楽しみすぎて、ずっと鷲尾須美の章の録画を繰り返し見ていました。
ロアの感情が、親愛か親近感か同一視か、それが問題だと思います。
「ショップ大会……?」
ロアは、カードキャピタルの店内に貼られたポスターに首を傾げた。
「君も全国大会へ……チームQ4に勝つのは君だ……。Q4って、知り合い同士で組んだチームじゃなかったんですね。まあ、考えてみればQ4のメンバーの接点ってヴァンガード以外にはなさそうですし……」
「ロアさんは、出場するの?」
アイチに尋ねられ、ロアは首を横に振った。
「いいえ、今回は見学です。チームを組んで出場したいと思えるような人もいませんし……」
本音を言えば、ロアは櫂とチームを組んでみたいと思っている。
だが、櫂はチームQ4のメンバーなのでそれは不可能だ。
ちなみに、ロアに裏ファイトのメンバーを誘うという考えは最初からない。
「ショップ大会、頑張ってください。応援しています」
そう言うと、アイチは少し照れたように微笑んだ。
「ありがとう、頑張るね」
◇◆◇
そして、ショップ大会当日。
店長が「参加者が増えた」と言っていた通り、店内はかなり混みあっていた。
ロアは端のファイト用テーブルに腰を下ろし、ファイトを見物する構えだ。
前回のブロック優勝者であるチームQ4のメンバーは、参加者たちの前に立たされて注目を浴びている。
チーム戦なので、先鋒、中堅、大将を決める必要がある。Q4は4人チームのためどうするのかと見ていると、二言三言話したあと、櫂はロアの方に向かってきた。
「あれ、櫂さん、出ないんですか?」
「ああ……この程度の大会も勝ち抜けないようではな」
ロアの正面に腰掛けた櫂は、頬杖をつきながら観戦モードに入った。
そして、ショップ大会が始まった。さまざまなファイターによるファイトが展開され、ロアはすぐにそちらに意識を奪われた。
裏ファイトにいるメンバーは固定されているため、どうしてもファイトに同じような展開が多くなる。ロアにとって、ショップ大会のファイトはどれも新鮮だった。
……それでも、Q4に勝ると思えるチームは存在しなかった。Q4の決勝戦の相手、チーム下剋上を含めても、だ。
店長も巻き込んで、テンション高めに登場したチーム下剋上のメンバーは、和装に身を包んだ森川カツミ、井崎ユウタ、三和タイシの3人だ。
常連なのに姿が見えないことは疑問だったが、まさかコスプレをして参加していたとは。
実力のほどはともかく、チーム下剋上の存在でショップ大会は大いに盛り上がっている。
チーム下剋上の先鋒、2代目忍者マスターMこと森川とチームQ4の先鋒、ミサキとのファイトはミサキの勝利に終わった。
続く中堅戦では、プリンセスメイデンこと先導エミが登場し、エミとカムイのファイトはエミが勝利する。
「ダブルクリティカルトリガー……エミちゃんはカードに愛されているのね」
……まるで、お兄ちゃんみたいに。
そう心の中で呟いたロアの寂しそうな眼差しに、櫂は思わず「ロア……?」と声をかける。
「……え?何です、櫂さん」
しかし、一瞬のちにはその雰囲気は消え去っていた。
「……いや。何でもない」
お互いに疑問を持ちつつ、2人は地区大会行きをかけた戦いに意識を戻した。
◇◆◇
かげろうの特性を活かし、三和が猛攻を仕掛ける。
だが、なんというか……。
「手加減、してる?」
無意識にこぼれた呟きに「どういう意味だ」と問われ、ロアは動揺して身体をびくつかせた。
「いえ、あの、深い意味があったわけでは……」
「いいから言え」
ため息交じりに促され、ロアは恐る恐る口を開く。
「三和さんが……『勝ち』とは別のところに最優先のゴールを置いているように感じます。
そのせいで、意識しているのか無意識なのかはわかりませんが、攻撃の手が緩いような、そんな風に見えるんです」
櫂が少し考えるように沈黙し、そこで会話が途切れた。
櫂の返事を聞きたかったが、ロアは櫂の思考の邪魔はすまいとファイトの行方を見守る。
「ふろうがるのブースト、ソウルセイバー・ドラゴンでアタック!」
そうアイチが宣言し、三和は肩をすくめてノーガードと示した。
「優勝は、チームQ4!」
わあっと盛り上がる店内だったが、櫂はチームメンバーに声をかけることもなく席を立ってしまう。
ロアは櫂の行動に驚いたものの、少し悩んでそのあとを追った。
櫂はいつもの場所、カードキャピタル近くの公園のベンチに歩いていった。
きっとそこで寝始めるのだろうと考え、無防備だなぁ……とロアは思う。が、きっと気配に敏感なのだろう。何か被害にあったなら、もう少し警戒しているはずだ。
「膝枕でも、しましょうか?」
案の定、寝転がろうとする櫂にふざけて問いかける。
ロアの口元は笑っており、口調からしてもからかっているのだと容易にわかる。
しかし、櫂は数秒ロアの目を見つめると、ロアの腕を取り軽く引き寄せた。
その力はさほど強いものではなかったが、不意をつかれてロアはそのままベンチに腰を下ろす。
いつもの癖で行儀よく揃えられた膝に、トシキの頭が乗った。
混乱するロアはピシッと音を立てて硬直したが、櫂はロアのことなどお構いなしに目を閉じて寝始めてしまった。
どうすればいいのかわからず、また、櫂に膝枕をしているという状況を上手くのみこめず、ロアは固まっていることしかできなかった。
「お、やっぱりここか……って、どういうことなの……」
櫂を追ってきたのだろう。駆けてきた三和が、ロアには救世主に思えた。
この状態が嫌なわけでは決してないのだが、要するにキャパオーバーしてしまったのだ。
三和の声に反応し、櫂は目を開けて三和を見やった。
「ったく、何やってるんだよ、櫂。……それと、たまには家に招待しろよー。ミルクティーと、イチゴのショートケーキつけてさ」
「そんなことを言いに来たのか」
「んえ?」
軽口を流し、櫂は身を起こした。
櫂から解放され、ロアはほっとしたような、寂しいような、妙な気持ちになる。
「いやぁ、面白かったぜ?
三和はニヤニヤと笑いながら櫂を茶化す。しかし、ふと思い出したように語った。
「でも……妙なこと言ってたなー。カードの声がどうとかって」
その言葉に、櫂は目を見開いた。櫂がここまで動揺するのは、ロアが知る限り初めてだ。
「……なんだと?」
押し殺したような声。
櫂の目はいつも以上に鋭くなっている。
「カードの、声……」
ロアは繰り返すように呟いた。
「よほど、カードと強い繋がりを持っているのでしょうか。それとも、アイチさんの持つカードが特別なのか……」
口に出しながら、ロアは妙な胸騒ぎを感じずにはいられなかった。