私の転生物語 〜海神としての生〜   作:夜刀神 闇

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今回は、とても重く悲しい話になります


第7話 私の、親友

 ̄ ̄突然の別れ。

 

 ̄ ̄それは、それは残酷なお話……

 

 

 

 

 

 

タイムリミットまで……後、0日。

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ルナside

 

「……いよいよ、今日か」

私は、部屋に入ってくる朝日で目を覚ました。

 

今日は、月読命率いる、都市の人間達が月へ移住する日。基月移住計画が実行される日である。

 

……この日の為に計画を練って来たんだ。それに協力してくれた仲間を裏切るわけにはいかない。私は、何を言われようと都市へ行き、妖怪達を食い止めるつもりである。……誰が何を言おうと、ね?

 

「良い天気だ……と言いたいのだがなぁ。そんな事言ってる暇なんて無い……な。早く、都市へ向かわないと」

 

私は、立ち上がると就寝着を脱ぎ、何時も通りの白い軍服な様な仕事着に着替えた。

 

「さて、と……私は、そろそろ行きますかな」

 

?「ルナさん……置いていかないで下さいよ」

 

襖に手を掛け、部屋を出ようとすると後ろから声がした。

……忘れていた。置いて行ってはいけない、一番大事な人を。

 

紀沙「私、紀沙はもう準備は出来ています。後継ぎを置いて行ってはいけないじゃないですか」

 

振り返ると、もう準備が出来ている紀沙がいた。

……全く、自分の後継ぎを置いて行ってどうなるんだ。これから、海神としての仕事を学ばせるというのになぁ。

 

「ったく……私は、おっちょこちょいだなぁ。君を、忘れるなんてな」

私は、紀沙に手を差し伸べる。

 

「さぁ……行こうか」

 

紀沙「……はい!」

 

紀沙は、私の手をとると元気良く返事をした。

 

 

 

 

 

 

 

 ̄ ̄さぁ、私達の戦いが今、始まる ̄ ̄

 

 

 

 

 

 

 

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「良いか?実践で戦う時は……こうやるんだッ!!」

私は、そう叫ぶと、刀を抜いて目の前にいる妖怪に斬りかかった。

「グギャアァァァアアーーッ!!?」

 

……それだけで、目の前の妖怪は絶命した。どうやら、知能の無い小妖怪だったようだ。

そして、「どうだった?」と紀沙に声を掛け、目をやる。

 

「……紀沙?って、そうか。ごめんごめん、血は慣れていなかったか?」

紀沙「……はっ。い、いやそんな事は……ぜっ全然大丈夫ですよぅ……」

 

……嘘付け、顔を青くしながら身体中ガッタガタに震えてる奴に言われたくないわ。

「慣れていないなら無理するな。本当に、大丈夫なのか?」

紀沙「はぅ……大丈夫です、まだ頑張れます!」

「そうか、限界だったら言うんだぞ?」

 

そう言って私達は、都市の方へと向かった。

 

紀沙「そういえば……闇さんは、何処へいるんでしょうか。最近、全く会っていない気がするのですが……」

「ぁー。アイツなら、今頃世界を飛び回ってるよ。ちょっと訳ありなんだ……まぁ、この月移住計画が終わったら話してやるさ」

紀沙「……はぁ、分かりました」

 

紀沙が納得してくれたのを確認すると、空を飛び立った。紀沙も、それに慌てて着いてくる。

 

 

数分後

紀沙「あの……」

「ん?」

紀沙「ツクヨミさんって、どんな方なんですかね?」

「んー……」

 

どんな方、って言われてもなぁ。月を司る神、としか言い様がないけども……

「まぁ、一言で言えば優しいかな。私と初めて会った時も怖がられたけど、都市の人々は私が守る!って感じだったなぁ」

紀沙「へっ、へぇー……」

 

……紀沙、君絶対心の中でこう思ってるな?

 

"怖がられるのも当たり前だ!"って。

……まぁ、怖がられる特徴としては自覚があるんだけども。

まず、見た目だろうな。私は、背がとても高く切れ長の目だ。良く言われる言葉が、"何でも射抜きそうな目"だってよ。……地味に酷くね?

何でも射抜きそうな目って何だ。目からビーム出した事なんか一度だってないぞ。

……まぁ、見た目はアレだが中身は違う!そう、違う!

