天元の花、零の先へ   作:新川翔

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無事ハロウィンイベントのミッションを全て終了できました。
いやーめんどーだった。


竜騎士と天才騎士
その1


「思い出した」

 

それは無意識的に起こった事だった。

この…胸が焦がれ焼けそうな感覚、息が詰まって苦しいこの感覚は、これは…『憧憬』か。

更に、前世の俺の記憶がアルバムをめくる様に、肝心の写真はない状態だが、感情だけが、蘇ってくる。誰にも流されず、自由奔放で自然体に生きている彼女を見て俺は心の底からの『憧憬』を抱いた。

 

「武蔵さん。お願いがあります」

 

前世の俺もなんだかんだで気持ち悪いが、さて、俺は1人の女性に勝手に憧れてここにいる。

 

「なに?」

 

その俺がどうしたいのか、何故こんな行動を起こしたのか、そんなのは、そんな今、理由は一つに決まった。

 

「弟子にして下さい」

 

俺は彼女の弟子になりたい。

と発言して、想って、自分の身勝手さを痛感する。ひょこっと知り合って急に弟子になりたいだとかどんな奴なんだと。

しばらくすると、出口が見えてきた。その先には中世の街並みが広がっている。

 

武蔵さんは俺の申し出への返答を少し思い悩んでいるのか、間を開けて、

 

「分かりました!よろしくね。繰君」

 

そうあの時見せた美しすぎる笑顔でそう言った。

なんだか、スムーズすぎたので少し拍子抜けした。そういえば、本来の歴史の宮本武蔵は後世の教育に熱心だったらしい。

 

「よろしくお願いします」

 

ヤベェ、クソ恥ずかしい。思わず言葉がたどたどしくなってしまった。そんな自分に嫌気がさす。

 

「こちらこそよろしく。繰君」

 

彼女はそれを気持ち悪がることなく、気さくに笑って見せた。

 

「大丈夫?落ち着いて」

 

「……すいません、師匠」

 

「…」

 

彼女は突然静まり返った。

まさか、俺は弟子になった早々に失礼なことをやらかしてしまったのかと体が先から大きな震えが迫ってきた。

これは、今すぐに謝ったほうがいいだろう。しっかりと誠意を込めて踵を揃えて、

 

「師匠呼び禁止!」

 

「す、はい!?」

 

「やっぱ私には師匠呼びは似合わないわ。気軽に武蔵って呼んで」

 

「はぁ、ぇ?」

 

タメ語強制の師弟関係など聞いたことがない。

いや、そもそも何で彼女はそんなに自分に自信がないのだろう。彼女の旅の話を聞く限り、強い敵には幾度も戦ってきて、彼らに勝利を収めてきて、それでいて、未だ彼女をおごらせないものとは何だろうか。

 

で、敬称を禁止されたが、俺には女性を呼び捨てにするほどの力はない。きっとそんな言葉を紡ぐ度に気色悪い回答を返すこととなるだろう。

 

「じゃあ、武蔵ちゃんって呼んで」

 

「ハァ!?」

 

いや、女性をちゃんずけだなんて出来るはずがないのですが、いや、男性でも呼んだことないけど。

 

「それじゃあ、武蔵、ちゃん。お願いします」

 

うわぁ、俺引くわ。

 

 

さて我々はどこに来たのか先程言った通り此処は中世のヨーロッパだ。

街の人が話しているのはどうやら英語らしい。

英語ならある程度話せるので問題ない。

英語の国でヨーロッパと言ったら真っ先に思いつくのはイギリスだ。

 

「繰君って英語話せるの?」

 

「大丈夫だ。問題ない」

 

いつか時計塔への留学を希望していた俺は日常英会話くらいなら簡単に話せるように勉強していた。なので、何の問題もない。

 

「じゃ、手分けして情報収集といきましょう!」

 

「はい!」

 

と互いに踵を返して一歩踏み込んだ途端に武蔵ちゃんはすぐに俺を呼び止める。

 

「いや待ったぁ!」

 

そう、俺には1つだけそれでいて最悪な問題を抱えていた。

『コミュ障』と呼ばれるものだ。これを抱えていると会話で圧倒的な不利的状況を作り出し、更にその場が初めての会話となると二倍効果が増してしまう。

 

