もうすぐ2万ua突破で糖分高めにしようしたんですが、どうなんでしょうか。
15話
「ふむふむ」
武蔵ちゃんは少年にさも嬉しそうに語り合っている。何を言っているかはさっぱりだがどんな事を考えているかはその顔から察することができる。
「へー」
絶対こいつ関係ないことまで喋っている。
ここは何処?とかそういう話じゃなくてこの少年の名前やら住所やら聞き出しているに違いない。
後で聞いてみよう。絶対ボロを出す。
可愛いね。だとか、お姉さんと一緒にいない?とか。
この師匠は美少年、また美少女を襲いかねないので、俺がどうにか策を弄しておかなければならないと、そう心から決心した。とても、それで制御できるとは思えないとも思った。
「謝謝、さて行きましょう!」
武蔵ちゃんは少年にお礼を言って立ち上がった。
少年は別方向へ走って行くのだがやはり足が早すぎる。
彼女は大きく手を振って別れの言葉を叫んでいる。
「で、何処行けばいいか分かった?」
「ええ、でもまず此処の説明ね。えっと……」
分かったことなのだが、此処は中国の西部。
ーーーということだけ。
「は?」
「そりゃそうでしょ相手は子供よ」
「そうだけど……」
「これだけ分かったことでも大収穫。あのさ繰君、こういう途方のない旅で後ろ向きな思考になっちゃうのはダメ。少しでも前向きにならなきゃ」
「…分かった」
結構ズイズイと来る彼女に押され気味になる。ネガティブシンキングは俺の特技でありコレのせいで何人かの人に嫌われてきた忌まわしいモノだ。直したいとは思ってはいるのだが一向に直らない。というか性格は一生ついて来るものだしいいやと、開き直っている部分もあったりするが。
「それで何処に向かうの?」
「北京か南京。まあこの時代の首都ね」
中国、時代によって在り方が変わっているこの国は現代日本と良い関係にあるとは言い難い。
日清戦争、日中戦争、領土問題。今パッと思いついたものでも3つ浮かんだ。
それより前の江戸時代や室町時代の貿易をしていた頃と比べれば険悪なイメージは拭いきれない。
もし、そういう戦争の時代に飛んできてしまったら流石に命はない。特に日中戦争時とかだったら捕虜にされて死亡確定。出来ればそうでないと願う俺だった。
「そうか……武蔵ちゃんはあの少年をどう思う?」
ここで彼女はボロを出すであろうと質問する。俺はこの質問を『少年の足の速さをそう思う?』というニュアンスで聞いているが彼女は『少年の容姿をどう思う?』という意味へと変換するだろう。
「可愛い」
案の定。こちらがわざと言葉足らずで喋ったという事もあるが引っかかった。
「何あの丸くてつぶらな瞳は!何あの表情は!何あの……」
なんだかもう嫌になってきたので聴覚を遮断する。
……引くわー、武蔵ちゃん引くわー
「最ッ高!」
「武蔵ちゃん、ちょっといい?」
「何?」
「もう少し、情報を聞き出せなかったの?」
「だから言ったじゃない?相手は子供なんだから」
「じゃあ、案内とかしてもらおうとか思わなかったの?子供でも親のところに連れて行ってもらうことくらいできない?」
「………そう?」
「セクハラして逃げられただろ」
「いやぁ…そ、そっそんなはずないとオモウナー」
こいつはアウトですね。
絶対、変なことを言って驚かせてしまったに違いない。
「本当?」
「あ゛!?少しばかり失礼なんじゃない?」
自分の立場が危うくなったらきれないでくださいよ。何だか罪悪感が湧いてきて黙っちゃうじゃないですか。
というか、タメ呼び強制の師弟関係に失礼もクソも……ある。流石に言いすぎた。
成る程、痛い趣味全開はそう見えるのか。
