ストライクウィッチーズ 孤高の竜の物語 作:銀髪って良いよね
「ここが俺の部屋か……」
案内された部屋は窓辺からヘルシンキ市街が一望できる良い部屋であった。部屋は完全な個室でウィッチへの扱いの違いが感じられる。ウィッチと言うよりはウィザードではあるのだが。
「基地の雰囲気は悪くない」
最初の感想はそれだ。何せ今までは男と言うことで腫れ物扱いされたり、軽蔑されたりしてきた。それがこの基地では無い。無論欧州全体でウィッチが不足していると言うこともあるのであろうが、日本との違いを感じる。
「さて軽く魔法力の訓練でもしにいくか」
今までは船の中など人が多い状況であったために練習が思うようにできなかったが、ここでは人目を気にすること無くできる。
何せ彼の使い魔は目立つ。
彼は基地の飛行場脇で魔法力を意識し始めた。頭部から枝のようなモノが、臀部から蛇の尾っぽのようなモノが生えてくる。
「いくよ、白龍」
周囲が静かだが、力強い魔法力で満ちていく。そう彼の使い魔は白龍。伝説の生き物なのだ。本来であればあり得るはずが無い使い魔だが、彼は不思議なことにこの使い魔を手懐けることができていた。
彼はその魔法力を緻密に練り上げながら体の中を循環させていく。イメージとしては血液が全身を回る感覚であろうか。体全体が白く輝きだし、シールドのようなモノが覆い出す。
(腕は落ちていないようだな)
ふと近くから声が聞こえた。
「ああ。当然だろう。お前を使い魔にした以上莫大な魔法力のコントロールを間違えれば俺一人が死ぬだけではすまない」
その声の主はカカと笑う。いつの間にか彼の隣には白い美しい龍がいた。鱗は白銀に輝き、その美しさは見る者誰もを魅了する。
「白龍。この戦争どうなる?」
(知らん。そんなものは全て我が主が決定するところだ。我らが考えてどうにかなるものではない)
白龍が我が主と呼ぶのは天帝だ。古代中国の考えではこれは天上界の皇帝であり、この世の全ての人間の行為を見ており自然災害なども司ると言われている。白龍はこの天帝に仕えている。そのため、厳密には加藤の使い魔と言うより共闘者といった方が正しい。
「そうだね。今は死なないよう頑張るよ」
(我もお前が死なないよう最大限補助はしよう)
その言葉を最後に白龍はすっと消えた。彼は気分屋であるため姿を現すときと現さないときがある。
「さて、感覚も確認できたから今日はこれで終わりにするか」
彼は魔法力を切り、その場を立ち去ろうとする。彼はふとどこかから視線を感じ、周囲を見渡した。
すると木陰からこちらを見つめてくる小さな陰がいた。身長は加藤の頭一つ分くらい小さな高さ。かなり小柄で華奢なイメージを持つ少女だ。
「……」
じっとこちらを見つめてくるその目には特に差別や軽蔑と言ったマイナスの感情は感じない。一体どういった人物なのか警戒しつつも興味津々と言った感じだ。
「初めまして。この基地に配属になった扶桑皇国陸軍少尉の加藤です」
その少女に思い切って声をかけてみるとその少女は一瞬びっくりしたように飛び跳ねてから、小さな声で返答した。
「スオムス空軍少尉 ミリ-ナ・ハータヤ」
その少女は警戒を解かずにゆっくりと体を木陰から出しながら聞いてきた。
「男の人なのに魔法が使える。なぜ?」
「それが俺にも分からないんです。いつの間にか使えるようになっておりました」
加藤はいつもの答えを述べた。
「そう。不思議な人ね」
そう言って少女は基地の方へと歩いて行った。
加藤は珍しい返答の仕方に何と答えたら良いのか分からず、その後ろ姿を呆然と見守っていた。
そこにエリナ少佐がひょっこりと現れた。
「こんな場所にいたんですね。加藤少尉、そろそろブリーフィングが始まりますので講堂の方に集合していただけますか?」
彼女は加藤の様子に気付き視線を辿ってミリ-ナを見つけた。
「彼女はこの基地のパイロットなんですが、なかなか不思議な子でしてね。いろんなモノに興味を持つ子なんですよ。その性格から基地のみんなから愛される子です。まあ最初はみんな不思議な子ですから、対応に戸惑いますけど」
「ええ。見たことのないタイプでした」
加藤とエリナ少佐は講堂へ向けて歩き出す。他のウィッチはどんな人物なのか、加藤は考え続けていた。