天元の花、零の先へ   作:新川翔

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この9話を投稿した日は武蔵ちゃんの一番くじの発売日。正月じゃなくてこっちに課金する。


そのうどん

キモいよー自分がキモいよー嫌だよー消えたいよー

俺はなろう系主人公みたいなセリフを吐いてしまった自分を呪い殺したいほど憎んでいた。

 

これが彼が周りに合わせておどおどして行動する。and他人に気を使いまくったせいで無意識に気を使えるようになってしまった理由の1つで言いたいことを言ってしまうと99%の可能性で後悔することだ。

自動的に行動したら失敗する。ならば受動的に行動する。まあそれでも失敗したりするのだが。

 

 

(絶対嫌われたよ。絶対引かれたよ。ムッチャクッチャ)

これ以上言ったら自己嫌悪している自分に嫌気がさしてそんな自分を嫌いになる。というような無限ループが始まってしまう。そんな自分に嫌悪感を感じて思考を停止する。

 

「………………」

 

「………………」

 

空気は凍り顔も上げられず二人はただうどんをすすっている。

 

ズルズルズルの音も立たず。

チュルチュルと音も立たず。

 

朝食はただ進行した。

 

何分経ったかわからない。うどんを完食した武蔵ちゃんは

 

「ちょっと滝に打たれてきます」

 

そう言って早足に刀を持ち何処かに行こうとする。

 

「でも夕食までに帰ってくるから!」

 

それだけ言い残して唐突に消えていった。

というかロンドンに滝などあっただろうか。俺は出来るだけ目立って欲しくないものだがと祈ったが、滝に打たれている時点でダメだと肩を落とす。

さらにいつの間にか俺が夕食を作る羽目になっているのに気付いてもっと肩が落ちた。武蔵ちゃんが朝食を作ってくれたので異論はないが。

 

「夕飯何にしよう」

 

俺は朝なのにも関わらず夕食の献立を考る。しかし、いい案が浮かんでこないのでずっと朝の空を見てボー、としてしまう。

(そういえば彼も起きる時間か)

俺は寝ている天才騎士君を起こして事情聴取を行おう思いつく。きっと記憶は消されているだろうが。夕食はそれからだ。

 

俺はただ1つしかないベッドを占領している奴にサンドイッチを作ってその部屋に向かった。

その部屋では既に患者は起きていて真っ直ぐ空を見つめていた。

 

「起きていたのか」

 

「……………………」

 

返答はない。

あれだけ無理矢理体と精神を酷使して既に起きていることに驚くと同時に話しかけても反応しない相手に気まずさを感じる。

 

「あの〜〜」

 

「……………………」

 

「すいませ〜ん」

 

「っ………………」

 

俺は反応があったので安心する。いや、今のは反応じゃない。ただの独り言だ。そこに突っ込むと嫌な予感がするのでわざと黙っておく。

 

「………………………」

 

「………………………」

 

ダマッチャウノカヨ。

そう思って数秒間黙ってみたが耐えられず話しかける事にした。

 

「大丈夫か?」

 

俺は恐る恐る彼の近くに寄って側にあるテーブルにサンドイッチを置く。

 

「貴様は何者だ」

 

ようやくこちらに反応したかと思ったらこいつは『お前は誰だ!』とか言ってきやがった。ここは冷静になって答える。

 

「俺は……日本から来た魔法使いだ」

 

端的にそう答えた。なぜ魔術師ではなく魔法使いと自己紹介したのか。それは普通に魔法使いと名乗った方が一般人の方はわかりやすいと思ったからだ。ここで俺は1つ関係ないことを思いついた。が、それは後回し。

 

「サン・ジョルジュ君。君に何が起こったのか説明してほしんだが」

 

「…………………知らない」

 

やはり、記憶は消されたか。

予想は的中してしまったことにため息をついてしまう。

 

「朝ごはんは置いとくから食っとけ。あとで薬も置いとくから」

 

想定していたが、一切手がかりがなかった。

そして、今はこいつを一人にした方がいい。そう察した俺は早足に部屋を去る。すぐに昼の分のサンドイッチを作って治癒力を高める薬を準備する。ついでに水で満たしたコップも用意する。それらを彼の部屋に置く。

 

「サン・ジョルジュ君。くれぐれも外には出てくれるなよ」

 

俺はらしくもない口調で荷物を全部持ち外出した。

 

俺が先ほどの思いついた関係ないこと。それは魔法についてだ。この魔眼さえあれば俺は第2魔法を使えるかもしれないという仮説を立てたのだ。この旅の世界線の移動はあくまで世界を移動しやすい体質の武蔵ちゃんを媒体としたものだ。そうではなく自分一人で世界線の移動というチートを行いたい訳で。

まず、出来ないだろうがな!ハハッ!

そんな訳でこの時代の魔術協会の蔵書から探してみる。

 

まあ有るはずないよな!そりゃあ、そうだった。

 

これだけの貯蔵量でも魔法に関する書物はほぼなかった。そりゃあ、魔術は隠されるものだし。こんな公共の場所みたいなところにあるのは基本のきの字くらいなところだろう。落胆もせずに最後の本を閉じる。俺は初めて読書を数時間をした。ハシゴを使って本をあった場所に戻す。

 

「ふむ、元気に何やっとる」

 

突然、後ろから声をかけられた。精密にいうと下だが、この魔法使いの爺さんはいつも不意をついてくる。

 

「お勉強ですよ。お勉強」

 

「はは!わしの魔法についてか!そんなもの載っとるわけあるか!」

 

チッ

と心で舌打ちする。全てお見通しな爺さんの『魔法についての書物があるはずがない』という正論にぐうの音も出ない。

 

