リゥでもリュウでも発音一緒だからいっかって思ってたんですけど、律儀に直してくださる方がいました。
ありがとうございます。
ただ、既に横浜事変終了まで書きあがって予約投稿しているんですけど、残っている部分は直してないんですよね(面倒だから)
あー、だれか修正してくれないかなぁ|д゚)チラチラ
そして、現在、東京某所に作っていた隠れ家は国防軍によって抑えられているのも分かっている。
少しでも遅ければ、彼も捕まっていたことだろう。
現在は、周公瑾と対面していた。
「
「恐縮です
お互いに心にもないことを述べる。
あくまでも形式的なことなので、お互いに余計なことは言わない。元よりそういう関係性なのだから。
「本国との連絡で無事に艦艇が集結しているとのことです。空母も公海上で待機していますので、無事に作戦を実行できそうです」
「それは何よりです」
「しかし……一つ問題がございまして」
陳祥山は一旦言葉を切る。
そして手に持った猪口で酒を口に含んでから、言葉を続けた。
「ご存知かと思いますが、武運拙く、我が副官が敵の手に落ちてしまいまして……例の四葉に」
「ええ、存じております。まさか
「敵の手に落ちる失態を晒したとはいえ、彼は我が国に必要な人材。どうか手を貸してくださりませんか?」
これは苦渋の決断。
渋い陳祥山の表情からそれが読み取れる。
だが、周公瑾は露ほどにも表情を崩さず、笑顔で承諾した。
「勿論ですとも閣下。これは同胞の危機。見過ごすわけにはまいりません」
そして周公瑾は身を乗り出すようにして陳祥山へと囁く。
「実は十月三十日、その日に
「ほう」
「便宜を図りましょう。その代わりと言っては何ですが、この中華街には出来るだけ被害を出さないように計らってくださいませんか?」
「ええ。ですが、我が国の最も重要な狙いは横浜ベイヒルズタワーにある魔法協会。必ずしもとは約束できませんが、中華街に戦火が広がらないよう、手配しましょう」
「充分です閣下。感謝します」
そして周公瑾は、伏せていた目を上げて、陳祥山に尋ねた。
「ところで閣下」
「まだ、何かあるのですか?」
「いえ、ただ……
「なんだと!?」
だが、周公瑾は一目でそれを見抜いてみせた。
笑顔を崩さぬ目の前の若造に……である。
陳祥山はギロリと彼を睨みつける。
「そう睨まないでください」
「貴様も魔法師だったのか?」
「御戯れを。
して、どうなさいますか。この程度でしたらサービスしましょう」
「……いいだろう。取り除いてくれ」
「では失礼して」
周公瑾はスッと手を伸ばして陳祥山に触れる。
そしてあっという間に精霊を追い出してしまった。
だが、その精霊を見た周公瑾は内心で驚く。
(これは……見たことのない……遠隔術式でしょうか? 術者との繋がりが全く見えませんね)
精霊の構成は大亜連合の術式に近いが、日本神道の系統も含まれているように感じる。いや、正確には大亜連合の精霊を神道の操作方式で無理やり操っているように見えた。
精霊と心を交わして使役するのではなく、強制的に支配する。
周公瑾はそのような印象を受けたのである。
さらに調べようとしたところ、その精霊は不意に消失してしまった。恐らく、強制的に切断したのだろう。
「終わりました。どうやら相当な術者のようですね。こちらから解析を掛けようとしたところ、逃げられてしまいました」
「まさか……情報が筒抜けだったのはそのせいだったのか?」
「ええ、恐らくは」
陳祥山は自分に憑依していた精霊のせいで、尽く作戦が失敗していたと知り、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
レリック強奪は完全に失敗した。
しかし、侵略作戦はまだ終わっていない。
そして四葉という存在を警戒し、過剰とも言える戦力を用意している。
波乱は十月三十日まで鳴りを潜めるのだった。
◆◆◆
