくて安心院した……。
「おう、今日もビチ元気だな。由比ヶ浜」
「うん!って、ビッチじゃないって!! まだ処女――ああああっと何でもないよ! 言わせるとかヒッキーのスケベ!!」
「男は誰だってスケベだと思うし、広島辺りでは、『とても』と言う表現を『ぶち』と言う事もあるんだ」
「あ、そうなんだ。びちって言うのは? もっととか?」
「いいや、単純にビッチ臭いから」
「関係無いじゃん!!」
俺の言葉にむきー!っと、怒りを顕にする由比ヶ浜=サン。
「あ、そんな事よりさ。ヒッキー、風邪治ったの?」
「治ったぞ、大体三日も休めば誰でも治るだろ」
「そうなんだ……ゆきのんはまだ駄目みたいだよ、今期絶望? とか言ってた」
「今週の間違いじゃないのか?」
風邪を引いただけで、ワンシーズン休みとか聞いた事無いんだけど。
え、もしかしてコイツ、雪ノ下の事嫌いなの? 来てほしくない的な事?
「あぁ! そうそう、今週だったよ」
えへへ~っと、誤魔化すように笑っているが、コイツがアホだと言う事は誤魔化せないし、雪ノ下を嫌ってると言う事も覆せない。
ゆきのん、と言うのも精神的ダメージを与える為だったのか……ビチヶ浜……恐ろしい子……。
「ってことは、雪ノ下が出てくるまでは、奉仕部も休みか」
「そうなるね~、あっ! あれだったら、今日帰りに皆でどっか行こうよ!」
奉仕部が休みになり、速攻で家に帰り引き籠ろうと考えた途端、由比ヶ浜は当たり前と言った様子で死の宣告を俺に与えてきた。やっぱコイツ、奉仕部の面子嫌いなんだな。
「皆って誰だよ」
「え、ヒッキーと私と葉山君たちだよ?」
「遠回しに、俺に『死ね』って言ってるの?」
「なんでそうなるの!?」
あんなよく解らない事でうぇーいと騒げる連中と一緒に行ったって、俺がいたらうぇー……あっ……みたいに、空気が死ぬだろ?
そしたら、こそこそ『なんで連れてきたの?』的な話になって、腫れ物扱う様に接してくるに決まってる。
なんだよ、それ。公開処刑かよ。
「お前らで行けよ、俺は行かん」
「え~、皆で行った方が楽しいよー!」
「あのな、俺は未だかつて、『みんな』と言うカテゴリに含まれた事なんて無いんだ。『みんな』ってそもそもなんだよ、『みんな』で行って『みんな』楽しいのか? 答えは否だ。楽しいのはごく少数の『みんな』であり、『みんな』(俺以外)のコミュニケーションを楽しむんだよ。そんな中に、俺が入ってくわけないだろ」
「……どういう事……?」
「……由比ヶ浜……」
なんと言うか、俺がコイツに解って貰おうとしたのが馬鹿だった。
バカの耳に念仏を唱えた所で『へ?』って返ってくるのも、当然の話だったか。
「そ、そんな可哀想なモノを見る目は止めて!! わ、解ってるから!」
「ほう、ちょいと解った事を述べて戴きたいな」
「……と、取り敢えず、また放課後に話そっ!」
コイツ、絶対解ってないな。
はぁ、何でまだ始まってもいないのに終わりが憂鬱になるんだ……。
アホの子最強説だな。
「この前、転んじゃってさー」
「雪ノ下から聞いた」
そして、何事も無かったかの様に違う話題を振れるというのは凄まじいな、コイツの精神鑑定して戴きたい。
「おっぱい無かったら、怪我してるとこだったよー」
「ぶふっ」
なんかデジャビュ……。
「ヒッキー大丈夫?」
「あ、あぁ、ちょっと扁桃腺に難ありでな」
一瞬、続きの言葉が紡がれてしまうのかと身構えてしまったが、そこは処女ビッチの由比ヶ浜さんだったから、何もなくて良かったと思う。切実に。
「そしてさー、由美子にさ。『うらやまけしからん』って揉まれたんだけど、そんなに大きいのかな」
「さ、さぁな」
コイツ自分で、何を口走ってるのか理解できてるのか?
普通、異性の前でそんな話するの?
俺が童貞を拗らせてるのがいけないの?
え? え?
「こっちは真面目に悩んでるんだよ?」
「俺は男だから解らん、大きいんじゃないの」
言わせんなよ、恥ずかしい。
おっぱいと言う単語で恥ずかしくなってしまうのだから、仕方がない。童貞かよ。
童貞だよ!! 悪いかよ!!
「適当だなぁ……」
俺の返答が不服なのか、由比ヶ浜は頬を膨らまし抗議の視線を向けてくる。
そもそも、異性の友達がいないのに解る訳無いだろ、いたとしても発言するのも危ぶまれるレベルだ。
「ちょっと、手を貸して」
そう言うや否や、俺の手を取るとあろうことか自分の胸に押し当てた。
「んんんんんんんーーー!?」
こ、こっ、こやつ、何を考えてるんだ!?
処女を拗らせてるのか!?
「ちょっと、揉んでみて」
「揉む!?」
待て、落ち着け俺ともう一人の俺。
クールに、クールになれ。
早い話、周りと比べてどんなものか、と言う感想を求められてる筈だ。
様は感想を言えば、見られると誤解される絶体絶命のピンチを切り抜けられるはずなんだ。
「どう?」
「そ、そうだな……手から溢れる様なサイズであり、しかしマシュマロの様に柔らかく揉み心地は大変宜しいと思う、弾力もあるし、衣服の上からでも感じ取れる大きさってところだろうか」
「気持ちいいの? んっ……どうなの?」
「気持ちいいです」
「そっか、有難う」
それだけを告げると、俺の手を離した。
……。
登校中に何をやってるんだ俺は……。
「……!」
俺が頭を抱えていると、横にいた由比ヶ浜が脱兎の如く駆け出した。
俺と同様、頭を抱えながら。
もしかして、素で……?
アイツの未来がちょっと心配になった。