 

つ、疲れた。何も重いものなんて持ってないのに、な。ドッと来る様な精神的重みが心に染みるわ。

 

 

と、言っている間に都市に着きました。と、言いたい所なんだが……

 

 

?「こんにちは」

 

 

……何者かに、邪魔されている。いや、何者って言う以前にもう正体が誰か分かっているんだが……

 

金髪のロングヘアーに紅い瞳。黒いベストとロングスカートに赤いネクタイ。そして、黒い大剣を持って闇を纏っていると来た。……もう、皆なら誰か分かるよね?……そう。

 

 

「君が……大妖怪、ルーミアか?」

ルーミア「えぇ。私も、有名になったものねぇ。そう、私が大妖怪こと闇を支配する妖怪、ルーミア」

 

 

ルーミアだ。

闇を操るといった強大な力を持ち、しかも妖力が大妖怪どころの話では無いと来た。……これは、少しばかり力を入れないといけないかもな。

 

両者の間に、何とも言えぬ切迫感が流れる。

……ふと紀沙の方を見やると、紀沙も戦いの準備は出来ている様だ。

 

ルーミア「……それで、この先の都市に何の用かしら?」

ルーミアは、あえて笑って私達に対応しているのか、常時不気味な笑いを浮かべている。

 

「……此処を、通らせては貰えないだろうか」

ルーミア「ふふ、それは無理な相談ね」

「……強行突破すると言ったら?」

ルーミア「……それなら、そっちの要望に応えて差し上げるわ?」

 

瞬間、ルーミアが闇に溶けた。

私は一瞬、何が起こったのか分からなかった。……私の首に当てられた闇で染まった大剣を見るまでは。

 

「なっ……ぁ……」

ルーミア「ふふふふふ、これでは流石の貴方も避ける事すら不可能でしょう?ふふ……秋葉も、貴方に苦戦……いや、一瞬で負けていたらしいわねぇ?その貴方を、今から私が殺せるだなんて……ふふふふふ、ねぇ。ルナ、だったかしら?今から殺される気持ち。どんな感じかしら?ふふ、ふふふふふ……!!」

 

……こりゃあ、このルーミア狂ってる。早く、何とかしないと……!!

 

……はっ、その手があったか!私とした事が、自分の持つ能力の事を忘れてただなんて……!こりゃ、闇や秋葉にしれたら馬鹿にされるなwwww

 

「……はぁ、ルーミア」

ルーミア「ふふ……!……何かしら」

「やられるのは……君だ」

 

……前に使ったのは、だいぶ前だったか。まぁ、今はそんなことはどうでも良い。

私は、自分の能力を発動する。

そして、私が劣勢だと言う事を……覆す。

 

 

 

「どうだ……?さっきまで優勢に立っていた自分が、今度は殺されるかもしれないという恐怖に陥るのは……」

ルーミア「……ッ!!!……分かったわよ、降参よ……」

 

何も攻撃しないと言いたげにルーミアは自分の両手を上げる。

そうだ、それで良いんだよ。最初っから通してくれてれば、こんな事せずに済んだのに……

 

「じゃ、行くぞ……紀沙。……紀沙?」

 

紀沙が……いない?……まさか。

「紀沙は……どうした」

ルーミア「どうしたもこうしたも……私達が戦っている時に、いなくなったわよ?私は、知らないわ」

「……そうか」

 

私は、ルーミアの方と反対、つまり都市の方角へと急いでいた。

紀沙が、私とルーミアが戦っている……?最中にいなくなっただと……?まさか、他の妖怪達に喰われていないだろうな……?

