世界のカードゲーム人口は数億人を超え、生活の一部として当たり前のようになっていた。
「カードファイト!! ヴァンガード」は、今一番注目を集めているカードゲームだ。
ヴァンガードに限らず、多くのカードゲームはルールに則り楽しくファイトを趣旨としている。
だがその一方で、カードを賭けたり、イカサマをしたりと、ルール無用のヴァンガードファイトを行う者達もいた。
そんな彼らの多くが集うのがここ、裏ファイトの場だった。
そこでは「
その多くは、裏ファイトの経験がない初心者ばかりである。裏ファイトへ訪れた理由が何であるにせよ、挑戦者たちは敗れて裏ファイトの恐ろしさと無慈悲さ、残酷さを知る。
しかし、例外も存在した。
例外の1つが、裏ファイトで「
ただ確かなのは、
彼女の持ち出す条件はいつも同じである。彼女が勝てば「またファイトをすること」、挑戦者が勝てば「
ファイトに敗北した代償として、対戦相手のデッキやカードを要求する者が多い裏ファイトで、彼女は異端だった。
しかし、その実力ゆえか、
……すべて噂にすぎず、真偽のほどは定かではないが。
そして、もう1つの例外。
それが、今現在、
少年は冷静に、淡々と、ファイトを終わろうとしていた。だがよく見れば、少年の新緑の色をした瞳の奥に、その色からは想像もできないほど熱い炎が燃え盛っているとわかる。
「ファイナルターン」
その宣言に、
前のジュンのターンで櫂にトドメをさせなかった以上、ジュンの負けはほとんど確定していた。
ファイトが決着し、裏ファイトに呆然とした空気が流れる。
「僕の……負けだ」
信じられないように、だが、目の前の結果を受け入れて呟く
金歯の銀銅──裏ファイトで
「約束だ。その
「……このぉ」
その中でも冷静だったのはファイトの勝者である櫂と、櫂の勝利を確信していた三和タイシである。
ファイト中、ジュンの予想以上の実力の高さに驚いていた三和であったが、櫂の勝利は疑っていなかった。そう思わせるほどに櫂は強く、彼の敗北はイメージしにくいのだ。
用は終わったとばかりに裏ファイトを立ち去ろうとした2人は、入り口に新たな人影を認めて、足を止めた。
その人物は、裏ファイトには珍しい女性で、かつ裏ファイトに似合わない容姿だった。
なんというか、立ち振る舞いがどことなく洗練されており、上品なのだ。さらに、その瞳は裏の人間とは思えないほど澄んでいた。
「あれ……何ですかこの空気」
その人影も、裏ファイトに漂ういつもと違う雰囲気に気付いて足をとめる。
金歯の銀銅が、思わずというように声をあげた。
「プ、
「…………もしかして、負けたの?」
その一方、三和は何やら既視感を覚えていた。
しかし、その違和感も金歯の銀銅が発した「
「
名称から考えれば、妥当な推理だ。
しかし、どう見ても
「
丁寧な口調も、裏ファイトからは浮いていた。
しかし、裏ファイトの面々は彼女を受け入れているのだから、ここのメンバーなのだろう。
そう考えて、どう出るのかと三和は少女の様子をうかがった。
少女は悩むように櫂と三和の間で視線を行き来させると、櫂の前に進み出た。
櫂が無表情で「何か用か」と尋ねる。
身長差と口調で少女には高圧的に聞こえる物言いだが、少女は怯んだ様子もなく、デッキケースを取り出した。
「私に
その言葉に応えて、櫂も「いいだろう」と承諾し、役目を終えたばかりのファイトテーブルに歩み寄る。
櫂にとって裏ファイトへの挑戦は武者修行のようなものだ。
……
「スタンドアップ・ヴァンガード!」
「スタンドアップ・THE・ヴァンガード!」
「