櫂と少女が伏せたカードを表にかえし、光が溢れた。モーションフィギュアシステムが起動したのだ。
ちなみに、今回システム内で観戦しているのはジュンと(ジュンに強制された)三和の2人である。
フィールドは巨大図書館だった。
周囲は天に届くほど高い本棚に囲まれており、床に積み上げられた本の山もちらほらと見える。
歴史を感じさせる居心地のよい空間だ。
そして、櫂と三和には見覚えのないフィールド。
突然だが、モーションフィギュアシステムは完成してまだ日が浅い。
そのため、システム上の不具合を修正するアップデートはあっても、フィールドやユニットのモーションなどは初期のままだった。
だからこそ、対戦相手のどちらかのクランに依存してしまうとはいえ、フィールドである程度クランの予想がつく。そのはずだった。
「と、図書館!?」
驚き、周囲を見渡す三和に対し、ジュンの反応は落ち着いたものだった。
「図書館だが……何をそんなに驚いているんだ?」
「いや、こんなフィールドがあるのか!?」
「あるだろう。現に今、出現している」
外野の会話を無視し、2人はファーストヴァンガードの名を読み上げた。
「“リザードソルジャー コンロー”」
「“見習い司書 ヴェダ”」
【少女 POW:5000 ダメージ:0】
【櫂 POW:4000 ダメージ:0】
櫂の後ろに現れたのは、松明と盾をもつ竜。かげろうのユニットだ。
少女の後ろに現れたのは、分厚い本を胸に抱き、緊張を隠しきれない様子で一礼した女の子。何かの紋様が刻まれた首飾りが妖しく光りながら揺れる。
「“見習い司書 ヴェダ”……聞いたことのないユニットだな。それに、そのクラン……」
先攻として1枚
「このクランは、〖メモリアルプラネット〗。惑星クレイの歴史を記録するクランです。
……いきます。ライド!“夢の語り手 イラドナ”!ヴェダはリアガードサークルへ」
ヴェダと同じ銀の瞳を煌めかせ、小型のハープを持つ少女が舞い降りる。その素顔はベールで隠されていた。
夢の語り手 イラドナ POW:8000
「……俺のターンだな」
見たことのないクラン……それは、かつてのレンとの、〖シャドウパラディン〗デッキとの戦いを櫂に思い出させた。
いつもよりもはやくエンジンがかかった櫂に応えようと、かげろうも力をふるう。
「“鎧の化身 バー”にライド!コンローは移動。
さらにバーをコール!」
2体のバーは咆哮をあげ、相手を威嚇する。
「バーで攻撃!」
リアガードのバーに続き、コンローのブーストを受けたヴァンガードのバーがイラドナを攻撃する。
イラドナは2体の攻撃に悲鳴をあげ、ハープを強く抱きしめた。
「チェック・THE・ドライブトリガー。“ドラゴンナイト ネハーレン”……トリガーなし」
「ダメージトリガーチェック。……ゲット!ドロートリガー!」
少女は早速トリガーを引き当てた。
櫂の攻撃は終わっているため、パワー追加に意味はないがドローできるのは嬉しい。
【少女 POW:8000 ダメージ:2】
【櫂 POW:8000 ダメージ:0】
◇◆◇
ファイトは着々と進み、互いにダメージは4枚になっていた。グレードもお互い3であり、切り札となるユニットはそろそろ登場していてもおかしくない。
手札は少女が0枚、櫂が4枚。そこだけ見れば櫂の方が優勢に見えるが、クリティカルトリガーやヒールトリガーも出ており、実際は両者ともギリギリの戦いだった。
「私のスタンド&ドロー。……いきます!
移ろう時を見守りし静寂の乙女!この世に舞い降りよ、我が魂!