「うん、繰君って……そう!コミュ障じゃない!?」

 

日本語なので周りの人が理解できないとはいえ、そんな俺の人権を消し飛ばして塵にしてしまうことを大声で言わないでほしい。ホント、恥ずかしいから。

というか、何で彼女はそんな単語を知っているんだ。

 

「そうでした。はい」

 

2時間後

 

「なるほどね」

 

「なるほど」

 

この時代の西暦は1787年

ここはイギリスのロンドンらしい。

17世紀のイギリスといえば産業革命だったりで経済が急成長する時期で第2次囲い込みがあったりしたのもこの時だったような気がする。

確かこの頃から資本主義経済が出て来ている。この時代の日本といえば鎖国の真っ最中。

今は寛政の改革とかで忙しい頃だろう。

 

武蔵ちゃんと俺はついでの買い物を済ませてから喫茶店に着き、コーヒーを注文しながら話し合っていた。

 

「明日、ヨーロッパ最強の剣士の称号をかけて決闘が行われるらしいじゃない!確かデオンの騎士とサン・ジョルジュって人が対戦するらしいわね」

 

「らしいね。つまり、決闘したいってことか?」

 

「えへへ。まあ。ヨーロッパ最強の剣士とか戦いたいに決まってるじゃん!」

 

彼女は並行世界の人物だとしても、正真正銘の『新免武蔵』である。

道行く人に勝負をふっかけたり、強い人見かけたら勝負ふっかけたりする戦闘魔である。

その彼女が一番を決める決闘など聞きつけたら、反応せざる得ない。

 

「別に良いでしょ。乱入者ってのも盛り上がりそうだし」

 

「うん、まぁ…」

 

だとしてもだ。彼女と俺はこの歴史には本来いない存在である。そんな存在によって差異が生じてしまったらどうなってしまうだろう。

間違いなくその差異が生じる前に抑止力による妨害が入る。

抑止力というのは星を存続させる意思だ。その意思はどんな事であろうと、事実の改変を許さない。というか、普通は移動さえさせてもらえない。

 

「あ、そういえばお金ってどうするの?」

 

武蔵ちゃんがごもっともな質問をする。

確かに俺たちがここに来た時はた無一文だった。

 

「安心して。魔術協会でいくらか商売してくるよ」

 

「すごい!なにそのまじゅつきょうかいって!」

 

魔術協会

国籍・ジャンルを問わず魔術師たちによって二世紀頃作られた自衛・管理団体。魔術を管理し、隠匿し、その発展を使命とする。この世界にも存在しているはずだ。

ん?なにを売るつもりだって?教えません。(伏線じゃナイヨ)

 

「んじゃ、軽く昼食済ませたら服とか食料とか買って宿探しましょう!」

 

コーヒーを飲み干して武蔵ちゃんに魔術協会について簡単な説明をして席を立つ。

恐らく、彼女は今の話の半分理解していないだろう。

余談だが、コーヒーが苦かった。

 

 

 

 

宿に着いてひと段落する。備え付けのキッチンや大きなベッド、さらにソファなど、普通の生活には支障のない部屋だ。

 

「これ似合ってる?」

 

荷物持ちを強要された俺は少し腕が痛い。腕をマッサージしながら彼女を見る。

この時代の服装に身を包んだ彼女はコスプレをしているみたいで可愛かった。

 

「似合ってるよ。可愛い」

 

自然に『可愛い』なんて単語が出て来てしまった。やばい…とても恥ずかしい。確かに心の底からそう思えたので漏れてしまったのだろうか。え、なにそれキモい。

今まで生きてきた中で女性にそんなことを言ったことはないため赤面してしまう。

で、言われた武蔵ちゃんも赤面しているのでとても気まずい。2人の間に静寂が流れる、

 

 

「じ、じゃあ。繰君。君の剣の腕前を見せてもらおう!」

 

少しの沈黙の後、話題を切り替えて武蔵ちゃんは指導を始めると言った。

正直、こちらから何か新しい話に振ることは俺には出来ないので安心した

 

「うん、この機会に弟子の実力を見るのも良いし明日に向けてウォーミングアップしたいし一石二鳥ね!」

 