 

?「其処のお人、止まれよ」

どこからか声がした……と同時に、目の前に人が現れる。

いや、人では無い……鬼だ。頭に生えた二本の角がそれを物語っている。

?「アタシは鬼神 結花。妖怪達を纏める、大妖怪の中の鬼子母神だよ。アンタは?」

 

「……海月 ルナ。海を統括する神の、海神だ」

一応、答えないと攻撃されそうなので返事をしておく。海神と言って、警戒されないかどうか……

結花「へぇ!海神だなんて、こりゃあたまげたよ!ルーミアから、聞いていたがこんなヤツだったんだな〜。背がとっても高いって、こんなに高かったんだな!」

 

い、言わないでよ……なんか悲しくなってきちゃった。

本当、よく言われる言葉が、「背が高い」だからね。

話しかけたら、二言目に必ず来るのがソレだからなぁ。マジで、それしか言われた事ないわ。

 

 

結花「それで……この先になんの用だい?」

……やっぱ、そう来るよね。

「……月に移住する都市の人達を襲おうとする妖怪達を滅しに来た」

結花「……ッ!!」

……結花のこめかみがピクリと動く。……どうやら、当たりみたいだな。

結花「……何で、それを知っているんだい?」

結花が、殺気と妖力をバンバン出しながら私に問うてくる。……流石、鬼子母神と言われるだけあって妖力が半端なく多い。質も、かなり固まってるなぁ。こりゃあルーミアの時よりも激戦になるかも……

 

「何でって……この先の都市に御座す神、月読命と知り合いだからさ」

結花「そうか……なら、此処で命だけ置いて行きな!!!」

……い、命だけ置いていけってどうやるの?しかも、結花がツクヨミの事知ってるなんて意外だな。

 

てか、いきなり襲ってくるのは無しでしょ。

「うおっ」

結花「へぇ……鬼子母神であるアタシの拳を避けるだなんて。アンタ、結構やるじゃん?やっぱり、海神と名乗るだけの力はあるみたいだなぁ!!」

「ん」

ありがとう、と心の中で思って置く。声に出せる程の余裕が無いからね……

本気で殴ってはいけない。と心では思っているけれど、時々マジで殴りそうになるから怖いんだよなぁ。最近、勝負と言えるような戦いをしてないからなー……私の周りには私と互角に戦える奴が闇以外いないんだよな。

 

結花「ふんっ」

「ほいっと」

私は、結花から繰り出される拳や蹴りをただ避ける。ただ、淡々と避ける。

結花「アンタ……やっぱり、化け物並の身体能力だな。鬼子母神である私の本気の攻撃を、ただただいなすだけでなんて……そんなヤツ、私の仲間であるルーミアでさえ出来なかったというのに」

「そうか、そりゃあ褒め言葉だ……」

結花から放たれた怒涛の連続攻撃を避けながら、私は結花に礼を言う。

でも、今はそんな事思ってる暇なんて無いのだ。一瞬でも余所見をすれば、結花の強烈な蹴りが体を襲うだろう。一歩でも、油断してはいけない。それが、妖怪……敵と戦う時の基本中の基本である。

 

結花「はぁ、はぁ……うぅ……ッく」

ふと結花を見れば、肩で息をしている状態。もうこれ以上戦いを続ける事は、不可能に近いであろうな……でも、鬼子母神……鬼である結花がこれ位で諦めるだろうか?出来れば、ここで降参して貰えれば有難いのだが……

「なぁ、もう降参したらどうだい?これ以上、戦いを続ける事は危険じゃなかろうか?」

結花「大丈夫……さ!アタシの……次の、攻撃で……決めるよッ!」

「……はぁ」

結花が、なにやらまだ余力があるとか何とかで決め技らしきものを使うらしい。……多分、鬼子母神って言う位だからあの技を出してくるんだろう。でも、あの四天王達が使ってるスペカ……基技が今の時代にあるのか?

 

結花「それじゃあ、行くよ……!奥義 ̄ ̄」

 

 

 

 

「三歩必殺!!!!!」

 

 

 

 

「 ̄ ̄やはりか」

 

結花「 ̄ ̄一歩」

 

結花が、私に近付いてくる。

 

結花「 ̄ ̄二歩」

 

またさらに近づき、もうあと一歩で終わるだろう。

 

そして……

 

結花「 ̄ ̄三歩!おらぁぁああああああああ!!!!」

 

結花が、私の躯に渾身の一撃を食らわせんとばかりの表情で拳を繰り出す。

 

中々、良い戦いだったよ。結花……でも、私を倒すんじゃこんな攻撃じゃ無理だ。

 

 

 

 

 ̄ ̄もっと、鍛えてきた方が身の為だよ?

