クレイの歴史を記す者   作:汐音 アイリ

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ファイトは省略して決着シーン付近のみ。
全部描写した方がいいのでしょうか?







RIDE3 ようこそ!カードキャピタルへ

あれから、櫂は時々裏ファイトに出かけるようになった。

カードキャピタルよりも実力者が揃っているからか、それともちょうどいい距離感か。

裏ファイトのどこを気に入っているのかわからないが、櫂が裏ファイトに行っているおかげでロアと櫂はある程度仲良くなっている……らしい。

おかげで、ロアは三和よりも櫂に懐いている珍しい人間だ。

 

それに、今まではお互い面識がなかったから気が付かなかったのだろうか、通学路で遭遇することも多々あった。

そういうときに積極的に近寄ってくるのはロアだが、ロアがこちらに気づいていない時は、珍しいことに櫂からロアに話しかけることも多かった。

 

 

そんなある日──。

 

「カードキャピタル、ですか?」

 

偶然、櫂、三和と一緒になった帰り道。

ロアは三和に、カードショップへのお誘いを受けた。

 

「そうそう。俺らがよく行くカードショップでさ、これから行くんだけど、ロアちゃんもどう?」

「えぇ……私、場違いじゃありませんか?」

「いや、むしろあの『ロア』が来たって喜ぶと思うぜ?」

 

裏ファイトに入り浸るようになる前は、よく各地のカードショップに顔を出していたロアだったが、後江町のカードショップには行かなかった。

単純に、知り合いに会う確率が高かったからだ。万が一母にヴァンガードをやっていることがバレたら……と思うと、行く気にはなれなかった。

今でこそ堂々とヴァンガードをしているロアだが、小学生の間はヴァンガードに限らず娯楽は禁止されていたのだ。

 

「そ、そうですかね……」

 

三和の言葉があっても不安そうなロアは、櫂のため息にビクリと身体をこわばらせた。

話の流れからして、責められると思ったのである。

 

「初めてのことに不安はあって当然だろう。……行くのなら行くで、はっきりしろ」

「…………頑張ります」

 

男女の歩幅の違いを無視していつも通りに歩いていた櫂が、自分のあとを小走りについてくるロアに気付いて歩調を緩める。その瞬間を目撃した三和は、「おい、待てったら」とどこか晴れやかな気分で2人を追った。

 

 

◇◆◇

 

心の準備をする暇もなく、櫂と三和に続いて店内に足を踏み入れたロアはキョロキョロと周囲を見回した。

 

そして、レジの店員に気付いて、「あれ、戸倉先輩……?」と疑問の声をもらす。

 

「え?……あなた、宮地学園の」

 

突然名前を呼ばれて顔を上げた戸倉ミサキは、ロアの制服を見て納得の声になった。

中等部、高等部の違いがあるとはいえ、同じ宮地学園の生徒なら知られていてもおかしくないと考えたのだ。

実際は、ミサキがチーム・Q4のメンバーだから知っていたのだが。

 

「お、なになに、知り合い?」

「いえ、私が一方的に知っているだけですよ」

「ふーん、そうなんだ。ねーちゃん、この子、ロアちゃんね。ヴァンガードの腕前もかなりのものなんだぜ?」

 

三和は2人の間に入ることでさりげなく間をつなぐ。

それに礼を述べ、ロアはミサキに改めて自己紹介をした。

 

「はじめまして、戸倉先輩。宮地学園中等部2年のロアと申します」

「ご丁寧にどうも。知ってるみたいだけど、私は戸倉ミサキ。いつか、対戦をお願いしたいな」

「ええ、ぜひ」

 

さすがにレジ係として座っているミサキの邪魔をするのはまずいだろうと、ロアと三和は櫂のところへ移動する。

櫂はロアがミサキに話しかけた段階で、さっさと店の奥に行ってしまっていた。

 

「お待たせしました、櫂さん」

「別に構わない」

 

デッキを取り出して準備万端だった櫂は、ひとまずロアを相手に指名した。

ロアも喜んでファイトの申し込みを受け、デッキを取り出す。

 

 