一方、『八咫烏』を調べられそうになった紫音は、強制的に潰すことで人工精霊を消していた。大亜連合が東京の隠れ家を捨てた時点で、『八咫烏』は電子機器から陳祥山に憑依させていたのである。
だが、あの周公瑾は侮れない。
誰一人として気付かせなかった『八咫烏』に気付いたのだから。
この『八咫烏』の弱点として、向こう側の精霊を掌握された場合、こちらの手元に置いている操作用の『八咫烏』を通してこちらの情報が筒抜けになる可能性があるということだ。
見つかった時点で、即座に消すのが最も有効的である。
精霊を強制操作する手法しか持たない紫音では、これが限界だった。
「向こうの情報が手に入らなくなったか……これ以上は奴らの足取りを掴むのも無理だな」
紫音はデバイスを閉じて背もたれに体を預ける。
そして何度か深呼吸した後、ベッドの方へと目を向けた。
明け方、四葉家の第二位執事である花菱が持ってきた紫音のCAD。荒事担当の彼が自ら持ってきたのだから、このCADがどれだけ重要なのかよくわかる。
CAD名、
強化ジュラルミン製アタッシュケースの中には、銃身の長い拳銃型CADと、一つのタブレット端末。二つは有線で連結して使用することを前提としている。
「本当に、コイツの出番があるかもしれないってことね……」
このCADは夏に一度使って以来だ。
長期休暇で本家に戻った時、調整のために動作確認をした。
戦略級の魔法を使う上で必要なCADだが、一度も戦略級魔法を使ったことはない。おいそれと実験できるものでもないので、実戦投入は初となる。
だが、使えなかったとしても問題はない。
最悪の場合、CAD無しでも戦略級魔法『リベリオン』は発動可能なのだから。
数日後に迫った論文コンペのために、紫音は神薙を手に取るのだった。
◆◆◆
論文コンペ当日、風紀委員の紫音は会場の見回りとして横浜国際会議場に入っていた。午前八時半から各魔法科高校から集まった有志部隊が、プロの魔法師と共に警備をしている。
そして手伝いをしていたとはいえ、論文コンペ出場者ではない達也は紫音とペアで警備をすることになっており、主に会場の中を歩いていた。
「紫音、聞きたいことがある」
「どうした?」
「今回の敵についてだ。藤林少尉から、首謀者を取り逃がしたと聞いている。そして奴らの情報は四葉家から貰ったものだということも聞いた。紫音は何か掴んでいないのか?」
「……今回の情報はほとんど全部、俺が仕入れた。だから大抵は把握している」
それを聞いた達也の視線が鋭くなる。
だが、紫音は気にすることなく言葉を続けた。
「公海上に大亜連合の空母、駆逐艦四隻が待機中。そして横浜にはゲリラ部隊が潜んでいるらしい。残念ながら、ゲリラの場所までは把握していない。正確には、把握していたけど位置を変えられた」
「空母だと? 戦争でも起こす気か?」
「戦争を起こすんじゃない。奴らにとっては三年前から戦争中なんだよ」
三年前、沖縄に大亜連合が大艦隊を率いて侵略してきた。
その時に達也たちが旅行で訪れていたのだが、深雪を傷つけられた達也は怒り、力を振るう。世界を滅ぼす悪魔の力を振るった。
大亜連合でそのように認識されている存在こそ、司波達也なのである。
勿論、三年前の沖縄戦では大亜連合が大敗を喫することになった。今回の侵略は、その時の雪辱を果たすつもりで計画されたのだろうと予想できる。
「ちなみに言うと、空母と駆逐艦は俺一人を殺すためだけに用意されているそうだ。随分と四葉を買ってくれたと思っているよ。まぁ、撃沈するけど」
「……神薙を持ってきているのか?」
「そういうこと」
理解の速い達也は、状況を把握したらしい。
論文コンペティションの日に、大亜連合は確実に大規模侵攻をする。理由は横浜にある魔法協会関東支部のデータバンク、論文コンペティションのデータ、更に魔法師の卵である魔法科高校の生徒を虐殺することである。