赤面ながらも気を回してくれた彼女に感謝し俺たちは宿の部屋に着いて約5分でこの部屋を出ることとなる。

まだ、俺の腕は筋肉痛で痛んでいる。

 

 

 

 

 

徒歩で人気のない広い場所まで移動した。武蔵ちゃんは恥ずかしくなったのかいつもの着物に着替えていた。それにしても、その着物は恥ずかしくないのだろうか。

俺は本気で(魔術行使をして)師匠に切りかかることを覚悟した。だからこそ人に見られないように人気のない場所まで移動をしたし、本気でかからなければ殺されそうと、勝手に思っていた。

 

「我が名は新免武蔵守藤原玄」

 

(言うの!?恥ずっ)

 

「ッ深山家次期当主深山繰!」

 

「「推して参る!!」

 

俺はすぐに『手繰る魔眼』を発動させた。

俺の武装は脇差程度の長さの刀が合計6本。

それに対して武蔵ちゃんは普通のサイズの刀が4本。

リーチはあちらの方が有利で剣術もあちらの方が有利だ。

全身に強化魔術を施して低姿勢で走った。出来るだけ最短距離で斬りつける。

両手に剣を持って目を凝らし、自身の取るべき影を映し出す。反射神経を最大限に尖らせてどんな行動にも確実に返せる事を心がける。

もし、こちらが攻勢に出ようとしたら一瞬で勝負が決まってしまう。

いつ影ができても反応できるように地面に足はつけておく。

約9メートル間合いを詰めても、彼女は何もしてこないかった。

 

「うそっ」

 

焦って頭の中が白くなる。

予想外だった。そもそも、剣の経験がある俺でも、彼女に比べたら相当に経験、技量、気迫、どれも足りない。まず、予想出来るはずがなかったのだ。

 

このまま下がるのは愚策だ。と思い左に蹴って体を飛ばす。

その隙を彼女は見逃さなかった。彼女の右手から一本の刀が振り下ろされる。

その時、痛感した。

彼女には敵わない。

 

全霊を込めてそれを右手の刀でで防御する。

足を地面に突き刺して強化する。すぐに左手の刀も加勢させてなんとか拮抗させようと試みる。

 

「はぁ!」

 

「ふん!」

 

それでも俺は大きい力の差に押し負けてしまった。

彼女はサーヴァント、力比べで勝てるはずがなかった。そう後悔しながら相手を見る。

でも、ここでやられてたまるか。そんな気持ちが芽生えた。

押し負けた後、すぐに体制を立て直して影を映して確実に効果的な一手を手繰り寄せる。

 

数度、彼女と剣戟を交わした。

甲高い金属音が体に響いて体の動きを鈍らせる。

このままこの剣戟を続けていたら、こちらが押し負ける。

 

また数度、剣戟を交わした後に左手の振り下ろした刀を切り上げると見せかけ、眉間めがけて投擲した。

 

自信があったつもりだったのだが、彼女は簡単に躱してみせる。その彼女が躱している間に俺は一歩下がった。

この一歩を使って彼女に渾身の一発を浴びさせる。刀を両手に強く握って口元の高さまで持っていく。

 

ほぼ、準備のタイミングは同じ。

もう、細かいことは考えず影に従うままに縦に斬った。

 

「それが『手繰る魔眼』ね。いつも的確なところ狙ってくるとはやるぅ!」

 

残念ながら、簡単に防がれていた。弟子が彼女は思いのほか強かったのか、ニヤリと笑っている。その笑みに少し震えた。

 

なぜ剣士たちがあの高速の剣戟を繰り広げられるのか。

それは彼らが互いの動きを予測しあって動くからだ。短い拮抗、もしくは斬り合いに間に幾つもの駆け引きが行われている。

その駆け引きを必要とせず的確な攻撃を繰り出せるこの目というアドバンテージを持つ俺に彼女が一切押されないのか、それは彼女の勘によるものがあるだろう。彼女は自身の反射神経に頼るしかないのだが彼女はそれを完璧にこなしている。

さすが、剣豪と言える。と、俺が偉そうにいえる口ではない。

 

こんな化け物と5分渡り合った俺を誰か褒めて。

 




武蔵ちゃんはまだ本気を出していません。
止まるんじゃねえぞ(更新)

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