(つд⊂)ゴシゴシ
(;゚д゚) ・・・
(つд⊂)ゴシゴシゴシ
(;゚Д゚) …!?
日間ランキング1位……だと!?
昨日投稿したばかりなのにこの評価。ちょっとビビりました。高評価、感想、誤字報告に感謝します。
感謝を込めて今日も投稿したいと思い、急遽書きました。
高校時代というものは青春と共に過ごすものだ。勉強も良いが、友人と遊んだり、部活に励んだりするのも高校生だからこそである。
魔法科高校というのは非常に特殊な場所であり、五教科と呼ばれる基礎科目は最低限の成績で許される。その代わりに、魔法の修練へと時間を費やすのだ。魔法とは簡単に扱えるものではなく、非常に細かい理論と制御が必要になる。いくら努力しても足りない世界なのだ。
しかし、だからと言って部活動がないわけではない。
寧ろ、魔法を活かした特有の部活動まであるぐらいだ。
魔法大学付属第一高等学校も新入生を迎えた今、各部活は有力新人獲得のために画策していた。
「諸君、今年もまたバカ騒ぎの季節がやってきた! 風紀委員会にとっては新年度初の山場となる。この中には、去年調子に乗って大騒ぎした者も、それを鎮めようとして更に騒ぎを大きくしてくれた者たちもいるが、今年こそは逮捕者を出さずに乗り切りたい。
いいか? くれぐれも、風紀委員が無暗に騒いで事態を大きくするなんてことは止めてくれよ?」
風紀委員会本部では、委員長こと渡辺摩利が強い視線でそんなことを訴えかけていた。
今日から始まる新入部員勧誘週間は、毎年の如く白熱する。例えば、四葉の名を持ちながら総合二位で入学した紫音だ。最も今年有力なのは総合一位で入学した司波深雪だが、彼女は既に生徒会なので除外する。風紀委員ならば部活にも参加している先輩が実際にいるので、紫音は狙われる側だろう。
現に数日前から非公式の勧誘を受けている部活がいくつもある。
また、どこから入手したのか、伝統のある大きな部活であるほど入試成績を所持している。よって一科生も優秀生徒の場合、取り合いで喧嘩に発展することもある。
風紀委員の仕事でも初めの山場と言われるだけはあるのだ。
「さて、今年は卒業生分の補充が間に合った。既に知っている者もいると思うが、ここで正式に紹介しよう。立て!」
摩利に促されて紫音と達也が立ち上がる。
自然とエンブレムの付いていない達也の左胸へと視線が吸い寄せられるのは仕方なかった。
「1-Bの四葉紫音と1-Eの司波達也だ。今日から早速パトロールに加わって貰う。こいつらは優秀だからな。他のメンバーと同じように、一人で巡回させる予定だ」
まだ顔合わせをしたことのないメンバーは、四葉の名に驚いた。噂で風紀委員に四葉が入るというのは知っていたが、やはり直接見るとインパクトがある。
しかし、それよりも目を向けられるのはやはり達也だった。
教職員推薦枠の二年生、岡田が不快そうな顔で摩利に質問する。
「使えるんですか?」
その質問は二人に向けられたもの……とは言えなかった。どう繕っても達也に向けられたものである。というより、間違っても十師族相手に『使えるのか?』などとは言えないだろう。
十師族とは日本を支える魔法の名家。
その中でも四葉は恐怖の象徴とすら呼ばれる最恐の魔法師一族なのだから。
しかし、摩利もその質問は予想していたのだろう。淀みなく、自信満々に答えてみせた。
「ああ、心配するな。四葉は十文字とも対等に戦えるし、司波に関しても私が直接腕前を確認している。それとも私の言葉は信じられないか? まぁ、私から言わせれば岡田……お前よりもこの二人の方が強いぞ」
「……そうですか」
岡田は今にも舌打ちしそうな表情を浮かべていたが、紫音が冷ややかな目を向けていたので引き下がった。この場で無暗に反論しようとすれば、四葉に目を付けられる。そんな思いから引いたのである。
(スマン紫音)
(この程度ならね。こういう時のために四葉を名乗っているんだから気にするな)
達也は目でお礼を言い、紫音も目で返す。
まさかこの優等生と劣等生が裏で繋がっているなどとは誰も思わないだろう。