 

 

 

 

「ふっ……!」

私は、結花にカウンターをしかける。それは、いとも簡単に結花の腹に沈んでいった。

結花「うぐっ……が、かはッ」

結花は、さぞ苦しそうに顔を歪め、私の懐へとばたりと倒れた。

私は、結花を大事に抱え、木の根元へ寝かせる。

 

 ̄ ̄これで、都市への安全は確保されたな。

 

……って、

「紀沙は!!?」

忘れてた。すっかり、紀沙の事を忘れていた……!!私とした事が、何と言う事だ……!!

「紀沙ーーーッ!!おーい、紀沙ぁあーーーッ!!」

私は、力の限り叫ぶ。それは、森の中を木霊する様に響き渡った。

 

紀沙「ルナさん……此処ですよ、此処」

何処からか、声が聞こえた。……それは、私の頭の上の方だった。

「紀沙っ!!大丈夫だったか!?何処か、怪我とかしていないか!?」

紀沙「大丈夫ですよ……それよりも、さっきの戦い凄かったですね。ルナさんの力をよく知る私ですら、驚きましたよ……」

「それなら、良かった……」

紀沙の無事を確認し、ホッと胸を撫で下ろした私は、気の上から飛び降りて来た紀沙の手を取る。

「それじゃあ、行くぞ。そろそろ、行かないと時間が厳しい。ツクヨミとも色々話さないとだしな……」

紀沙「はい、分かりました!」

 

ツクヨミと話す時間、戦う用意をする準備も含めると……間に合うか?

まぁ、急げば充分か。

 

「よし、行くか!」

紀沙「……えぇ!」

私達は、都市へ向かって真っ直ぐに飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

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都市の大きな門の前にいた門番二人に軽く挨拶し、都市の中へ案内して貰った私達は、ツクヨミのいる大きなビルの中へと案内されていた。

 

「はぁ……変わらないな、この内装」

紀沙「以前にも、訪れた事があるんですか?」

「ん?……あ、あぁ。丁度一ヶ月前か位にな、ツクヨミに会いに行ったんだよ。その時は、なんか凄い怖がられたんだよなぁ……」

紀沙「……は、はぁ」

 

……うわぁ。や、やっぱり引かれたよ(´;ω;`)

でっ、でもアレは私の容姿についてじゃなかったし。別に、ツクヨミに女なのにイケメンって言われた事になんて気にして無いし!

紀沙「やっぱり、気にしてるんですね(笑)」

「なっ……!///」

うぐっ、そこを突かれちゃあどうしようもないぃ……!!私は、恥ずかしくてどうしようもなくて、顔を真っ赤にして顔を隠す。

 

紀沙「ふふふ。……でも私、ルナさんって凄くお綺麗だと思いますがねぇ」

「うぅ……って、へっ!?」

紀沙「ルナさんは、その事を気にし過ぎなんです。誰だって自然体が一番なんですよ?」

 

て、天使がこの世に降臨した……!

紀沙「ルナさんは、今のままが一番素敵です。余り気にしちゃダメですよ!」

紀沙が、私にニッコリと笑いかける。

……その女神の様な暖かい笑顔に、私は少しでも救われた気がした。

 

 

「あぁ……そうだな、ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

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兵士A「海神様方、こちらです」

 

どうやら、私達が色々と話している内にツクヨミの部屋へと着いたようだ。

「ありがとう」

紀沙「ありがとうございます」

兵士A「それでは。コンコン ……ツクヨミ様、お客様です」

ツクヨミ「入れて下さい」

兵士A「では」

 

ガチャ 私は、扉を開けて部屋の中へと入った。

ツクヨミ「お久しぶりですね……ルナ様」

「あぁ……久しぶりだなツクヨミ」

 

ツクヨミは、あれから私への呼び名を変えた。

海神様、と呼ばれるのもなんだかむず痒い。だから、普通にルナと呼べと言ったのだが……なして、最後に様を付ける?なんだかむず痒いぞ。

ツクヨミ「ルナ様……今日は、月移住計画があります。それに御協力頂けるのですね?」

「あぁ。別に、構わんよ。忙しいわけでもなかったし……私の後継ぎの海神……基紀沙を勉強させられる良い機会だしな」

ツクヨミ「……そうですか、ありがとうございます」

 