『大人数の前で痛い趣味全開になって引かれる』というのは一度やったことがあってトラウマ化している為二度としないように注意しているがこれは痛い。
傷口に塩を塗ったくられてチェーンソーを突っ込まれるぐらい痛い。(あくまでも深山繰の主観です)
ってこんなこと言ってるから俺は周りの目を気にしまくってしまうのか。別に全開にしても共感してくれる人がいればいいと思う人もいるわけで。
やっぱりいつまでもヘタレなのだとネガティブシンキングに突入している俺を武蔵ちゃんが見ている。
「そ、でも繰君も結構痛いこと言ってるでしょ。なんだっけ?『中途半端な魔術師だ。忘れてくれ』だっけ?」
ニヤッと笑った武蔵ちゃんはそう呟いた。やめろください。
いや、言うまでもないが、
「*%);)#¥〜〜@@…8@@¥8*〜;%=+$#〜,]@…¥)(〜…#…〜…」)〜(#¥@!」
ーーー深山繰はとてつもなくトラウマに弱い。
例えるなら、火に水。水に草。草に火。一方的に殺されしまう。
恥ずかしすぎて赤面どころじゃない。そのパニック状態では、全ての反応についておかしく答えてしまう。そして、それで遊ばれた時のトラウマがッ!!
「ハァ」
ため息1つ
「繰君?どうしたの?」
「…… …… …… …… …… ……」
「あ、倒れた」
まさかこれ程だとは思わなかった。というのも彼女にとってはちょっと興味本位でいじり返しただけなのだ。
「う〜ん、いじられ耐性もつけなきゃね。こっちがいじれないのはきつい」
「……………」
俺は、気絶していたのか…。
ゆっくりと目を覚まして眼前に映る光景と後頭部の感触が何か考察する。
…考察する間もなかった。あれだ。これは夢だ。全く19歳にもなってこんな思春期らしい夢を見るだなんて甚だしい。気持ち悪い。武蔵ちゃんに膝枕されてるなんていう事象は有り得ない。…①
だがしかし、こんな夢を見ることはきっとおそらく多分ずっとないだろう。ならば、いっそのことこのまま夢を見続けるのはいい案なのではないのか?いやダメだ。そんないかがわしい思考など持ってはいけない。刀の切れ味が下がるらしいし。
というかあの興味ないこと全て塩対応の武蔵ちゃんがそんなことをする筈がない。地べたに頭をつけてると汚れるからとかそんな心配をあの宮本武蔵がする筈もない。それに陰キャは妄想が激しい。その妄想が夢となってしまっただけである…②
いっそこの夢から覚めてしまおう。この記憶はずっと脳の奥にしまっておいて目覚めてしまおう。それがいい。にしてもリアルな夢だ。焚き火の火で目の前で彼女が寝ていることがわかるわけだが、待て正座の状態で人は寝れるのか?
人が正座で寝れるはずがない。…③
①、②、③よりこれは夢である。(Q.E.D)
また、②より深山繰は気持ち悪い事も証明できる。
くだらないことも考えて、出来るだけゆっくり、のっそりと頭を上げようとする。
夢であろうと、夢でなかろうと取り敢えずここから離脱しなければならない。
すると、彼女の頭が落ちた来た。
「「ギャぁ!」」
悲報、マジだった。
「………………っ、てわわわわわあわわ!起きた!」
俺はぶつかったおでこを抑えると同時に目を隠して転がりながら距離を離す。
ーーーという夢を見たのだった。
いい加減自虐も避けたいから、もうこんな事は起きないで欲しい。死にたくなる。
「起きたわね。ささ、早く夕食にしましょう」
なんだこの鬼畜は。起きた途端に
「武蔵ちゃん。本当に申し訳ないんだけど」
「なに?」
「食材が一切ございません」
俺たちは北京までの数日間あまり食にありつけず半分くらい空腹だった。それに稽古が重なってくるし、盗賊を撃退するしで疲れに疲れるのだった。