そして摩利の説明にある程度は納得したのか、不満そうにしていた他数名も特に発言することはなかった。
「よろしい。では早速だが行動に移ってくれ。レコーダーを忘れるなよ。四葉と司波には私から説明するから、各自先に行くように。では出動!」
摩利がそう言ってパンパンと手を叩くと、一斉に立ち上がって左胸に右拳を当てる。紫音と達也は疑問に思ったが、後で聞くと風紀委員会に伝わる敬礼という話だった。
メンバーはぞろぞろと委員会本部を出ていき、各自巡回に移る。
そして摩利は紫音と達也を呼び寄せ、簡単に説明を始めた。
「これを胸ポケットに入れておけ」
渡されたのは高性能なレコーダー。映像と音声を高画質で記録できるデバイスだった。摩利は操作方法を説明してから、巡回についての注意をする。
「違反行為を見つけたらスイッチを入れて記録しろ。ただし、撮影を意識する必要はない。風紀委員の証言は全てそのまま証拠になるからな。
あと、風紀委員は学校内でCADの携帯を許可している。そして勧誘週間の間はデモンストレーションのために一般生徒にもCADの使用許可が下りるから、普段よりも魔法を使う機会が増えるだろう。だからと言って不正は許さん。もしも不正が見つかった場合は、委員会から除名すると同時に、普通よりも重い罰を受けて貰う。
実際に一昨年にはそれで退学処分になった奴もいるから甘く見るなよ」
紫音からすればCADなど、あってもなくても変わらない。少なくとも戦闘で使える簡単な魔法はフラッシュキャストで幾つも記憶しているので、学生如きに負けるつもりはない。
別に携帯する必要はないな、と考えていると、達也が無表情のまま質問を投げかけた。
「質問があります」
「許可する」
「CADは委員会の備品を使用してもよろしいのでしょうか?」
「……構わないが。しかし良いのか? あれは旧式だぞ?」
「問題ありません」
達也はそう言って棚に置いてあるCADへと目を向ける。
「あれは確かに旧式かもしれませんが、エキスパート仕様の高級品ですよ」
「ほう」
「あのシリーズは調整が面倒なので敬遠されがちですが、設定の自由度が高く、非接触型スイッチの感度が優れているので、一部のファンが熱狂的に支持しています。恐らく、購入したのもファンの一人だったのでしょう。
調整さえすれば最新機種にも劣らないものですよ」
「……そんなものをガラクタのように放っていたわけか。君が片付けに拘った理由も分かったよ」
摩利は流石に反省する。
だが、そういう意味でも達也が風紀委員に入った意味はあったとポジティブに考えることにした。
「中条先輩なら知っていそうなものですがね」
「あいつは怖がってここに降りてこない」
「はぁ」
興味深い話だったが、摩利は遊んでいる暇などないことを思い出す。そして改めて達也の方へと向き直り、頷きながら許可を出した。
「まぁいい。自由に使え」
「では遠慮なく」
そう言って達也は二つのCADを手に取った。
魔法師が複数のCADを同時使用すること自体は不自然ではない。しかし、使いこなせる魔法師は多くない。だからこそ、摩利は興味深げな視線を向けた。
「本当に面白いな君は」
その言葉を背に、紫音と達也は巡回に出るのだった。
◆◆◆
しばらく校内を進み、周囲に人が誰もいなくなった辺りで紫音が達也に話しかける。
「CAD二つで何するんだ? 達也なら必要ないだろうに」
「ああ、ちょっと面白いテクニックがあってな」
そう言って達也は簡単に説明を始める。
「発動する魔法の起動式と、その逆方向の起動式を同時展開すると、それが無系統のサイオン波として放たれるんだ。すると、それが丁度『キャスト・ジャミング』になるんだよ。ただし、起動式を読み取れないと使えないけどな」
「そんなテクニックがあるんだ。まぁ、達也にしか使えなさそうだけど。起動式を読み取るなんて普通は出来る訳ない」
「ああ。だが、アンティナイトなしに魔法を妨害できるわけだ。こういう時には丁度いい」
「……あんまり目立たないでくれよ?」
「善処しよう」
「期待はしてないけどな。このトラブル体質め」
「……」