ツクヨミは、そう言うと私の横にいる紀沙に近づいてきた。

ツクヨミ「紀沙様……ですね?」

紀沙「えっ?……は、はい!」

ツクヨミ「今日は、都市の人々を守る為にありがとうございます」

ツクヨミは、紀沙の手を持ち、言った。

ツクヨミ「紀沙様は、戦いに慣れておられないと伺いました。本日の戦いは、くれぐれもお気を付けて下さいね。ルナ様がいる限り、安全だと思いますが……」

ツクヨミ「私は、戦いに参加する事は出来ません。……ですが、ロケットから貴方がたの勇姿、見守らせて頂きます!」

ツクヨミは、私と紀沙を交互に見ながらそう言った。

あぁ……ツクヨミ。君は、やっぱり良いやつだよ。

「ありがとうな、ツクヨミ。君や永琳含む都市の人間達を乗せたロケットは、私達が兵士達と一緒に必ずや最後まで守り抜いてみせるよ!」

 

ツクヨミ「……はいっ!」

 

ツクヨミは、満面の笑みを浮かべて、元気良く返事をした。

 

 

 

 

 

 

 

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秋葉side

 

私は、桜花の作ってくれた朝御飯を食べていた。

 

ちなみに、起きたのは巳の刻になる頃だった。でもまぁ、この時期日が出始めた頃だから大丈夫だろう。

起きたら、ルナ達がいなかった。……もう行ったのだろうな。

「はぁーあ……うん、やっぱり桜花の作る御飯は美味しいわね。絶品だわ〜」

桜花「いえいえ、そんな事ないですよ。これでも、海神様には敵いませんから」

 

……そうかしら?っていうか、私ルナの作った料理食べた事無いじゃない。

桜花の作る料理も最高だけど、ルナの料理はどうなのかしらね?ルナは、得意だと言っていたが……ま、いいか。

 

私は、朝御飯を食べ終わると食器を台所へと直しに行った。

桜花「あっ、秋葉様。私が直しますよ?」

「いえ、これ位良いのよ」

桜花「そうですか、すみません……」

「いえいえ」

 

……といった様な会話を続け、互いに笑い合う私達。早く、ルナ達も帰ってきて欲しいものねぇ……紀沙もいなかったけど、ルナが連れていったのかしら?と言うより、紀沙はもう連れてって大丈夫かしらね?

ま、大丈夫でしょ。ルナがいるしね……

 

「……ふぁーあ、やっぱり朝は慣れないわねぇ。妖怪にとって、日の光は苦手だと言うのに……はぁ、だるいわ……」

そう、妖怪にとって日の光は苦手なのだ。私も、その枠に外れずキチンと入っている。……嫌な所で、妖怪としての特徴が残ってしまったわね。まぁ、苦手と言っても嫌いってだけで体に被害は出ないけれど。

 

そんな事を言いながらも、私は縁側へと向かう。

……ふぅ、と私は息を吐く。

都市の人間達は、月移住計画を無事に終わらせる事が出来るかしら……ルナ達や都市の兵士達がいるから、大丈夫だとは思うけど。

私は、昨日闇に言われた言葉を思い出す。

 

「やっぱり、闇の事は慣れないわね……まぁ、あの娘は見た目はアレだけどアレでも龍神だからね。胡散臭い感じもするけど……本当は尊敬するべき神様なのかしら……」

 

 

 ̄ ̄あら、貴方が誰かを尊敬するだなんて、珍しいわね?

 

 

「ッ!?」

急に声がしたので、振り返る。……そこには……

 

 

 

「ふふふ♪こんにちは、妖怪の裏切り者?」

 

 

 

……ルーミアがいた。

「……ルーミア、貴方なんで此処に」

ルーミア「あら、そんなに驚く事でも無いでしょう?」

 

体の横で拳を構え、何時でも戦闘が出来る様になっている、既に戦闘準備万端な私に向かってルーミアがそう言った。

それにしても、何でルーミアが此処に?いや、それ以前に……

 

「貴方……何故此処が分かったの?」

 

……何で、此処が分かったかだ。

ルーミア「何でって……別に、そんな大層な事はしていないわ。……貴方の妖力を辿って、私が貴方の事を見つけたのよ」

「まさか……貴方が、ねぇ」

 

 

ルーミア「……それで、此処に私が来た意味、分かるかしら?」

「……」

 

 

部屋に沈黙が訪れる。

 

 

ルーミア「貴方、分からないの?……仕方ないわね、私が教えて上げるわ。私が此処に来た理由はね……」

 

 

 

 

ルーミア「貴方に海神を"殺させる"為よ」

 

 

 

 

「なっ……」

 

なん……ですって?

