ストライクウィッチーズ 孤高の竜の物語   作:銀髪って良いよね

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第一話 始まり

 自分は千葉県の片田舎の農村に生まれた男であった。

 小さい頃から学ぶことが好きで、教えてもらったことは何でも簡単に吸収していった。両親にも恵まれていて、そうした勉強好きな自分を後押しするように学校に行くことを許してもらえた。本当に幸せな毎日が続いていく……はずだった。

 そう、あの日が来るまでは。

 

 1929年の春。その日は春先でまだ桜がそれほど咲いていなかったころで、庭先の桜がいつ咲くか実に楽しみにしていたことをよく覚えている。

 自分はいつものように母が、料理をする音で目を覚ましたのだ。確か、あれは包丁で人参か大根を切っていた音だったと記憶している。父はまだ寝ているため、大きな物音を立てないように布団から這いずり出た。大きなあくびを一つして、母に挨拶をしてから庭の端にある小さな井戸で水をくんで顔を洗った。

 眠気をそこで覚まし、今日の朝ご飯は何かと母に尋ねるため、裏口から家に入った瞬間の出来事だ。

 ぐらぐらと足下が大きく揺れ、自分は思わず近くにあった柱にしがみついた。そう地震だ。しかし、未だかつてこれほど大きな地震を体感したことは無かった。それほどに大きな地震であった。

 この地震は後に関東大震災と命名されるのだが、当時の自分は知るよしも無い。

 

 そこから先のことはよく覚えていない。

 

 自分が気づいたとき、頭と臀部から変な形のモノが生えて、自分の周囲を半透明な膜が覆っていたことだけを覚えている。

 このとき初めて自分が魔法を使えるのだと分かった。というか周囲に認知された。

 基本的に魔法は女性にしか使えないモノであり、男で使えるという話はほとんど聞いたことが無い。それは生物学的に女性が子供を他の脅威から守るために備えたとか、男と対等の関係を作るために身につけたとか様々な説があるが、詳しくは全く分かっていない。

 話が逸れた。自分はそのときの大地震で両親を亡くした。二人とも瓦礫に埋もれてしまっていたのだ。幸か不幸か二人とも落ちてきた梁に頭を強く打って即死だったそうだ。

 これ以来、自分は孤独になってしまった。ただでさえ、両親を亡くして孤独になったにもかかわらず、男なのに魔法が使えると噂され、友人すらもいなくなった。

 運が良かったのはその話を聞きつけたある独り身で元ウィッチ(魔法が付ける女性をこう呼ぶ)が自分を引き取り、育ててくれたのだ。自分が勉強したいと言えば、なけなしのお金で学校を工面してくれたり、本が欲しいと言えば本を買ってきてくれたり、本当によくしてもらえた。

 そうした家庭環境の中で、自分はいつしか学者になって世界の科学技術に貢献できるような人間になりたいと考えるようになった。学者になれば、自分は好きな勉強もできるし、お金も入ってきてこの義理の母を支えることもできる。

 しかし、現実はいつも非情であった。徴兵の年になってしまったのだ。

 この頃には既に自分はかなりの知識を身につけており、その地域では一番と言われた高等学校でもダントツの成績を収めるようになっていた。

 そこで自分は皇大(皇国大学)の造船学科に進もうと考えていた。船が好きであったし、これから先の未来、間違いなく世界経済に必要になるモノだと考えたからだ。それに内心、理系の大学に行けば徴兵を受けずに済むと知っていたこともある。

 だが、軍部が貴重な男のウィッチの存在を見逃すわけも無かった。

 何かと理由を付けられ皇大への入試は却下され、入隊が決まったのだ。

 自分はそんな軍部を汚いとは思ったモノの、反面しょうが無いと観念した部分もある。何せ、昔から日本は物の怪が現れやすい地で女性の身分の方が少し上であった。そのため、男としては自分たちの地位を上げるためにも、ウィッチに準ずる存在が必要であった節がある。

 そうした政治的な背景を考えれば、軍部が彼を囲い込む理由は分からなくも無い(無論、納得はいかないが)。自分は海軍か陸軍に進むかどちらが良いかと聞かれたが、陸軍の方が良いと考え、陸軍に進むことにした。陸軍の良い噂は耳にしたことがあまりなかったが、航空兵になった場合陸軍の方が生き残りやすいと考えたからだ。

 陸軍の訓練方法というのは海軍とはまるで違い、最初の訓練期間では士官候補生であろうが、一般兵であろうが、一番下っ端から訓練を開始する。

 そのため、最初の頃は本当にきつく、何度も脱走を考えた。しかし、逃げれば確実に自分の思い描いた未来は描けないと必死に耐えた。

 その訓練を一ヶ月ほど続けたある日、上官から部屋に呼び出された。そこで告げられたのは航空兵への転属であった。

 自分としてはなんとなくそうなることを予測していたし、その話を淡々と聞いて最後にこの話を受けてくれるかと問われた。

 無論、自分の答えは「はい」。

 

 こうして自分は世界初のウィザード(魔法使い)としての戦いが始まった。

 幸か不幸か自分はストライカーユニット(魔法力を使い駆動する機械)の扱いを飲み込むのも早く、訓練生としては優秀な成績を収めていた。

 ここで不幸という文字を用いたのは、この成績故に周囲からいじめを受けていたからだ。

 考えてほしい。そもそもウィザードがほとんど浸透していない状態でそのウィザードが優秀な成績を収めていたらどう考えるであろうか。

 いじめが起きるのは当然とも言えた。無論教官も全員女性である上、男の軍人との確執もあるせいで助けてくれる人間はいなかった。

 故に常に周りの人間とは別の場所で生活し、勉強するようになっていた。幸いなことに命に関わるレベルでのいじめは発生しなかったために、どうにか訓練を終えることはできた。

 そうして航空兵としての訓練を終えたのは1936年4月の桜の満開の日であった。

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