紫音は達也が十中八九トラブルに巻き込まれると予想している。特に、達也は風紀委員でありながら実は二科生なのだ。下手なことをすると絡まれて余計に被害が大きくなることも考えられる。
逆に紫音は四葉という威光がある。
近寄るだけで喧嘩は止まる。
「この辺りで別れよう。俺はエリカと待ち合わせをしている」
「……深雪に怒られない?」
「問題ない……と思いたい」
「まぁ、クラスメイトと交流するのは良いことだ。うん、頑張れ」
「何の応援かは知らないが受け取っておこう」
「ああ、可能な限りはフォローするけど、ホントにトラブルは避けてくれ。ホントに」
「切実だな」
「誰のせいだと思っている」
紫音は溜息を吐いてチラリと達也の方に目を向ける。
相変わらず無表情な彼は幼い頃からの付き合いだ。家のこともあるので毎回とは言えないが、助けになるなら手を貸そうとは思える仲である。何より、亜夜子と文弥も達也を慕っているのだ。
紫音も達也のことは言えないぐらいにブラコンシスコンな部分があるので、二人のためにも達也と深雪のために奔走することは苦にならない。
だが、達也のトラブル体質は度を超えている。
(ブランシュ事件が終わったら九校戦の
少しゲンナリしていた紫音を怪訝に思ったのか、達也は心配そうに尋ねる。
「大丈夫か?」
「安心しろ。お前のストレスは俺が受け持つ」
「いや、ホントに大丈夫か!?」
これから先のことを考えればあまり大丈夫ではない。
とりあえずは深雪が四葉後継者となり、紫音が黒羽に戻るまでが任務だ。まだ深雪が後継者と決まったわけではないものの、恐らくは確定と考えて良いだろう。それだけ深雪の魔法力は隔絶している。
紫音も能力は高いが、サイオン量の少なさが邪魔をして筆頭候補から外れていた。
「とりあえず亜夜子と文弥に癒されたい」
「……なんかスマン」
達也は久しぶりに本気で謝罪したのだった。
◆◆◆
達也と別れた紫音は、部活の勧誘を受けつつもフラフラと見回っていた。四葉の名に対する反応は二種類であり、一つは実力を買って是非とも我が部に入って欲しいという反応。もう一つは恐怖から避けるという反応だ。
紫音は黒羽の仕事もあるので部活をするつもりはない。
出来るだけ丁寧に断りながら、違反者がいないか探していた。既に紫音の顔写真でも回っているのか、少し喧嘩に発展しかけていても、紫音が通りかかるだけで急に仲良くなる。
実に便利な名前である。
(ん……あれって……?)
紫音は少し離れたところで揉めている現場を発見した。
近付けば収まるだろうと思って寄っていくと、既に誰かが仲裁を始めていることに気付く。女子制服を着た小さい人物だったので、非常に心当たりがあった。
「中条先輩? どうかしたんですか?」
「だからですね―――はい、呼びましたか……って四葉君ですかぁっ!?」
「はい、四葉君ですね」
オーバーリアクションで驚く中条あずさ。
通称『あーちゃん』である。尤も、この呼び方は真由美しかしていないが。
今回は風紀委員だけでは手に余るので、生徒会からも巡回の協力者が出ているのだ。そのメンバーは意外にも怖がりなあずさである。実は彼女、系統外精神情動系魔法『梓弓』というものが使える。これは効力こそ低いが、広範囲に効果を与えるので、大きな喧嘩に発展したときなどは一発で鎮めることが出来る。それ故に選ばれたのだった。
そしてあずさが紫音を見て『四葉』と叫んだからか、何やら言い争いをしていた生徒たちもピタリと止まる。そして壊れたブリキのように紫音の方へと向いた後―――
「いやぁ、悪かったね」
「なぁに、こちらこそ済まないな」
『はははははははは』
―――急に仲良くなった。
さっきまで汚い言葉で言い争っていたのが嘘のようである。そして逃げるようにして紫音の前から逃げ去って行ったのだった。
「お疲れ様です中条先輩」
「ひぃぃっ!? だだだだ大丈夫ですぅ!」
「あの、先輩に何かしましたっけ。怯え過ぎでは?」
「ごごごごごめんなさいぃぃぃぃ」
「あ、ちょっと……」
そしてあずさも逃げて行く。
その場に残された紫音は呟いた。
「これは酷い」
たぶん、四葉ってこんなイメージだと思う。