ルナを……私に殺させる……ですって?

「そんな事、私がするわけないでしょ……まずルナを倒すこと自体無理なのよ。私でさえ倒せなかったのだから」

ルーミア「……ハァ。素直に私の言う事を聞いていればいいものを……さもないと、痛い目に会うわよ?」

「それは、脅しととっていいのかしら?」

 

ルーミアが私に嘲る様に笑う。

……こいつ、馬鹿にしているのか?大妖怪の中でも、No.1の実力を持っていた私に勝負を仕掛けるなんて……

しかも、ルーミアはとても余裕そうに見える。

「貴方、随分と余裕そうじゃない。何か、私に勝つ策でもあるのかしら?」

ルーミア「えぇ。……ふふふ。貴方は、今に気付く事になるわ。……自分が、闇に捕らわれているという事に」

 

……何ですって?

自分の体を確認してみると、もう時既に遅し。私の体は、闇で動かなくなっていた。体を縛る、鎖のように。

ルーミア「ふふ……どうかしら?動けないでしょう?だから、警告したじゃない?……ふふふ。精々、洗脳される恐怖をじっくりと味わえ!!!」

あーっはっはっはとルーミアが高笑いを上げる。

……どうして、私がこんな奴に。私は、誰にも負けないはず……

闇の鎖が、どんどんと私の体を黒く蝕んでいく。縛っていく。体は、殆ど私の言う事を聞かなくなっていた。

……もう、タイムリミットなの?ルナが、私に殺される事なんてあってはいけない……!

……あぁ、もう意識まで薄れてきた。私はこれから、ルナを殺しに行くのか。そんなの、そんなの嫌だ……!!!

 

 

 

 

ルナ、逃げて……!!!

 

 

 

 

私の意識は、そこでブツンと切れた。

 

 

 

 

 

 

 

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ルナside

 

都市の上空で、妖怪が攻めて来る時を待っていたら、何故だか嫌な予感がした。

……このままでは、取り返しのつかない事態になる。そう、私の勘が告げていた。

「まさか……秋葉達に、何かあったんじゃなかろうか」

紀沙「どうかなさったんですか?」

紀沙が、私に心配そうに顔色を伺ってくる。

「い、いや……大丈夫だ」

私は、それにあどけなく答えるが、正直とても心配してるんだよな……

そうですか、と紀沙が前に向き直る。

 

ルーミアと結花は倒したが……倒す大妖怪はそれだけで良かったのか?ルーミア達が、何か企んでいたりして……

紀沙「ルナさん、来ました!!」

紀沙の言葉で、はっと我に帰った私。

森の方に目をやると、妖怪の群れが此処に向かっているのが見える。

「……来たか」

私は、目を瞑り妖力の質と量を調べる。

「数は……ざっと見ただけで百万はいるな。こりゃあ、都市の兵士達だけじゃ相手にならんだろう。私達が、来ててよかった」

紀沙「そうですね……私達がいなかったら、どうなってたか」

私は刀を構え、紀沙は御札と歪な形の先の尖った杖の様なものを取り出す。……どちらも、何時でも戦闘が出来る様に準備万端だ。

「戦闘……」

 

 

 

 

「かぁぁああぁぁあいしぃぃいぃぃいいぃ!!!!!」

 

 

 

 

月読命が計画する月移住計画を成功させる為の人妖対戦……戦いの火蓋を切ったのは、私だった。

 

 

 

 

 

 

 

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「よし、この辺は充分倒したな!紀沙、そっちは?」

紀沙「はい、こちらも大丈夫です!!」

……よし、紀沙の方は大丈夫みたいだな。紀沙が戦いに苦戦していたら加勢するつもりだったが……その必要は無さそうだ。紀沙が怪我する事も無かったしね。

「兵士達は……うん、大丈夫そうだな。そろそろ、撤退命令が来る頃じゃないか?」

最初、私が見た時は百万程いた妖怪の群れが、今ではかなり減っている。これなら、安全に月までロケットが飛び立てるんじゃないか?よし、私達はこれで……

 