「どうしてここに?」

 

「何、また世界線が増えに増えたからな様子見だ」

 

『増えに増えた』その疑問が浮かぶ。いつもなら『増えた』だけだろうに。

 

「そんな事よりどうした?」

 

死徒の爺さんは話題を変える。訳の分からない質問だったが現状報告なのだろうか。

 

「世界線の移動に失敗したんすよ。なんできないのかを今捜索中」

 

「それは知ってる。違う。貴様の目のことだ」

 

「あー、とある魔術師に改造されたようで」

 

俺は淡々とあったことをゼルレッチ爺さんに報告した。

すると、またこのジジイは笑い出して

 

「おいおい!そのマーリンとやらは飛んだクズじゃな!」

 

と大爆笑した。

 

「わざと魔眼を覚醒させたか!そんなの此奴の脳では一年も持たずに溶けてしまうぞ!」

 

衝撃の事実!俺の余命1年!

いや、適当に予想していたことが当たって驚いた。

しかし、脳がダメージを受けているとかそういう痛みはなかったような思えるが、

 

「なるほど、一度魂を引っ張り出して別世界らしき所に持って行くことで擬似的な世界線移動を経験させたか。それを適当に元の体にぶち込んでおけば体と魂の世界線移動の経験錯誤で暴走。それを魔眼だけに絞れたのはなかなかだが何がしたいのだそのクズは!」

 

衝撃の事実!なんかすごいことになったる!

 

「様子を見ると自覚症状はなさそうだがそれもタチが悪い。このままではぽっくり突然死するところじゃったぞ!」

 

怖い。やっぱあの夢の自称マーリンはクズ!しかも幻術で自覚症状消しれいたようだ。

 

「どうすれば良いんですか!」

 

「何、今からその魂を安定させる。それで幾分マシにはなる。」

 

「幾分…ですか?」

 

「うむ、幾分だ。流石に後遺症が残るだろう。自身の未来だけでなく対象の未来の影まで手繰り寄せたのだからな。

貴様のソレは未来視と酷似しているが全く違うモノだ。

未来視はその対象の先の未来線しか見ない。だが、その『手繰る魔眼』はその対象の起こり得る可能性全てを参照し手繰り寄せ影に結ぶ。

1本の枝の先だけを見るか、大きな枝の枝分かれした全ての枝の先を見てどれが正しい手繰り寄せるか、みたいなものだ。

しかも、厄介なのはたとえ枝分かれしない事象(枯れた枝)。つまり剪定事象でも『もしそうしたら』の並行世界を確立し参照してしまうことだ。

まあ断片的で脆いからすぐに崩壊するがな。超小規模固有結界を作っていると思え。そんなコトは脳などにかなりのダメージを与える。

どうしてか貴様自身に対する並行世界の確立及び参照並びに影を結ぶことならばダメージは軽減するらしいがそれが他のものなら話は別だったようだ」

 

言われてみれば当然、と納得した。どうやらこの魔眼は暴走していたようだし。しかも自覚なしで。

というかトンデモない話を聞いてしまった。いちいち脆い並行世界を確立してるって。そうか今回は自身の並行世界だけでなく他のモノの並行世界まで作ってしまった故に『増えに増えた』と言ったのか。

 

うん、お話が異次元だった。

 

 

というわけで俺の後遺症というのは普通にしていると自身の未来の影が。相手をよく睨み付けると対象の影が見えるというところに落ち着いたらしい。

寿命は昨夜使った分減ったらしいがそれほど支障はないとのことだ。

その時、ゼルレッチの爺さんは珍しく魔眼殺しのメガネというアイテムを恵んでくれた。そういう弟子でもない人に物を送ることはあまりしなさそうなイメージなので結構驚いた。

 

そのメガネを形容するにはインテリメガネという言葉があっているだろう。細いフレームは理系でもない俺に理系的なイメージを与えてくれてあがるだろう。

一切そんな事はないのに。

 

「ありがとうございます」

 

「ああ」

 

そう言って第2魔法の使い手は次の世界への準備を始めた。

 

「あと、貴様にアドバイスだ。貴様の魔眼と第2魔法とは並行世界への干渉のプロセスが違う。くれぐれも弟子入りなんてことは考えるなよ」

 

つまり独学でどうにかしろとぶん投げたわけだ。

これじゃあ10年、いやその数倍かかると肩を落とした。

俺は一人になった魔術協会の図書室でため息をついてメガネをかけた。レンズから見る世界も悪くない。

時計を見ると丁度お昼時、俺はパンなどの昼飯をあろうことか図書室的な飲食ダメな場所で頂いている。

 

(さて、今日の夕食はどうしようか)

 

成長フラグをへし折られた俺にはそれぐらいしか考えることがなかった。

さて、さて、さて、俺は夕食をどっかの操られた天才騎士に邪魔されないようにする為の睡眠薬の調合書を探す。そういう本くらいはあるだろう。

 

ーーー今日の夕飯は………

 

それでは、鮭系統は…呆れられる。

ならば、イギリス料理は…不味い。

ならば、フルコースは…出来る訳ねぇ。

 

そうだ俺は家庭科の評定は5段階中の3だ。上手い料理じゃなくて美味い料理を求めなくては…それこそ気持ちを込めて。

ならば、

 

 

「うどんだ」

 

 

そう図書室の中で呟く。

薬の調合書を持ってニヤリと笑った如何にも怪しいインテリメガネがそこにはいた。

 

ついでに、痛覚遮断とかその系統の魔術に関する本があったので一通り読んだ。

 

 




第2部楽しみですね。
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