「スタンドアップ・ヴァンガード!」

「スタンドアップ・THE・ヴァンガード!」

 

 

◇◆◇

 

 

言わずと知れたこの店最強にしてチーム・Q4のメンバーである櫂トシキと、見知らぬ少女──何人かは『ロア』と気付いていたが──の対戦は、かなり注目を集めていた。

 

1つは、ロアが使っている未知のクラン〖メモリアルプラネット〗の存在。

もう1つは、ロアがあの(・・)櫂と拮抗したファイトを繰り広げていること。

 

要は、ロアはかなり注目を集めていた。が、本人はいつものことと諦めていた。未知のクランを使っているせいだとわかっているのだ。

櫂効果のせいでいつもより注目されていたが、ロアもファイトを始めれば、初めてくるカードショップであろうと関係なく集中する。

 

今、ロアのダメージゾーンに6枚目のカードが置かれた。

ダメージ5で櫂にクリティカルトリガーを引かれたものの、1度はヒールトリガーをひきあてた。

しかし、2枚ともヒールトリガーという奇跡は起きず、ロアは連敗記録を更新した。

 

「ああ……また負けてしまいました」

 

6枚目のダメージ……ドロートリガーを見て、ロアが軽い口調で言う。

まるで、ロアが勝ち負けにこだわっていないような、負けてもいいと思っているような態度だが、これでなかなか悔しがっているのだ。

 

「いやいや、櫂相手にすごかったって!結構ギリギリの勝負だったし」

 

三和が横からロアを励ます。

いつもは櫂の勝負をある種の信頼をもって見守る三和だが、ロアとのファイトでは心穏やかではいられない。

ロアが櫂に勝ったことは未だにないが、いつ勝ってもおかしくないファイトが毎回繰り広げられていた。

それに……三和は、ここにきて櫂もロアも、急激にその実力を伸ばしているように感じていた。

 

身近に手強く実力の近いライバルを得たことで、お互いに刺激しあい、それが実力アップに繋がっているのだ。

 

櫂の強さの1つに、トリガーを引く確率が異常なほど高いことが挙げられるが、それはロアも同じだった。

ロアは6枚目のダメージで何かしらトリガーを引くことが多く、今回のように6点ヒールを決めてくることもある。

そういう局面では両者ともギリギリの状況であり、「櫂が負けるかもしれない」と三和が感じるのはそんな時が多かった。

 

「へえ……ロアちゃんって本当に強かったんだね」

「あ、戸倉先輩。店番は大丈夫なんですか?」

「ミサキでいいよ。店番は、シンさんに任せてきた」

 

ロアがレジを見ると、優しそうな顔をした──優しいだけではなさそうな感じもする──男性がいた。

横から三和が、「店長だよ」と教えてくれる。

 

「だいたい、櫂が三和以外とファイトすること自体、珍しいしね」

「そう、なんですか?」

 

ロアは裏ファイトでの櫂を思い出す。

思い返せば、デッキの調整以外ではロアと、時々ジュンとしかファイトをしていない。

 

「あれ?なら、三和さんも櫂さんと同じくらい強いんですか?」

「いやいや……俺はそこまでじゃないって。ムラっけもあるしな」

 

三和は「櫂は規格外だって」と笑いながらもはっきりと否定した。

ミサキは「ねえ」とロアに少し好戦的な笑みを向けた。

 

「よかったら私ともファイトしてくれない?」

「え?私でよかったら、ぜひ……!」

 

ミサキはロアをスタンディングファイトテーブルに誘う。

 

「いくよ!」

「はい!」

「「スタンドアップ・ヴァンガード!」」

 

 

◇◆◇

 

 

ファイトは進み、互いのヴァンガードはグレード3になっていた。

 

ミサキのヴァンガードは“CEOアマテラス”、ロアのヴァンガードは“知を統べる司書 アリア”だ。

 

【ミサキ POW:10000 ダメージ:5】

【ロア POW:11000 ダメージ:4】

 

「アリアのスキルで、5枚をソウルブラスト!」

 

アイチが“ブラスター・ブレード”を「分身」、櫂が“ドラゴニック・オーバーロード”を「本当の姿」というように、ロアはアリアを「魂」といっている。

当然強力なスキルをもつ、ロアと繋がりの深いユニットだろうと自然ミサキは身構えた。

 