「帰るぞ……ッ!?」

紀沙「ど、どうなされたんですか??」

「まずい、私達の神社の方角で妖力が膨大に、しかも急激に感じられたんだ!!きっと、神社の方で何かがあったんだ。早く、行かないと大変な事になる!!」

紀沙「あっ、ちょ……」

?「貴方は、こっちよ」

紀沙「きゃっ!?」

 

?「(紀沙は私が預かって置くわ……早く、神社の方へ)」

「あぁ、感謝するぞ闇!!」

急に聞こえて来た闇の声に少したじろぐが、すぐに持ち直した。

……神社の方で、何があったのだろうか。物凄く、嫌な予感がする……今では感じた事が無い位の不安である。

 

「どうか……どうか、無事でいてくれよっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 ̄ ̄私のその言葉は、とある白狼の姿によって裏切られる事となる。

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私が神社に着くと、境内は何時もと変わらない様子だった。 ̄ ̄境内に倒れている桜花を除いては。

「おっ、桜花!?しっかりしろ!!」

幸い、息はある様だ。無かったら、私は一生後悔していただろう。

「とりあえず、神社の中に運ばないと……」

私は、桜花を優しく、傷付けない様に抱き上げる。血で所々汚れたセーラー服の様な巫女服を見て、私は眉間に皺を寄せる。

「誰が、こんな事を……桜花は、ただの人間ではないし、私が見る限りかなり強かった筈だがな……」

相当な強さ、経験を持つ者なのだろうかと頭の中で思考する。

そう思っている内に、私はある事に気付く。

「そう言えば、秋葉は……」

 

そう、秋葉がいないのだ。秋葉は、桜花と共にこの神社で私達の帰りを待っている筈なんだが……

 

「そんな、まさか……秋葉が、桜花をこんなにする訳無いよな?秋葉だって、改心して人間を喰わないと私達と誓ったし……」

そんな訳無い、と私の頭の中で自分に言い聞かせる。

 

桜花を神社の寝室に寝かせると、私は境内に出た。

「倒れている桜花、いない秋葉……真相は、どうなのだろうか」

「何も、大事件か何かが起きなければ良いけど……」

そう思いながら、神社に結界を貼ると、私は飛び立った。

「秋葉を、探しに行くか……神社に結界も貼ったし、桜花は大丈夫だろう」

「秋葉に会ったら、桜花に何があったのか聞かないとな……」

 

 

 

 

 

 

 

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 ̄ ̄とある草原の上。

 ̄ ̄私は、とある白い狼を発見する……

 

「あれは……何だろう」

白い……狼?いや、狼にしては大き過ぎる気がする……

「まさか、秋葉か?」

そう言いながら、警戒しながらだがその白い狼の傍に降り立つ。

……降り立つと、その白い狼は段々と人形に変わっていった。

「やっぱり……か。こんな所で、何をやっているんだ?桜花だって、きっと君の事を心配しているぞ?」

その人形の後ろ姿は、秋葉とそっくりであった。

……いや、そっくりではなくそれは紛れも無い秋葉であった。

秋葉「……」

「……秋葉?」

……何だか、様子がおかしい。

私が、不思議に思って手を伸ばそうとした ̄ ̄その時。

 

秋葉から、妖力が詰め込まれた黒い闇の様なものが放出された。

私は、咄嗟に横へ飛び、回避出来た。もし、あのまま黒い塊に当たっていたらと思うと……背筋がゾッとする。

 

「おい、秋葉!一体、何をするんだ!!」

秋葉「……」

秋葉は、私が叫んだのにも関わらず、今も尚妖力弾を放ちながらその鋭い爪を私に振りかざして来る。

 

「おいおい……爪なんて使うなよ」

何時もより、格段に上がった秋葉の身体能力。おびただしい量の弾幕。その弾幕に込められた、濃い妖力。

それらが、今の私が打ち破っていくべき困難であった。

「こんなの……どうやって」

……当たれば、死ぬ。

そう、私の勘が告げていた。

 

「はは、こりゃあした事が無い位の激戦になるよなぁ……この戦い」

 

 

 

 

 

 

 