ライド!“知を統べる司書 アリア”!」
知を統べる司書 アリア POW:11000
落ち着いた雰囲気の女性がゆっくりとその瞼を開く。
他と変わらぬはずの銀の瞳には理知的な光が宿っており、どこか神秘的な美しさを醸し出していた。
「“見習い司書 ヴェダ”のスキル発動!ヴェダをソウルへ。
そして、ドロップゾーンの1枚をソウルに加える」
これで、少女のソウルは5枚。アリアのスキルが使える。
「アリアのスキル。ソウルブラスト!」
ソウルの5枚すべてが引き抜かれ、ドロップゾーンに吸い込まれる。
アリアは自然な動作で、その右手を軽く挙げた。
「相手は手札を3枚選び、捨てる!」
その宣言に三和は「なんだって!?」と声を上げた。
「櫂の手札は今4枚。3枚捨てたら残りは1枚……3回のアタックを防ぎきらないといけないってのに!」
櫂は手札から“アイアンテイル・ドラゴン”、“槍の化身 ター”、“ワイバーンガード バリィ”を捨てる。
そう推測しながら、少女はアタックを開始した。
「“世界の修正者 テュフォナ”でアタック」
「ノーガード。ダメージトリガ-チェック……ゲット、ドロートリガー」
このタイミングで、櫂はドロートリガーを引き当てた。
1枚ドローし、ヴァンガードのパワーに+5000される。
デュアルアクス・アークドラゴン POW:10000→15000
「ここでドロートリガーとは……。アリアでアタック!」
アリアのパワーは11000なので攻撃は通らないが、ドライブチェックでトリガーを引く可能性もある。
「ターでガード」
「ドライブトリガーチェック……クリティカルトリガー!効果はすべてアドニに。
そのアドニをイラドナがブーストしてアタック!」
炎舞の誓い アドニ POW:9000→14000→22000
「ターでガード」
「2枚目のター……ドロートリガーでシールド10000を引いていたんですか」
炎をまとって舞う少年は悔しそうに元の場所に戻った。
【少女 POW:11000 ダメージ:4】
【櫂 POW:10000 ダメージ:5】
「ファイナルターン!」
それは、勝利宣言。
しかし、奇跡でも起きない限り少女に勝ち目はなかった。
そして、奇跡が起きても勝てないほど、相手を徹底的に叩きのめすのが櫂という男である。
「“希望の火 エルモ”をコール!」
ドローしたカードを櫂がコールし、リアガードサークルすべてが埋まる。
「エルモのブースト、“フレイムエッジ・ドラゴン”で攻撃!」
フレイムエッジ・ドラゴン POW:9000→15000
「ダメージトリガーチェック……トリガーなし、か」
少女のダメージゾーンに5枚目が置かれる。
「コンローのブースト、“デュアルアクス・アークドラゴン”!」
デュアルアクス・アークドラゴン POW:10000→15000
「“愛の伝道師 エランス”でガード!」
シールドは10000。トリガー1枚なら防げる計算だ。
少女は最後の櫂のアタックを、手札のシールド5000のカードとインターセプトで防ぐつもりだった。
ヒールトリガーにかけてもよかったのだが、ヒールトリガーではないような予感がしたのだ。
「チェック・THE・ドライブトリガー……ゲット、“ドラゴンモンク ゲンジョウ”。
ヒールトリガーだ。ダメージを1枚回復。……そして、パワーはヴァンガードに」
デュアルアクス・アークドラゴン POW:15000→20000
「おい櫂、もう1枚がトリガーじゃなかったら……!」
「まさか、引くつもりなのか……?」
少女は、諦めたように――しかし負の感情はなく、清々しいものだ――笑った。
「セカンドチェック……ゲット、クリティカルトリガー!効果はすべてヴァンガードに!」
デュアルアクス・アークドラゴン POW:20000→25000 ☆:1→2
少女のヴァンガード、アリアのパワーはシールドと合わせても21000なので、攻撃が通る。
「ダメージトリガーは……クリティカルトリガーですね。残念」
◇◆◇
「それにしても、強いですね。えっと……」
少女は照れたように笑った。
「そういえば、自己紹介もまだでした。私は、ロアと申します。あちらが
「俺、三和タイシ。よろしくな。で、あっちの無愛想なのが櫂トシキ」
そこで、少女――ロアと三和は首を傾げ、そして声を上げた。
「見覚えがあると思えば、チームQ4の櫂トシキさんだったんですね!」
「なんか見覚えあるなって思ったら、最近人気が出てきたモデルの『ロア』!」
「我が分身」に代わる言い回しを探していて、化身か魂か悩んだんですが、化身はアニメにあった気がするので魂にしました。
また、主人公をモデルにした理由は一応あります。
主人公がある程度有名な状態であってほしかったので、芸能関係で忙しすぎない(偏見)モデルになってもらいました。
伏線的な意味もありますね。
主人公がモデルになった理由は、主に2つです。
その1つはカードを買うだけのお金や、いずれ独り立ちするためのお金を稼ぐためです。