「手札を3枚捨ててもらいます!」

「さ、3枚!?」

 

しかし、ミサキもその宣言には動揺した。

ミサキは使用クランが〖オラクルシンクタンク〗ということもあって、手札は6枚と多い。それでも、手札を捨てることへの影響は大きかった。

 

“三日月の女神 ツクヨミ”、“ダーク・キャット”、“ドリーム・イーター”がミサキのドロップゾーンに置かれる。

 

ミサキはこれまでのドライブチェックで“サイキック・バード”、“バトルシスター しょこら”を手札に加えていた。

これからのロアの攻撃を考えるとその2枚を捨てることはできず、残り手札1枚をロアに見せていないまま、ミサキは3回の攻撃を受けきれないと判明した。

 

「リジアのブースト、レセぺでアタック!」

 

七色の歌声(レインボーソング) レセぺ POW:9000→16000

 

「……ノーガード」

 

ミサキはヒールトリガーの可能性にかけて攻撃を受ける。

引き当てることができれば……祈りながらめくった山札の上は“ロゼンジ・メイガス”。

 

「ヒールトリガー!」

 

6枚目でヒールトリガーを引き当てる奇跡に周囲も盛り上がる。

 

CEOアマテラス POW:10000→15000

 

「っ!イラドナのブースト、スラティでアタック!」

 

思わぬ展開に目を見開いたロアは、少し焦りをにじませた口調でアタックを宣言する。

 

氷夜の少女 スラティ POW:10000→18000

 

「“サイキック・バード”でガード!」

 

氷のような眼差しの少女が生み出した風がアマテラスに襲いかかるも、届くことなく凪いで消えた。

 

「イラドナでブースト、ヴァンガードのアリアでアタック!」

「しょこらでガード」

 

完全ガードのコストとして、“オラクルガーディアン ジェミニ”がドロップゾーンに落ちた。これで、この攻撃は(・・・・・)トリガー2枚でも通らない。

手札を使いきったが、攻撃を防ぐことができたとミサキは安堵する。

 

「ミサキさん、いつ攻撃は3回だけ(・・・・)だといいました?」

 

ロアの一言があるまでは。

 

「アリアのスキル発動!」

 

ロアのダメージゾーンの表の3枚が裏返り、ソウルから最後の1枚が引き抜かれる。

 

「スラティ、イラドナ。もう一度お願い!」

 

アリアの思いに応え、攻撃を終えたユニットがスタンドする。

さらに、ロアのヴァンガードの攻撃はまだ途中だ。

 

「ドライブトリガーチェック。1枚目、トリガーなし。2枚目、ドロートリガー!

パワーはスラティに。1枚をドロー」

 

ロアはダメ押しのようにトリガーを引き当てる。

 

「スラティ!」

 

氷夜の少女 スラティ POW:10000→15000→23000

 

ミサキには手札も、インターセプトできるユニットもない。

ミサキの6枚目のダメージは“三日月の女神 ツクヨミ”。ヒールトリガーではなかった。

 

「私の負けだね」

 

この結果に、「Q4に勝っちゃった……」「あの子、何者なんだ」と周囲がざわつき始める。

そこに、「あれ、あの『ロア』じゃないか?」という声が混ざった。

その声をきっかけに、驚き、好奇心、嫉妬、好意、遠慮、憧れ……さまざまな感情を含む視線がロアに集まる。

 

居心地悪そうに身じろぎするロアだったが、元気のいい小学生の男の子──葛木カムイが話しかけたことですぐに意識は切り替わる。

 

「俺は葛木カムイ!六月ロア、俺とも勝負しろ!」

「カムイ。ロアちゃんはあんたより年上だよ」

「うっ……すみません。ロアさん」

 

元気よく勝負を挑んだカムイだったが、即座にミサキに突っ込まれてたじろぐ。

それでもきちんと聞き入れて謝罪してくるあたり、カムイは素直な少年なのだろう、とロアは思った。

 

「カムイさんは最強小学生なんです!」

「KSSFっす!」

 