「……っ」

遂に、一発食らってしまった。

何時もより身体能力が上がっているからだろうか……秋葉の繰り出す技が、私の体に悲鳴を上げさせてくる。……それでも、私は笑う。つくづく思うが、何故このような時でも笑っていられるのだろうか。

「……はは、ははは」

「秋葉……君が、何故急に私に攻撃したのかも、君が何故私に応えてくれないのかは未だに分からない……それは、私がまだ未熟だからだろうか?」

 

私は、息を多く吸い込み、深呼吸をする。

「君は、昔から自分を押さえ込みすぎてた……私が、君にあった時もそうだった」

秋葉「……」

 

「……君がいた所は、空虚で満ちてた……多分、私はそんな君に惹かれたのかもしれないな?だが……」

 

「秋葉は……ッ、私をどう思ってた……??」

 

「私は、秋葉の事……好きだぞ、信じてる……ッ!」

 

……私は、耐えきれなくなってむせび泣く。私の言葉は、何色にも染まらず。鬼が嘘を付かない様に、私もその発言に汚れは無い。

「君が、どう思ってるなんて事は関係無い……私は、君を助けられればそれで充分なんだから」

「私は……私は……」

 

私は、先程の様に力の限り叫ぶ。

 

「私は、秋葉(親友)の事を助けられてよかった」

 

 

 

……そう、私の叫んだ言葉。

それは、秋葉には届いただろうか……

 

この戦いは、私達が生きる現世でも語り継がれている事をこの時の私は知らない……

 

 

この戦いで、私は命を落とす。それを知らない。

 

私が死ななければ、秋葉は戻っては来ないなんて事は無かったのだろう。

 

その気になれば、私になら秋葉を戻す事は出来たのだろう。

 

……だが、私はその方法を認めない。秋葉を傷つける方法だけは、認めない。

 

私が、前世で願った事。それは愛だ。

 

 

 

 

 

……ザクッ

 

秋葉「え……」

 

周囲の草原が、紅く染まる。それは……私の血だ。

何故なら、秋葉の鋭い爪が私の体を貫いたから。

でも、これで秋葉は戻った……今の私には、それだけで充分だった。

 

 

秋葉「え……ぇ?」

 

言葉が、続かない。

「わたしは……な、君が、もどって……くる、ことを、信じて……いた、んだ、ぞ……」

秋葉「あ……あぁ……あ」

 

口の中が、血の味で一杯だ。

「きみが、苦しんで、いること……は、知って、いたんだぞ……」

秋葉「ぅ……あ」

 

段々、視界が霞んでゆく。

「だから……」

 

私は、自分の長い髪を括っている紅白の髪留めを、秋葉の両サイドに付けてやる。

 

「これで、きみ、は……すくわれ、るはず……」

 

……良し、私の髪留めは上手く封印術と化しているな。……はは、もうこの世に思い残すことなど……無い。

 

秋葉「ぁ……そん、な……」

 

「じゃあ、な……」

 

フッと、体の制御が無くなり、秋葉の肩にもたれ掛かる形となる。

秋葉「うぁ……あ……あぁぁああぁぁぁあぁあっ!!!!!」

 

……は、泣くなよ……秋葉。

別に、二度と会えない訳じゃない。

だから、泣くなよ……また君に会えるその時を夢見る……

 

 

 

 

あぁ、もう、限界か……

 

 

 

 

 

 

sideout

❁❀✿✾

 

 

 

 

 

 

 

……私は、泣いていた。

 

……唯一の親友を、亡くした。

 

紀沙「ルナさん……死んで……」

隣にいる紀沙を見れば、顔を青くして必死に涙を堪えている姿が確認できる。

 

親友を、亡くすって、事は……こんなにも悲しい事なのね。

 

……私の頬を流れる涙は、未だに勢いを絶やす事は無い。

これからも、この時流れた涙を忘れる事はないだろう……

 

 

 

 

 

 

 

end




……はい、どうでしたでしょうか。

遂に、ルナが死んでしまいましたね。
作者も、作ってる最中に泣きそうになりました。いや、泣きました。

……という事で、ルナが死んでしまったという事で終わりと思ってる方もいるかもしれませんが……

実は、この小説。まだ続きます!というよりかは、続きに書く章の方が、確実に長くなります!

という事で、これからも私の転生物語 〜海神としての生〜を何卒よろしくお願い致します!!

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