やはり、寄せ集めの青春ラブコメは間違っている 作:苦土重焼燐
「せんぱーい……寒いです……」
「そりゃ、もう19時過ぎてるしな……」
あれから、悪戦苦闘するも書類の山は綺麗さっぱり処理してやった。
しかし、気付けば三時間くらい没頭し、時間を忘れていた。
人間死ぬ気で帰ろうとすれば、あれだけ作業が早く済むモノなんだな。
まぁ、事前に種類事に分けられていたので、思いの外作業は早かったが。
「せんぱーい、寒いです」
「そうか、風邪引かない様にな」
一色が手を擦りながら、猫なで声で何かを訴えてくるが俺はコートに手を入れてる為、言う程寒いとは感じてない。
よって、寒くない。
「先輩酷いです、可愛い後輩が寒いって言ってるのに何もしてくれないのはちょっと引きます」
「お前の事だ。抱き締めたり、手を握ったらもっと引くだろう」
「……それもそうですね……」
せめて、もうちょっとくらい否定して欲しかった。納得されるのも解ってたけど、解ってたけど!
「……じゃあ~……えいっ」
何かを思考していると思うと、可愛らしい掛け声を放ち、俺が手を入れているコートのポケットに手を突っ込んできた。
「え、なんなんですか彼女気取りですか散々振られたので子悪魔的な女子はちょっと無理ですごめんなさい」
「私のアイデンティティーを奪う先輩なんて知りませんよ!」
等と言うも離れる事はせず、寧ろ何故か寄り添いながら歩き始める。
訓練されたぼっちは、こんな事ぐらいでは取り乱さないけどね。
「先輩、どっかで食べていきましょうよ。もうお腹ペコペコですよー」
「あぁーはいはい、あざといあざとい」
「もー! 素直に嬉しいって言っても良いんですよー?」
「直帰出来ないのに嬉しい訳無いだろ」
「じゃー、サイゼに行きましょう!」
一色とサイゼか……、サイゼに罪はないしな。
「異論は無いな」
「私と行ける事については?」
「悪くないんじゃない」
「捻デレするくらいなら、デレてくださいよー」
そもそも、今のどこに捻デレの要素があったのか教えて欲しいくらいなんだが。
無いよな……無いよね……?
「五月蝿いな、さっさと行くぞ」
「あぁっ、待って下さいよー!」
こういうのは、さっさと行動して煙に巻くのが一番だって友達(本)が言って(書いて)た。
―――――――――――――
サイゼリアにて。
メニューを注文し終えた俺は、ゆっくり次の来店でのメニュー決めしようと思ったのだが、一色に邪魔されそれどころでは無かった。
「ほんっと、先輩ってサイゼ好きですよねー」
「当たり前だろう、小町とサイゼと戸塚があればそれで良いレベル」
「うわ……」
「引くなよ、ほんの冗談だ」
「本当ですか……? 目の腐りが一瞬、酷くなったんですけど」
俺の言葉が本当か嘘かって目に出てるの?
目は口ほどにモノを言うって言うけど、腐るのは関係無いと思うの……。
「俺の目が腐ってるのは、この際関係無いだろ」
「そんな事より、先輩が大好きな人がもう一人くらい入ってないんですけど?」
「お前ね、ちょいちょいそんな事って一蹴してるけど、俺じゃ無かったら即口論になるんだぞ?」
「で、どうなんですか?」
あ、聞く気が無いんですね。何となく知ってました。
これ会話って言うか、俺が内野で一色が外野のドッチボールだよね。
味方が居なさすぎて辛いんだが。
「そうだなぁ、後はかまくらかな」
「先輩のホモ、シスコン、ケモナー」
「シスコン以外は間違っている」
「シスコンも否定して下さいよ……」
しょうがない、小町が可愛い妹なのが悪い。よって、俺は悪く無い。
「どうして、そこで普段お世話になってる可愛い後輩が出ないんですかねぇ……」
「はっ」
「今、鼻で笑いました?」
「いや、くしゃみが出そうだっt――いてぇ! テーブルの下で蹴るなって!」
今にも『う~』と唸り出しそうな顔で、此方を睨んでくる一色さん。
しょうがないよな、思ったこと言ってるだけだし……。
「本当にデリカシー、乙女心が解らない人ですね……頼りにな「飯来たぞ」……」
「……先輩の変態! スケコマシ! 八幡!」
「お、おい店員の前では止めてくれ。後、俺の名前は悪口に含まれないから……」
メニューを置いた店員が去り際に、彼女と喧嘩するくらい仲良しなんですね、ムカつきます、後、他のお客様のご迷惑になるのでと、注意された……彼女でもないし、俺は何もしてないんだが……。
店員が去ってから、先程まで俺に罵声を浴びせ怒ってた一色は、なんか上機嫌だしで、本当になんなんだか良く解らない。
―--―――――――――――
サイゼで晩飯を終えた俺達、取ってる合間に小町からの応援メールが届いてたけど、なんなんだ。
寂しいのか?ならば、即解散して帰ろうと思ったのだが、返信で『送ってこい』って返ってきた。
お兄ちゃんは若干寂しいです。
「いやー、すみませんね。送って貰っちゃって」
「どうせお前の事だ、どうやって送って貰おうか考えてあっただろ」
「そこまで私を理解してるなんてあれですか、まるで夫婦の阿吽の呼吸レベルで私が好きだってことですかでもまだ夫婦は早いと思いますから恋人になるまでは無理ですごめんなさい」
「へいへい」
「ちゃんと聞いて下さいよー」
「早すぎるっつの」
どうせまた難癖付けられて振られてるんだろう、察してるよ。
空気を読める、気を使える事に関しては中々上級者の部類だからな。
一歩間違えれば空気と混じってしまうまである。
「せんぱーい、やっぱ寒いです」
「さっきも聞いた」
「って、事で……えい!」
また俺のコートのポケットで暖を取ろうとしてるのか、まぁ、拒否するだけ時間と体力の無駄だな。
「うぉ……!」
「ポケットかと思いました? 残念マフラーでした!」
突如、視界に紫色で帯状の物が見えたと思えば、ぐるぐるっと俺の首に巻かれていた。
特技は早口だけじゃないんだな。
「んで、これはなんだ。後、なんでお前も巻いてるの?」
「ちょっと早いけどクリスマスプレゼントですよ、長いのはちょっと考え事しながら編んでたので……」
「ほーん」
まぁ、くれるって言うんだから貰うか。
折角、編んでくれたらしいし。
「ど、どうですか?」
「温かい」
「そ、そうですか」
「このイニシャルはなんだ?」
「先輩にあげる物だし、途中で毛糸がきれたりしたんですけど、間違っても先輩ですからね、ちゃんと同色の毛糸を買ってきたんですよ。誉めても良いんですよ、なのであんまり気にしないで下さい!」
「そうか」
イニシャル、HとIってうちの学校の奴にあげるつもりだったんだろうなぁ。
……葉山……一色……あっ……。
うん、深くは詮索しないでやるか、可愛い後輩らしいし。
行動力があるんだか無いんだか……そこでヘタレるのかい、可愛い後輩さん。
全く、世話の掛かる奴だよ。
家まで帰る間、妙に一色が静かだったのが、一番の謎だった。