カムイの横の少年──右野レイジの言葉をもう1人──佐賀エイジが個性的に略す。

2人はカムイの取り巻きのようだ。

 

ロアはカムイとの対戦を承諾し、ファーストヴァンガードを伏せる。

 

「「スタンドアップ・ヴァンガード!」」

「“見習い司書 ヴェダ”!」

「“バトルライザー”!」

 

◇◆◇

 

ロアとカムイのファイトは、ロアとミサキのファイトよりもはやい展開で進んだ。

 

【ロア POW:11000 ダメージ:5】

【カムイ POW:11000 ダメージ:4】

 

カムイのリアガードはアタックを終えてすべてレスト状態であり、あとはヴァンガードのドライブチェックを行うのみだ。

 

1枚目は“キング・オブ・ソード”。

2枚目は“アシュラ・カイザー”。

 

「トリガーはなし。けど、ドライブチェックでグレード3が出たぜ!」

 

“デスアーミー・レディ”、“デスアーミー・ガイ”が自らのスキルでスタンドする。

さらに、ヴァンガードの“アシュラ・カイザー”のスキルで“ジェノサイド・ジャック”もスタンドした。

カムイの攻撃はこれであと2回に増える。

 

ヴァンガードの攻撃を完全ガードで防いだロアだが、あと1枚でダメージは6枚になってしまう。絶体絶命だった。

 

「“ジェノサイド・ジャック”でアタック!」

「ガード、“聖なる祈り スーリャ”」

 

ロアは1度目の攻撃を冷静に防ぐ。

 

「なら、“デスアーミー・ガイ”がブーストした“デスアーミー・レディ”だ!」

 

デスアーミー・レディ POW:9000→16000

 

シールドは10000が必要だ。しかし、ロアの手札はドライブチェックで“世界の修正者 テュフォナ”、“幻惑の蒼 シアン”の2枚だとわかっている。どちらもグレード3でガードには使えない。

 

「手札がなくても……インターセプト!」

 

ロアはリアガード前列の“天使の祝福 レルネ”をガーディアンサークルに置く。

 

「インターセプトした時、このユニットはシールド+5000!」

「た、ターンエンドだ……」

 

無事に攻撃を凌いだロアにより、カムイは敗北した。

 

 

◇◆◇

 

 

「カムイにまで勝つなんて……ロアちゃん、すごいね」

「そんな……ありがとうございます、ミサキさん」

「そうですよ、すごいです。……あ、アイチお義兄(にい)さん!」

 

カムイが突然声をあげた。

その視線をたどると、青髪で大人しそうな、後江中学の制服をきた男子が店に入ってくるところだった。

 

「カムイくんのお兄さんですか」

「ああ、そうじゃなくてね……」

 

カムイがアイチに駆け寄り、こちらへ引っ張ってくる間にミサキは2人の関係を説明した。

 

「えっと、はじめまして。先導アイチです」

「初めまして、ロアと申します」

 

ロアとアイチはお互いにぺこりと頭を下げ合った。

顔をあげたアイチは、ロアの後方を見て顔を輝かせ、「櫂くん!」と嬉しそうな声を上げる。

 

その声に後ろを振り返ったロアは後ろから櫂と三和が歩いてくるのを視界にとらえる。鞄を手にしているから、もう店を出る予定なのだろう。

櫂はロアの横を通り過ぎる瞬間にロアを一瞬見るも、特に何かを言うこともなく店を出ていった。

三和は「あ、櫂。ちょっと待てよ」と言いつつそのあとを追っていく。

 

……元々ロアは、櫂、三和とこの店に来ていたのだ。

それを思い出したロアは少し迷うと、その場の3人に頭を下げ、「私はこれで」と櫂たちのあとを追った。




切りどころが見つからなかったので、そのままの流れでガッと書きました。



《おまけ》
ロアたちが去ったあと

「さっきの、ロアさん。櫂となんか知り合いみたいなんです。それにすごく強くって!」
「うん……櫂が対戦相手に指名していたくらいだしね。私とカムイも負けたし」
「櫂くんが!?ロアさんって、すごい子だったんだね……」
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