「達也、心配しなくても、これらの情報は防衛省に流してある。対策の部隊がいつでも送られる手筈になっている」
「なるほど。さっき藤林少尉と出会ったんだが、一〇一旅団も出動準備が出来ていると言っていた。一高控室での会話だったから詳しい話は聞かなかったが、紫音の話を聞いて全部繋がったな」
「恐らく、達也の出動もあり得る。覚悟はしておけよ」
「……そうだな」
意外かもしれないが、深雪を守る任務に支障が出ないかぎり、軍の任務が優先されることになっている。国防軍から達也に出動要請があった場合、四葉は拒否することが出来ない契約なのだ。
だから、達也に出動命令が下った場合、大黒竜也特務士官として力を発揮しなければならない。
「事件が起これば、俺は横浜全域に『リベリオン』を発動させる。全ての戦場をコントロールして深雪も守り抜く。お前は深雪を害する外敵を排除して来い。空母は『
「もしも……そうなったらな」
「これは真夜様からの依頼でもある。ま、俺はガーディアンじゃないんだけどなぁ」
「済まないな」
「いやいや。四葉を裏から支えるのが俺の仕事だから。これぐらいはやってやるさ」
ある程度情報交換をした紫音と達也は、そのまま見回りの仕事を続ける。
まずは、昼間まで何事もなく終わったのだった。
◆◆◆
警備のメンバーの中では一足早く昼食を貰った紫音と達也は、十二時の段階で午後の見回りに参加していた。今は論文コンペも休憩中なので、多くの生徒が行き来しているのが見える。
その時、配布されている無線から警備隊総括である十文字克人の声が聞こえてきた。
『各員に告ぐ。午後からの警備は防弾チョッキを着用せよ。繰り返す。午後からの警備は防弾チョッキを着用せよ』
「達也」
「ああ」
紫音と達也はこの命令を聞いて自分たちの予感を補強する。
克人も何かを感じる所があったのだろう。実戦を想定した防弾チョッキを着用するということは、何かが起こる可能性が高いと考えていることに等しい。
十師族十文字家代表代理である彼の言葉だけあって、説得力も充分だった。
「ん……? あれって」
防弾チョッキを着ている途中で、紫音はある人物を見つける。
それは九校戦で優勝を争った仲であり、共闘した仲でもある三高の一年生。
一条将輝だった。
紫音の視線に気付いたのか、将輝も目を合わせてきたので声をかける。
「一条、やはり来ていたか」
「四葉……それに司波か!」
「九校戦以来だな」
次に紫音は将輝のペアである
「十三束もお疲れ。一条と組んでいたんだな」
「うん。君は司波君とだったんだ」
「風紀委員で一緒だからな」
そして挨拶を済ませたところで、本題に入る。
「それで一条。この防弾チョッキ着用命令、どう思う?」
「どうって……ピリピリしている感じはある。戦いが始まる前の戦場みたいな鋭い空気だ」
「へぇ、流石に実戦経験者は言うことが違うね」
「茶化すな四葉。そういうお前はどうなんだ」
「襲撃はあるだろうね。確実に」
将輝の問いかけにハッキリと肯定で返す。
これには将輝だけでなく、十三束も息を呑んだ。
「四葉家の者として忠告しよう。敵は来るよ」
「……了解した。一条として忠告を受け取ろう」
紫音と将輝はしっかりと目を合わせて言葉を交わす。
そして踵を返し、二人は別れた。紫音の方には達也も付いてくる。そして会話が聞こえなくなるぐらい離れた頃、達也が話しかけてきた。
「あそこまで詳しい話をしてよかったのか?」
「彼も一条の長男だ。知っておくべきだと思っただけだよ」
本当に戦争が始まれば、十師族の者として動くことになるだろう。
特に後継者である十文字克人と一条将輝は確実に防衛に参加するハズだ。戦いが起こる覚悟をして貰うためにも、これぐらいの情報は伝えておくべきである。
紫音もホルスターに仕舞っている神薙に触れつつ、決意を固めた。
(初めての……大虐殺だな)
運命の時刻まで、後少し。